霊夢「正に外道」
魔理沙「なんでこんなのが賢者って呼ばれてるんだ?」
「しゃばだばっだったったでゅびでゅば~しゃばだばだ、しゃだばらだたったしゃばだばでゅっばだ」
「……」
「しゃばだばでゅー、しゃばだばでゅばったしゃばだばでゅーばっだーん」
「…………」
「ようえーきっき」
「地獄に来るたびにその頭が腐りそうな歌歌わなきゃいけない呪いにでも掛かってるんですか貴男」
「より正確に言えばえーきりんに会う度に歌ってんな」
「止めてくれません?それと死んでくれません?」
「おーこーとーわーりーしーまーすーん」
「どっちなんですかそれ」
「俺を殺してみるがよい」
「出来れば苦労しないんですけどねぇ……!」
諸君、俺だ。
俺は今地獄の一丁目に来ている。勿論死んだわけじゃない、歩いてここまで来たのだ。
幻想郷ってのは本当に凄い所だよ。なんせ現世から地獄まで歩いていけるんだもんね。
「それ貴男だけですから。どこの世界に三途の川を歩いて渡る奴がいますか」
「こ・こ・に」
「死ね」
「閻魔にあるまじき発言」
そして我が目の前にいるのは夏季A期シャバダバドゥその人である。
「四季映姫・ヤマザナドゥです」
「そうそれ」
この
「四季映姫・ヤマザナドゥです」
「そうそれ」
地蔵のクセにあっちこっち歩き回るふてぇ奴だった。
「ただの地蔵だった私をあちこち動き回らせたのは貴男の所為でしょう」
「行く先々で説教しまわってるからてっきり喜んで動いていたのかと思ったがね」
「う、まぁ……それは……」
「へいへーい、閻魔がそんな曖昧な返事で良いのかよー。YOU白黒つけちゃいなYO!」
「死ね」
「ハッキリ言うじゃねえか……」
まあ何で俺が地蔵なんて引き連れて歩き回っていたのかは語ればそりゃあもう辞書並の厚さの小説が上・中・下巻書けるくらいの長い話になるんだが、その話はおいとこう。
「当時の貴男が『地蔵連れてるとかパンクじゃね?』って言っていた記憶が」
「おいとこうっつってんだから置いとけ」
閑話休題
なんでわざわざ地獄まで来たかというと、要はいつも通りである。
「いい加減にしてくれませんか?もう地獄は貴男が植えに来た花でいっぱいなんですけど」
「何を言う。まだ植えるスペースがあるではないか」
「あの……阿鼻地獄が花で埋まったのにまだあるとでも?」
「あるではないか」「マジかお前」
説明しよう!阿鼻地獄とは地獄の最下層にある滅茶苦茶広い地獄で、縦横高さが2万由旬だの8万由旬だのといったくらいあるぞ!由旬ってなにかって?知るかそんなもんググれ。
「とりあえず貴男の所為で地獄が引っ越しする羽目になったということを自覚してください」
「なんでさ。よく考えてみ?花には見るだけでリラクゼーション効果がある上に殺伐とした地獄の労働環境に一抹の清涼感を提供するベストインテリアだろ?」
「地獄は殺伐としてナンボでしょうが。それ以上に量を考えろって言ってるのです」
「お前、そんなんだから地獄はブラック企業よりブラックとか言われて就職率下がりまくるんじゃねぇの?」「ぐっ……」
そう、俺はこの地獄の地獄化を何とかするためにこうして花を咲かせに来るのだ。なんて地獄思いの優しい王様なのでしょうか。きっと死後は地獄に銅像が建てられ、悠々と天国で暮らしていけるに違いない!
「貴男の像が建つなんてまかり間違っても無いですよ」
「そんな馬鹿な!」
「ただでさえ貴男が咲かせた花が増え続けるのに、その上貴男の像なんて置くスペースなんて有る訳無いじゃないですか馬鹿ですか」
「つまりそれは花で俺の像を作れっていう……?」「止めろ馬鹿」
諸君、君も地獄で働こう!今なら優しい鬼の先輩が手取り足取り仕事を教えてくれるぞ!
それはともかく。
「黄泉の花の調子どう?」
「……アレですか、えーえー元気ですよ腹立つくらいに。どうやって前任が引き抜いて地上に捨て置いたのか知りたいくらいですよ」
「その引き抜いた前任とやらがどうなったか知りたいなら教えてあげるけど」
「……遠慮しておきます」
黄泉の花とは、我が力を込めた花の一つであり、現存する最古の花の一つである。花でありながら枯れず、朽ちず、そして子孫を残さず、ただそこに在るだけの花である。つまり生きながらにして死んでいて、死にながらにして生き永らえる故に今まで残って来れたのだ。
エサは死んだ生命の魂。
「あの花の所為で新たに『花地獄』を作ろうかって議題に上がるくらいですからね……」
「作ればいいじゃん」
「阿鼻地獄がすでに花地獄なんですがそれは」
「良いじゃん」
「良くないじゃん?!」
とまあ、B記はツッコミ属性持ちであるのだ。
「映姫ィ!というか貴男の前でツッコミ属性発揮しないヤツなんて居るんですかねェ!!」
「おー、昔の口調に戻ったな。好きだよ」
「ふぅ?!」
「堅っ苦しい口調よりそっちの方がいいよね、うん。なんか距離が縮んだ感じがしてさ」
「っ~!!」
「閻魔然とした映姫よりそっちの方が可愛いぞ」
「しょ、其処になおれぇ!!」
「あ、あ、貴男はかわっ、可愛いなんてそんな事、き、気軽に言い過ぎるっ!!」
「そうか?」
「そうです!どうせ誰にでもそんな事言ってるんでしょうこのスケコマシ!大体何時も人の名前間違う癖に急に正しい名前で呼ぶなんて不埒です!」
「……待って、それの何が悪いん?」
「悪いに決まってるでしょう!!」「えぇ……」
「いいですか!そもそも貴男はそう……人との関係を疎かにし過ぎる!新しい出会いも大事ですがもっと古くからの付き合いを大切にしなさい!」
「具体的には?」
「もっと私に会いに来なさ……じゃない!」
「映姫様ー。裁判の時間だよーっと「小町ィ!!今良い所ですから邪魔しない!!」……えぇ?」
「小町!何時もサボってるくせに何で今日に限って働いてるんですか!」
「えぇ、いや。ちょ……ええぇ!?何でアタイ怒られてるの!?」
「折角二人っきり……いえ、そうじゃなく!そもそも小町、貴女がキチンと仕事をしていれば花の王が歩いて此処に来ることも無く私が化粧する時間も出来たのに!」
「え、映姫様。あんなんに会う前に態々化粧してるんですか?」
「あんなんとは何ですか!確かに彼は少々……いやかなりアレですがそれでも余りある魅力と包容力は他の誰にもない素晴らしい美点です!なにより、花に向けるあの優しい表情は彼の魅力が全て詰まっています!私に向けてください!」
「映姫様、なんかもう色々出てます……」
「出ますよそりゃぁ!畜生!何で私の初恋が彼なんですか!色々と攻略難度高過ぎじゃないですか!!周りに他の女の影も多いですし!!やってやりますよコノヤロー!!」
「……で、映姫様」
「何ですか小町!!」
「その肝心の花の王は何処に……?」
「何言ってるんですか其処に」
「Houdy!!」
「何コレ……」
「喋る花ですね……」
「クソハナぁ!!!」
◇
「地獄はもう説教地獄っての作った方が良いと思うのだけれどもそこんとこどう思う?」
「うにゅ?」
所変わって灼熱地獄跡。地獄から旧地獄に行くのももはやお手の物である。あんまり地底に来ると八雲が五月蠅いが正直知ったこっちゃない。
そして目の前には地獄鴉兼八咫烏という火属性マシマシの少女、霊何とか空がいる。
彼女とはまあ何やかんやあって仲が良いのである。
「だ、誰だお前!?いつの間に此処に来たの!??」
……仲が良いのである。
「っ!なんだかよく分かんないけど……侵入者は討つ!!七星「セプテントリオン」!!」
ちょっと待ってろ。
「なんだかんだ言って久しぶりだなお空」
「久しぶりだね、頭に花生えるのも!」
「どうだ?間欠泉センターとかで働きっぱなしの様だけど元気してっか?」
「元気だよー!今絶賛頭の花に元気吸われてるけど!」
「なら良い」「良くなくない?」
さてさて、灼熱地獄跡地である。熱い。
そして熱いと言えば、花である。
灼熱地獄跡地には熱に強い花がそこそこの数咲いている。俺がコツコツ育て上げた物だ。それこそ灼熱地獄跡が現役で動いてた頃から。
「ねぇ、いい加減ここの花捨てていい?この花の所為で時々火力が上がり過ぎちゃうんだけど」
「それを 捨てるなんて とんでもない!」
もはやどれも地上では適応できない珍しい品種であるというのに。
爆炎草。高熱を糧として育ち、花が咲くと同時にインド象も焼き殺す爆炎も咲く。
竜吹草。燃えるように朱い花が咲き、実を結ぶとインド象も焼き貫く勢いで種を飛ばす。
焦炎花。焼けた空気を吸い煤を吐く黒々と煌めく花。インド象もビックリして心臓が止まる。
「インド象が何したって言うのよ」
そのどれもが地上で育てようとすると、何処からともなく八雲が現れては根っこごと消し飛ばしてしまうから地上で育つ事は無いのだ。
生存競争って、悲しい。
「という訳でお空にプレゼントやるぞー」
「わーいどうせ花なんでしょー」
「外の世界のお土産『重水素水』」
「えっ」
「えっ」
「花じゃない?」
「『重水素水』」
「えっ」
「えっ」
「水?」
「『重水素水』」
「なにそれこわい」
「飲むと有毒らしい」
「すごいこわい」
「妖怪には効果ないよ」
「安心した」
「でも重水素では魚類は死ぬよ」
「不安になった」
「飲んで」
「えっ」
「えっ」
「有毒なのに?」
「妖怪には効果ないよ」
「魚類は死ぬんでしょ?」
「魚類じゃないでしょ」
「そっかー」
「そうだよ」
「じゃあ頂きます」
「ちょっと待てェェェ!!!」
「お、お前は!地霊殿の主にして何時も偉そうに椅子にふんぞり返ってるけど見た目幼女でしかも友達いない歴=年齢で妖怪どころか怨霊にすら近づかれない上に寂しさ紛らわすためにペットを飼ったら増えすぎてもはや自分で管理出来なくなったからペットにペットの管理をさせて、しかもその所為でペットに舐められまくって『あれ?これもう主人要らなくね?』とか思われてる事を知ってガチ凹みしているコミュ症クソダサオシャレ目ん玉少女カトリ!!」
「長い!!上になんでガチ凹みしてるって知ってんの!!後私のサードアイ別にダサくないし!!最後カトリじゃなくてサトリだし!!お空に何飲ませようとしてんのよ!!」
「ツッコミまで長いとか……一つに絞れよ」
「憐れんだ目で私を見るなァァァァ!!!」
「うにゅ、さとり様うるさい……」
「お空!?お、お空までそんな事言うの……?」
「というかさとり様カメムシ臭いですー」
「お燐まで!?そ……そんな……」
「あ、今の俺の声真似だわ」「ブッ殺す」
「と言うかお前スペック的に妹に勝ってる部分ないよな(笑」「ブッ殺ォォォォス!!!」
「うにゅ……アンタさとり様に何の恨みがあんのよ」
「強いて言えば花の恨み」「あぁ……さとり様ゴメン。私じゃどうにもならないや……」
「お空どいて!そいつ殺せない!!」
「お空居なくても殺せないに1円」
「馬鹿にしてんのかテメェ!!トラウマに溺れて死ね!!想起「…………」」
「は、吐きそう……」
「覚妖怪のさとり様相手に精神攻撃なんて何してんのあんた……」
「むしろ億年生きた俺のトラウマなんて俺が知りたい」
イアイア系かな?
「ふ、フフフ……思った以上にチカラを奪われたけど、お前をぶっ殺す算段がついたわ!
想起『風見 幽香』!」
なんと、俺の目の前には寸分違わぬ風見幽香が!
「さあ行きなさい!ヤツを蹂躙するのよ!!」
「誰にモノを言っているのかしら?」
「はぁへ?」
「愚図で、惨めな弱小妖怪風情が、記憶とはいえ私を使役しようなんて……愚かで、哀れね」
「すげー、マジで風見幽香だわ。99%風見幽香だわ」
「待っててくださいね王様……今この生意気で低能なゴミ虫を教育しますから……♥」
「ゆ、ゆっくりでいいよ?」
「はぁい」
「あ、あーれれー?おーかしいぞー?何で私の能力で出来た存在が私に牙を剥いてるんだー?」
「それは貴方が間抜けで、愚図で、雑魚だからよ」
「あの、えっと……私の言う事を聞く気って……有ります?」
「羽虫の鳴き声なんて聞こえないわ」
「ちょ、ちょっといいですかほんと。マジで。あの、土下座なら自信あるんで。一回見てもらっていいですか?」
「ほんと!マジで土下座しますんで!無言で近づくのを出来れば止めて頂きたいのですが!!」
「あ”あ”あ”あ”あ”!!!お空!!お燐!!この際だから花の王でもいいから!!助けて、助けてええええええええ!!!!」
「さとり様、うわぁさとり様……首が曲がっちゃいけない方向に……うわぁ……」
「すげぇー。妖怪ってあんな出来そこないの人形を更に車で轢いたみたいになっても生きてるんだな」
その後、満足したのか想起された風見幽香は消えて、後に残ったのは辛うじて息をしている覚妖怪の何かだけだった。
俺はお空の要望によってこの何かを元の姿に寄せて形作った後、花を植える事で花の根が何やかんやして何やかんやで結果的に一見すると無事な様に見えるかもしれない状況を作りだしたような雰囲気にした。
代償として古明地妹の頭に大きなハイビスカスの花が咲いた。
良い事をした後は気持ちがいいなぁ!!
メイン小説を書いていたと思ったら短編を書いていた。何を言って(ry
設定
・えーきっき・シャバダバドゥ
元地蔵。何やかんやあって花の王の世直し旅(花咲かせまわるだけ)にしばらくの間ついて行った。旅の間に何やかんやあった所為でホの字だが、花の王の世直し旅(花咲かせて回るだけ)は永く、それに伴い歴代随伴者も多く居るのであんまり印象に残っていない。
花の王の死後、自分の秘書をさせようと画策してるヤベー奴。
・地獄
花の王の所為で清涼感溢れる場所に。地獄はアットホームな職場で働きやすい環境です!
萃香や勇儀を地獄にぶち込めるかなーって考えてるのは花の王だけ。
・Houdy!!
作者のマイブーム
・霊烏路うにゅほ
可愛い。馬鹿だけど可愛い。まともに会話できるけど可愛い。核融合でもどうにもならない花ヤロー相手に疲弊。むしろ花が核融合する。
・インド象
古来より威力の単位として使われてきた由緒ある存在。
・重水素水
有毒らしいが妖怪に効くかどうかは知らん。
・古明地姉
犠牲枠
・古明地妹
ハイビスカスが頭に咲いて「バラじゃないんだ……」とガチ凹みした。