また、チラチラと彼女の方を見ている。流石に注意するべきだろうと思い、フェイトは彼――
「バレてるから。小太郎君」
「……何の話や?」
何の話かと問いながらも、彼の言葉と表情には動揺が見える。流石に、自分が恥ずかしい事をしていると云う自覚はあるらしい。
「さっきからチラチラと、千草さんを見ているだろう?」
「……?ああ」
そこは、認めるのか。よく分からない少年だな、とフェイトは思った。矢張り人間は難しい。
「彼女の胸元を覗きたいと云うのは雄としての本能かも知れないが、自重」
ガイン。と云う音が響く。魔法障壁に何かが当たったのだ。小太郎が、拳を抱えて蹲っていた。
「成程図星を指されての逆切れ」
「ンな訳有るかいッッ!!」
突っ込みだった。自称新生デュナミスRX-7TURBO DASHによって常時展開可能となったこの魔法障壁は、突っ込みだけは防げない。謎仕様である。
ズビシッと云う小気味良い音と共に、フェイトは吹き飛ばされた。クルクルと縦回転して壁にぶつかる。これも仕様である。突っ込みの衝撃は倍加する。意味が分からない。
家屋が倒壊するかと思われる様な衝撃が走り、何だ何やのと三名が集う。小太郎は一人、唖然としていた。
「何やのあんたら!喧嘩か!?喧嘩は表でしい……やなくて、喧嘩すな!」
天ヶ崎千草。関西呪術協会の一員。この怪し気な集団のリーダーである。
「え?いや、喧嘩っちゅうか、難癖を付けられて……あれ?やっぱり喧嘩か?」
犬神小太郎。狗族と云う東洋版の狼男である。
「喧嘩はアカンえ、小太郎君。フェイト君」
「ふん!無様だなテルティウム!こんな小僧にしてやられるとは笑止千万!」
クゥァルトゥム。自分と同じ団体に所属している男だが、ナルシス気障なので知らない人ですと言いたくなる。常に薔薇を咥えている。彼もまた真性の変態である。
「……ボケに対する突っ込みを受けたんだ」
「ああ」
「さよか」
それだけで関西人の女性二人は納得し、部屋に戻って行った。こちらは逆に納得出来ないものを感じたが、まぁ世の中とはそう云うものだと諦める事にする。色々と諦めなければ、三週間程前から劇的に変わった組織内では生きていけない。
「くくく。成程所詮貴様は一世代前のポンコツよ。大人しくこの島国でその姿のまま固まり観光名所に成り果てるのがお似合いだ!クハハハハハ!!」
一体如何云う開発コンセプトで彼は生まれたのだろうか。薔薇を咥えたまま高笑いとか、調整ミスとしか思えないが。
彼、クゥァルトゥムの
そして直後にデュナ略から『ナギ・スプリングフィールドの息子、ネギはかなり際どく超絶的に危険な奴なので急ぎ始末すべし』と送り出されたのだ。一体何処から聞いてきた情報なのか。全く以って謎なのだが『スゲェイカス造物主の完全なる世界の為ガンバ!!』と言われれば仕方無い。従うのが人形たる自分の役目である。
しかし『日本の埼玉県麻帆良市に彼奴は居る!』との情報(出処が不明だが)から彼の足跡を辿ってはみたものの、如何考えても”脅威とは成り得ない”と判断せざるを得なかった。得られた情報から考えるに兄のグージーの方が危険度は上だ――などと言っても所詮は見習い魔法使いレベルでの話である。フェイトやクゥァルトゥムからすれば赤子同然の力量と言えた。
その子供達と仇敵たる高畑・T・タカミチが麻帆良を離れて京都へと赴く、との情報が流れたのはそんな折であった。麻帆良は日本に巣食う魔法使いの本拠地であり結構な人口密集地である。そこで事を起こせば色々と人目に付いて不都合であったのだが、離れてくれた上人口の半分が観光客と言われる場所(出典不明)に行ってくれると云うのならばこれは渡りに船だ。その情報を拡散して彼等に恨みの有る人物を集結させ、その連中を隠れ蓑に三人を始末する。そう云う計画を組み立てた。単独で事を起こすのも吝かではなかったのだが、四番目があからさまに悪目立ちするのでこの手を使った。何度言っても薔薇を口から離そうとはしないし、認識阻害魔法を掛けてもくれなかったのだ。『俺がこの薔薇を外すのは、強敵と相見えた時だけだ!』との事である。定期報告の度に調整ミスを訴えたが、聞き入れられなかった。
ともあれそれなりの人数が集まるかと思われたこの作戦だが、極東の島国故かナギ・スプリングフィールドや高畑・T・タカミチの名はそれ程轟いている訳ではなく、集まったのはたった三名であった。しかも『ナギ、タカミチに恨みを持つ者』を隠れ蓑に別の目的を持つと云う人物である。つまり互いに利用し合う形となった。
だが四番目を目立たなくさせると云う点に於いては、この三名には花丸をあげたい。何せ一人は痴女、一人は白ゴス少女、一人は獣人少年である。薔薇を咥えた奇人が加入しても、『ああそう云う芸風の集団なんだな』と納得してもらえるだろう。
そんな事を考えていたら、小太郎から白い目で見られている事に気付いた。
「何だい?」
「……いや。ええ加減、普通の姿勢に戻ったらどうや?」
そう言えば、壁に叩き付けられた状態だった。頭頂部を下にした、一点倒立である。しかもそのまま腕組み。成程このままでは話し難いかと足を正面に下ろしてくるりと元の姿勢に戻った。
「アレやで?カルトームがボケでキャラ立っとうから、お前までボケをやろうとする必要は無いと思うで?」
つうか、ボケとボケで突っ込みがおらんとか収集が着かんやろと狼少年は続ける。この少年は、クゥァルトゥムとは発音せず、カルトームと訛る。
「まぁお前は突っ込みに感情が篭っとらんからなぁ。苦手なんか?」
「感情表現が苦手な部類ではあるね」
と言うより、任務遂行に不必要な
「かと言って、アレに突っ込みは無理……と言うか、ボケ以外は無理やろ?何とかお前が突っ込みを磨くしか無いと思うで?」
この少年の中では。自分と四番目は兄弟で、漫才修行に日本に来たと云う設定になっているらしい。ナギとタカミチのコンビはトルコの漫才大会で卑劣な手段を用いて自分達の親を棄権させ、優勝を掻っ攫った悪党なのだ。
……何なんだそれは。と、言いたい処ではあるが、じゃあキワモノ芸人以外で常時薔薇を咥えている男のサイドストーリーを考えられるかと問われれば”否”と答えるしか無い訳で。デュナ何とかの軽挙妄動には本当に頭が痛くなる。
「無気力系突っ込みっつうのも有るけど、あれはボケが突っ込み返さな話にならんしなぁ」
「……まぁその話は追々考えるとしよう。それより」
関西人のボケと突っ込みに関する講義は結構でござる。
「覗き見じゃないとすれば、君は何故千草さんの方を見ていたんだい?」
この少年は、恋愛よりも戦闘の方に興味が有ると云う感じだったが。三十路目前の痴女が恋愛対象とか、かなりマニアックだと思う。
「ん?ああ…………まぁええか。実を言うとやな。千草姉ちゃん達が狙っとる、近衛な」
彼は暫し迷いを見せた後、語り出した。
「想像もつかんくらい強いらしいで?どんだけ信憑性が有るんか知らんけど」
「強いって……護衛の神鳴流剣士がかい?」
「ああ。そっちも強いって話やな。神鳴流歴代最強やとか」
月詠が、豪く嬉しそうに語っていた。早よう先輩と戦いたいわぁ~と。彼女の実力は中々のものであり、この業務終了後は完全なる世界の戦力としてスカウトしたいと思えるものだった。その彼女がラブコールを送る、桜咲なる護衛は確かに強いのだろう。が。
「……そっち”も”?」
「ああ。近衛の姫さんの方や。何や、俺みたいな妖怪の血を引いとるとか何とか」
「――父である青山詠春は、退魔師である神鳴流剣士だろう?謂わば妖怪の敵だ。近衛も剣士じゃないけど退魔師じゃなかったかな?そんな連中が妖怪と結婚したりするものなのかい?」
「まぁ外人さんには分かり難いかも知れんけど、日本では割りかしあるんやそう云う事が。実力を認め合った者同士が互いの子供を結婚させるとかな。青山にも近衛にも、そう云う血が混じっとるっちゅう話や。俺自身が妖怪言うても、あんま他の妖怪とは付き合い無いから噂程度にしか知らんのやけどな」
なけん、全くの無力やゆう事は無いでと彼は続けた。
「それは、千草さんには伝えたのかい?」
「当然言うたで。でもあんま信じとらんなぁあれは。なけん心配でチラチラ見てた訳や」
噂程度の情報やから信憑性は無いしなと小太郎は嗤う。
「俺も半信半疑やしな。ほんでも嫌な予感はするからなぁ」
「成程」
近衛木乃香を誘拐し、彼女の魔力を用いて古代の鬼神を復活させようと云う目論見は、前途洋々と云う訳には行かないらしい。
だがこちらとしては、彼女が成功しようがしまいが如何でも良い事である。ナギの縁者三名を襲撃する理由として存在してくれさえすればそれで良いのだ。
タカミチの強さは、調整前の自分程度だと聞いている。調整後の自分と四番目が居れば軽く倒せるだろう。見習い二人は実戦も知らない子供である。小太郎と、千草の用意した式神が有れば十分対処可能だろう。
そう、若干気楽に考えていた。
それが覆されるのには、少しの時間しか要らなかったが。
*****
タカミチの無音拳が、容赦無く式神と小太郎を抉った。無音とか言う割りには”キキューン”と云う甲高い音がしているが、と如何でも良い事を考える。
現実逃避である。
ナギ・スプリングフィールドの遺産である家屋の近くで待ち伏せしていたのだが、如何云う仕掛けか感知され、周囲と位相を違えて人を封じ込める結界を張られてしまった。そして高笑いしながら登場したクゥァルトゥムは速攻で沈められている。所謂犬神家状態だ。物理攻撃であるのでそれ程間を置かずに復活するだろうが、自分の物と同じ質である筈の魔法障壁が濡れた紙の如く破られたのは衝撃だった。
自分に在る矜持は、あの格好で倒される事を強く拒絶している。なので転移を繰り返して彼の拳を避けているのが現状だ。
「ハハハハハ。どうしたんだいアーウェルンクス。招待状も無しに来た割には、剰りダンスが上手とは言えないね」
何だあの男は。情報と随分違うじゃないか!0.5秒で転移を繰り返しているのに”全て”捕捉されている。”遊んで”いるのだ彼は!
「……くぅおぬぅおぉっ!?」
クゥァルトゥムが復活したが、また即座に吹き飛ばされていた。時間稼ぎにもならないとは、何の為に着いて来たんだお前と言いたくなる。
「せいっ」
小太郎君の方が活躍してるじゃないか。否、タカミチが相手にしていないだけか。彼の相手はスプリングフィールドのどちらかがしていた。恐らくもう片方は、この結界を維持しているのだろう。
「やるやないか西洋魔術師ッ!!」
「戦闘狂の相手とかホント勘弁して下さいマジで」
「オラオラオラオラ――――ッ!!」
「ネギくーん!代わってちょーだい!」
連続転移の影響故に妙な感じで聞こえるが、そんな事を言っている様だ。つまりは彼がグージーなのだろう。小太郎の攻撃を軽々と避けている事からも、実力の高さが伺える。
――いや、待て。弟は魔法を使えないのではなかったのか?タカミチも同様だ。ならこの結界は、グージーが戦いながら維持していると云う事になる。末恐ろしい少年だ。矢張り警戒すべきはネギよりグージーだ。と言うか、タカミチの強さが本気で危ないので彼が警戒度一位だが。
「クククッ!高畑・T・タカミチ!貴様はとうとうこの俺を本気にさせてしまったな!もう手加減はしないぞッ!!」
ゴウッと云う音が広がる。自らの肉体を炎と同化させたかクゥァルトゥム。
「この薔薇は、俺の力を蓄えいざと云う時に開放する為の畜魔器!俺にこの力を使わせた事を後悔するが良い!」
手加減も何も攻撃など出来ていなかったと思うが、それは言わない方が良いだろう。あと、エネルギーを貯める装置ならば指輪か腕輪にしろと言いたい。何だ薔薇って。気障か。
兎も角、彼の力が膨れ上がったのが分かる。これならば――
「ふん!」
あ、一撃で弾き飛ばされた。と言うか、結界が割れた。
「何やってんのタカミチィ――ッ!?」
「ハハハ。結界の強度が足りないよグージー君。戻ったら特訓だな」
「え?これ俺が悪いの?どうなのワンちゃん?」
「がっ……だ……れがワンちゃんや……ねん」
そして何時の間にか小太郎も伸されていた。一瞬見捨てて逃げようかとも思ったが、結界は既に張り直されている。
「ああ。アイツだけは外から入れる様にしてるから、心配は要らないよ?」
グージーが小太郎の上に腰掛けて言う。
そして、タカミチの雰囲気が変わった。フェイトの背筋が粟立つ。
「さて。あの喧しいのが居なくなったんだ。今の内に訊いておこう――先の大戦、君達は如何なる理由で勃発させた?」
先まで有った笑みは無い。ただ冷徹な、その答えを知る為だけに生きてきた男の顔が有った。まるで全身に刃物を突き立てられるかの様な悪寒が――否。
”実際に”突き立てられていた。
「
――馬鹿なッ!?一体何時の間にッ!!貫かれた衝撃など微塵も感じなかったぞッ!?
これは、彼の持つアーティファクトなのか?全身ではなく四肢だけだったが、刃物は実在している。
「さぁ。答えろアーウェルンクス。これは質問ではない。拷問だ」
「ッガァッッ!?」
思い出したかの様に、アーウェルンクス・シリーズに在る筈の無い痛覚が仕事をする。何だこれは!?
疑問は尽きない。だが答えねばその答えを知る機会も無くなるだろう。一応、完全なる世界所属のアーウェルンクスはもう一体居る。拷問は面倒だろうが、別に自分を殺した処で替わりは効く訳だ。
「……そうだね。君達は、僕達の目的を知らずに常に邪魔してきた訳……グッ!?」
「時間稼ぎは無駄だ。早く結論を言え」
これが、英雄の力か!彼に勝つにはシリーズがダース単位で必要じゃないだろうか。
「ッ……魔法世界はもう直ぐ、十年以内に崩壊する。アレは僕達の主、
「……それで?」
「それらを別の場所……
「だから、口減らしの為に戦争を起こしたのか?」
「当然それも有る。だが造物主は下らない小競り合いを行う人類に絶望もしていた。だからこその戦争だった。そしてその結果、魔法世界の住民当時十二億四千万、戦争後の現在十一億八千万!今なら彼等全員を救える!今度こそ”争いの無い平和な世界”、完全なる世界が実現する!誰も苦しむ事の無い、真実の平穏が」
「減らした六千万を置き去りに、か」
ゾッとする声音だった。そうか。彼は戦災孤児。減らされた六千万の中に、家族が。
「……だが”完全なる世界”に行きさえすれば!そこで彼等に再会出来る!」
「……『現し世は夢。夜の夢こそ真』、か?”完全なる世界”とは、十二億を”夢の中へ誘う”。そう云う計画なのか……」
彼が少し脱力する。説得は可能か?
否。
「その”下らない小競り合い”を先導していた”上”を生き残らせて。全員を生かす努力も怠り、勝手な命の選別を行い、”差し伸べられていた手も振り払い”、剰え自分達が正義だと疑いもせずに」
殺気が、倍加した。それだけで、空間が震える。
「ちょっとタカミチさん!?結界が割れそうなんですけど!?」
と云うグージーの悲鳴も宜なるかな。許容出来ない痛みを残して、銃剣と共に四肢が消え去る。
「ぐがぁぁッ!!?」
「狂い踊れ
彼の無情な宣告と共に飛び込んで来た四番目と一緒くたに吹き飛ばされ。
フェイトは取り敢えず、造物主ではない神に毒吐いた。
*****
気を失う前に天ヶ崎と月詠を回収して転移出来たのは奇跡と言えたが、それで現在の戦力差が如何こう出来ると云うものではなかった。小太郎もアジトに戻って来ていたが、犬の形態から人型には戻れないそうである。何らかの魔法を掛けられ逃がされたそうだ。四番目の気配は完全に消えている。そして自分は達磨状態だ。
更に言えば、千草の持っていた全ての札と月詠の刀は綺麗に”斬られて”いたそうだ。神鳴流剣士の仕業らしいとの事であるが、服や鞘の上からそれらを斬らずに中だけを斬ると云う業前には驚嘆せざるを得ない。しかも相当な距離を離れて、肉眼で捕捉もされていない状態からである。タカミチ並の化物と言えた。
彼等が合流して関西呪術協会の結界内に居る現在、攻め入るのは無謀の極みである。
「ウ……ウチの刀が……こないに綺麗に斬られるなんて…………」
「月詠さん……」
刀は、剣士にとっての命だと聞いている。彼女の失意は如何程のものか。
「こないにされたら、ウチ……ウチ、先輩に惚れてまうわぁ……♥」
うっとりとした表情でウネウネと腰を振る彼女を見て、フェイトは退いた。ドン退きである。足は無いので動けないが。犬と痴女は、実際に逃げていた。身障者に優しくない連中である。否、犬は無理か。オノレ痴女め。
恨みがましい目で見ていると彼女はバツが悪くなったのか、
「ま、まぁフェイトはんはこれから大変やろうから、義手が出来るまで暫くウチの式神、
と言って、強化外骨格的――ではなく着包み型の式神を出してくれた。”それ”がフェイトを掴んで飲み込むと、如何云う仕掛けか正常な位置に収まる。中々着心地は良い。手足も難無く動かせる。やるではないか、痴女。親指を立てるとサムズアップを返された。
「――で、実際問題、これから如何する?」
はぁはぁと息を荒らげ出した変態は放置し、天ヶ崎や小太郎と向き合う。
「ぶっちゃけ、ウチは逃げ出したいんやけど」
「お嬢さんの力を使って東に攻め込むのは諦めたのかい?両親の仇なんだろう?」
「それはあんさん表向きの理由や。実際のウチの両親の仇は関西呪術協会の幹部なんよ。ソイツが『お前の両親の仇は東じゃ』言い回ってウチが行動せざるを得ん様に追い込みくさって!」
聞けば、大分裂戦争時。麻帆良に出兵要請が来たものの彼等は拒否。では西にと来た誘いを『魔法世界に恩を売るチャンス』だとその幹部――
「ウチの両親も両親で、『これで出世して帰って来るで』なんて喜んどったしな。他所の戦争で一旗揚げようなんて阿呆な事を考えるから死ぬ様な目に遭う訳や」
「――済まない、千草さん。その戦争には僕の組織が関わっていた」
小太郎がジト目で睨んでくるので、一応説明をしておく。痴女って言ってごめんなさい。
「ふん。あんたが気絶しとる間に小太郎から聞いたわ」
「え?どうやって?」
犬の状態でも喋れるのか?でも今は喋っていないが?
「これやこれ。バウリンガル」
半端無いな日本の科学力!今迄生きてきて一番驚いた。
「許して欲しかったらその着包み着て金串ぶん殴って来い。それでチャラや」
実際木乃香嬢の力で伝説の鬼神を復活させ、それでその幹部宅を踏み潰す気だったとか。どうせ幹部は逃げるやろうけど、嫌がらせにはなるわなと薄く嗤う。
「ウチは海外にでも逃げさせてもらおうかと思うとったけど……あんさんの世話をせなあかんしなぁ」
「いや、トルコまで運んでくれれば後はこちらで如何にかするよ。ありがとう」
飛んで(トルコ最大の都市名。著作権が切れていない歌詞になる為削除)かぁと千草は歌うが、誰も反応しなかった。知らない曲である。年増
「早う金串殴ってこんかいッ!」
その後。関西呪術協会の結界が破られ一人の男が裸に剥かれて大木に吊るされていたと伝え聞くが、噂の真偽は定かではない。
祝日刊三位。
……バグじゃあないですよね?