せっしょういんらじお!   作:ルシエド

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 2017年8月2日~
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 2017年8月9日(水)~


7/4~7/6 ラジオバックナンバー+α

 足掻きに足掻くマスターとその手足様方(サーヴァント)

 もはや多くもないリスナーの皆様、殺生院キアラでございます。

 では、7月4日の館内放送ラジオを始めたいと思います。

 

 全て、全て。

 わたくしの欲はこのカルデアスを飲み込み、過去も未来も、編纂事象も選定事象も、全てを飲み込み快楽の巨大な渦を作る……

 そう、未来も。

 これは取り戻された未来を、わたくしのものとする物語でございます。

 

 今、わたくしがこうしてカルデアに触れているという事実が、過去に遡及し、過去のわたくしにカルデアスを通して未来を覗かせている。

 過去にわたくしがしてきた放送が、声が、カルデアにわたくしを染み込ませている。

 声は静かに……わたくしの欲が、世界を覆う。

 過去と未来を超越するこのカルデアスは、まるでムーンセルのようですわね。

 わたくしは心無い者にクトゥルフを例に挙げて語られたことがございますが、それならば、過去であろうと未来であろうとわたくしを観測するのはよろしくないでしょうに。

 

 さて。

 『電動に殿堂なし』。

 電動オナホールの黎明期に作られたこの伝説の言葉を覆し、爆発的に売れた電動にして殿堂のオナホールが『A10サイクロン』でございます。

 人はこのオナホに、未来を感じたのだとか。

 

 また、2017年の10月26日、すなわち今のわたくしから見ての未来、

 サウジアラビアで世界で初めて、ロボットが市民権を取得したと発表されました。

 人類史において、ロボットであった者が人間扱いされ、伝承にも人間として記されたことは数あれど、最初からロボットとして造られそう認められたのは初めてでありましょう。

 

 いずれ女性ロボットの恋人や妻が購入可能になる、と一部の新聞は報道しました。

 ですがそれに先んじて、イギリスのシェフィールド大学ノエル・シャーキー教授は、「そうプログラムされ人間の性のはけ口にされるロボットは、強姦の犠牲者だ」という見解を示しておりました。

 未来は性に夢があるように見えて、あらたなる性の悲劇が生まれる世界なのかもしれません。

 性をどこに求めるのか。

 理想は人とのセックスにあるのか、機械とのセックスにあるのか。

 結局、どちらが気持ちが良いのか……

 2050年には人間とロボットが結婚する時代も来るだろう、という予測もされている今、わたくしは未来というものにとても興味があります。

 

 未来を見てきた記憶を持ち、過去へと至ったことのある男。

 未来でもあり過去でもあり、複数の世界線の上で、複数の存在としてわたくしの前に立ったことのある貴方。

 エミヤであり、時に無銘でもある貴方。

 

 貴方であれば、その答えも知っているのでしょうか?

 

 

 

 

 

 藻掻きに藻掻くマスターとその配下の方々(サーヴァント)

 もはや多くもないリスナーの皆様、殺生院キアラでございます。

 では、7月5日の館内放送ラジオを始めたいと思います。

 

 一夫多妻去勢拳を操る玉藻の前様。

 浮気する者をEDにする恐怖の拳、ということでかつてはカルデアでも時たま話題になっておりましたね。

 このED、かつては妻から夫の顔面に三行半を突きつけるために、唯一絶対に必要とされたものでございました。

 昔ヨーロッパにおいて、女性には離婚する権利が無かったのでございます。

 

 昔々、時は17世紀。場所はフランス。

 ランジェ侯爵夫妻という、上手く行かない夫婦がおりました。

 妻が夫にまだ抱かれてすらいない、と話を盛って実家の家族に愚痴ったものだからさあ大変。

 妻の予想を少し外れ、かつ妻の望み通りに、離婚裁判が開始されました。

 夫がEDである、EDであるため離婚を執り行う、というED裁判の開始です。

 

 まず妻のおまんこ検査が始まりました。

 結果は、「処女ではない」とのこと。

 当時の流行歌では「やっぱセックスしてたんじゃねーかおめー」と語られていたそうです。

 性交実証(コングレ)と呼ばれる公開裁判での恥晒しは続きます。

 

 そしてとうとう、クライマックス。

 十五人のセックス鑑定人が見る中、裁判中に夫と妻がセックスし、中出しできれば夫無罪、できなければ離婚成立という裁判が実行に移されました。

 夫は「入浴して濡れた髪をほどいて垂らして来てくれ」と妙にフェチぃことを妻に要求。

 「一発で孕ませてやる!」と堂々と宣言。

 そして四時間後「駄目でした……」とタイムアップで心折れてしまったそうです。

 情けない。

 夫は去勢の呪いをかけられていたんだと騒ぎましたが、異議申し立ては受理されず、夫はEDだと公開裁判で周知された上、離婚を成立させられてしまいました。

 

 こうなるともう大変です。

 一般市民は皆『ランジェ侯爵』という単語をEDの代名詞に使う始末。

 EDだと周知されたランジェ侯爵は次の婚姻にも困る有様です。

 が。

 ランジェ侯爵、さっさと再婚して、次の妻との間に6~7人の子供を作ったそうです。

 はい、もうおわかりですね。

 夫がEDだったのではなく、妻が勃起できないようなアレだったというオチでした。

 

 EDは罪、EDは十字架。

 はてさて、玉藻の前様の旦那選びはどうなるものか。

 夫の罪をそこに問う在り方はどう転ぶのか。

 ゆめゆめ忘れませぬよう、お願いします。

 悪霊に堕ちた貴女に、女神に堕ちたわたくしが、嘲笑うようにそう言っていたことを……

 

 

 

 

 

 ふふふ……逢瀬の待ち合わせで恋人を待つ乙女とは、こんな気持ちなのでしょうか。

 もはや多くもないリスナーの皆様、殺生院キアラでございます。

 では、7月6日の館内放送ラジオを始めたいと思います。

 

 わたくしもまた、非処女を取り戻しました。

 ですが非処女より、処女に価値を見る者は多いでしょう。

 そんな処女を取り戻すもの……『人工処女膜キット』というものが、発売されたことがございます。

 これは中国で生産され、各国の店舗に並び、そして裏で激しい反応を引き起こしました。

 

 水溶性の膜を膣内に挿入し、膜が形成され、この膜が破られると人工の血液が流れ出す……この程度のものが、何故そんな反応を引き起こしたのか?

 ネロ様ならば察しているかと。

 そう、宗教でございます。

 

 イスラム教圏にとって、このキットは衝撃でございました。

 何せ婚前交渉による非処女化は、当時社会的な立場の喪失、婚姻の解消、同僚からの暴行、家の評価を守るための家族による抹殺、それらが起きてもおかしくはないものでもあったからです。

 エジプトではこのキット一つを名指しで罵倒し、これの輸入禁止を掲げ目標とすることで、支持層の厚みを増した国会議員が居たとされています。

 

 学者が「社会に罪悪をまき散らすもの。イスラム法に基づけば販売業者を死刑に処すべき」とコメントしたと言えば、海の向こうでどれだけ憎悪されていたか分かるというものでしょう。

 手術も無しに、お菓子感覚で買える処女。

 彼らはそれを堕落のきっかけと語ります。

 彼らには何故購入者が処女になろうとしているか、それが分からないのです。

 わたくしに対しては殺意を通り越した憎悪を抱きそうな人達ですこと。

 

 ネロ様はよくお分かりでしょう。

 宗教は国によって圧されることもあるのと同時に、宗教が何かを圧することもまた多いのです。

 そして何かを律すると同時に、その戒律ゆえに手に負えない獣を生み出すのです。

 

 わたくしは仏教の裔として生まれました。

 ネロ様の『暴君』はキリスト教の反応から生まれました。

 自慰という言葉を作り、自慰が体に有害でないと通説を否定した小倉清三郎もまた、生まれつき強い性欲と宗教による戒律の狭間で苦しみ、性の地平線の向こうへと至った者です。

 

 貴女には分かるはずです。

 獣の(サガ)が。

 それでもなお、マスターの側に付き、貴女が『獣』ではなく『ネロ』であろうとするならば……ふふふ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの、性格破綻者が。

 聞いているのはマスターとその数少ない味方だけだろうが、聞け。アンデルセンだ。

 最低最悪の女に残され、今縛り上げられてここに座らされている。

 もう間近にまで来ているな?

 よし、そのまま攻め込め。

 そのまま倒せ。

 この品性下劣な外道に情けなどかける必要はない!

 

 勝つがいい、マスター。

 俺はあってもなくても変わらん程度の助力をこいつにしてやるが、どうせお前は勝つだろう。

 俺のことは気にせず倒せ。

 ……何、この助力も俺の本意というわけではない。浮世の義理というやつだ。

 マスターとして躊躇うことなく、この女を切り捨てろ。

 お前のサーヴァントである以上、お前の味方をしてやりたいが、お前の味方をすれば速攻で食われてしまいそうだ。笑えてくるな!

 

 さあ、最後だ。

 

 今日の日付は7/7。七夕という恋物語に、つまらん物語を添えるとするか。

 

 では、そうだな。英雄の話をしよう。

 

 英雄とは肩書きか?

 英雄とは称号か?

 英雄とは規格(スペック)か?

 いや、違う。

 英雄として造られ、悪の怪物となった者は山の数ほど居るだろう。

 正義の柱として造られ、悪逆の徒となった者は海の水ほど居るだろう。

 ヒーローに成りたがり、承認欲求から堕ちた者は砂粒ほど在るだろう。

 

 英雄に憧れ、『英雄という肩書き』を作った者が居た。

 しかれどそれは英雄ではない。

 肩書きは人を英雄にしない。

 英雄となる資質は生まれつきその身に備わっているが、その者が真に英雄となるのは、その者が正しく行いを積み上げた時。

 誰かを助け、助けた誰かに認められた時。

 この世界に、人類史に、その者が名を刻んだ時だ。

 

 アーサー王はブリテンのために立ち、戦い、ブリテンの伝説となった。

 ロビンフッドは名も無き民衆のために戦い、死した後も語り継がれた。

 カルナは不遇と不幸の中で生き様を示し、希望となった。

 イスカンダルは守るのではなく夢を見せ、征服王の覇を打ち立てた。

 シェイクスピアは退屈という敵を打ち倒し、人々の敬意を集めた。

 ジャック・ザ・リッパーは恐怖を集め、畏敬に変え、死の恐怖を体現した。

 ヘラクレスは、今も世界の各地で"最も強き者"として愛されている。

 

 生まれつき英雄になることが確定していたのではない。

 そんな者などどこにもいない。

 英雄は『英雄に成った』のだ。

 その行動をもって。

 生前の行いをもって。

 誰かの想いを受け、英雄に成ったのだ。

 英雄を作る花の魔術師の予想さえ超え、偉業を成し、英雄は人類史へと刻まれる。

 

 サーヴァントというものは実に面白い。

 

 カルデアには例外もあるが、信仰があれば何でも英霊として座に認定されるだろう?

 架空の英霊だろうと、な。

 罵倒したい部分もあるが、このシステムはよく出来ている。

 そう、英雄とは、自分で名乗るものではない。

 他人が選んだ者が、多くの者が認めた善悪両方の者が、英雄となるのだ。

 多くの者が一人の者に向ける想いが、人を英雄にする。

 

 だからこそ英雄は、神の子だとかいうふざけたものから生まれることもあるが、ただの人間からも生まれることがある。

 

 ジャンヌ・ダルクはただの農家の娘だった。

 聖人マルタは平凡な町娘だった。

 李書文は食にも困るありきたりな農家の子供だった。

 エミヤは火災の前までただの少年だった。

 藤丸立香は一般人だった。

 だが人類(ひとびと)は彼らを時に特別視し、時に信じ、時に託したのだ。

 

 生まれで英雄は決まらない。

 特別な者が英雄になると決められているわけでもない。

 成した事柄と想いのみが、英雄を英雄たらしめる。

 だからこそ、愛に溺れた魔性菩薩を討つ者は、ただの人の中からでも現れるのだ。

 

 さあ、やるがいいマスター。

 やっと来たか、待ちくたびれたぞ?

 その六騎で抗い、陳腐でつまらん奇跡でも起こし、この魔性菩薩を倒すがいい。

 ネロ、エミヤ、玉藻の前。

 BB、パッションリップ、メルトリリス。

 ふん……ここまで因縁を集めて来れば、情けない六騎でも面白くはなりそうだ。

 

「サーヴァントは、六騎じゃない」

 

 うん?

 

「聖杯戦争は、『七騎』で戦うものだから」

 

 ……成程。これが小説なら60点はくれてやろう、マスター。

 

「ここにマスターの剣がある」

 

 ネロが先頭に立ち。

 

「ええ、あの淫乱に仕返しする楽しい楽しいお時間です!」

 

 BBはいい笑顔でその横に立ち。

 

「マスターの命令だ。仕事に移るとしよう」

 

 エミヤは後方でニヒルに笑い。

 

「二度と蘇らない墓場の下に埋めてあげるわ、殺生院」

 

 メルトリリスは肩と肩が触れそうな距離感で、守るようにマスターの横に立ち。

 

「去勢拳で乳もいでやります!」

 

 玉藻の前はエミヤと息を合わせ。

 

「こ、こちらに、どうぞ」

 

 パッションリップが、『七騎目』を招く。

 

「よかろう、マスター。

 我を()()()()すぐに慢心を捨てよと言うその厚顔。

 今この時、この敵を見据えたものであるならば、その不敬を許す」

 

 ……戦力が足りないと見て、寄り道をして、カルデアの召喚システムで一発引きか。

 ああ、確かに、"そちらの"ギルガメッシュはこのカルデアにはいなかったか。

 これが小説なら、前提となるルールの引っくり返しで駄作確定だな。

 

「貴様の角は目障りだ。死に物狂いで謳え売女───!」

 

 見えているか、愛に狂った殺生院。

 女神のビーストとつくづく因縁のある男が、神を殺して縁を切る王が、そこに居るぞ?

 

「ええ、見えていますとも。わたくしにはちゃんと見えています」

 

「令呪をもって命ずる! 『全体強化』! 皆、頼んだ!」

 

「BB! キアラパニッシャーの残り全部ぶち込みなさい!」

 

「ああ……これは、きっと、とても、気持ちいい……!」

 

 七月七日七騎の結集。

 ……ああ、そうか。

 フン、今回のマスターは殊勝なことだ。

 ロンドンで俺が語ったことを一字一句覚えていたのか。

 

 英霊召喚とは抑止力の召喚であり、抑止力とは人類存続を守るもの。

 彼等は七つの器を以て現界し、ただひとつの敵を討つ。

 人類悪を討つ決戦術式・英霊召喚の真似事―――だが、悪くない。

 

 その伏線の回収もどきに、80点をくれてやろう。

 

 

 




 七月七日七騎の結集、投下期間もきっちり一週間で終わらせる投下FateEXTRA。次で完結です

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