花を咲かせましょう   作:輝く羊モドキ

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引っ越ししたり怠惰の悪魔に憑りつかれていたりコログのミを集めてたりしてました。



「私と契約してラジオのメーンパーソナリティーになってよ!」
「いーよ」


花の王に学ぶモテ男の作り方  

 

『人と人が石器で殺し合っていたような時代を見てきた身としては、魔力も使わずにこんなゴテゴテしたモンだけでよくもまあ遠くに声が届くモンだと感心するわけだが』『花の王!もう放送始まってるってば!』

『おっといけねぇ。ってなわけで始まったラジオ番組《花の王に学ぶモテ男の作り方》の進行役こと皆さん御存知、花の王だ。よろ』

『同じく進行役のルーミアなのかー。よろ』

『二人とももうちょっとさぁ……』

『それとカンペ役のクソ河童こと人間のケツ追っかけまわすのが大好きウーマンの三人でお送りするぜ』『言い方ァ!』

『河童、初の担当番組だからってはしゃぎスギなのかー』

『裏方がしゃしゃり出てくるのが許されるのは巨漢のオカマが出る番組だけだぞ』

『この野郎……言わせておけば……!』

『はいはい、後にするのかー。新番組始まって早々番組を潰す気なのかー?』

『ぶっちゃけ言って広告収入も何も無いラジオ番組なんて放送する意味あんの?』

『あるわ馬鹿!何のために私ら河童が態々人里全部の家にラジオ機器を設置したと思ってんだ!』

『それなんだがな、河童。この前結構な数のラジオが博麗神社に持ち込まれて「河童が急に訳の分からん機械を置いてった。不気味だから何とかしてくれ」って頼まれてな』『はぁ!!?』

『んで、霊雅……あ、今代の博麗の巫女な?そいつが「無くても困んないんならぶっ壊しときましょ」ってな感じで夢想封印したわ』『何してんのアイツ!?』

『残念ながら当たり前の対応なのかー。何の説明もなくいきなり自分の家によくわからない物置かれたらそりゃ捨てるのかー』

『と言うか花の王お前その場面見てたなら止めろよな!?お前外の世界とか行ったり来たりしてんならラジオくらい見た事あるでしょ!?』

『なんで?』

『なんでって……少なくとも人里にラジオ設置する前から花の王にラジオパーソナリティの話持ち込んでたでしょ!?』

『だからなんだよ。ソレとコレは全く違う話だろ。そもそもお前等河童共が事前の説明もなくいきなり人ん家にラジオ機器設置するのが悪い上お前ら河童製の機械なんて家に置いておくもんじゃねえだろ。いつ爆発するか分かったもんじゃねえし』

『ふぐぅ』

『むしろ夢想封印された残骸から組み立て直せる分だけ直した上、電波感度や音質とかその他諸々向上させて幻想郷各地でも使えるようにチューンアップした物を上は天界から下は地底まで届けて、問題の人里にもキチンと機械の説明をしてから設置してやったんだからお前等河童は俺に泣いて土下座するべきでは?』

『うわ、珍しく花の王がガチ有能な働きなのかー』

『ぐ、ぐひゅぅ……』

『ま、そんな訳でこの番組は人里に住むモテない男子から妖怪の山の陰気天狗、地底に住むダメ鬼、天界の無能天人、果ては魔界のヒ魔人共に向けたバラエティ番組だ。よろしくな』

『よろしくなのかー』

 

『さて、前置きが長くなったな。いい加減番組を進行しよう、つー訳で……おい河童、いい加減落ち込んでねえでカンペ出せ』

『ぐぅ……』

『ガチ凹みなのかー』

『どれどれ……記念すべき最初のコーナーは、《花の王に学ぶオシャレ男子の作り方》いえー』

『どんどんぱふぱふー』

『もっと真面目にやって……』

『カンペに書いてある事そのまま読んだだけなんだが』

『河童ってそういうとこセンスないのかー』『ぐっ……』

『そもそもオシャレ男子の作り方って言われてもな……』

『これには流石の花の王も苦笑いなのかー』

『俺に流行りのファッション誌の内容読み上げさせるつもりか?』

『い、いやー、そこはさ、ほら……ダンナの幻想郷一モテる男としてのテクニック?的なモンをさ……』

『おっそろしい程に揉み手が似合うな河童。ぶっちゃけて言うとこの幻想郷でモテたきゃ強くなれ。以上、閉廷』

『番組が終わったのかー』

『ちょ、花の王ぉぉぉ!?勝手に終わらせないで!?ってかそんなミもフタも無い言い方しないでくれよぉ!?』

『じゃあ聞くがお前等妖怪が仮に番うとして、自分より弱い男に靡くか?』

『うーん……ハッキリ言ってムリなのかー』

『んー……やっぱドラマチックな出会いとかじゃないと……』

『そこそこ長く生きてスレている幻想郷の妖怪共が求めるドラマチックって何だよ。そういう事だ』

『前提からして番組が成り立たなかったのだー』

『ちょ、ちょーっとまったぁ!あくまでも、あくまでもこの番組は人間用だから!人間向けのアドヴァイスとか無いかなぁ!?』

『それこそ好みなんて十人十色だろ。俺に何を言わせたいんだよ』

『そりゃそうだけれども!でも私ゃ知ってるんだぞ!花の王アンタが人里歩くたび人間の女衆はキャーキャー騒いでる事を!そのモテテクをご教授しやがれくださいッ!!』

『なんでお前が必死なのかー?』

『はぁーん?ンなもん俺が美を極めた男だからだろう』

『花の王も花の王でまるでオカマみたいな言葉なのかー』

『俺は男の中の男だ。そうじゃねえ、話は極めて単純だ』

『その単純を教えろってんだよ馬鹿野郎!』

『あ?』

ヒュポッ

 

『妖怪が殴られたとは思えない音なのかー……』

『話を戻すぞ。要点は単純明快、《自分が有象無象にならない事》だ』

『うぞーむぞー』

『おう。例えるとだな……ルーミア、お前が一番印象に残っている博麗の巫女って誰だ?』

『えー?そりゃー霊夢でしょー?今何歳だっけかー?』

『あの身体だともう200……また話がずれたな。じゃあ次の質問だが、霊夢の次の代の博麗の巫女は好きか?』

『ええ~?そんな前の事覚えてないのかー』

『そういう事だ』

『……??どういうことなのかー?』

『好きの反対は無関心とは良く言ったもんだわな。そもそも印象も何も残らない、そんなヤツが好かれるなんて無理なんだよ。まあ、アイツの場合は幽香が気張った所為もあるんだが、結果だけ見りゃ同じ事。霊夢の事はしっかり覚えててもその次の博麗の巫女はハッキリ思い出せない。思い出せもしない奴を好きか嫌いか聞かれても困るって訳だな』

『つまり印象に残せるほどにド派手な格好すればモテモテなのかー?』

『そこまで単純じゃねえよ。お前仮に服が常にピカピカ光って髪がトウモロコシの様に逆立ってる人間が居たらどう思うよ』

『そこが人里の外なら良い人間だなーって思うのかー』

『人食い妖怪に聞いた俺が馬鹿だったわ。じゃあリグルがそんな恰好していたらどう思うよ』

『距離置くね』

『即答とはたまげたなぁ。まあそういう訳だな、いくら印象に残ろうともそんな明らかにヤバイ見た目の奴には近づきたくもない。ならどうすればいいと思う?』

『えー?印象に残るけど良い見た目にする?』

『そうだな。総括すると《有象無象に埋もれないように目立つ格好、かつ悪い印象を持たれない恰好》である事がモテる事の大前提な訳よ』

『なるほどねー。私も昔だったらともかく、最近は小汚い恰好の人間は食べないなー』

『そもそもお前人間食べなくても生きていけるだろ』

『そりゃーねー。でもたまに食べたくなるのだー』

人間食べる食べないは置いといて話進めて……

『うお、河童お前まだ生きてたのかー?』

『あー……まあ、よーするに汎個性な見た目は避けて身綺麗にまとめる事がオシャレの第一歩って事だ。そういう意味じゃこの幻想郷はオシャレな奴が多いよな』

『そーなのかー?』

『人里はそうでもないが、それ以外はオシャレ気にしてる奴が多い印象だ』

『それ単純に人間以外がオシャレ気にしてるだけじゃないのかー?』

『ところがどっこい、霊夢や魔理沙、早苗に咲夜は全員生前からオシャレを気にしてたぞ。ただ人里って環境がオシャレに鈍感かと思いきやワーハクタクは態々ツノにオシャレリボン付けてるし』

『そーいやツノにリボン付けてる鬼もいたなー』

『人と違う事をする、それもオシャレと言えばそうなんだが、それで見る人を不快にさせてりゃ逆効果だ。……あー、身綺麗な纏め方は外来のファッション誌や里の理容室を利用した方が手っ取り早い。ファッション誌なんぞ、と思ってる奴はよっぽどのハイセンスか自己評価も碌に出来ない奴のどっちかだ。さらに、髪はボサついてるだけでマイナス印象になる。うまく纏める自信が無い奴はバッサリ切るか良い感じに纏めるプロに頼め』

『ハイセンスな奴は非モテじゃないと思うのかー』

『つまりモテたいと思うならさっさとファッション誌買いに行け。……ん?何処に売ってるか?貸本屋か香霖堂だろ』

『ついでにモテない妖怪共に朗報だー。中有の道に腕のいい髪結師が店を構えてるぞー。私もそこで時々髪を切ってるのだー』

『気が向いたら俺もカットぐらいは出来る。博麗神社に来る度胸があって、運が良けりゃ髪ぐらい切ってやるよ。無論賽銭は寄越せよ』

『運が悪かったら?』

『霊雅に夢想封印されるだけだろ』

『おぅ』

 

『……さて、一応このコーナーはこんなもんでいいか?』

『まー今日は初回だしねー。あくまでも基礎編ってことなのかー』

『……ん、えー、花の王に聞きたいアレやコレ、募集してます。お便りは《河童出張所:人里支部》もしくは《玄武の沢の妖怪ポスト》へどうぞ……なんぞこれ』

『やー、ラジオといったらやっぱコレでしょ、ハガキ職人』

『そーなのかー?』

『多分違うと思うんだが。俺に何を聞くってんだ?』

『それなー。大抵の事は聞けば普通に答えてくれるぞー?』

『明日の天気から星のでき方まで何でも答えてしんぜよう』

『えー?コーナーとして成り立たなくなるじゃんか』

『それこそ知るかよ。お前のカンペ次第だったじゃねえか』

『あ、じゃあ折角だし聞きたいんだけど花の王ってぶっちゃけ経験人数何人?』

『河童お前それ幻想郷全土に放送されてる質問って自覚してんのかー!?』

『やー、深夜枠ってやっぱこういうのブッ込んどかないとさ?で、ほら。どうなのよソッチの方はさ』

『経験人数って言われてもなぁ。それ頭に花咲かせたのってカウントする?』

『カウントする訳ねえだろ!?アレとアレがドッキングした回数答えろよぉ!?』

『何この河童怖いのかー』

『アレとアレって、要するに交尾と言うかセックスの事だろ?』

『……な、なんか花の王の口からセックスとか聞くと生々しいなぁ。そうだよ』

 

『生殖行為と言う意味なら数え切れない程だがセックスなら経験人数は一人だな』

 

『……』

『……あー。どういうことなのか?』

『まー、俺は全にして一、基本的に生殖行為自体不必要なモンなわけよ。これは《一人一種族》と呼ばれる妖怪共の括りと同じだ。繁殖する必要が無いから性機能が一部オミットされてる訳だわな。具体的に言えば性欲が無い。だが俺には何人もの子供が居るだろう?』

『あー、いるねー』

『大体はいわゆる養子関係な訳だが、残りはいわゆる実子なんだよ。実際に《血を分けた》訳じゃないがな。妖精達は実子の方が多いな』

『……ん?ちょっと待って、意味が解らなくなってきた。え、花の王って増えるの!?』

『なんでそうなる……や、増えるけども。そうじゃねえよ、俺は花を創るだろ?その際に大地に種を植えればいわゆる普通の花になる』

『大半が《普通》じゃないのかー』

『話の腰を折るな。なら大地に植えず他の所に植えたらどうなる?そう、例えば人間の女だったら』

『……え、エグイ』

『花の王、ちょっとヒくのかー……』

『豊かな想像してるところ悪いが違うからな?正解は《母体の生命力を受けた妖精が生まれる》だ。プレデター的な生まれ方はしないから安心しろ』

『でも胎に種を捻じ込むんでしょ?』

『違う。種をお守りの様に身に着けてるだけだ。つーかルーミアお前心当たりあるだろ』

『……あー、アレかぁ』

『え、なになに?まさかルーミアあんたその見た目で経産婦!?』

『《その見た目》は余計なのかー』

『(経産婦は否定しないんか)』

『ともかく、俺が意図するしないに関わらず種を身に着けたり、或いは食べたりした奴から生まれたのも元はと言えば俺な訳だから俺とその母体の子と言う訳。つまり生殖行為は数え切れない程って訳だ。わかったか?』

『ん~……まあ、なんとなく?』

『花の王が不思議生命体してんのはいまにはじまったことじゃないしねー。で?私としては花の王とセックスした一人が誰か気になる訳なのかー』

『それはもう察しついてるだろお前』

『花の王の口からききたいのかー』

『はぁ、なら黙秘権を行使しようか』

『なぁ!?ずるいぞー!』

『別にラジオだからって全部赤裸々に話す必要もないだろ。そもそも話した所で今の幻想郷勢は大体が《誰?》ってなるだろうが』

『ぬぅ、それもそうなのかー。まあ、花の王の王が使える事が知れただけよしとするかー』

『や、だから俺は性欲がオミットされてるんだって言ってるだろうに』

『でも使えるのかー』

『必要だったから使っただけだ。それ以外に排尿以外の用途なんてねえよ』

『必要になる場面って何だよ……』

『永く生きてればそういう場面もある』

『えぇー……』

 

『っと、もういい時間なのかー』

『おい、なんかシモい話しかしてない気がするんだが』

『別に構わないのかー。ていうか、この番組が続こうが終わろうかどーでも良いのかー』『ちょ!?』

『ま、それもそうだな』『おい!?』

『てなわけで、ここまで聞いてくれたリスナーの皆さん、ありがとーなのかー』

『こっちの手元の機械で視聴率見る事が出来るんだが……ああ、うん』

『えっ!?何その機能私知らないんだけど!?ちょっと見せて!?』

『えー……やだ』『なんで!?』

『最後までぐだぐだだったけど別にいいのかー。それでは皆さんさよーならー』

『待って!待って!!まだ終わらせないで!?』

『えー?』

『いま丁度いいタイミングだったろ』

『コーナーらしいコーナー二つしかやってねえじゃん!?ここで!視聴者の皆様にご報告!花の王、及びルーミアにやってほしい事大募集!面白ければレギュラーコーナー化もあるかもよ!それ以外にも面白そうなコーナー案も募集しちゃうよ!』

『清々しいまでに他力本願。番組運営やめたら?』

『うるせぇ!お便りは前も言ったけど《河童出張所:人里支部》もしくは《玄武の沢の妖怪ポスト》へどうぞ!盟友の面白いお便り、待ってるぜ!』

『もうお前がメインキャスト張れば?』

『やかましゃ!あんた等が自由すぎるほどに場を引っ掻き回すからだろ!?』

『人の所為にするのは良くないのかー』

『《河童がうっとおしいので降板して》って便りでもいいぞ。それなら博麗神社でも受け付けてやる』『ちょ、酷くない!?』

『はいはい、てなわけで今度こそさよならなのかー』

『良い子は夜更かしすんなよ』

『悪い子は里の外で待ってるのかー♪』

『完全に食う気である』

『あ、妖怪は来なくて大丈夫なのかー』

『いや、さっさと終われよ!』

 

 

 

『……河童、放送終了のスイッチはそっちにあるぞ』

『え?あ、やっべ』

 

この放送は、幻想郷に産業革命を、守矢神社の提供でお送りいたしました。

 

 

 

「……いや、なにこの放送!?また花の王か!」

「紫様、珍しく起きてると思えば急に騒ぎだして……ついにボケましたか?」

「ボケてないわよ!?」

 

 




さて、またサボるか。

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