バカとテストと召喚獣 ~The if or true story~ 作:天沙龍月
そのかわりといってはなんですが今回なんと1万二千文字越えしました! これでも次回に回したところもあるんですが……
では、本編をどうぞ!
明久side
やばいやばい!どうする!?まずは龍星さんに連絡を取らないと!
「美波様!姫路さん!ちょっと良いかな!?」
「何ですか?吉井くん♪」
姫路さんが答えてくれた。よし、反応してくれるならまだ何とかできるか?
「ちょっとお手洗いに行ってきて良いかな?ちょっとやばい状況なんだけど!」
「そ、そうなんですか……どうぞ行ってきてください……。」
姫路さんは顔を赤らめながら手を離してくれた。姫路さんには悪いけど今はこれしか……!
「しょ、しょうがないわね!早く行ってきなさい!」
「あ、ありがとう!」
島田さんも渋々手を離してくれた。ふぅ、早く行ってこよう……!
僕はそのままトイレに向かい、ポケットに入れていた端末で龍星さんに話しかける。
「龍星さん!聞いてましたか!?どうしましょう!?」
『まぁ、落ち着いて。う~ん……仕方ないからこのまま気の済むまで付き合ってあげよう。こちら側の事を知られると困るし強引には引き離せないだろう。後、木下さんには俺から連絡しておくから。終わったら連絡してくれ、合流場所を教えるから。』
「分かりました。それじゃあ、また。」
これで良いかな。木下さんには悪い事しちゃったなぁ……それに木下さんに早く会いたいよ。
島田さん達にはホント驚かされるよ。こっちの事情を知らないとはいえ、上手くそれを潰すように予定を入れてくるし。はぁ……今日だってホントは木下さんと同棲する家を見て移るはずだっただけどな~。
たぶん、今から映画行くとしたら最低でも1時間以上は付き合わないといけない。そうしたら、帰れるようになる頃には日が落ちてる……。荷物はどうするか分からないけど今日は家を見るぐらいも出来るかどうか……。
10分後
「おっそ~い!何してたのアキ!」
「ごめんごめん~。ホントに危なかったよ~。」
「それじゃあ、行きましょうか♪」
なんとか演技を続けるぐらいには落ち着いてきて戻って来れた。
せめてクレープか映画、どっちかひとつにして欲しいなぁ。
「それでですね、吉井君。私と島田さんで話し合ったんですけど……」
「ん?何を?」
「映画かクレープどっちか一つにしようって。それで映画だけでも良いですか?」
お、そうかそうか。一つに決めてくれるならありがたいなぁ、時間が長い方だけど。
「僕はどちらで良いよ。」
「分かりました♪それじゃあ映画館に行きましょうか。」
「うん!」
僕らは映画館に向かった。
明久side out
時間を少し遡る。
龍星side
『龍星さん!聞いてましたか!?どうしましょう!?』
「まぁ、落ち着いて。う~ん……仕方ないからこのまま気の済むまで付き合ってあげよう。こちら側の事を知られると困るし強引には引き離せないだろう。後、木下さんには俺から連絡しておくから。終わったら連絡してくれ、合流場所を教えるから。」
『分かりました。それじゃあ、また。』
う~ん……話を聞いてた限り、島田さんと姫路さんは吉井君に気があるらしい。これはなんというか御愁傷様だな~、吉井君には木下さんが居るし吉井君も木下さんを想ってる。
島田さん達には付け入る隙がない訳だし、だけどそれでこちら側の事を話す訳にはいかない。
「どうしたの?」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと吉井君の方が複雑な事情が出来ちゃってね。」
凜花が心配していたから頭を撫でてやる。すると、気持ち良さそうにしていた。
さて、端末からの位置情報で吉井君の位置は分かるしこちらに問題はない。問題は……木下さんなんだよなぁ。
まだ屋上には俺と凜花しかいない。木下さんはまだAクラスから向かってくる途中かな?こんな事で木下さんが愛想をつくとは思わないけど、残念そうにするだろうなぁ。
「すみません……!遅れちゃいましたか?」
「大丈夫だよ、遅れてないから。」
そう思ってる間に木下さんがやってきた。どう説明しようか?
「あきくんはまだですか?」
「実はその事なんだけど……。」
俺は木下さんに事情を話した。最初は普通に聞いていたけどだんだん不機嫌になっていくのが目に見えて分かった。
「……そう、なんですか。……それが終われば来てくれるんですね。……はぁ。」
「吉井君が帰ってきたら、慰めてあげてね。一番残念がってるのは吉井君だと思うから。」
「分かりました。任せてください♪」
なんとかそれで機嫌を直してくれるかな?ふぅ、これだから不安要素があると困る。まぁ、吉井君は木下さんとしか一緒になれないし、心配はないと思うけど。
「さて、これからどうしようか?」
「え?どうしようかってあきくんを待つんじゃないんですか?」
まぁ、それはそうなんだけどね……。ここでずっと待ってる事も出来ないし、第一怪しまれるだろう。そうだなぁ……、
「それじゃあ、木下さんは一度、家に戻ってもらおうかな。その後、俺の家まで来てもらおう。」
「家に帰るのは良いですけど……何で龍星さんの家に?」
「まぁ、来てみれば分かるよ。それじゃあ、一度帰ろう。」
「はい……。」
木下さんはとぼとぼと歩いて行った。木下さんが家に帰っていないと秀吉君が怪しむだろうし。一応、木下さんには凜花が付いて行ってもらおう。危ない事はないはずだが念のためだ。
「じゃあ、私は優子に付いていくね!私、一応優子の護衛だし。念のため、ね?」
「……うん、頼むよ。俺は少しここに残るから、先に行ってて。」
「うん……それじゃあ、先に行ってるね!」
凜花が木下さんを追うように屋上から出ていく。さてと、
「これで良いかな?なるべくこの事は口外してほしくないんだけど、土屋君?」
「……分かっていたのか。」
何処からともなく土屋君が現れる。
「君が来る事は予想していたけど意外に早かったね。」
「一体お前は何者なんだ……?何故明久と面識がある?」
忍装束の様な服を着た土屋君はとても驚いている様な表情をしていた。
「う~ん……それは君に関係あるのかな?知らない方が良いと思うけどなぁ。」
「……? どういう事だ?」
「逆に聞くけど……君達は吉井君が何者なのか知っているのかい?率直に答えてみてよ?」
土屋君は少し考えて、
「……あいつはバカだか誰よりも純粋で真っ直ぐで、誰よりも他人の為に尽くせる良い奴だ。そして、俺の知る限りあいつは普通の高校生のはず。」
「なるほどね。まぁ、合ってる所は合ってるけど……間違いもあるね。彼はバカじゃないし、普通の高校生でもないよ。」
「……なんだと。だが、何故だ……?……俺が調べてもそんな事実はなかった。」
土屋君はとても驚いている様だ。まぁ、そうだろう。吉井君の情報は国家機密レベルの代物だし。それに並みの情報網じゃ情報の末端も見えない様になっている。多分、土屋君もそんなに詳しくは調べてないだからだろうけど。
「まぁ、それは後々教えるよ。今は教えられないけど。」
「……簡単には教えないか。だが、今はという事はいつか教えるということか?」
やっぱり食いついて来た。
「こちらの条件を飲んでくれるなら、かな。条件を飲んでくれるなら吉井君や俺の事を教えよう。まぁ、条件を飲まなくても俺は全然良いんだけど。」
「……どんな条件だ?その条件の内容が分からないと返答出来ない。」
そう、それで良い。俺は微かに笑みを浮かべた。
「それは……
「……分かった。その条件なら喜んで飲む。」
「理解が速くて助かるよ。なら頼むよ。」
「あぁ。」
龍星 side out
明久side
20分後
僕達は映画館にやって来たんだけど……
「学割とはいえ……チケット一枚千円……!コーラMサイズ三百円……!ポップコーンSサイズ四百円……!これがたったの2時間で消費するのか……!? 映画館……何と恐ろしい場所だ……!」
僕はまた演技をしていた。一応、僕はゲームの買いすぎで今月はやりくりが大変だという事になってるからね。こういう所もしっかり演技しておかないと。
本当は全然そんな事はない。大部分は雄二たちを騙すためにゲームに使ったけどまだ困るぐらいにはなっていない。木下さんとのデートにはどのぐらい使っても大丈夫だし、貯金もあるからね。いざとなれば銀行から引き落とせば問題ない。
「吉井君……。」
おっと、考え事してたら姫路さんに呼ばれてたようだ。
「な、何?姫路さん?」
「こ、これ!見ませんか!?」
「へぇ~!良いんじゃない?これにしようよアキ。」
姫路さんが指差していたのはザ・ラブストーリーみたいな映画だった。あれってもしかして木下さんと一緒に見ようって話してた映画じゃないか!? ダメだ!あれを見たら木下さんと行った時に面白くなくなる、そんな事にはしたくない! ……! そうだ!
「そ、そう。じゃあ、僕は良いから二人で見てきてよ……。」
「「えぇ~!?どうしてですか(よ)!? じゃあ、アニメにする?」」
「いや~、そういうことではなくて……。」
僕だけが見なければ良いと思ったんだけどやっぱりダメか……。そんな簡単にいく訳ないよね……。どうしようか……? アニメを見て満足した雰囲気を醸し出すしかないか。
僕がこの状況の打開策を考えていると……。
「観念するんだな、明久。……男とは……無力だ……。」
そこには手枷をしている雄二とその手枷に繋がっているであろう鎖を持った霧島さんがいた。何故だろう?すごく絵になっている。あぁ、美女と野獣だからか。
「え?雄二?」
「雄二、どれが見たい?「早く自由になりたい。」じゃあ、地獄の黙示録完全版。」
「おい!待て!? それ3時間23分もあるぞ!「2回見る。」一日の授業より長いじゃねぇか!?」
雄二が今まで見たことないぐらいに焦っている。別に良いじゃないか~、大好きな霧島さんと二人きりの映画デートなんだから♪
「授業の間、雄二に会えない分のう・め・あ・わ・せ♪」
「やっぱ、帰る!」
雄二は首に付けられた鎖をジャラジャラと鳴らしながら帰ろうとする。だけど、霧島さんは……
「今日は、帰さない。」
と言いながら何処からともなく見るからに強力なスタンガンを出し、
「な、何だ翔子!? それ!? あべ! ちょ! しょうこ!? ユアファ!?」
雄二にそのスタンガンを刺し、確実に意識を奪った。
「学生2枚、2回分。」
「はい♪ 学生1枚、気を失った学生1枚、無駄に2回分ですね?」
そして、何事もなかったようにチケットを買おうと受付の人に話し、受付の人も普通に受け答えしてさりげなく雄二を罵倒しながら霧島さんの注文を繰り返していた。
えぇ~……普通は驚くのに、あの受付の人どれだけ神経が図太いんだろう……?
僕はちょっと引きながらその光景を見ていた。
「仲の良いカップルですね~」
「憧れるよね~」
姫路さんたちはちょっと違う見方をしていたみたいだ。
さて、僕たちはどうするんだろう?
「私たちはどうしましょうか?やっぱり恋愛系を見ませんか?」
「そうよね~、あんなの見せられたら私たちも!って思っちゃうわよね~。どうするアキ?」
「ぼ、僕的にはこのままお開きの方がありがたいなぁ~、なんて……「「ダメ(です)!」」だよね~……。だったらアニメの方が良いかな。恋愛系を見てもすぐ寝ちゃいそうだし……」
やっぱりあの恋愛映画は木下さんと見たいし、この理由だったら島田さんたちも納得してくれるだろう。
「仕方ないわね~……アキが見ないなら楽しみも半減しちゃうし……姫路さんもそれで良い?」
「はい……私は吉井君と映画を見れればそれで良いですから」
「ごめんね~僕のせいで……」
島田さんたちは渋々、という感じで納得してくれた。
これで見る映画は決まったことだし、映画を楽しもうか。
2時間後
「いやぁ~、面白かったね~!」
「そうね、結構面白かったわ~!それにあのラスボスが派手に吹っ飛ぶシーン!」
「そうですね!あのシーンは気分がスカッとしました♪」
僕たちは映画を見終わり、映画館から出てきていた。
さっきまで見ていた映画、結構な名作と言えるだろう。キャラの心境をしっかりと描きながらアクションやストーリーもちゃんと上手くお客さんの想像の斜め上をいく物で、それでいてちゃんと尺を余す事なく使いきっていた。
子供はともかく大人さえも引き込まれるようなストーリーに姫路さんたちも大満足のようで良かった。
「おっと、それじゃあ僕はここで。」
「また明日ね~、アキ~♪」
「また明日です♪ 吉井君♪」
「うん♪ また明日~」
別れ道になり僕だけ二人とは違う道に向かった。
「さてと……」
しばらく歩いた後、ポケットに入れていた端末で龍星さんに連絡しようとする。
「あれ? おかしいな……留守電になっちゃった。」
数回コール音が鳴った後、留守電になってしまった。何かあった、と考えるのが妥当だろう。
だったら龍星さん以外にも連絡してみよう。まずは……凛花さんに連絡してみるか。
『はい、もしもし? 吉井君ですか?』
「あ、はい。吉井です。あの……そちらで何かあったんですかね? 龍星さんに連絡しようとしても繋がらなくて……」
良かった~凛花さんには繋がった。これであっちの状況が分かるかも。
『あ~……、あった事はあったですけどね~、すぐに龍星様が対処したんです。まぁ、優子は今安全な所にいるのでご心配せずに♪ 後、龍星様は多分まだその対処で忙しいから出れなかったんだと思いますよ。』
「そう、なんですか。じゃあ、僕どうしてればいいですか?」
『あ~、それについては龍星様から指示を貰ってるので大丈夫です♪ 今から吉井君の端末に位置情報が入ったデータを送るのでその情報の通りに向かってください。』
「分かりました。それじゃあ、切りますね?」
『は~い、では♪』
何かはあったらしいけど龍星さんが対処してなんとかはなっているっぽいな。凛花さんの口調からしてそんなに緊迫した状況ではなさそうだし、木下さんも無事みたいだ。
ビービー ビービー
そんな事を考えている内に位置情報が送られてきた。
「う~ん……ここ、行ったことないな~。道に迷わない様に気を付けないと。」
30分後
なんとか示された場所までは来れたみたいだ。ちょっと迷いそうになったりしたけど。
「だけど……なんか此処、貴族の家敷みたいだな~。周りも森ですごく広いし、庭園も広そうだ。」
今、僕が立っているのは大きな門の前だ。門の奥は広い庭園になってるっぽい。だけど……
「どうやって入ろう?」
「吉井 明久様で御座いますか?」
「うわっ!? ビックリした~! は、はい、そうですよ。」
「では、中へどうぞ。」
「お、お邪魔しま~す……。」
門の前で突っ立っていると突然声をかけられた。声をかけてきたのは銀髪の執事服を着た老人だった。
僕の名前を知っているということは龍星さんの知り合いだろう。中に入るように誘導される。
なんか緊張するなぁ。
門をくぐり、庭園を通り過ぎ、見るからに大きな屋敷の中に入る。広い廊下を少し歩いた後、執事さんはある扉の前で止まる。
「此処でお待ちください。ただいま凛花様たちをお呼びいたします。」
「あ、はい。わ、分かりました……。」
凛花さんたち、もうこっちにいるって事なのかな?
部屋に入ると落ち着いた雰囲気の部屋だった。いかにも高そうなソファーに座って待つ事にした。
5分ほど待つと廊下から3人分ほどの足音が聞こえてきた。
そして、扉が開いた。
「待たせてしまってごめんなさいね~。」
「いや、そんなには待ってないですよ。大丈夫です。」
「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。龍星様ももう少しで来ると思いますから、お茶でもどうですか?」
「あ、はい。でも、ちょっと映画館で飲まされ過ぎて……ちょっと遠慮しておきます……。」
最初に入ってきたのは凛花さんだった。凛花さんは僕の真正面のソファーに腰かけた。さっきの執事さんは部屋の前で待っているようだ。もう一人はまだ入って来ない。何かしたのだろうか?
そういえば凛花さんと面と向かって話すのって初めてだなぁ、ちょっと緊張する。
「じー。」
「もう、優子何してるの? 早くこっちに来て?」
「あきくんが凛花と話す時、あたしと違う反応するのがちょっと気に入らないだけだから気にしないで。」
「き、木下さん、今日はごめんね? 僕のせいで……」
誰かに見られていると思ったら、木下さんがこちらをジト目で見ていた。
もう一人は優子さんだったのか。僕の反応がちょっと気に入らなかったらしい。ジト目の木下さんもかわいいなぁ。今日の事はちゃんと謝らないとね。予定がほとんど潰されて待ちぼうけしてたようなものだろうし。
「そんなことは全っ然、気にしてないから。」
「やっぱり気にしてるでしょ、その反応……。木下さん、ちょっとこっちに来て……?」
「何? ふぁ……! あきくん……。どうしたの……急に?」
僕は木下さんをこっちのソファーに座らせて、後ろからそっと抱きしめる。
「ごめんね……? 今日の事は本当に。だけど、僕は木下さんううん、ゆうちゃんしか大好きな人なんていないから。それだけは信じてほしい、お願い……。」
「そんなこと、言われなくても信じるよ……。あたしも、あきくん以外を大好きになんてならないもん。」
「ゆうちゃん……。」
「あきくん……。」
僕とゆうちゃんの距離がだんだんと狭まっていく。そして、もう少しでゆうちゃんの唇を奪えるというところで、
「う、うんっ! ちょっとお二人さん? ここに来た理由、覚えてますか~!」
「「はっ! ご、ごめんなさい!」」
「息ぴったり……。それはともかく吉井君、何か質問はありませんか?」
「あ、そうでした。ここは一体……?」
凛花さんに止められなかったらあのまま……。僕もゆうちゃんも顔を真っ赤にしながらソファーに座った。
僕はは最初に一番気になっていた事を聞く。凛花さんはその質問がくることを楽しみにしていたようで、ニコっと微笑みながら答えてくれた。
「ここはですね……龍星様のお屋敷です♪ といってもお屋敷は世界中、日本各地にあるのでこの地域の、といった方が良いでしょうが。」
「そうなんですね~……って世界中にあるんですか!?」
「あ、でもここはお屋敷の中でも小さい方ですよ~。LGNI本社の近くのお屋敷はこの3倍ぐらいは軽く越えますし。」
「え~……。」
ここはやはり龍星さんの屋敷なのか。それにしてもここでも十分大きいのに3倍ってどんだけ広いんだろう……。改めて龍星さんの凄さに驚いた。それじゃあ、本題を聞いてみよう。
「さっき電話で言っていたあった事ってなんですか?」
「あ~、それはですね……「それについては俺から教えよう。」あ! お帰りなさい、龍星様♪」
凛花さんがお帰りと言ったのはいつもの制服姿ではなく黒いロングコートを羽織った龍星さんだった。
龍星さんは凛花さんの隣にスッと座った。
「いやぁ~、吉井君がいない間にちょっと襲撃されてね。」
「え!? 大丈夫だったんですか!?」
「大丈夫大丈夫♪ ロシアの特殊工作員30人が一気に突入してきただけだから♪」
「どこに安心する要素が!?」
「いやぁ、30人ぐらいだったら5分あれば余裕で倒せるでしょ♪ まぁ、木下さんや凛花がいたから守りながら倒してたから30分くらいかかっちゃったけどね~」
何て事だ……、知らない内に龍星さんたちが襲撃されてるとは……それでも5分でロシアの特殊工作員を倒せる龍星さんって……。龍星さんの凄さをまたひとつ知った気がする。
「まぁ、前からロシアは不審な動きをしてたから警戒はしていたんだけどね~。屋上での話を軍事衛星で盗聴していたようで木下さんの方を狙ったんだろう……。ただ、これでロシアは沈静化するだろうね~」
「木下さんを狙って襲撃した、という事実をLGNIに握られたからですか?」
「そう、こちら側としては荒っぽい事はしたくないんだけど。これでロシアは粛清対象としていつでも壊滅させることができるからね。今頃首脳たちはいつ粛清されるかと怯えているだろうね。」
まぁ、そうなるだろう。まだ木下さんは僕とは何の関係もない一般市民ということになってるし、ロシアはただの一般市民を狙った襲撃をしたという規定違反を犯したことで十分LGNIの粛清対象に入るのだから。
「まぁ、倒した特殊工作員たちの身柄はLGNIに引き渡したから動かぬ証拠になっていくだろうね。その手続きのせいで遅れちゃったんだけど。」
「そうだったんですね。それで、今日は後どうするんですか?」
龍星さんが来てもそれが聞けないと此処に来た意味がない。もしかしたら……このまま解散なのかな?
「そうだね~……少し予定は狂ったけど吉井君たちがこれから住む事になる所に行こうか。荷物とかは全部あっちに置いてあると思うからそのまま今日から住んでいいよ。」
「結構遅いですけど大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫大丈夫♪ 一軒家だし、周りは俺の信頼出来る友人とかしかいないから♪」
龍星さんに信頼されてる人たちってどれぐらい凄い人たちなんだろうか?
「さてと、それじゃあ早速行きますか♪ ディル~、車まわしてきてくれ。」
「かしこまりました。」
「え? もう行くんですか?」
「もちろん、早い方が良いでしょ? 何事も。」
まぁ、それはそうだけども……少し緊張しながら僕たちはあの執事さん、ディルさんが車を屋敷の前につけるのを少し待ちながら今後の事について話す事にした。
「そう言えば……吉井君って週末、どうなってるの?」
「え? あぁ~、そうですね……土曜に姫路さん達と約束していたクレープを食べに行って、日曜に木下さんとデートしに行こうかと。」
そうだ! 僕、週末って結構忙しいじゃないか! 木下さんとデートに行けるのは良いけど……次の日って補習だよなぁ~……
「そっかそっか。吉井君も隅に置けないなぁ~♪」
「そんなことないですよ……僕は木下さんしか好きになんてなりませんし。」
「まぁ、頑張りなよ? あぁ、そう言えば言う機会逃してたんだけど俺、週末は用事があるから吉井君たちの護衛出来ないんだ。代わりの人は手配しておいたから、気にしないでね?」
「え? そうなんですか……まぁ、頑張ってください……。」
「うん、ありがとう。」
そうなのか、週末は龍星さん居ないんだ……多分護衛よりも大事な用事なんだろうなぁ~。姫路さん達と出かける時にアドバイスもらえたら良いなって思ってたんだけど居ないならしょうがない。
「龍星様、お車の準備が出来ました。」
「あぁ、ディルご苦労様。さてと行こうか。」
「は、はい。」
一体どんな家なんだろうか? 僕は木下さんと手を繋ぎながら車に乗って同棲する家に向かった。
30分後
「さぁ、着いたよ。」
「うわぁ~、凄い……。」
「ここがあきくんと同棲する家……。」
龍星さんの屋敷から約30分、車に乗ってやって来た住宅街には他の一般の一軒家より小柄な二階建ての家があった。
家の色とかは辺りが暗いためよく分からないが結構落ち着いた様な色だと思う。
「吉井君たちしか住まないし、あんまり大きくても手入れとか大変だと思って小さめの家にさせてもらったよ。どうかな?」
「すごく良いです!」
「じゃあ、中も見ていこうか。」
「「はいっ!」」
木下さんもすごく気に入ってるみたいだ。それにしても、こんなに良い家作ってるのに母さん達何も言ってくれないとは……ひどいなぁ~。
家の中に入ってみるとやはり少し小さめな玄関、次に大人数が来ても大丈夫なぐらいの広さのリビングダイニング、二人並んで料理出来そうなオープンキッチン。
その他諸々……僕らが住んでも本当に良いのかってぐらいの立派な家だった。
「龍星さん、ホ、ホントにここに住んで良いんですか? 僕達にはまだ早いと思うんですが……。」
「あきくんの言うとおりですよ。ま、まるで……」
「まるで新婚さんの家みたいだって?」
「「恥ずかしいから言おうとしてなかったのに!?」」
ホントそうだ。さっきは遠回りに言ったが新婚さんの家みたいで僕達にはまだ早いような気がしてならない。
そう指摘を受け、龍星さんは……
「アハハ、何いってるの? 後一年もしたらもう新婚さんでしょ? それが一年早くなっただけだって♪」
「「っ!」」
笑いながら返された。
そうだ……僕達ってもう新婚さんも同然なんだなぁ~。まぁ、木下さんが相手だから全然良いんだけど。木下さんが一年後には僕のお嫁さんかぁ~僕と木下さんってまだ再会して数日しか経ってないんだよな、でも自然に受け入れてる自分がいる。
やっぱり、昔の僕はそれぐらい木下さんが大好きだったんだろうなぁ。
そんなことを考えていると、
「それじゃあ、俺達はお邪魔になるとアレだから帰るね♪ あ、今日は二人で料理でもしてみたら? 食材は冷蔵庫にあるから勝手に使ってね~それじゃ♪」
「優子、頑張って♪」
「え? ちょっと!? 僕達まだ了承とかしてないんですけど!?」
「り、凛花! ちょっと待ってよ!」
おもむろに龍星さん達が帰る準備をして、さっさと帰ってしまった。え? 本当に帰っちゃったよ……。
「こ、これからどうしようか?」
「そ、そうだねぇ……あ、あたし、あきくんと一緒に料理、したいな?」
突然二人きりになると緊張してしまう……、しょうがないじゃないか! こんな可愛い娘と居たら緊張するに決まってる。これで緊張しないのは男じゃないか龍星さんぐらいだと僕は思う。
何とか話を始めて帰ってきた答えに驚きながら考える。木下さんと料理を始めたとしよう。まず始めにエプロンを着るよね、服を汚さないように。うん!ここで死ぬかも、木下さんが可愛いすぎて。そして……
なんてこと考えていると僕が答えに詰まっていると感じたのか、
「あ、あきくんはあたしと料理、したくないの……?」
「っ! そ、そんなことないよ? 何作ろうかって考えてただけだよ。全っ然大丈夫!」
「そうなんだ~良かった♪ もしかしたらあたしと料理したくないのかと……」
「そんなのあり得ないよ!「そ、そう?」うん!」
木下さんが目を潤ませながら上目遣いで聞いてきた。それは反則だよ……可愛いすぎて倒れそうになってしまった。
さてと、ホントに何作ろうかな?
「ゆうちゃんは何か作りたいものとかある? あればそれ作るけど……?」
「あきくんと一緒に作れるなら何でも良いよっ。強いて言うならあきくんの得意料理とか一緒に作りたいなぁ~。」
得意料理かぁ。やっぱりパエリアかな? 一番作りやすいのは。
「じゃあ、パエリアだね。」
「パエリアかぁ~作れるかな?」
「大丈夫、僕が手取り足取り教えながら作っていこうと思ってるから。」
「それだったら安心だねっ♪」
天使? ここに天使がいる。天使が僕に満天の笑みを浮かべている。ヤバイ、僕はここで昇天してしまうんじゃないだろうか? そう思えるぐらいに木下さんの笑顔は破壊力抜群だった。僕は明日まで生きているのだろうか?
ちなみに二人きりになってから僕達はこれでもかってくらい顔が真っ赤になっていた。
明久side out
龍星side
俺と凛花は既に屋敷に戻り食事など諸々の事を済ませて、後は寝るだけとなっていた。
俺は眠気が来るまでウィスキーを飲みながら屋敷のバルコニーから夜空を見上げる事にした。屋敷から見る夜空には星達が点々と並び煌めいていた。屋敷は住宅街やマンションなどが近くに無いため星が綺麗に見える。
俺はロックのウィスキーが入ったグラスを傾ける。今日のある出来事について考える。それは吉井君の異変とロシアの工作員襲撃の事だ。
後者は吉井君にも言った通り軍事衛星で屋上の会話を盗聴されたため起きたことだ。まぁ、ロシアは前々から粛清しなければならないと思ってたから正当な理由が出来てくれて良かったというのが俺の感想だ。
だが、前者の吉井君の異変については早急に対処しなければならない。やはり、「暴走した力」が近くまで迫っているからと考えるのが妥当だろう。自己防衛のために無意識下で力が発動してしまったか。
……まだ、吉井君には力の事を言うつもりはない。まだ彼にはやらなければならない事があるだろうし、ホント出来ればこちら側には来させないことが一番良いことなんだろうがそれは絶対に出来ない。
この世界線での運命では逃れらない。運命が収束してしまうから。世界線が変わるくらいの事をこの世界でやると俺の目的にも支障がでてしまう。それは避けたい。
やはり、俺が相手を倒し力を落ち着かせる。それが今の状況下での最善策だ。そのための準備は余念なくしておかなければ。
「何だ、まだ起きてたのか。」
「まぁね、つるぎは寝てたんじゃないの?」
「ちょっと目が覚めたら隣にお前がいなかったからな、ここじゃないかと思って来てみた。それで? どういうことなんだ、あれは?」
後ろを見るとつるぎが可愛いハート柄のパジャマを着て立っていた。つるぎも察知していたんだろう、吉井君の異変を。
「何で吉井の存在が1時間以上この世界から消えたんだ? やっぱり暴走した力のせいなのか?」
「そうだよ、大きな力が近くにあったから自己防衛のために無意識に力を発動させたんだと思う。これ以上近づけるのは不味いと思ってくれて良い。」
つるぎが俺の隣でバルコニーの柵に寄りかかった。つるぎが欲しそうにしてたからグラスをつるぎに渡すと少し飲んで返してきた。
暴走した力がこれ以上近づいたら多分、力が暴走を始める。そんなことは絶対にさせない。今はまだその時じゃないんだ、用意も出来ていない。
「だから、暴走した力を止める、か。用意は出来てるのか?」
「ギリギリ、かな。後、一つだけあってくれると助かるモノがある。」
「それは?」
「それは……」
それを言おうとした時、俺の端末にメールが届いた。
俺はそのメールの送り主の名前を見て、
「今、ちょうど調整が終わったみたいだ。ごめんつるぎ、ちょっと部屋に戻ってて。今から大事な電話するから。」
「おう、分かった。じゃあ、部屋で、な?」
「うん、分かってるよ。それじゃ。」
つるぎは少し顔を赤らめながら部屋に戻っていった。さてと、
『もしもし? どちら様ですか?』
「俺だよ。例のモノの調整が終わったんだって?」
『レビウス様! はい、ようやく終わりました。大変でしたがレビウス様の為とあれぱ私達は喜んで協力致します!」
「そうか、ありがとう。それでいつこちらに届く?」
俺が連絡したのはLGNIのある部署。そこに俺に協力してくれてるCEO時代の部下達が居る。CEOを辞めた今でも俺に協力してくれている。こちらとしては嬉しい限りだ。
「恐縮です! クルーザーからLG-01で直接送りますので1日は掛からないかと。アレの他には何もいらないんでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。今回は必要ないよ。」
「かしこまりました。」
「それじゃあ、また協力を頼むと思うがよろしくね。」
「はい! いつでもご自由にご指示を! それでは失礼します。」
「うん、頑張ってね。」
よし、これで準備は出来た。簡単に勝てるとは思わないが頑張って五分五分まで持っていけるだろう。
さてと、部屋に戻ってつるぎを可愛がらなきゃ。
少し夜空の星を見て俺は部屋に戻った。
はい、お疲れ様でした! 今回結構削ったんですがこのぐらいの量になっちゃいました。
結構龍星の話の中で気になる言葉があったと思いますが今後その理由を明かしていくのでお楽しみにしていてください!
もし良かったら感想な評価をください!
感想や評価をもらうと作者は書くスピードが上がります。
明久たちの夜はまだ始まったばかり、一体どのぐらいイチャイチャするのか?
そして、龍星の戦いもようやく始まろうとしている。
次回 第6話 同居初夜 そして、休日デート
次回もお楽しみに!