花を咲かせましょう   作:輝く羊モドキ

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執筆途中でお気に入りの作品の影響を受けまくるタイプ

めっちゃ春異変はまだ続くようです。


昔話は好きじゃないんだけど、まあ酒の席ってことでby妹紅

 冥界の花見大会より十数日経った。

未だに幻想郷中は春真っ盛りで(季節的に正しくはあるのだが)そろそろ春の陽気に当てられた妖怪が一暴れしそうになっている。

 既に人里ではあちこちで花見の宴会が開催され、連日連夜飲み騒いでは全員倒れるまで続いている。暖かくなったとはいえ、倒れるように外で寝たせいで里の大人たちは風邪をひいた。バカは風邪をひかないというが、風邪をひいたのは揃ってバカばかりだった。

 そんな中、至って健康体であるのに死にそうな顔をしている二人がいた。一人は練り歩く薬売りこと鈴仙・優曇華院・因幡、また、人見知り妖怪ともいう。そしてもう一人は妖怪歩くもんぺこと藤原妹紅、通称モコモコ。

 何故二人がそんな死にそうな顔をしているかというと、原因はやはり花の王だった。

 妹紅は、かぐや姫こと蓬莱山輝夜と競うように異変解決に赴き、何度も死にながらも王国を突破するも玉座の間への門で詰み、すごすごと帰る羽目になったからだ。更にはお土産の様に揃って頭に花を刺され、気力という気力を根こそぎ持ってかれ、回復したのがつい先ほど。輝夜に至ってはまだ寝込んでいる。

 鈴仙は、そんな輝夜の看病に付きっきりの永琳に代わって薬剤の調合をしているが、そこで里の宴会続き。連日の様に風邪薬と二日酔い治しの薬を大量に調合、人里まで運び、大勢の人間に囲まれ薬を売り捌く。更には薬の原料を採集する為にあちこち飛び回る必要もあり、ここ数日は寝る時間が無く完徹続きだった。てゐにも手伝わせればと考えたが、肝心のてゐはこの春の陽気に当てられたウサギたちの面倒に掛かりきりで、ウサギの異常繁殖を防ぐために同じように完徹続きらしい。

 お互い、おのれ花の王とは思うが天に向かって唾を吐くような真似はしない程度にはまだ理性は残っている。妹紅はストレス解消の為、鈴仙は眠らなくても疲れない薬の効果が抜けるまでの時間潰しの為、夜雀の屋台に向かい、そこでばったりと出会った。

「あ」

「お」

「「……」」

「よう、元気……じゃなさそうだな」

「そういう貴方もね」

「あー……これからミスティアん所に行くけど、お前は?」

「奇遇ね、私も夜雀の屋台に行くつもりよ」

「そうか……そうか。お前もあれか、この春に苦労してるクチか」

「ええ……。とりあえず今は一段落したところて、漸く休みらしい休みが取れるところよ」

「お前も大変だな」

「姫様から聞いているわ。貴方も結構大変だったらしいわね」

「大変なんてもんじゃねえよ……あれほど理不尽な目に遭ったのは久々だよ……」

「溜め込んでるわね……」

「思い出したら腹立ってきた。よし鈴仙、一緒に呑もう」

「いいけど……今日はあの半獣は居ないの?いつも一緒なのに珍しいわね」

「別にいつも慧音と居るわけじゃないんだが……慧音はあれだ、昨日の花見で風邪をひいてね」

「アレもバカの一人だったか……まあいいわ。そういえば貴方と二人で呑むなんて初めてね」

「あー、いつも他に何か居るからな」

二人はえっちらおっちらと歩き出した。暖かな夜にふはふはと風が吹いた。

 

 

 ◇

 

 

「春の~ままよ~桜咲き~誇るの~♪春は~歌うの~終わらない~う~たを~♪

あら、何か珍しい組み合わせね。いらっしゃい」

「よう、とりあえず一杯。それとウナギくれ」

「はいはい~」

 夜雀の屋台。いつも通り誰も座ってない席に腰を落ち着ける。

「喜べ~今日は~花酒あるわよ~」

「本当!?今日はついてるわね!」

「は~い、花酒二人前~」

 おのれ花の王とは思うが、酒に罪はない。花酒は貴重だが、たまに花の王が大量に市場に流す時があり、比較的簡単に手に入れられる。まあ、すぐに幻想郷の呑兵衛の腹に収まることになるが。そして、花の王が博打でスッた時に良く市場に流れる気もするが、多分関係ないだろう。

 花酒はとても素晴らしい。香りは芳醇だというのに飲みやすく、水の様に飲める。それでいて誰でも気持ち良く酔えるとあっては、酒好きの誰もが求める納得のシロモノであると言える。

「そう言う訳で今日のお代は全部花の王にツケといて」

「えぇ……そんな財布代わりみたいな扱い恐れ多「いいわよ~」軽いわね!」

「いいのいいの。どうせアイツ自分がツケにした分なんて細かく覚えちゃいねえって」

「多少ならボッてもばれないわ~♪」

「ええ……それ……えぇぇ……?」

 普段から花の王に対しどういう扱いなのかが見て取れる。

「それに私らがこうしてストレス抱えてる原因はアレだからな。多少仕返してもバチ当たんねえだろ」

「……そ、そうね」

 哀れ花の王。幻想郷において比較的まともな方の兎からもそんな感じで扱われるなんて……まさに自業自得。

「例の~花酒よ~」

「お、来た来た」

「ん……盃に注いだ瞬間のこの香り……やっぱ良いわね」

「んじゃ、花酒を飲める幸運に」

 

「「乾杯」」

 

 

 

 

 

「わらしもえぇ、ふきえこんあことやってあいおよ。さとおおおこあいにあへんあめえみあええうひ……えいえんへいあえのいひあえひもあくあないのお!!」

(私もねぇ、好きでこんな事やってないのよ。里の男達に変な目でみられてるし……永遠亭の行き帰りも楽じゃないのよ!!)

「何言ってるか全然分からん」

「えもわあひはがんあんあいとえいえんへいのひょーあんがさあっりゃうやああの!おひひょーさあがさとおおえらいはんにあえあえるなんへゆうへないわ!」

(でも私が頑張んないと永遠亭の評判が下がっちゃうじゃないの!お師匠様が里のお偉いさんに舐められるなんて許せないわ!)

「そんな日もあるわよ~」

「らいはいあんなのおはなのおーあ!おひひょーさあおこおろーへふきあんへひょ!さっあおふっふへばああろー!!」

(大体何なの花の王は!お師匠様の事どうせ好きなんでしょ!さっさとくっつけ馬鹿ヤロー!!)

「まるで意味が解らんけど花の王を罵倒してるのは伝わった」

「花の王ね~。思えば~私が~生まれた頃からの付き合い~よ~」

「へぇ」

「あの時からまるで変っちゃな~い~わ~~」

「だろうねぇ……私でもそう思うもん」

「あーおーおひひょーさあおおひひょーさあお!あおアホあふいはあはっはほおひたおへあいいほい!ふふひへほほっひゃえはいっはつよいっはつ!」

(あーもうお師匠様もお師匠様よ!あのアホが■■■■(ピーーーーーーー)さっさと■■■■■(ガガガガガガガガ)ばいいのに!クスリで襲っちゃえば一発よイッパツ!)

「コイツかなり下品な事言ってね?解らないけど」

「そうね~確かに~あのヒト結構魅力的だもんね~」

「え”、今の解かったの女将?」

「花の王も男なんだから一発ヤッちまえばコッチのモノよって言ってたのよ」

「絶対言ってねえだろ」

「ふふっ、でもそうね~。あのヒト天然のタラシな所あるでしょ~?だから意外とコロッと落ちちゃう娘は結構いるのよ~」

「はぁ?無い無い。あんな種無しやる気無しがモテる訳無いでしょ」

「あら?その台詞……もしかしてもう花の王に挑戦済み?」

「焼き鳥にしちまうぞ……!」

「うふふ~勘弁~♪」

「あんあほお~……はっはほふっふいひゃえほ~……そいはらあきあめらえうのに~……」

「!?」

「あらぁ~この娘は少なくともご執心みたいね~♪」

「……い、いやぁ無い無い……だって……花の王だぞ?アレだぞ……?」

「ふふふ~。誰かに傍にいて欲しい時、気が付けばそっと寄り添ってくれる人。勇気が出ない時、背中を強く叩いてくれる人。元気が無い時、ツッコミせざるを得ない人。そんな優しい花の様な魅力のある人だから……」

「……最初二つはともかく、ツッコミせざるを得ないのは魅力かそれ?」

「気が付けば叫ぶ元気が湧いてくるじゃない。好きよ?そういうの」

「……」

「うふふ~、懐かしいわね~。私が生まれたばかりの頃、よく花の王の背中に乗せられてあちこち巡り歩いたわ~」

「…………」

「あら~?その顔………………まるで『自分が父親の様に思っている存在が知らない間に別の子供の面倒を見ていて、好奇心やら嫉妬心やらが渦巻いてよくわからない感情が芽生えた娘』みたいな顔ね~」

「状況が限定的過ぎる例えだな!」

「あら~?何か間違っていたかしら~?」

「う……」

「うふふ~♪ね~、貴方と花の王との出会いってどんなのだったの~?」

「……別に、どうってことないし」

「あ~はあおほー……ばああろ~……ふきー……もっとあいひひえよー……」ZZz...

「ほら、この娘も寝ちゃったし~、私も鳥頭だから~お酒の席の話なんて明日には忘れるわよ~」

「……ふん」

 

 

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枯れ木に花を咲かせましょう。枯れ木に花を咲かせましょう。

 

「……んぅ?なんだろこの声……庭から?」

 ある日、目を覚ますと庭から知らない男の声が聞こえた。この家に知らない人が来るのはとても珍しく、子供ながらにどんな人なのだろうと好奇心をくすぐられ、寝間着のまま庭に飛び出した。

 今思えばそのまま二度寝してしまえばよかったと切に思うが……過ぎたことは仕方のない事。人間、過去は変えられない物である。

「つれない事言うなよモコモコ。あの時飛び出て来たクマさん柄のパジャマの女の子がこうなったって思うと感慨深いんだぜ?」

「回想に出てくんじゃねえよ花の王。つかこの時代にクマさん柄パジャマはねえよ」

「あれ、そうだっけか」

 

 寝間着のまま飛び出した私の目に飛び込んできたのは、冬だというのに草木が生い茂った庭の変わりようだった。色とりどりの花が風に揺らめき、幻想的な光景であった。

「わぁ……」

 

枯れ木に花を咲かせましょう。枯れ木に花を咲かせましょう。

 

 その男は庭の中心で両手を広げ、ゆるりゆるりと回りながら生命の伊吹を振り撒いた。

 ピタ。と止まった目線の先には、既に数年前から枯れて咲かなくなった木があった。あの木は既に死んでいるらしいが、その木を撤去させる職人すらこの家には入れられないらしくずっと放置されていた物だ。

 

枯れ木に花を咲かせましょう。枯れ木に花を咲かせましょう。

 

 男は、そう言いながらその木に近づいていく。その光景がまるでお伽噺のようで、夢のようで、非現実的な優雅さに惹かれた私は草花の生い茂る庭に素足で降り、彼の後を追いかけた。

 男はその死んだ木の前に立ち、慈しむように木を撫でる。ゆらりと動く樣は彼が幽玄の存在であるかのように儚く、私はその所作一つ一つに見惚れていた。

 

「王が枯れ木に花を咲かせるっつってんデスからさっさと咲くデース!!」

ドゴォォ!!!

「ええええええぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 何処からともなく突然現れた女が死んだ木に蹴りを入れる。すると木はメキメキと音をたて傾いていった。

「えー!おま、えー!!?そこ普通……ええええ!?」

「なんデスかこのオチビ。王のする事に文句有るデスか?」

「文句あるの貴女によ!!!」

「……あー、お前はこの小屋の住人か?」

「こ、小屋?」

 私は、お父様とお母様……お父様の妾の間にできてしまった望まれぬ子供だった。そのお父様との関係を隠すように建てられたこの家は、確かに本宅と比べれば小さいかもしれないがそれでも当時の貴族が建てた屋敷。少なくとも小屋など呼ばれることはあり得ない。

 だが私は、何を勘違いしたかこの屋敷のことを小屋と呼んだ男はきっと、考え付かないほどの大きな豪邸に普段は住んでいるのだろうと考えた。有る意味正解していた。

「えと……そう……です」

「そうか、騒がせて悪いな。今ちょっと趣味でこの辺に花を咲かせて回ってるんだ」

「そう……なんですか……」

 私は、妾の娘とはいえ、貴族の一員として恥ずかしくない程度には教養を叩き込まれていた。その私が圧倒される位に品と存在感を振り撒くその姿に、子供ながらにして畏敬の念をはらった。

「とまあそういうわけでこの辺花まみれにするから。かまわないよな?」

「は、はい!!」

 私はまだ子供だった。まだ名乗っていない花の王が差す「この辺」が「この屋敷周辺」ではなく「この都一帯全て」の事だとは露程に思わなかった。だが言い訳させて欲しい。

 

突然現れて、この辺花まみれにするからっつって都全体を花で埋め尽くすなんて誰が想像出来るだろうか。

 

「そうか、じゃ遠慮なく。枯れ木に花を咲かせましょう」

 男が蹴りで折れ曲がった木(思えばそこそこ大きな木だったが蹴りでへし折るこの女って一体……)を撫で、目に見えない何かしらを木に送る。するとみるみるうちに花が咲いていくではないか。

 

木の周辺に。

 

「……」

「「……」」

 

 

「咲けってんだよ!このポンコツが!!」

メギメギメギィ!!

「力付くで蹴り落とした!!!?」

「流石我等が王デース!!!」

 

 

 ◇

 

 

 木は完全に折れたが、咲きほどまで木があった場所に新たに木が育っていた。

「輪廻転生、万物流転。死んだ木も新たな生命を全うするだけさ」

「でもさっき蹴り折ったのは……」

「そんな木はなかったデス。いいデスね?」

「あっはい」

 目の前の奇跡の連続に驚き、未だに夢見心地のままにふらふらと縁側に腰を落ち着ける。すると男も私のとなりに座ってきた。

「おい座椅子。喉乾いたからコーラでも持って来い」

「この時代にコーラは影も形も無いデース!!」

「何とかしろ」

「かしこまりデース!!おいオチビ!ここの台所はどこデス!?」

「え、ええ!?えっと……あっちに曲がってすぐのところです……」

「オッケーデース!!只今お持ち致しますデース!!」

 女は私が指した方向へ飛んでいった……飛んでいった!?

「えっ、ええ!?今……そ、空飛んで……!」

「そりゃ飛ぶだろ。妖精なんだから」

「妖せ……えええ!??な、なんで都の真ん中に妖精が!?」

 当時の都は退治屋崩れや祓屋崩れが多く、超一流以外はソレ一本で食べていく事はできない程には仕事がなかった。そこで都中にお祓いついでの宣伝用の退魔の札をペタペタと張り、自身の名を売るという行為が流行った。

 中にはまるで一切効果の無いものもあったが、ほぼ大半がそこそこの効果を持っていたので都の中に弱小妖怪が入り込む隙などなかったのである。勿論妖精なんて言わずもがなだ。

 今まで都から一度も出たことの無い私は、妖精がどう言ったものかは知識として知ってはいるが、実際に見るのは初めてであった。

 ただし……

 

「え……なんか思ってたのと違う……」

 

 私が持っていたイメージに何一つとして当てはまらなかった。

「よ、妖精ってもっと可愛い物だと思ってた!!」

「知らんがな」

 私の思う妖精とは子供、もしくはそれよりも小さく、可愛らしい衣服に身を包み、背中には優しさを感じるような羽が生えているものと思っていたのに……

 

「何デス?その胡乱げな目は」

「お前のような妖精がいるかってさ」

「失礼なガキデース」

 こんな錆色した襤褸布を被って背中から刀を生やしたような不気味な巨女があの妖精だなんて信じない……。

 

「王様、コーラを錬金してきたデース!!」

「良きにはからへ」

 王様と呼ばれた男は妖精?から透明なキラキラした容器に入った黒い液体を受け取る……なんかマズそう……。

「王様、ソレ好きデスねー。そんなに美味しいデスか?」

「別に美味しくは無いけど偶に飲みたくなる」

 男はそう言って容器の中身を飲む。美味しくないと言っているのに喉を鳴らして飲んでいた。

「……おいオチビ、王様の事をジロジロ見すぎデース。……まさかお前王様に一目惚れデスか!?」

「へぇ!?ちちち違うし!!」

「冗談デース。どーせコーラが欲しいだけデス?全く意地汚いガキデース」

「べ、別に欲しくないし!」

「汚い意地を張ってんじゃねーデス」

 仕方ないデスねー。と言いながら再度台所に向かって飛んで行った。

 

「……ねぇ、貴方達って何者?」

「あぁ?通りすがりの王とその従者」

「普通王って通りすがる物じゃないよ……」

「俺は通りすがるんだよ。そう言うお前は自分が何者か知ってんのか?」

「えぇ……そんな事考えたことないよ……」

「自分が何者かも知らんのに人に何者か尋ねるんじゃありません」

「な~に訳のわからない事言ってるデスか王様……ほれオチビ、お前にやるデース」

「え……え?」

「早く飲むデース。瓶コーラは冷たいうちが華デース!」

「え……い、頂きます」

 私は黒い液体を飲んだ。

 

 

口が爆発したかと思った。

 

 

「!!?!?!?!?!?」

「以上、初めて炭酸を飲んだガキの反応デース!」

「 や っ た ぜ 」

「え”っ、ゴホッ、あ"っ!?何!?何コレ!?」

「コーラだって言ってるデース!お前の耳は詰まってるデスか?」

「ぞっ、そういう”い”み”……はぁ……はぁ……」

「ほれ、口直しにこれでも噛みな」

「あ、ありがとう……」

 

 

口が爆発した。

 

 

「ぶぼぇえ!!」

「なんつー声だすデスか?お前それでも女の子デース?」

「 メ ン ト ス コ ー ラ 大 成 功 !!」b('ω')d

 ぶん殴ってやる……男の満面の笑みを視界に入れつつ私は気絶した。

 それが私と花の王のファーストコンタクトだった。

 

 

 

 

 それからというもの、奴等はかなり頻繁にこの家に入り込んできた。

「何でこの家認識阻害の結界張ってるデス?」

「そうなの?」

「つまりアレだろお前。隠し子(物理)って奴だろ」

「そうなんデスか?」

「いやそんな訳が……いや……でもお父様だし……」

「お前の中の父親像どーなってるデス……」

 

 何度も何度も、家に入り込んでくるたびに他愛もない話をし……

「今日は何処まで行ってきたの?」

「ちょっくら山の頂までな」

「へぇー。なんて山?」

「あー……なんだっけ?」

「モミジさんとかいう高い山デース」

「そうそ……そんな名前だったか?」

「モミジさん?何処よそれ?」

「あー、多分ここからなら……よっと」

「わっわっ!?と、飛んだ!!?」

「ほーれ高い高いー……あ、あった。あれだあれだ」

「ふわぁ~。高い所からの景色って凄い……て、あれ富士山じゃないの!!」

「おー、そうそうソレソレ。あの山頂にこんなん吐くわバカとかいう神がいてな」

「こんなん吐くわバカなんて名前の神が居る訳無いでしょ……」

「これからはなやしき姫って名前じゃなかったデス?」

「そうだっけか?」

「そんな名所に案内するみたいな名前……」

「とにかくデスねー。そんな感じの神に出会ったんデスが、まあウザいのなんの。余りにも生意気な態度を我等が王にとるものデスから……ブッ殺「妖精はそんな事言いませんー!!そんな下品な言葉使いませんー!」お前妖精に幻想持ちすぎデスぅ……アイドル追っかけてる童貞デスかお前は」

「さらに生意気な事に身内に不死と不変を司る神が居たらしく滅殺出来なかったが、代わりにまぁ……全身花塗れにする程度で許してやったぜ」

「神様相手に何してんですか!?バチ当たりますよ!!というか滅殺って何!?ソレの変わりが全身花塗れってどういう状態!?」

「私の美しい顔がー!とかほざいてましたデスが、ボコボコに腫れあがった顔より遥かにマシデース」

「むしろ花こそ至高にして究極の美なのだから泣いて感謝するべき」

「むしろ大泣きデース」

 

 時には普通の人間では体験できないような事を教えてもらい……

「外に行きたいだぁ?」

「うん……いつもお母様に連れられて近場に出歩くくらいしか外に出ないの」

「そんなもん好きにでりゃーいーじゃないデスか」

「でもお母様から勝手に外に出るなって言われてるし……」

「なんだそりゃ。隠し子(物理)だからか?」

「ばかばかしいデース!!親から出るなって言われたら出たくても出れないデス?なら親に死ねって言われたら死ぬデスかオチビ!」

「そんな事言われたらショックで死んじゃうよ……」

「かー!人間って面倒臭いなぁ!俺を見ろよ、天衣無縫自由奔放。どんな言葉でも俺を表現できないほどに好きに生きてるんだぜ?」

「自由すぎて私達従者全員揃っても手綱引けないデスぅ!!」

「それ自慢げに言う事?」

「親の教えっつーモンも確かに大事だろう。だがよく考えろ。テメーの10年も生きてねえ頭でよくよく考えろ!本当に大事な事は親の教えをそのまま守ることじゃねえ。テメーが必要だと思ったことを率直にやる決意!覚悟!それこそがテメーで生きるって事だろうが!」

「テメーで……生きる……」

「自立ってヤツだ!良い事も、悪い事も、テメーの責任で全てを負うんだ!親に言われたからだとか、誰かからやらされただけだからとかツマンねえ言い訳は要らねえ。やりたい事をやる!そうじゃない事はやらない!それで生きろ!それが生命に殉じるって事だ!テメーは、テメーの為に生きて死ね!」

「……」

「さあ言え!テメーがやりたいことはなんだ!」

「……たい」

 

 

 

「外に出たい!!私を外に連れ出して!!」

「絶対にNO!!!」

 

 

 

「……ん?」

「えっ……ゴメン、ちょっと何言ってるか理解出来なかった。えっと……私を外に連れ出して」

「お断りします」

「なんでデスか王様ぁぁぁ!!!その流れ的にこのオチビのお願い事叶える雰囲気だったじゃねーデスかぁぁぁ!!!?」

「お前はやりたい事をやりたい、俺はやりたくない。なら後は当然強い方が意見を通せるのさ。弱肉強食って自然の摂理さ。また一つ賢くなっちゃったなぁガキ」

「いやいやいや、なんか良い風に言ってるデスがやってる事クソダセー休日のダメオヤジそのものデスから……ほれ見るデース!オチビが困惑のあまり泣くべきか怒るべきか分からない顔してるデース!!」

「うるせぇ。ならお前がつれてけよ座椅子」

「デース!!?何で私が!?私が王様から離れたら誰が王様の面倒見るデスか!?」

「俺一人旅の方が圧倒的に期間長いんだが……お前等居なくてもどうとでもなるわい」

「だ、だめデスだめデス!!折角、卑怯な手を使ってでも勝ち得た王様との旅路のお供の権利を無くすのは嫌デース!!」

「知らんがな。それとも何か?俺の命令が聞けないと?」

「ひぅ……ふ、ぐぅぅぅぅぅぅ……」

「え……えー……えと、そこまで大事になるんだったら別にいいかなー……て……思っ……たり……とか」

「一度吐いた言葉はもう口には仕舞えない。良かったなガキ、これで更に一つ賢くなったぞ」

「ううぇぇえええん……おーさまの馬鹿ヤロー……朴念仁ー……種無しー……いーでぃー……粗チンヤロー……」

「えええぇぇぇ……ほ、ほら泣かないでよ……これで涙拭いて」

「うぅぅぅ……ぐずっ…………ブーーー!!」

「ちょぉぉぉぉいい!!?涙拭けとは言ったけど鼻かめとまでは言ってなぁぁぁい!!!」

「うるせーデス……オチビ!さっさと行くデース!!こうなれば外だろうが外国だろうが宇宙だろうが何処にでも連れてってやるデース!!」

「うわ、バッチィ……鼻垂れてるよ……」

「やかまし!いいから行くデス!!空飛んで行けばこんな狭い国なんてあっという間に回りきってやるデス!!」

「えええ!?待って待って!せめてお母様に挨拶してからァァァァァァァァァァァァァァ………………」

 

 時には生き残る力を分けて貰ったり……

「そーいえばオチビ、お前の名前ってなんて言うデスか?」

「……今それ重要な事?」

「ふん、オチビが死ぬ前にせめて名前くらいは聞いておいてやるって善意デス」

「…………言えない」

「はぁ?」

「名前……あるけど……言えないのよ……。」

「訳分かんねえデース。まあ訳アリなわけデスね」

「うん……」

「んー……じゃあ私はオチビの事好きに呼ぶデース。…………そうデスね。もこ……今日からお前の事をもこと呼ぶデース」

「いや何よその変な名前……私は犬猫か何か?」

「『曖昧模糊』から取ったデス。名前が有るんだか無いんだかわかんねえデスから。文句あるなら聞くデスよ?聞くだけデスが」

「……いいわよそれで。で、私は貴女の事をなんて呼べばいいの?座椅子でいいの?」

「私の名前は諏訪・メタルイービル・鈍金・ブルーフレイム・マジックサークル・ラスターアイアン・魔神殺し・デステニーデストラクトデスフォーチュンマスター・座椅子・参番大隊長・ノーミィ・フォン・マジカル。諏訪でもデス子でも座椅子でも好きに呼ぶデス」

「名前長すぎ……じゃぁノーミィで」

「……なーんでソレチョイスするデスかねー……」

「え、いや……なんとなく?」

「……まあいいデース。それより死ぬ覚悟はもう出来たデスか?」

「出来ないよそんなの!生きる覚悟しかないよ!!」

「オッケー、いい答えデース!ならこいつを食うデース!!」

「……なにこの……なに?」

「そいつは燃え盛る花、ファイアーフラワーデース。本来ガキが食っていいシロモノじゃねーデスが死ぬよりマシデース!」

「そんな物を何?食えですって?」

「勿論食わなくてもいいデスよ?その場合、救いなんて無く私ももこも仲良くあのクソ妖怪にブッころころされるだけデース!まあ私は妖精なんで一回休みになるだけデスがね」

「食ったら何とか出来んのね?」

「それは分からないデース!」

「ちょ!?何よそれ!!?」

「言ったデスよ、本来ガキが食っていいシロモノじゃねーデスと。ソイツは滅茶苦茶な劇薬デース。食ったら運が良くて五体不満足、悪ければ生きながらにして地獄。奇跡が起きて漸くメリットが有るデース!」

「何だその最悪なギャンブル!!」

「生きる覚悟があるデスよね!今手持ちにはロクに使える物が無いデスし、何よりあのクソ妖怪相手に私の力は相性最悪デース!なら最期に運試しと行くデース!!」

「っ……食ったら何とかなるのね!!?」

「何とかなるじゃねーデス!何とかする(・・)デース!でもぶっちゃけ、もこがその花食って五体満足に生き残る奇跡に、更にもこが炎熱の術に対する才能がある奇跡とそれを練習無しのぶっつけ本番で奴を焼き尽くすだけの火力をかませる奇跡が重なんなければ全部がパーデース!!」

「ああもー!もう二度と外になんか行かないわチクショー!!!」

「それが賢明デース!!」

「ええい女は度胸よ!奇跡に奇跡と更に追い奇跡!引いてやるわよその確率を!私の生きる覚悟を見てなさいよ!!!」

「あ!それ食うと身体が燃えるように熱くなるデース!」

「それ先に言えああ”あ”あ”あ”ッ!!!!」

 

 

 よく考えたらこの辺花の王と関係無かったわ。

 

 ま、とにかく花の王と出会ったのは私が幼少の頃。まだ髪も目の色も黒かった頃よ。

 色々あって家に帰ってきた時にはもう花の王は都からも居なくなっていたわ。都全体に大量の置き土産を残してね。

 次に花の王と会ったのは何時か、よく覚えてるよ。私にとって人生の二番目に最悪だった日の夜さ。

 

 ん?一番目?私が幼くして白髪になった日だよ。あれはこれ以上語りたくないからいいよね。

 

 とにかく、その日は色々あって、むしゃくしゃして、どうすればいいのか分かんなくなって、最悪な選択を選んでしまったんだ。私は死ねないって事を正しく理解していなかった。いや……花の王と、それからノーミィと別れてから暫く経って、彼らに教えてもらった事がすっかり風化してたんだ。これが自分がやりたい事だったのか?生きる覚悟を持っていたのか?そんな事がぐるぐると頭の中で渦巻いて、妖怪にいいように玩具にされてた時に再会したんだ。

 

 怒れる大地に。怒れる風に。世界の化身に。

 

 

 

 

「よぉう。なんだか愉快な事になってるな。ええ?おい」

『あ”ぁ”?なんだてめぇ……』

「……」

「お前と別れてからどんくらいたったか?10年位か?やっぱ人間はちょっと見ない間に良く成長してるよなぁ」

『おいてめぇ、オレ様を無視してんじゃねえ!』

「……」

「身体は成長しても心はまるで変っちゃいねえのが人間の有様だ、と俺は記憶してたんだが……思い違いかよ?」

『っ……生意気な人間風情が!ブッ殺してやるぜ!』

『ギャハハハ!人間の男は硬くて食い辛いから嬲り殺しにしてやる!!!』

 

 

 

「おい」「御意デース」

 

 

 

『……あ?』

「その臭い口を閉じろデース。王の御前デース」

『あ、あ、あ”、あ”あ”あ”あ”あ”あ”お”れ”の”う”で”がぁ”ぁ”あ”べっ』

「黙れと言ってるのが分からないデス?」

『な、なんだお前等……!おい!お前誰に喧嘩売ってんのか分かってるのか!?オレ様はこの辺り一帯をシめる鬼の王の部k』

「喋るな。生きるな。地に臥せるな。花が穢れるデス」

「……」

「ほら起きるデスよもこ。王の話を寝ながら聞くなんて不敬デース」

「……」

 

「ふむ、最後に見た時とはだいぶ姿が変わってるな。イメチェンか?」

「……んな訳無いだろ」

「喋れんのか。てっきり死んだショックで喋らないのかと思ったぜ」

「……死なねえよ。死ねねえんだよ」

 

「なあ、お前に判るのかよ……永遠に死なない苦しみって奴が……もう……私は人間じゃないんだぞ……?ほら……この身体見ろよ……これ全部私の……血……なんだぞ……?死なない……もう死ねないんだぞ……?もう……もう私は此処には居られないよ……何処に行けばいいの……?私は……どうすればいいの……教えて……教えてよ!!!」

「座椅子」「はいデース」

 

 

「「メントスコーラの刑!!!」」

「!!?ぶぼごぼごごばぇ!!!?!?」

 

「!? !?? ??!??」

「まず一つ。話が長い!!不幸自慢か~コノヤロー。死なない死ねないだの……そんなモン今の今までずっと生き続けてる俺にとって同じだバカヤロー!」

 

「二つ。お前王の前でそんなきったねぇ恰好してんじゃねえ!!とっとと体洗って来い!!」

「ゴホッ!ゴホッ!り”、り”ふじんだ……」

「三つ。お前より永くこの世界に生きる者としての教えを忘れるとは不届き千万!!以上、三つの罪でお前に刑を処した」

「え”、え”ぇ”……」

「此処に居られないだの、どうすればいいだの……知るか!テメーで考えろ!不死だからどうとか、アルビノだからどうとか一旦置いとけ!テメーが本当にやりたい事はなんだ!テメーの生きる覚悟はどうした!」

「う、うぅ……」

「テメーが生きるためにファイアーフラワーを食った時の覚悟は如何した!その覚悟は死ななくなった程度(・・)で消える物なのか!」

「……!ど、どうしてその事を」

「そもそも!

 

お前の言う永遠は俺の生きて来た永さより長いのか!?」

 

「……え?」

「お前五億年ボタンって都市伝説知ってるか!?5億年って途方も無く長いぞ!?しかも5億年生きてもたった100万しかもらえないって何の詐欺だ!」

「王様、なんか話ズレてるデース」

「兎に角!お前の考えてる永遠なんて俺にとっちゃ一生分もねえんだよ!んな事で悩むな!」

「で、でも!永遠……なんだぞ?終わりが無いんだぞ!?」

「知るか!そんなモン俺が死んでから言え!!!」

「……っ!」

「終わりが無い?それが如何した!お前に終わりがなくても周りは変わっていく!日に日に変わっていく!変化は続く!その世界の変化についていくのは大変だ。とてつもなく難しい……」

 

「だからこそ、この世界は美しく、そして楽しいんだ」

 

「二度と同じ日は無い。その全てを楽しもうなら永遠の時間があっても足りやしない。それを楽しめない人間や妖怪、神共を不憫に思うぜ。でも大丈夫だ」

 

「なんてったって、俺がまだこの世界に飽きていないからな!!」

「……」

 

「ねぇ……私にも……永い時間を楽しめるかな……」

「楽しめる、断言してやる。なんせ俺がその楽しみ方を教えるからな。これ以上ないお手本だぜ?」

「永遠なんてモンに絶望するのは早いデース!絶望するのは王様が死んでからで遅くないデース!」

「あ、あは、あははは。何でかな?なんか涙が出てきちゃった。……少しだけ胸貸してくれない?」

ポスッ

 

「あはは、何か暖か「メントスコーラの刑!!」なんブブゴボボボ!!」

 

「おいいいいい!!!?王様そこ優しく抱いてあやすシーンデース!!お前には優しみがねーデスか!??」

「五月蠅い。汚い姿で抱きついてくるなよ、不衛生な」

「いや、そりゃそうかも知んないデスが言い方と時と場合を考えろデース!!」

「その時と場合は俺の意思を曲げられるほど偉いと?」

「そーじゃねーデスが、ああもういいデス!!ほらもこ!私の胸貸してやるデス!!」

「そんな錆びついた胸じゃあ嫌だろ」

「喧しいデス!!そんなこと言うのはこの胸使ってから言えデス!!それにもこも色合い的には似た者同士デース!!」

「ゲホッゲホッ……ふ、く、ハハハ!いいよノーミィ、涙なんか引っ込んじゃった」

「ああ″っ?もこ!お前も私の胸が錆びた鉄屑だと言ってんデスか!?ジョートーデース!!お前には胸囲の暴力ってモンを見せてやるデース!!」

「い!?言ってない!言ってなぶ!??」

 

 私は、永遠を見くびっていた。今でもこの選択を後悔している。でも大丈夫。永遠に続く道を一緒に歩いてくれる誰かが居る。永い先を示してくれる誰かが居る。後ろから背中を押してくれる誰かが居る。例え共に歩けなくなる時が来ても、それは独りではない。何時までも忘れられない記憶を決意に刻み、永遠を生き続ける。

 

 時が果てるその時まで。

 

 

 

 

 

「ウリウリ!!どうデス!!この脅威の胸囲装甲!!只の脂肪と侮るなかれデス!!男を殺す最終兵器デース!!」

「おい、座椅子」

「なんデスか!?いまもこに豊かさと言うものを知らしめてるデス!!手短に頼むデース!!」

「そいつ息してない」

「デス!?お、おーいもこ!お前までなにふざけているデス!!完全にシリアスの雰囲気なくなっちまうデース!!」

 

 

 

「し、死んでるデス……」

「そうか、なら死んでる内にそいつ洗っとけよ」

「お前には血も涙もねーデスか!!!?」

「死なせたのお前じゃねえかど阿呆」

 

 不死者で良かった。最後の思考は其処で途切れた。

 

 

---

-----

-------

 

 

「グーグー……」

「すやすや」

「話を求めておいてまともに聞いてる奴はいないのか!?」

「うふふ~冗談よ~」

「むにゃむにゃ……」

 時は深夜。ぐでんぐでんになっていた鈴仙は薬の効果が抜けたのか眠りこけ、妹紅は話している内に酒がだいぶ進んだのか、顔が赤く染まっていた。ミスティアはいつも通りの笑顔で話を聞いていた。

「でもちょっと違和感~、貴女の雰囲気的にはもっと花の王と甘い関係でも有ったと思っていたのに~」

「は、はあ?何言ってるのよ、私とあいつはそんな関係じゃ無いよ……」

「甘い関係になることを目論んでいたが正しいデース!!」

「だから!!違うっていっ……てん、で……しょ……」

「昔馴染みの前で法螺話なんて大した度胸デース!!こいつは嘘をついているデース!!」

「はああああ!?ばっ、なんでおま、な、はあぁ!!?」

 気がつけば妹紅の隣には180㎝は有ろうかという大柄の女性が、花酒を燗して飲んでいた。

「な、お、は、はあ!?お前何で!!?」

「夜中は異変もお休みデース。お休みの日に何してようが勝手デスよ」

「そうじゃないだろ!?」

「うーん、じゃあこうデスか?もこ、5日ぶりデスね」

「そうでもねえだろうが!!な・ん・で!此所に居るんだよ!!」

「別にもこが来たときみたいに何時もあの部屋の前に居るわけじゃ無いデース。明日は非番デスから呑みに来ただけデース」

「5ボス当番制かよ!?」

「さらに言えば日によって難易度が変わるデスよ。明日は難易度ルナティックデスからねー」

「な、な、な……つまりなにか?私は、偶々難易度イージーモードの日に挑戦したからスゴスゴと帰るはめになった……てか?」

「むしろイージーモードであそこまで苦戦したことに驚きデース!!お前ら死なないからってナメ過ぎデース!!妥当な結果デース!!」

「ふ、ふ、ふざけやがって!!ここで燃やし尽くして「店のなかで暴れるのはマナー違反デース!!メントスコーラの刑!!」ガボバゴゴボボ!!!!」

「すまんデスね女将。騒がしちまって申し訳ないデス」

「いつもの事よ~気にしなくていいわ~」

「そうそう、この屋台って普段暇な癖に客が来ると途端に騒がしくなるんだ」

「騒がせる筆頭の貴方がそれ言うか~」

 

 

「「「……え」」」

 

 

 みんなが振り向けば、そこには花の王がいつの間にか居た。

「ちゃおー」

「ウワアアア花の王!!?お前いつの間に!!?!?」

「ちょ、王様!?あんた国の宴会場に居るはずじゃあ!?」

「ジャイ子の奴がちょっとうざくて逃げた」

「グラスティティア!!?お前また逃げられてるじゃねーデスか!!!」

「ミスティア、ウナギー」

「え、あ、はい!!」

「聞けよ!!!お前いつの間に私の隣に座ってた!言え!!」

「お前が昔話を始めた辺り」

「……マジか。マジかー」

「むにゃ……あぅー、はなのお~らー。んひひ~いいにおいー」

「なんだこいつ、キャラ崩壊してんぞ」

「原因がなに言ってるのよ……はい、八目鰻~」

「これもたまに食べたくなる味だわなー」

「美味しくないのにって?余計なお世話~」

「ん?別に美味しくないとは言ってないぞ。むしろミスティアの作る料理は何でも美味しいし」

「ふ、ふーん?まあ、長いこと料理作ってたら当然の腕よ」

「分かりやすく照れてるデスぅ……」

「ん″っ、ん″っ、そ、それよりほら~、妹紅さんの昔話よ~。嘘つきってどういうこと~♪」

「う、嘘なんてついてないし」

「あ~、嘘はちょっと言い過ぎでしたデース。ただ王様にベタベタくっついていた時の話を意図的に省いてただけの話デース!」

「べ、別に話すほどでも無いって思っただけだ!」

「王様から離れたくないから力尽きるまで背中にしがみついたり、半ば無理矢理一緒に風呂に入り込んだり、裸で同嚢しようと「あー!あー!幼い頃の話だから!当時は大量に沸かした湯に浸かるなんて贅沢、貴族でもやんないほどだったから!」

「裸で同嚢しようとした件について詳しく「聞くな!!」残念~♪」

「とまあ、もこは昔っからマセたガキだったデス。あれから1000年以上経って少しはマシになったかと思えばコレデスぅ」

「う、うるせっ!そういうお前は花の王とヤったのかよ!?」

「ガキが無理して大人ぶってるデスぅ。というかそういうこと本人の前で聞くデスか普通?」

「るせっ!いいから答えろ!」

「……ふっ、愚問デス。あれからどれだけ長いこと一緒に居たと思ってるデスか?」

「……」ゴクリ

 

 

 

「王″様″ぁ″~!!私の何が不満なんデスか~!!」

「そういうところ」

「何処!?何処デスか!?胸デスか!??妖精一の巨包の胸デスか!??こうなったら削ぎ落としてでも「「止めなさい!!そんな事するくらいなら私に寄越せ!!」」離せデース!!お前らに私の気持ちなんてわからないデース!!」

「あ″あ″!?それは喧嘩売ってるってことでいいんだな!?いいんだよな!!?」

「うふふ~、妖精を捌くのは初めてだけどちゃんと美味しく仕上げてあげるわ」

「やってみろデース!!お前らなんぞ束になっても私に敵うわけ無いデース!!」

「どこを束ねても勝てないって!?贅肉が多いからってイキがんな!!」

「余計な脂肪は焼き落としてあげる~!!」

 

 

「わらひね~、すっごうがんあっらおよ。誉めえー」

「よく頑張った、エライエライ」ナデナテ

「えへー。もっろごほおびちょーらい」

「ご褒美?」

「わらひを持ち帰って……」

「え、要らない……」

 

 

「フェニックス再誕!!」

「ブラインドナイトバード!!」

「無駄無駄無駄デース!!『殺神「降魔返しの三次元魔法陣」』

「弾幕全反射なんて卑怯だろ!?」

「ちょ!?避け……無r」ピチューン

「ミスチィィィ!!!」

「どーしたデスかー!!胸部装甲薄いくせにこの程度の密度でギブアップデスか~?」

「んにゃろ……ブッ殺す!!『火の鳥-不死伝説-』」

「私の魔法陣を抜きたきゃ核でも持ってくるデース!『製錬「フォーチュンレディの開運キーホルダー」』

 

 

「ぎゅー」

「邪魔や。ウナギ食べられへん」

「じゃー食べさせてあげりゅー」

「なら良いか」

「はい、あーん」

 

「「 お前等イチャついてんじゃねぇ(デース)!! 」」

赤鉄「錆び付いた弾幕工場」
紅蓮「不死山大炎上」

「公害ばら撒く火炎弾幕大工場」

 

「あ、これヤバイタイプのヤツやん」

「えへー?なんかおそらあかるい……もーあさ~?」

「言うとる場合か。とりま逃げるんだよぉぉ!」

「「逃がすか(デース)!!」」

魔神殺しの即席大魔法「灰燼」
蒼炎「美しき青い不死鳥」

「大地焼き尽くすインドラの矢」

「公害ばら撒く火炎弾幕大工場」

「終焉導く黒き炎」

「幻想郷消滅するわ馬鹿!『怪奇日食のみずみずしい水草』」

「あ~。う~、ん~……う、うぷ」

「ちょ!?おま、このタイミングで吐くなよ!吐くなよ!?」

「だ、だいじょ~ぶだいじょ~ぶ。ちょっとすっきりするだけだから」

「大丈夫じゃなくない!?」

 

「う、うぅ~ん?あら~?私撃墜されて……」

 

「ミスティア!ナイスタイミング!ヘイパス!!」ぶぉい

「あ~」

「うぇ!?ちょ、花の王!?ま、「あ~目が回……おrrrrrrrr」ギャー!!顔に!顔に!!?」

「ふふふ、私達というものがありながら更に他の女に手ぇ出すなんて節操が無いDeathねぇ……」

「ねぇ花の王。いい加減一人の女に腰を落ち着けたら?具体的に言えば私とかに」

「まるで俺を遊び人の様にお前」

「ふふふ、実際そうデース。王様、いい加減に誰かと添い遂げろデース。そうすれば私達も諦めというものもつくデス。なのにいつまでもフラフラと女の子引っ掛けて……とっとと結婚でも何でもしやがれデース!」

「いやー悪いが俺は「花が恋人ってか?面白い冗句だ、思わず焼き殺したいくらいにな」一言も言ってねえよ」

「じゃあなんデス?王様の女のシュミを言いやがれデース。王様が求めればどんな姿形にでも成り替わるデース」

「私だって。整形手術なんて初めてだけど、花の王が求めるなら何にだって変わってあげるよ」

「……はぁ、そりゃご苦労なこって。でもな、俺は見た目で女を選ぶような男じゃねえよ」

「王様……」「花の王……」

 

 

 

 

「俺はな、今も昔もずっと年上趣味なんだ」

 

 

 

 

「…………」「…………」

 

 

「え、ごめん。もう一回言って」

「だから俺のタイプは年上なんだって」

「でけぇ声で言うんじゃねーデス。え、ちょっと理解できない」

「何度も言わすな恥ずかしい。だから俺は「そう言う意味じゃねーデス。いやそう言う意味デス?まって頭が追いつかない」

「まって、冗談。冗談だよな?冗談であってくれ頼むから」

「ふへっ、あの顔は冗談じゃなく本気デース……。変な笑い声でるわ」

「知ってるよんな事。それでもコレが嘘であってくれ。頼むからマジで」

「残念……!コレが現実……!」

「神は死んだ」

 

 

 

「てかお前より歳上なんてこの世に存在するのかよ!?」

「いいかモコモコ。理想ってのは存在しないから理想なんだぞ」

「居ないんじゃねーか!!!」

「存在しない理想の美女より近くの美女デース!!」

「じゃあお前も他の美男に行けよ。森近とか」

「絶対にNOデース!!」

「理不尽」

 

 

 今日も良い日だ。騒がしく、楽しく、花は美しい。熱燗片手に花が舞う世界を眺める。

「おい、勝手にエンドロールいくな。話終わってねえぞ!!」

 風は踊り、空は輝き、大地は歌う。ああ、これこそが永く追い求めた理想其の物であろう。

「億年生きてて年齢を気にするなんて今更デース!!非生産的デース!!」

 さあ皆で酒を飲もう。笑い合おう。今日という日に感謝を込めて。明日も良い日が続くことに願いを込めて。

「くっ!こうなったら無理矢理剥いででも……」

「年下の魅力に溺れさすデース!!」

 盃を掲げよ。夢に唄えよ。花と共に笑えよ。全てが望めば、明日もきっと良い日であり続けるだろう。

「くそっ!服を掴む事すらままならん!」

「王様はあらゆる武術の達人でもあるデス!!正攻法じゃ経験値が足りないデスよ!!」

「なら服ごと燃やし尽くしてやる!『再臨「不死の神風特攻」』」

「ええいさっきから鬱陶しい。『偉大なる世界樹の収穫祭』」

「「あっー!」」ピピチューン

 

 

 望む限り、永遠に。

 

 




次回、おしまい。


・花の王
 今日も今日とて異変の黒幕。常に誰かが異変解決に乗り出しているが、今まで誰も自分の所まで来れないので暇・オブ・暇。

・もこ
 家に張ってあった認識阻害の結界の副作用で名前を名乗れなかった。初恋はろくでなし。
 幼いときに口にした花の作用で髪は真っ白に、眼は紅く、とまるでアルビノの様になった。
 炎の術に対する適正は高かったが、蓬莱の薬を服用してからは自身を燃料にして更に火力を強めた。

・鈴仙
「学級委員を任されるくらいに優等生な女の子が不良の事を目の敵にしているが、そんな不良が不意に見せた優しさにコロッと墜ちる」そんな使い古されて手垢まみれの設定が幻想入りした結果の被害者。
 こっちの方のうどんちゃんは比較的まともですから!ゲロインですが!

・ミスティア・F・ローレライ
 FはフラワーのFだと思っているけど真相は……
 通称女将スチー。料理の腕は抜群で人里でもそこそこ有名なほど。一度花の王に自分の卵料理を出したところ「俺たまご嫌いなんだよね」の一言で轟沈。以後、卵料理はミスティアの中で黒歴史扱いとなった。

・諏訪・メタルイービル・鈍金・ブルーフレイム・マジックサークル・ラスターアイアン・魔神殺し・デステニーデストラクトデスフォーチュンマスター・座椅子・参番大隊長・ノーミィ・フォン・マジカル
 自然鉄の妖精。酸化と還元を自在に操る力を持つ。
 妖精であり、魔法使いでありながら魔神殺し(神綺ではない)の偉業を遂げ、魔神の叡智をその身に宿す。主に陣魔法を使う程度の能力で、その真価は拠点防衛で最大の効果を発揮する。
 デスデス五月蠅いが、花の王国の濃い面々に埋もれないように始めた苦肉の策。要するにキャラ付け。

・合成弾幕の合成
 ボンバーマンで言うデンジャラスボム。しかも不可能弾幕(回避可能)で全力で放たれた場合幻想郷の結界がヤバイ。ヤバかった。
 そんなんばっかじゃねーか。という突っ込みは無し。

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