クオリティーは読んでの通りですのでご了承ください。
作中の言葉はあくまで彼らの意見です。
苦情、批評は受け付けませんのでご了承ください。
加藤の言葉にみんなが黙った。
そう、ここにいる5人は【本性を誰にも見せない】という共通点の基に集まっている。
加藤は穂乃果を見て続けた。
「俺たちはこの辺りでは1番の進学校の青南学院高校に通ってるからな、私立校だから校則もかなり厳しいし、学校側もなるべく生徒たちをいい感じに見せたい。
それに、俺たちはそこではぶっちゃけ優等生だ。 4人とも成績が良くて大人受けも良くて、側からみれば羨ましいと思うかもしれないけど、実際は自分たちの評価を落とさないために必死なんだぜ…」
お前と違う意味で同じだと加藤は付け加えた。
「そうだな… 僕も加藤たちとは最初はいつ蹴落としてやろうかと考えていたんだ。 自分の評価を上げるためにな、そんなのは進学校では珍しくない… あの時はライバルなんて生易しいもんじゃなかったよ… 自分以外はみんなが敵だった…」
加藤の言葉に同意しながら竹迫が続けた。
「でも、ある日、みんなが同じ気持ちだったのが分かって仲良くなったのよね」
満永が楽しそうに笑いながら言った。
「ああ、それで、4人で遊びに言った時μ’sのライブがたまたま開催されてたんだよな、そんな時、俺たちと同じ目をした人がセンターで必死に笑顔を作りながら歌って踊っているのを見たんだよな」
川野が穂乃果を見ながら言うと、穂乃果は顔を伏せた。
川野はニッコリ笑って続けた。
「お前は見るからに辛そうだったもん… ライブが終わった後も、笑顔でバカっぽく振る舞ってメンバーをピエロのように笑わせている。 側から見れば拷問のようなものだったさ」
「………」
その言葉に穂乃果は瞳を潤ませた。
「お前と俺たちは引き合う磁石のように親しくなったよな、ライブが終わった後、トイレに行くとか言って1人で仲間から外れて、見えないところでため息ついてるお前のとこに行って話しかけたら、お前は俺たちと話しているうちに次第にボロボロ泣きだしたからな〜…」
川野が当時のことを思い出したらしく笑いながら言った。
「お前と俺たちは似ているんだ。 家族にも本性を出さないとこもそっくりだ…」
加藤が言うと竹迫も続けた。
「そうだよね、僕たちも両親からのプレッシャーから自分を殺して常に優等生を演じなければならないからね… 君は僕たちが付けている仮面とは違う仮面を付けているけど、僕たちにはその苦しみが分かる」
竹迫が穂乃果に笑いかけた。
「周りの人たちは私たちの苦しみなんて分かってくれないわ… 道徳とかなんてクソくらえよ、クラスメイトに心を開いていって、【みんなが友達】みたいな友情がテーマになっているはかばかしい青春ドラマやアニメがよくあるけれど、私たちから見ればあんなの気持ち悪いの一言よ」
満永が鼻で笑いながら言った。
「満永が言ったように、俺たちの苦しみは俺たちにしか理解されない。 でも大丈夫だ。 本当のお前が周りに受け入れてもらえなくても俺たちはお前を受け入れるさ。 本当のお前は優しい奴だ、俺たちと違い本性を隠しているのはみんなを失望させないためだからな…」
加藤が優しい顔と声で子どもをあやすように穂乃果に言った。
穂乃果が顔を上げると、そこにはいつの間にか本当の自分の唯一の味方である加藤たちが笑顔で立っていた。
穂乃果は肩を震わせていたが堪えきれなくなったのか加藤たちに涙を流しながら抱きついた。
加藤たちは穂乃果を優しく抱きしめ返した。
穂乃果はこの抱きしめ返してくれた加藤たちの温もりは今までの誰よりも暖かく感じた。
この時間が穂乃果は何よりも好きだ。
自分の目の前にいる加藤たちは素の自分のことを受け入れてくれる。
誰にも明かさない本当の自分を受け入れてくれる。
穂乃果はそれだけで幸せにだった。
本当の自分を出してしまえば、自分の居場所がなくなってしまう気がしたから…
それこそ世界中何処を探してもないような気がして怯えていた。
自分の存在が不安定になりそうで、存在意義がまったくわからなくなりそうで……
自分の居場所が欲しいのは我儘でもなんでもない自然な事なのに…
それを願うことすらも彼女はできないほどだ。
穂乃果と加藤たちはしばらく抱きしめ合っていた。
ようやく穂乃果は落ち着いたらしく加藤たちから離れた。
夜も日付が変わるほどに遅くなり明日も学校があるということでその日は解散となった。
穂乃果の心は加藤たちと合ったことで晴れやかになり、明日も頑張ろうと思えた。
加藤たちも自分と同じ気持ちの人たちと会えたことにより喜びを感じ、明日も頑張ろうと思えるようになっていた。
それぞれが晴れやかな気持ちで公園を出ていった。
しかし……
「そ、そんな… 穂乃果ちゃんが… そんな…」
公園の近くで今の一部始終を見ていた、人影は震える声で呟いた。
「信じられない…… そんなの絶対に信じられない……!」
その人影は逃げるように公園を走り去っていった。
街頭に照らされ、その人影の姿が照らされた。
紫色のかかったお下げ髪の髪型で大きな胸の女性だ。
そう、音ノ木坂学園の3年生で元副生徒会長でμ’sのメンバーでもある、【東條希】だ…
希は涙を流しながら夜の闇を駆け抜けていった。
そして、とうとう、穂乃果の付けている仮面が音を立てて外れかけた。
これが原因で全ての歯車が狂い始めた。
しかし、誰一人としてそのことに気づいた人間はいなかった。
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