魔王に敗北した勇者が魔王の専属メイドになるそうです   作:火野荒シオンLv.X-ビリオン

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……それでは、物語を、どうぞ………


第1話 勇者、魔王に捕まる

それは、あまりにも一瞬の出来事だった。

 

 

 

「---ぐ、ぁぁぁ!?」

「ゆ、勇者様……がはぁ!?」

「ケン!!くっ……おのれぇぇぇぇ!!ギガノエレクトロ!!」

「ま、待ってメージさん!闇雲に攻撃しては……」

 

 

 

とある世界の、禍々しいオーラを纏わせた、城の中…………

 

 

 

「…なっ!?最上級魔法を素手で跳ね返し……ぐ、ぁぁぁぁ!!?」

「メージさん!!っ…今回復魔法を……きゃぁぁぁぁ!?」

「ら、ライフさん……!だ、大丈夫ですか…!ら、ライフ、さん……?」

「…勇者様、ライフさんも……今の攻撃で……もう………」

「そ、そん、な……メージさんは……」

「……旦那も、もう……」

 

 

 

そこでは、一人の勇者と、5人の仲間が、【何か】との戦いを繰り広げていた……

 

 

 

「くっ……シーファ!お前は勇者様を連れてここから逃げろ!!」

「なっ…!?ガードさん、アンタも死ぬ気か!?」

「ここで全滅するわけにはいかん!せめてお前らだけでも逃げろ!………おらぁ!次は俺が相手だぁ!仲間の敵(かたき)討ちだぁぁぁ!!」

「が、ガード!!やめろ!やめてくれ!!」

 

 

 

だが、彼らは一人、また一人と、その命を、散らせていく……

 

 

 

「っ…!勇者様!逃げますよ!!」

「し、シーファ!やめろ!離してくれ!!」

「駄目です!!ただでさえ"アイツ"のテリトリーのせいで女神様の加護を無力化されているんだ!!ここでアンタに死なれ、たら………」

「…シー……ファ………?どう、したの……返事を、してくれよ……ねぇ……!」

「---ようやく貴様一人だけになったか…」

 

 

 

やがて、その場に残ったのは………ボロボロに傷付いた勇者と………つい先程単身で挑んだ、仲間の一人の亡骸を投げ捨てる、黒と銀の装飾を身に纏い、歪なデザインをした玉座のようなものに座っている、人間のような存在だった。

 

 

 

「……残念だったな、勇者よ……貴様たちの、敗けだ」

「…ま、おう……」

「どうした、まだやるつもりなのか……我にとっても貴様には…」

「---ゆる、さない……みん、なの………敵ィィィィィィ!!」

「…ほう、我の領域で女神の力はほぼ押さえているのに、それを無理矢理引き出したか……」

 

 

 

勇者の目の前にいる男---【魔王】と呼ばれる存在は、冷酷な目で勇者たちに向け敗北したことを告げる。

だが、勇者は怒りで我を忘れているのか、戦いの中で残された力を振り絞り出すと、剣を構えそのまま魔王の元へ走り出す。

 

 

 

「…やれやれ、今回は貴様を【生かす】つもりなのだが、な………加減はするが………死ぬんじゃあないぞ…」

「だぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇ!!」

「……今回の勇者は、喧しい勇者だことだ……一先ず---眠れ」

「っ、が、あぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

……だが、勇者は、敗北した………

それはあまりにも、一瞬で……それでいて、圧倒的だった。

それほどまでに、魔王は強かった………否、あまりにも強すぎた………勇者が過去に戦った魔物たちよりも、遥かに上回るほどに……

 

 

 

(ぁ、あ、ぁ………たお、せな…かった……ご、めん……みんな………ボク…まけ、ちゃった……)

 

 

 

敗北したことをその身で実感した勇者は、魔王の攻撃によって大きく吹っ飛びながら、少しずつ意識を失い始めているのを感じる……

既に体も動かすことすらできないのを感じ取った勇者は、その場で死を覚悟する。

そして……薄れ行く意識の中、勇者は死んでいった仲間たちに向けて謝罪をしながら、深い【闇】に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---きろ。いつまで寝ているんだ……おい、本当は死んでるんじゃあないのか?」

「もしそうならば貴方様のせいになりますよ。第一やり過ぎです」

「……ん…っ……ここ、は……」

「……目が覚めたな」

「覚めましたね…」

 

 

 

……次に勇者が目を覚ましたのは、薄暗い空間………

勇者は一瞬どこなのかと考えると、悟ったように呟く。

 

「…あぁ、そうか……ボク……魔王に負けて、死んじゃったのか……つまりここは………死後の世界……なのかな…」

「…コイツ、今辺り軽く見渡したのに我を堂々と無視したぞ」

「恐らく単にこの部屋が暗すぎたかと……もしくは頭を強く打ち付けて幻覚を……」

「はは……誰かの話し声が聞こえる……天国からボクを迎えに来たのかな………皆は先に行ってるのかな…ボクも、今すぐ……そっちに……」

「……勇者は生きて捕らえましょうとは申しましたが……その際仲間は出来る限り殺さず一緒に捕らえるべきとあれほど…」

「我も加減はしたのだが、少し加減の匙をを間違えてしまったようでな……そんな目で睨むのはやめてくれないか」

「……………あれ…でも……この声……聞き覚えが………?」

「……そろそろ明かりをつけてやれ。話が進まん」

「御意」

「うわっ、まぶしっ…………!!な、っ……」

 

 

 

暗闇の中、勇者以外の声が響き渡ると同時に、突然勇者の目の前が眩しく光る。勇者は眩しさのあまりに目を一瞬閉じ、暫くしてから瞼を開く。

……そして彼女の目線の先には、先程より控えめな光を片手で翳した怪しげなフードを被った男が一人……その隣にもう一人………

それは勇者にとって宿敵と呼ぶべき存在………そして何より、目の前で大切な仲間を殺した存在---魔王が立っていた。

 

「ようやく我に気付いたか、勇者………レイ…だったか?」

「ま、魔王……!?どうゆう、こと………ボクは……死んだんじゃ……」

「そう思っただろうが、貴様は「はっ!実はこれは夢の中で魔王に殺されたのも夢なんじゃ!?」………オーラム、こいつはもう殺して次に来た勇者を生け捕りにしないか?」

「魔王様、お気持ちはわかりますが、ここは我慢を……」

「そっか、これは夢か!じゃないと死んだあとに来る世界に魔王が来るわけないもんね!よかったー!やけに色々リアルすぎるから、全部現実だと思っちゃったよ!!夢の中では負けちゃったみたいだけど、起きたら絶対に倒してやるぞー!!正義は必ずかーつ!」

「……オーラム、殺さぬからこいつの腹をぶん殴らせてくれ」

「私(わたくし)に許可を取る前に殴る準備をするのはお止めくださ……」

 

 

 

勇者……またの名をレイは、魔王が何故目の前にいるのかに困惑するも、何を勘違いしたのか、今起きてる出来事はおろか、その前に起きた出来事も夢なのではと言い出す。

そんなレイを見た魔王は静かに拳を構え、怪しげなフードを被った、オーラムと呼ばれた男は呆れ気味に呟きながら魔王を

 

 

 

「---フンッ!!」

「……………っ、が、はぁ……!?」

 

 

………止めようとした矢先、既に魔王の拳は禍々しい暗黒に近いオーラを纏った状態で、レイの腹に深々と突き刺さっていた。

レイの方に関しては一瞬何が起きたか分からずにいたが、そのすぐ直後に嗚咽を吐き始め出す。

その光景を見たオーラムは首をぐるんと魔王の方に向けながら説教を始め出す。

 

「………魔王様、お止めくださいと言い終わる直前に殴らないでください。いやそれ以前に、魔拳撃(まけんげき)を生身の勇者にぶつけるとはどういうことなのですか。何故普通に殴らないのですか。いやまず殴るのはお止めください」

「すまん、逆に力を込めすぎた」

「逆に力を込めすぎたじゃないですよ……全く、私が念のためにこの部屋に致命傷になることをされても辛うじて生きてられる術式を施したから、勇者もまだ嘔吐物吐いたりしながらなお辛うじて生きてますが………さっきまで真っ白だったあの腹が内出血して黒色にまでなっているじゃあないですか……完全に内臓や腸が潰れてますよ、あれ」

「貴様の力ならそれぐらいは治せるだろ」

「治せますけど余計な手間をかけさせるようなことはしないでください……というか反省してください」

 

 

オーラムは深いため息をつきながら、殴られた衝撃で未だに血が混じった嘔吐物を吐き続けるレイに近づく。

そしてレイの腹に自身の手を添えると、何かを唱え出す。

するとみるみるうちに黒ずんだレイの腹部は元通りに白くなっていき、やがて痛みも消えていったのか、苦しみから難を逃れたレイは激しい動悸を起こしながら深呼吸をしていた。

 

 

「っ……はーっ、はーっ………!う、ぐ……いま、のは……」

「すまんな、貴様にこれは夢などではないと証明するためにな……どうだ、はっきり目が覚めただろう」

「っ!という、ことは……これは……」

「夢などではない。今貴様が生きているのも、その前に仲間が死んだのも総て、現実だ」

「!…き、さ、まぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

一通り動悸が収まったレイは困惑するものの、直後に魔王がレイの目の前に立ち、現実を突きつける。

それを聞いたレイは怒りを表に出しながら、魔王に立ち向かおうとする。

……だが、突然手足がその場に踏み止まってしまい、何がどうなっているのかと思い腕を見ると、手首に頑丈な鎖が嵌められているのが見える。

しかしレイは構わず魔王に腕を伸ばそうとしており、それを見た魔王はやめておけと告げる。

 

「っ!こ、このっ!!」

「無駄だ。貴様は今、女神の加護を受けてない……それを抜きにしても、それは力業では壊せない代物だ」

「黙れっ!よくも……よくもみんなをぉぉぉ!!」

「…全く、落ち着きがないやつだ……ただでさえ今の貴様は裸なのだ…あまり無理をすると、肌を傷つけるぞ」

「だま……………………いや待って、今なんて…?」

 

ほんの一瞬だけ、とある単語に反応した勇者が、さっきまで怒り狂ってたのが嘘みたいにキョトンとした顔で魔王に聞き返す。

 

「………裸だってことに今気付いたのか……しかし我も見たときは驚いたぞ…… 外見が人間の男の子供に見えたが、まさか貴様が【女】だったとはな。」

「………………………」

 

 

 

魔王の言葉を聞いた勇者は、唯一自由に動かせる首を使いながら、自分の体を隅々に見る。

………明かりが少し小さいものの、今のレイは、布一切れすらも纏っておらず、自身の肌が露出しているのが見えている……

……そしてレイは小刻みに震えながら、ゆっくりと顔を魔王の方へと向ける………その顔は真っ赤に染まっており何かを言いたそうな表情をしながら口をパクパクと閉じたり開いたりさせていた。

そして………

 

 

 

「………………………………へ……へ………変態ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!!?」

 

 

 

羞恥心のあまり、レイは胸と股を隠しながら、大声で叫んでいた。

 

 

 

~~~

 

 

 

「……さて、20分も経ったんだ……落ち着いただろう」

「落ち着けるかっ!せめて大事なところ隠せる場所ちょうだいよ!この屑!!変態!!」

「貴様を裸にしたのは我ではないのだが……それよりも貴様が何故我らに生かされているかについて話さないといけないのだが……」

「それよりも服を着せろーっ!!後この鎖を外せーっ!!」

「……オーラム、とりあえず影で身体を隠してやれ」

「御意」

 

 

 

レイが魔王の城に響き渡るほどの大声を出してから20分後………未だに"彼女"は大声で叫んでいた。

あまりにも話が進まないため魔王はオーラムを使い彼女の要望を叶えさせる。

彼女の体のほぼ全体にオーラムが不思議な力で操った影が包まれ首から下が全くといっていいほど肌が見えなくなり、これならギリギリ大丈夫なのか彼女はだんだんと静かになっていく。

 

「う、ぐ……本当は服がほしいけど………これならギリギリ……いや、でも…」

「……さて、そろそろ話に入らせてもらおうか。まず貴様を生かしたまま捕らえた理由に関してたが…」

「はっ!そうだった!!おい!ボクを捕らえて何をするつもりだ!?…まさか、ボクにあんなことやこんなことをやらせるつもりか!!?だから服を脱がせたんだろ!!?」

「…被害妄想が激しいやつだな……服を脱がせたのは色々とオーラムに仕込みをしてもらうためだ。第一、我は貴様みたいな貧相な体には興味がない……否、むしろそういう類いそのものに興味がないのでな、その辺だけは安心しろ」

「ひ、貧相……魔王にすら言われるなんて………」

「……いちいちリアクションの差が激しい勇者だな、貴様は」

 

貧相な体と言われたのがよほどショックだったのか、再び騒ぎ出したレイは目に見えるほど段々と落ち込んでいく。

が、その数秒後に魔王の方を見ると、再び喧しい声で叫び出す。

 

「い、いや、今はそれを気にしてる場合じゃない……!もしお前の言葉が本当なら、目的はなんだ!?どちらにしろ、お前の好き勝手にはさせてたまるか!」

「…目的、か……オーラム、まだあまり詳しく話さない方がいいのであろう?」

「えぇ」

「……そういうわけだ。今はまだ詳しく話すことはできない……が、その目的のためにも勇者、貴様の存在が必要なのだ」

「ボクの…存在が、だって……何を企んでるか知らないけど、お前みたいなやつに利用されてたまるか…!今からお前を倒せば……?…力が、湧かない……!?」

「無駄だ。貴様に渡された女神の力は、既に封印した……それに我の城は女神の力が弱まる。仮に封印してなくても、借り物の力に頼ってた貴様が勝てるわけがない。現に貴様は仲間も守れず、我に敗北してここに一人捕まっているだろう」

「魔王様、あまり煽られるようなことをなさらないでくださいませ」

 

ぼかすように話す魔王に対し、レイはなおも抵抗心を見せつける。

そして魔王に対し一発だけでもと、魔王に魔法をぶつけようとするも、力が湧かないことに気付く。

どういうことかとレイが戸惑っていると、魔王が彼女に宿っていた女神の力を封印したからだと告げる。

それどころか、煽るように仲間を殺したのは弱かったからだと告げ、レイは唇を噛み締めながら怒りに震えていた。

 

「ッ…このまま利用されるぐらいなら……!」

 

だが、手足を拘束され、魔法を放つ力すらも出すことができず、レイは魔王を睨む。

そして利用されるぐらいならと、自身の舌を噛みきろうと口を開く。

その際心の中で、仲間の敵討ちができないことを悔やみながら、瞳に涙を溢す。

 

(ごめん、みんな……!やっぱり敵討ちはできそうにない…!けど、このまま魔王に利用されるぐらいなら……!!)

「………我を目の前にして倒すことができずに泣いてるところ悪いが、自害しようとしても無駄だ。貴様にはもう"自害できない術式"を掛けられてるのだからな」

「…!?」

 

…が、そんな彼女の思いを踏みにじるように、魔王が冷静に呟く。

その一言を聞いたと同時に、舌を噛みきろうと開いた口が動かなくなり、彼女は力を込めて舌を噛みきろうとするも、全く動かずにいた。

しかしそれ以外の用途では動くのか、彼女は泣きながら魔王に向かって叫ぶ。

 

「…して……どうして死ぬこともさせてくれないんだっ…!ただでさえ、お前に手出しすることもできないのに……っ……どうして……」

「まだ貴様に死なれては困るからな……奴をおびき寄せるためには、まだ貴様には生きててもらわないといけないのだ………、……そんなに泣くことか?」

「魔王様、苛めすぎです。流石に精神面でやられて食事を取らなくて栄養失調で死ぬみたいな類いは、自殺封じの術でも対象外ですからね」

「…別に苛めたつもりはないが……そんなに酷かったか?」

「えぇ。間違いなく。仲間を守れなかったことを強調したり我々に一矢報いる方法が徹底的に断たれたり理由も明かされないまま生かされるのを強要されているのを自覚させていますよ」

 

どうやら自覚がなかったのか、魔王は予想以上に彼女を追い詰めているのを知り、ばつが悪そうな顔をしながら困惑する。

しかし、まだ話が終わってないのもあり、彼はレイに再度話しかける。

だが、彼女はもう既に聞く耳を持たず、これ以上の屈辱に耐えられないのか、自分を殺せとまで言い始める。

 

「…勇者よ、我の話はまだ終わってないのだが……続きを話してもいいか?」

「っ…だま、れ……これ以上、お前の話なんか…聞きたくない……!殺せぇ!ボクを殺せぇぇ!!」

「だから貴様は生かしておかないといけないのだから無理なのだが……それに、貴様にとっても利点のある話が残っているのだぞ」

「…利点……?」

「(食いついたか…)そうだ。後で詳しく話すが、貴様にはチャンスを与えるつもりだ」

 

魔王から放たれた一言により、レイは一瞬思考が停止する。

が、魔王は気にせず、なおも彼女に話し続ける。

 

「我も目的の上で貴様に対しては期待しているのでな……そのよしみとしてチャンスを与えるつもりだ」

「チャンス、だって……何処まで人をおちょくれば…」

「別に貴様がそのチャンスを投げ捨てるなら構わんが、今回のを逃したら、二度とチャンスをやるつもりはない……最低でも1年は生かすつもりだが、もし1年経ったら、問答無用で貴様を始末する。しかし今回のチャンスを断れば、その死ぬまでの約1年間は確実に生かされる……今この場で拘束された状態でな」

「ッ…!」

「…さぁ、答えを聞こう。貴様は我の与えるチャンスを受け入れるか?それとも、受け入れないか?」

 

魔王の言葉を聞いたレイは、彼が与えてくる選択肢に対し深く考える。

…もし彼の言葉が本当ならば、どちらにしろ約1年間は生かされる……が、もし彼の与えるチャンスを断れば、死ぬまでの間はずっとこの場で拘束され続けるということだ。

しかし、そのチャンスが罠であることも捨てきれるわけではない………だが、断れば何も出来ぬまま、利用されるだけされて死ぬのを待つだけ………

悩みに悩んだ末、やがて決意したのか、レイは魔王の方を見る。

その目には先程よりも大きな涙がたまっており、彼女にとっては苦渋の決断だったのだろう……彼女は声を振り絞りながら、魔王に答えを告げる。

 

 

 

「………………いい、よ……お前のチャンス……貰って、やる………!」

「……そうか………貴様のことだから、断ると思ったが……まぁいい。貴様にはチャンスを与えてやろう……オーラム、残りの術式を施せ」

「御意」

 

レイは振り絞った声で魔王が与えてきたチャンスを受け入れるという選択肢を選ぶ。

それを聞いた魔王は少し驚いたような表情をしたものの、すぐにニヤリと笑いながら後ろを向き、オーラムに指示を出す。

オーラムは気前よく返事をすると、指をパチンと鳴らす。

すると先程レイを纏っていた影のようなものが一瞬で払われ、再び彼女は一糸纏わぬ状態になり、更に両手足の拘束具の鎖が引っ張られ、大の字みたいな感じで体を広げさせられる。

あまりにも一瞬の出来事だったため、彼女は再び思考が停止するも、すぐさま状況を理解し絶叫していた。

しかし魔王は気にせずにオーラムに作業を続けるように指示し、オーラムもまた術式を掛けるために必要な道具を手に持ちながら、彼女の元へ歩み寄る。

 

「…えっ、あっ……ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?ななな、なにをするんだぁぁぁぁぁ!!?」

「言ったであろう。術式を貴様に施すと」

「だだだだからってなんでまたはだ、裸にするんだ!!?」

「肌に直接術式を施した方がより効果があるのです……安心しなさい。私も性的なことには興味がないので」

「いや興味がなくてもやめ……ひゃん!?ちょ、お腹なぞらな……ひぃん!?そ、そこは……!」

「…外で待つから、終わったらそいつに服をやって出てくるんだぞ」

「御意。……さぁ勇者よ、後三十分ほど耐えるのですよ」

「さ、さん…!?…や……やっぱりボクを殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

……それから数十分の間、地下牢から妙に生々しい声と絶叫が途切れ途切れ聞こえたのは、言うまでもない………




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ここからは、書く場所をもうけてないため、主要人物の軽い説明をしていきます。

・勇者レイ(年齢16歳)

本作の主役でボーイッシュな見た目の女の子。そしてボクっ娘。
見た目は中立的でやや男よりで認識してください。髪型はショートヘアー。
性格は基本的にアホな子、しかし頭はそれなりに回る。
女神から勇者としての力を授かるも、魔王に敗北してしまう。

・魔王(年齢不明)

本作のもう一人の主役で勇者レイが倒すべき存在。
銀髪ロングで人間の若い男性に似た容姿をしてる。性別は男です。
性格は天然だが、かなり頭が回る。
何百年も前から存在しているらしく、現在までずっと魔王として君臨している。
勇者を捕らえたのは何やら目的があるようだが……?

・オーラム(年齢不明)

魔王軍の最高幹部で、性別が男性であること以外、詳しい詳細は不明。
しかし、結構な苦労体質らしく、魔王の行動に呆れることが多いらしい。
いつもフードを被っており、フードの下にある顔は魔王以外見たことがないと言われている。



……とりあえず、主要人物関係で説明が足りない部分はここにある程度書きましたが、いかがでしょうか?
このあとも続けて投稿しますので、どうかよろしくお願いします

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