デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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しばらくお話し回が続きます。


ブロンズの鉄の塊であるナイトが布装備のジョブに遅れをとった流石ムサシ汚い

「これで、とどめだ!」

「ガ、ガアアーー!!」

 

黒の剣士の声と、イルファングの断末魔が無闇に広いボスフロアに轟いた。

 

体勢を立て直した討伐レイドは、ディアベルが後方、全体の見える位置でセンチネルを含む動向を掌握し、キリトが前線でカタナスキルへの対策を含む陣頭指揮をとる形で再開された。

 

こうなると元より追い込まれていたボスになす術はなく、一丸の猛攻撃とキリトの前に、巨体はあえなくポリゴンとなって散ったのだった。

 

「……勝ったのか」

「ああ、勝ったんだ、俺たち!」

「あ、お、おおおおーーー!」

 

鬨の声が上がる。

 

男達が手を天に掲げて肩を叩いて喜びを分かち合う。

この光景に題名を付けるなら「勝利」以外に無いだろう。

それも、予想外のトラブルを幾つも乗り越えての完全無欠の大勝利だ。

 

「……待ってくれ」

 

そこにポツリと、水を差す声。

ディアベル。この勝利者達の総指揮官であり、本来なら、誰よりも快哉を叫ぶべき男。

ボスの予想外の剣技にあわや落命の危機を私に助けられ、謀略を巡らせて封じていたキリトにラストアタックとMVPを持っていかれた形だ。

 

だけど、こっちを見詰める瞳に浮かんでいるのは怒りでも憎しみでもなく……困惑。

 

「なに? レイドリーダー? 怖い顔して、しるぶぷれ~?」

「……ふざけないで、答えてくれ。……どうやって、どうして俺を助けた? 助けられた? 君だって、誰にだってあのボスは予想外だったんだ。なんで俺を、危険な、……理由は?」

「……まあまあ、時に落ちついてよナイトさん」

 

生の感情は大きく溢れるのがこのゲーム。

迫る刃と、あと一手違えば死んでいた事実を思い出したのだろう。

蒼白な顔と震える声、まとまらない質問、それでも聞きたいことはだいたい察したよ。

ムサシは出来るこなのだ。

 

……気がつけば、周囲もバカ騒ぎを止めてこっちを見てる。なによ、見てんじゃないわよ。特にキリトにアスナさん。

見物料とるよ、尻撫でさせろ。

 

「……まずは、どうして助けられたのか、から答えましょうか。まあ、言ってしまえば、貴方をずっと見ていたから、だから、突出し過ぎたのもすぐ分かった」

「……なんで注目してたんだ。……キリトさんから、なにか聞いていたのか」

「うんにゃ」

 

さてさて、辻褄合わせの時間よ。できたらなあなあで流せればよかったんだけど。

 

「噂、実際に会った印象、その他もろもろと女の勘(原作知識)で、私は十中八九ディアベルさん、貴方がベータテスターだと思ってた」

「な、なんだと! ディアベルさんはそんなんじゃ……」

「黙ってろ! ……ごめん、続けて」

「お、おう」

 

リーダーに対する誹謗に気色ばんで叫んだ手下Aに、ディアベルは見たことないような顔で怒鳴って、打って変わって穏やかに話の続きを促してくる。……こえぇ。

 

「ええっと、それで、巷でのベータテスターの評判って酷いもんじゃない。私は偏見とか、持ちたくないけど……火の無いところに煙は立たない。貴方がそうでない保証が無いなら、警戒するのは当然よ。……リーダーだもの、指示に恣意を混ぜて、邪魔なヤツを消すくらいは簡単かもね?」

「……それは、ないよ」

「そう、貴方は攻略に真摯だった。……私が思うに、だから突出した」

「……」

「そこでキリトが、うちの大将が叫んだのよ、ダメだ下がれって、私やアスナに言ったんじゃないわよ、センチネルよゆーよ。……貴方には聞こえなかったでしょうね、距離があったしボスに集中していた……」

「ああ……」

 

目を瞑り、ディアベルは暫し黙りこんだ。……何を思うのかは、読み取れない。

 

「……すまん、続けてくれ」

「ええ、その時点で私は取り敢えず走ったわよ。キリトやアスナより、貴方とレイドが危険だった。だから間に合った」

「……君の強さは、充分見せてもらった。疑問はあるけど、まぁいい。……間に合ったから、助けられた、ここまではいいとしよう……もう一つは?」

 

ん、もう一つ?

ディアベルとしてはこちらの方が本題だとばかりに真剣な眼差しだ。イケメンだ、爆発しろ……いや、やっぱり生きろ。

 

「どうして、助けたんだ? 君から、君達からしたら、一般プレイヤーに紛れて指揮を執る危なくていけ好かないベータテスターだろ。未知のソードスキルだ。そうじゃなくたってボスだ。危険すぎる、助ける必要なんてない。そうだろ?」

「いや、助けるでしょ」

 

ポカンとした顔を晒すディアベル。面白いぞ。その路線でいこうぜイケメン。

 

「ゲームはクリアする、これ当たり前。閉じ込められたら悔しいし出たい、これも当たり前。……死にそうな人は助ける、もちろん当たり前でしょうよ。……ナイトに人助けを説く、流石サムライは格が違った」

「……おい」

「失礼、でも本当にそんなもんよ。助けたかったから助けた。……御大層な理由なんて必要かしら?」

 

そう、ディアベルは生きてる。

リアルの世界で当たり前に生まれて、当たり前に生きてきた、もしかしたら私より、「俺」なんかより真っ当な人間なんだ。……文字情報でも、登場人物でもない。ママンや、いのりちゃんと、変わらない。

 

「お互い、命があって良かったじゃない……助けた甲斐があったわ。この勝利は貴方のものよリーダー」

 

こんなもんかな、納得してくれただろうか?

さらっと流して解散してくれると助かる。今回のピンチでディアベルはんも慎重さを身に付けるだろうし、攻略全体がいい方向に向かうといいな。

 

「……はあ」

 

ディアベルは深く、溜息を吐いた。

それからフロアの高い天井を見上げて、なにやら考えをまとめたようだった。

 

そして、決意のこもった今日一番のイケメンフェイスでレイド全体を見渡して、言った。

 

「みんな、聞いてくれ。……俺はムサシの見立て通り、ベータテスターだ。だけど聞いてくれ。……俺が何を考えてたか、何をしたかったのか。誓って本当のことだ。……この最高のレイドを、嘘で終わらせたく、ないんだ」

 

……あれ、なんか思ってたのと違う。




謙虚さって大事、古事記にもそう書いてある。

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