浜風は提督に甘えたい   作:青ヤギ

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浜風は甘える方法を知りたい①

「浜風さん信じてくださいってば! このことは記事にしませんし、誰にも言いふらしたりしませんから!」

 

 涙目で土下座さえしかねない勢いで青葉はそう言う。

 

 艦隊イチのジャーナリスト(自称)として、今日も今日とて彼女はペンとメモ帳を片手に、興味深い情報が転がっていないものかと、ハンティングに興じる狩人のごとく嗅ぎまわっていた。

 

 そして駆逐艦たちの憧れの的である浜風が、日々提督に可愛がってもらいたいと考えている甘えん坊という衝撃の事実を知り「イヤッハアアアア!」とテンション高々になっていたのも束の間。

 

 デリケートな部分を知られたことで憤怒の化身となった浜風に息の根を止められ、地上にも関わらず危うく轟沈しかけたのが、さっきまでのことである。

 

 情報とは平等に開示されるべきもの。

 誰しも、知る権利がある。

 そう青葉は信仰している。

 たとえ何があろうと、真のジャーナリストは伝達をすることから逃げてはならないし、非難を恐れてはならないのである。

 

 ……と普段、そう意気込んでいる青葉ではあっても、さすがに命は惜しいので、絶賛全力で命乞いをしているところであった。

 

「大丈夫ですって浜風さん! このことは青葉の胸の内に閉まっておきますから!」

 

「いいえ。信用なりません」

 

 絶対零度のごとく冷めた眼差しを向けながら、浜風は言う。

 

 駆逐艦とは思えない悩ましいボディから放たれる覇気は、これまた駆逐艦のものとは思えないほど強烈な圧力を秘めており、思わず粗相をしてしまいそうなほどに恐ろしい。

 

 光彩を失った瞳がギロリと、青葉を睨めつける。

 冗談抜きで青葉は洩らしそうになった。

 

 先ほど首を絞めてきたあの怪力といい、あなた本当に駆逐艦ですかとツッコミたくなる。

 それすら恐怖で口にできないが。

 

「信じてください? いったいどの口でそんなことをおっしゃるんですか?

青葉さんが一度だってこの手の話題を黙秘したことがありますか? ないからこそ、これまで多くの艦娘たちの恥ずかしい個人情報が艦隊中に知れ渡っているわけですよね?」

 

 浜風の指摘に、青葉はギクリと冷や汗をかく。

 事実そうなので言い返せない。

 

 誰にも明るみにしたくない秘密というものがある。

 

 その秘密をことごとく暴き、過剰に装飾した面白記事にして流布するのがこの青葉という艦娘の恐ろしいところ。憎らしいところ。

 

 娯楽の少ない鎮守府に一種のエンターテインメントを投入したと言えば聞こえはいいが、晒し者となる艦娘にとっては、たまったものではない。

 

「いやいや! でもさすがの私も本当に嫌がっている人の個人情報を記事にしたりしませんよ!? 本当ですって!」

 

「どうだか……」

 

「う、疑い深いですね~浜風さんは~。ほ、ほら、皆さんからも何とか言ってくださいよ~?」

 

 疑惑と不審の塊となっている浜風に説得しても埒が明かないので、青葉は他の第十七駆逐隊の面々に助けを求めるが……

 

「んや、信用できないね」

 

「できんな」

 

「できんね~」

 

「あ、あら~?」

 

 味方はいなかった。

 

「忘れたとは言わせないぜ~青葉さん。谷風さんが夜いびきかいて寝るってことを鎮守府中にバラしたのをさ」

 

「ギクッ」

 

「この磯風が、隠れて夜に焼き魚の調理に勤しんでいることも記事にしたな?」

 

「ギクギクッ!」

 

「提督さんのために編んだマフラーが実は何回も失敗してて、渡したのがようやくできたものって知られたときはホンマ恥ずかしかったわ~」

 

「あ、あはははは!」

 

 笑って誤魔化す青葉だったが、もはや修正の仕様がないほどに風向きが悪くなった。

 

 日頃の行いは大事ということを痛感させられる光景である。

 

「ヤハリ ココデ 消スシカ ナイ」

 

 ゴゴゴゴと背後から突き刺さるプレッシャーがますます肥大化する。

 

 

 

「そそそ、そうだ! じゃあこうしましょう! これから青葉が浜風さんの目的が達成できるよう、サポートいたします!」

 

 再び命の危機を悟った青葉は、咄嗟にそう言った。

 

「……サポート?」

 

「はい! 浜風さんは司令官に素直になれないことが悩みなんですよね?」

 

「っ!? べ、別に悩みというほどのことでは……」

 

 動揺から浜風の怒気が薄れていく。

 チャンスとばかりに青葉は一気に畳みかける。

 

「ご安心ください! この青葉がそんな浜風さんのために、情報を提供しようじゃありませんか!」

 

「情報?」

 

「はい! 何事も成功への近道は、いち早く情報をキャッチすること! すなわち、相手を知ることです!」

 

 戦においても、スポーツ競技においても、もちろん就職活動においても、情報は重要な立ち位置を占める。

 

 個人のスペックが如何に高かろうが、肝心な場面で十全な発揮ができないのでは話にならない。

 

 本番に強い人間というのは、事前に多大な準備をするもの──即ち予備知識を身に着けてきている。

 

 相手の実情を把握することこそ必勝のカギ。

 それが余裕を生み、冷静な判断力を起こさせ、ベストコンディションを引き出すことを可能にする。

 

 いつの世も、情報を集める諜報員が有益扱いされる所以(ゆえん)である。

 

「つまり青葉さんは浜風のために、スパイになるってことかいね?」

 

「そういうことです浦風さん! 青葉の諜報技術は伊達じゃありませんよ?」

 

 確かに、と駆逐艦の一同は頷いた。

 青葉の異様な情報収集能力の高さは、これまでの新聞記事で被害に遭った全員がイヤというほど知っている。

 そんな青葉ならば、浜風にとって役立つ情報を入手するなど造作もないことだろう。

 

「甘え方がわからないとおっしゃるのなら、その方法を学習すればいいんですよ!」

 

「学習って具体的にどうするんだい青葉さん?」

 

 谷風に訪ねられ、青葉はフフンと得意気に笑う。

 

「いまちょうど絶好のお手本があります!」

 

 青葉がそう言うと、何もない空間からとつじょ、いくつかの機材が出現した。

 機材の傍らには家具職人の姿をした妖精さんがいる。

 家具の模様替えの際、一瞬で配置を入れ替え一瞬で物体を出現させる能力を持つ妖精さんたちである。

 妖精さんのチカラを自在に引き出せる艦娘ならば、このように好きなときに、自由に所持品を召喚できるのだ。

 

「しばしお待ちを!」

 

 青葉が機材のダイヤルを回すと、ノイズの音に混じって、声が流れてきた。

 

 

『──皐月、次は──れを頼めるか?』

 

『うんっ! ──まっかせ──てよ!』

 

 

「これって?」

 

「司令と皐月の声だな」

 

「あの、青葉さん? これもしかして……」

 

 浦風が不安げに尋ねると、青葉はニパッと満面の笑みを浮かべる。

 

 

「はい! 現在、司令室で起きていることを、現場に送った偵察機が音声キャッチしています!」

 

「「「盗聴だぁっ!」」」

 

 十七駆の面々は呆れた。

 ここまでするかと。

 

「い、いくらなんでも、これはマズイんでねーかい?」

 

「何をおっしゃいますか谷風さん! 敵地に偵察機を送り情報収集するのは戦略の基本! 私たち艦娘がいつもやっていることじゃあないですか!」

 

 それはそうだが、この場合言いたいのは倫理的な話である。

 が、正論を説いたところで、パパラッチモードに入った青葉の耳には届きそうにもない。

 

「司令官との距離感が掴めないのなら、他の艦娘がどのように接しているのか参考にすればいいんですよ!

 いまはちょうど日替わりで多くの艦娘が秘書艦をやっている時期です! 中には甘え上手な艦娘もいることでしょう!」

 

 芸術は模倣から始まるというが、自ら解決案を探せないのならば、とりあえず他人の真似から始めてみるのも、ひとつの突破口ではある。

 そうしていくうちに、自分なりのやり方が見えてくる可能性もあり得る。

 

「しかも今回秘書艦を希望した艦娘のほとんどは、普段から司令官に好意的な感情を持っている方々ばかりです。

 きっと浜風さんでは思いつけない司令官とのコミュニケーション方法がいくつか学習できるはずで「 青 葉 サ ン 」ひっ!? や、やっぱりダメですか浜風さん?」

 

 そりゃそうだろ、と十七駆の面々は思った。

 提督を敬愛している浜風からすれば、司令室の盗聴など不敬極まる行為だ。

 危機から逃れるためにこんな提案をしたのだろうが、結局青葉は自分で自分の首を絞めてしまったようだ。

 

 とりあえず、また浜風がバーサーカー化する前に止めなければと身構える三人だったが。

 

 

 

「ありがとうございます青葉さん! あなたは天才です!」

 

 

 

 笑顔で感涙を流す浜風。

 思わず古典的にズッコケる十七駆三人組。

 

「さ、さすが浜風さん! 話がわかりますね! これからは浜風さんが報われるよう誠心誠意サポートさせていただきます! ですからどうかお命だけはご勘弁を!」

 

「もちろんです! 今後とも頼りにさせていただきます青葉さん!」

 

 熱い握手をかわす二人。

 ここにいま、ひとつの友情と盟約が結ばれた。

 

「待てぇい! おい浜風! お前ソレでいいんかい!?」

 

「止めないで谷風! 秘書艦から外されたいま、私にはもう手段を選んでいられないの!」

 

 号泣しながら浜風は豪語する。

 提督と合理的に関われる接点を失ったいま、奥手の浜風がこの先、彼に声をかける機会はますます減っていくことだろう。

 

 ならば、ちょっと倫理的に反することでも、それが希望に繋がるのなら迷いはしない。

 

「じゃないと、じゃないと……どんどん提督と距離ができちゃうんだもん!」

 

「お、おう……」

 

 ここまで切羽詰まった態度を取られると、返す言葉が見当たらなくなる。

 

「それでは皆さん! 記念すべき第一回! 

『突撃! きょうの司令室! 日替わり秘書艦でいちばん司令官と仲良しになる艦娘はだれ!?』を、お送りします!」

 

 いつのまにか司会進行役になった青葉がノリノリで実況を開始する。

 

 

 十七駆の寮部屋は、瞬く間に実況ルームと化してしまった。

 

 

 どうしてこうなった。

 そう呆然とする、浜風を除いた十七駆であった。

 

 

 

──日替わり秘書艦①皐月の場合──

 

 

 

『皐月、今度はこっちの書類を頼めるかな?』

 

『うん! まっかせてよ!』

 

 機材から皐月の弾んだ声が聞こえてくる。

 その声だけでも、太陽のように輝く笑顔が目に浮かんでくるようだった。

 

 

 

「さて、ボーイッシュでいつも元気いっぱいの睦月型五番艦の皐月さん! 彼女はこの鎮守府でも特に司令官を強くお慕いしている艦娘のお一人です!」

 

「そのようですね。ですが、この浜風のほうが何倍も何十倍も提督をお慕いしています」

 

「なに対抗してんだいお前は。ていうか、なんで青葉さんと一緒に解説役やってんだよ」

 

 谷風がツッコミをするも、華麗にスルーされ、実況は続く。

 

「今回、秘書艦変更の報を知った際、真っ先に秘書艦をやると希望されてきたのがこの皐月さん。普段から司令官のお役に立ちたいと熱望している彼女らしい行動力と言えましょう。

 いやぁ、健気ですね~」

 

「しかし、秘書艦の仕事はそう甘いものではありません。はたして皐月さんにこなせるかどうか……お手並み拝見といきましょう」

 

「何故そんな偉そうなんだお前は」

 

 磯風が呆れ顔を向けても、変わらず実況は続く。

 

 

『司令官! 次は何をすればいい? ボク司令官のためなら何でもやるよ!』

 

『そう言ってくれるのは嬉しいんだが……皐月、さっきやってくれたこの書類、間違ってるとこあるぞ?』

 

『ふぇっ!? ご、ごめん司令官! ボクまたやっちゃった!』

 

 

「おっと、皐月さん。意気込みはあるようですが、どうやらミスを繰り返してしまっているご様子」

 

「ああ、これは提督的にマイナスポイントですねー。せっかく頑張っているのにこれでは提督の信頼を失いかねませんねー。かわいそうですねー。

 ともあれ、やはり秘書艦の仕事はこの浜風が一番うまくやれるということが証明され……」

 

「浜風ぇ? あんまし意地悪なこと言っちゃいけんよぉ~?」

 

 浦風が静かに注意すると、さすがの浜風も「ご、ごめんなさい」とちょっと反省した。

 

 

『うぅ……ごめん司令官。ボク、さっきから迷惑かけてばかりだ……』

 

 

「大変です! 皐月さんが泣きだしてしまいました。司令官の足を引っ張ってしまったのが余程ショックだったんですね」

 

「しかし厳しいことを言わせていただくと、秘書艦の仕事にミスは許されません。生半可な気持ちでやると、提督の迷惑になるのは事実です……」

 

 浜風ですら完璧にこなせるようになるまで、かなりの時間を要した。

 決して遊び感覚で、できるようなものではない。

 

「膨大な仕事量。冷静な処理能力が必要とされる環境。そしてなにより提督に迷惑をかけてしまうかもしれないというプレッシャー……この辛さを乗り越えて前向きに取り組まなければ、秘書艦は務まらないのです」

 

「かぁ~っ。そんなとんでもねぇ仕事をずっと続けていたってのかい浜風!」

 

「うむ。並大抵の精神力で出来ることではないな。少し見直したぞ」

 

「浜風は努力家なんじゃね~。偉い偉い♪」

 

「ななな、なんですかアナタたち。急に掌を返して……もうっ」

 

 十七駆の仲間に直球で褒められ、浜風はプイっと赤くなった顔を逸らした。

 

「うぅ。経験者の言葉はやはり重みがありますね。皐月さん、はたしてこのまま秘書艦を続けられるのでしょうか?」

 

 全員が心配の情を、皐月に向ける。

 

 

『ぐすっ。ごめんなさい司令官。こんな役立たずな秘書艦じゃ、いらないよね?』

 

『こら皐月。そんなこと言うもんじゃない』

 

『だってイヤなんだ。司令官の足手まといになるなんて』

 

『皐月……』

 

『でもボク、どうしても司令官の役に立ちたくって……』

 

『わかってるよ』

 

『え?』

 

『皐月が一生懸命なのは充分わかってる。あんまり自分を責めるんじゃない』

 

『でも……』

 

『最初のうちから上手にできる奴なんていないさ。浜風だって、そうだったんだぞ?』

 

『あの浜風さんが!?』

 

『ああ。だから、皐月なりのペースで、ゆっくり覚えていけばいい』

 

『司令官……』

 

『それに、こんな大変な仕事をやるって言ってくれただけで、俺、充分嬉しいんだぞ?』

 

『……あっ』

 

『ありがとな。いつも、がんばってくれて』

 

『え、えへへ♪』

 

 皐月の頭をよしよしと撫でているらしいことが、機材越しでもわかった。

 

『安心しろ。わからないことがあれば、いくらでも教える。だからもうひと踏ん張り、がんばってくれるか?』

 

『うんっ! ボク、がんばるよ!』

 

 

 一同は安堵の息を吐いた。

 

「さすが司令官ですね。仕事の腕よりも、まず意気込みや気持ちを評価してくださる。そして感謝を欠かさない……彼が慕われる理由がここにありますね」

 

「まったく、あいかわらず憎いこと言うね~提督は」

 

「上官ならばもっと厳しい態度を取れとは思うが……ま、これが私たちの司令だからな」

 

「はぁ~提督さんはホンマ優しいね~♪ 惚れ惚れしてまうわ~♪ ねぇ、浜風……浜風?」

 

「ううっ……いいな。私も提督に、こんなこと言われたい……」

 

「あらら、拗ねてもうて。よしよし♪ うちが代わりに撫でちゃるけぇ」

 

 提督の思いやり深い対応に、各々が感心している中、司令室では和気藹々とした空気が続く。

 

 

『ああ、でも皐月。辛かったら素直に言ってくれていいからな? 無理させるのは、俺も心苦しいし』

 

『そ、そんなことないよ! 確かに思ってたより大変な仕事だけど、辛くなんかないよ!?』

 

『本当か?』

 

『うん! 本当だよ! ボク、いつだって元気いっぱいさ!』

 

 

 十七駆の寮部屋に、ぽわわんと和やかな空気が生まれる。

 

「はぁ~。しかし皐月さんは健気ですね~。聞いてるこっちまで微笑ましい気持ちになってしまいます」

 

「本当だね~」

 

「浜風も司令相手に素直になりたいなら、皐月のこういうところを見習ったどうだ?」

 

「あはは。磯風の言うとおりじゃね~」

 

「むっ。わ、わかってますよ。私だって、やろうと思えばこれぐらい……」

 

 

 磯風たちに煽られて、浜風がますます対抗意識を燃やしたとき。

 それは起こった。

 

 

『あのね司令官。ボク、本当に、辛くなんかないよ? だ、だって……』

 

 皐月の幼い声色に、どこか大人びた艶が混じったかと思うと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボク、司令官と一緒なら──辛いことも全部、嬉しいことに、なっちゃうんだもん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬の間を置き、少女たちの嬌声が室内に広がった。

 

「かわいいいいいいいいいい!! なんですかこのカワイイ生き物!? 青葉たまりませんよおおおおお!!」

 

「うおおおおおおおおお! 谷風さんもいまのにはグッと来ちまったよぉ!? 頭ナデナデしてえええ!!」

 

「う、うむ。同じ女だというのに、こう胸にクルものがあったな。皐月め、侮れん艦娘だ……」

 

「や~ん♪ うちも思わずきゅんきゅんしてもうた~♪ 浜風もそうじゃろ……って浜風?」

 

 女心さえ掴む皐月の爆弾発言に青葉たちが悶えている横で、浜風はというと……

 

 

「で、できない。わ、私じゃ、こんな可愛らしさを……表現できないっ!」

 

 

 歴然とした差を痛感し、膝をついて絶望していた。

 

 そんな浜風の胸中など、無論知りもしない提督は……

 

 

『……この、可愛い奴め! 思いきりヨシヨシしてやる!』

 

『はわわわっ!? し、司令官、くすぐったいよ~♪』

 

 

 追い打ちをかけるように、皐月とイチャイチャしだすのであった。

 

 

 

「大変じゃ~! 浜風が白目剥いてしもうた~!」

 

「こんなことで気を失うとは。やはり、まだまだ軟弱な奴よ」

 

「やれやれだね~。しょっぱなからこんな調子で大丈夫なんかね~。ねえ、青葉さんよぉ~?」

 

「あ、あはは。こ、これは思ってたよりも骨が折れそうですね……」

 

 今回の皐月のように、提督を慕う日替わりの秘書艦は、まだまだいる。

 そう、浜風の試練はまだ始まったばかりなのだ。

 はたして、浜風の精神力はこの先もつのだろうか。

 そして、提督相手に素直になれる日は、本当に訪れるのか。

 

 ……どの道、難航することは間違いないだろう。

 

 早くも、前言を撤回したいと思ってしまう、青葉であった。

 


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