予告した通り、英霊召喚です。
……題名でバレバレとか言わない!!
が、士郎と立香達の絡みが異様に長くなりました。
それではどうぞ!
カルデアとの通信が途切れるとすぐ、桜は切り出した。
「それじゃあ、召喚しますね。先輩、この陣をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。触媒は大丈夫なのか?」
「はい、縁を触媒にしようと思ってますから」
「触媒って?それに……召喚?キャスターみたいなやつを喚ぶのか?」
さっきまで話についていけていなかった立香から声が上がる。それは至極もっともだ。
彼は神秘のしの字も知らなかった一般人だったのだから、魔術について全く触れずに人生を歩んできたのだろう。故に士郎たちの話を理解することが出来ず、また英霊の何たるかを分かっていない。
「説明するより見てもらった方が早いでしょう。ところで、誰を召喚しようとしているのかしら?」
「ライダーです。……ええと、さっきのランサーの本当のクラスというか、私たちのよく知るライダーと言うか、その……」
所長は一々説明している時間が惜しいらしい。
「さっきのランサーを?」
「ライダーのクラスで、です」
「確かメドゥーサよね?……大丈夫なの?あれは反英霊のカテゴリに入るわよ?」
「大丈夫です。彼女なら」
不安がる所長に対し、自信を持っている桜。
どちらの芯のほうが強いかなど、考えずともわかることであった。
「分かったわ、間桐。召喚しなさい」
所長と桜の間で決着(?)が着いた一方。
「立香、マシュ、ランサー。軽く説明するよ」
所長はああ言ったけど、と付け足して士郎は立香達に近づく。
実際、見てわかることと分からないことがある。それは士郎がよく知っている。
例えば、反英霊と呼ばれていても根は優しかったり。
例えば、狂化されていても紳士的であったり。
例えば、平行世界の可能性の一つであったり。
そしてもう一つ。
立香とキャスターの仮契約についての説明もしておこうと思ったのだ。
事前に何か知っているのとそうでないのとでは大きく異なる。士郎自身がそうだったからだ。
もしも彼が魔術師とはどのような存在で、聖杯戦争、サーヴァントが何で、そして魔術をしっかりと鍛錬していたのなら、きっと聖杯戦争の結末は違ったものになっていただろう。
「そうだな……何から説明したらいいかな?」
俺のこと以外で、と付け足すことも忘れない。すると、マシュは明らかに残念そうな表情をした。
きっと、士郎の投影であるとか、どうしてあれだけ戦えるのかといったことを聞こうとしていたのではないか、と予測する。
果たしてそれは合っていた。
彼女の知る士郎とはカルデアでの士郎であり、カルデアでの士郎とはマスターとしての士郎ではなく技師としての士郎である。故に、士郎と戦闘が全くと言っていいほど繋がらなかったのだ。
更に言えば、扱う魔術が特殊すぎた。何も持っていなかった筈なのに、彼は武器を手に戦った。
そしてその武器は悉くが神秘を内包する宝具であった。
マシュは薄々勘づいている。
士郎は確かに、戦闘経験があるのだろう。誰かと肩を並べたり、誰かを守るために戦ったことがあるのだろうと。しかし、それが本物かと問われると、少し違う。
頷きつつも首を傾げ、最後にはもう一つのホンモノがあると答えるだろう。
きっと、技師としての士郎さんはホンモノ。だけど、こうして肩を並べて戦ってくれた士郎さんだってホンモノ。
そしてそれは、間違いではいない。しかし彼は否定するだろう。
技師としては確かにホンモノなのかもしれない。そう見えるのかもな。でも、戦闘に関しては……俺は借り物。ホンモノとは程遠いニセモノだよ。
と。
しかし、例えそうであってもマシュには関係がなかった。
……私と違うのは、そこに英霊がいるかどうか。士郎さんが出来るのなら、私にだってできるはず。いえ、きっとしてみせる!士郎さんがして見せたように、私も皆さんを守ります!!
マシュは士郎の戦いから「まもる」ことを学んだのだ。「たおす」ための戦闘ではなく、「まもる」ための戦闘。
特に先のランサー戦はそうであった。
英霊に人間は勝てない。確かに例外はあるが、基本的にはその通りである。
倒そうとして戦えば負ける。
ならば無理に勝とうとせず守りに徹する、という選択肢を士郎は選んだ。
そしてそれは図らずしもマシュと立香に影響を及ぼしたのだ。
それ故か、マシュは士郎について質問しようと思ったのだが――それは本人に先回りされ、止められた。
おそらく、所長にも聞かせるべき話だからだろう。
動いたのは立香だった。
「それじゃあ……聖杯戦争について教えて欲しい。サーヴァントは過去、現在、未来の英雄や反英雄といった存在なのはわかった。でも、それを今から召喚しようとしてるのに俺はそれ以外のことを何も知らない」
さっきは入ってくる情報があまりにも多すぎて全く喋ることが出来なかったからか、その言葉は溢れるというより思わず漏れ出たようだった。
「クーは何かないのか?」
と、仮契約を結ぶ予定のキャスターに気遣いができるあたり、彼は優しい。
「いや、坊主のことを聞けないんならいい。……どうして心臓に縁があるのかねぇ?」
ちゃっかり口にしているキャスター。
それに苦笑いすると、士郎はキャスターに向き合った。
「そうだな、それくらいなら言ってもいい」
この話の方が先に済むだろうし、と言って立香に断りを入れる。
しかし当の立香は『心臓に縁がある』という言葉の意味を理解出来ていない。むしろ説明してくれと目線で訴えた。
それを受け、士郎はかつての出逢いを思い起こす。
「一言で言ってしまえば、俺はランサーとして現界していたランサーに殺された。ここを一突きされて」
ここを、と右の親指で左胸――服を着ているため見えないが、そこにある傷痕を――指し示した。
「それが十一年前。2004年。俺が聖杯戦争に巻き込まれた瞬間だった。死ぬはずだった俺は心臓を修復されて生き返り、ここでサーヴァントを召喚して戦うことになったんだ」
それは夢のような話で、しかし現実であった。
それを聞いて顔を顰めたのはキャスター。
「大方命令でもされてたんだろうが……悪かったな、坊主。しっかしまあ、坊主だったらそれを手繰ってオレを召喚できるかもしんねぇな!」
太陽のような笑顔。しかしその表情は一瞬の後には真面目なものになった。
「で、坊主は聖杯戦争についてだったか。あー、二人共坊主だと紛らわしいな……。まあいいか。んじゃ坊主、頼んだぜ。オレは説明とか苦手なんでな」
と、キャスターが聖杯戦争についての説明を放棄したため、必然的に士郎が話すことになる。
「ああ、頼まれた。それじゃあ軽く説明するよ。ちゃんとした説明はカルデアに戻ってからな」
さっきの話にツッコミを入れたいところだったが、士郎が話し出したことでマシュと立香は切り替えた。
「聖杯戦争に喚ばれるサーヴァントは七騎。聖杯に選ばれる魔術師も七人。それぞれが一騎ずつ喚び、マスターとなる。サーヴァントは英霊そのものを喚ぶんじゃなくて、その英霊の持つ一つの側面を喚び出す感じだな」
「もしかして、クーがさっき言ってた本職ってそういう事なのか?」
「ああ。サーヴァントにはクラスがある。
「え、あ、はい。そうですね。私のクラスは
「きっとそうだろうな。話を戻すぞ。七人の魔術師と七騎のサーヴァントたちはそれぞれ万能の願望器である聖杯を求めて戦う。俺は聖杯戦争を終わらせるために戦ったけど……」
「その戦いってさ、もしかして死ぬのか……?」
立香の問いに頷くことで答える。
「聖杯戦争は秘密裏に行わなければいけないんだ。一般人に対する神秘の秘匿は絶対。それに魔術師だとしてもマスターかもしれないし、マスターになる資格を持っているのかもしれない。だからランサーは目撃者である俺を殺したんだろうな」
言いつつチラリとキャスターに目を向ける。
キャスターはそれを真っ直ぐに受け止める。
「そうだな……話を聞く限りじゃあ口止めくらいはするかねぇ。ま、その口止めが一突きだっただけだろうな」
口調は軽いようだが、その言葉には重みがある。
立香とマシュはそれを感じていた。
「その……一般人がそのような被害を受けるということは、参加しているマスターたちはもっと危険なのではないでしょうか?」
「そうだな……。じゃあ立香とマシュに質問だ。マスターとサーヴァント。倒しやすそうなのはどっちだ?」
「マスターとサーヴァント、ですか?」
「マスターだと思う。サーヴァントは人を超えてるから」
「基本的にはサーヴァントはサーヴァントでしか倒せない。でも、マスターは違う。魔術師と言ってもあくまで人間。マスター同士であっても倒せるし、サーヴァントとマスターなら結果はほとんど見えている。だから聖杯戦争はこう呼ばれることがある。『魔術師同士の殺し合い』って」
「じゃあ、士郎たち四人はその中で生き残ったんだな」
「ま、そんな感じだ」
途方もない話だ。
しかし士郎が嘘をつくようには見えないし、そこまで彼は器用ではない。つまり、これは真実。
そして――
「俺たちはそれを終わらせるためにここにいる、って事なんだな。……あれ、聖杯戦争を終わらせる?」
「士郎さんが先ほど仰っていた、戦った理由と同じですね」
立香たちの目的もこれでハッキリとした。戦いを終わらせ、あるべき姿に戻す。
「うん、何か…掴めた気がする。ありがとう、士郎」
立香の瞳には何があっても諦めないという意志が、輝きとなって存在していた。
それを受け、士郎も頷く。
「それじゃあ、次は仮契約についてだけど……その前に、サーヴァントの召喚がどんなものか見ることにするか」
次の説明には行かず、桜たちの方を見る。それに釣られて立香たちも目を向ける。
「それじゃあ、始めますね」
魔力を練り上げていた桜が言葉を発する。閉じていた目を開け、土蔵に描かれた魔法陣の前に立つ。
心を鎮め、厳かに唱え始める。
「素に銀と鉄。
礎に石と契約の大公。
我が本来の祖は大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
繰り返す都度に五度。
ただ満たされる時を破却する。
Anfang.
我は常世総ての善と成る者。
我は常世総ての悪を敷く者。
聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いをここに。
汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に。
汝三大の言霊を纏う七天。
抑止の輪より来たれ。
天秤の守り手よ――!」
唱えつつある間も、空気中の魔力濃度はぐんぐん上昇していた。しかし、唱え終わった瞬間の爆発的な魔力はその比ではない。
土蔵の中を吹き荒れる暴風。そして、魔法陣の中に何者かが顕れたことを示す僅かな威圧。
召喚は成功したようだ。では、一体誰を召喚したのだろうか。
次なる疑問が沸き上がる。
それに答えたのは喚び出された英霊だった。
「……愚かな人ですね。私を召喚するなんて。私は反英霊のカテゴリに当たるのですが」
その声はどこかで聞いた覚えがある。どこかではない。つい最近、ここに来る直前だ。
そしてその声は士郎と桜にとってさらに懐かしいもの。
特に、桜にとって。
「サーヴァント、ライダー。召喚に応じ参上しました」
サーヴァントはその全貌を晒した。
紫色の長い髪。瞳を隠す魔封じの布。
スラリと伸びた手足。スタイルがとても良いことが伺える。
そしてそれは桜にとって。かつて召喚したサーヴァントと同じ姿、同じ声なのだ。
「ライダー」
桜が呼びかける。
その声に聞き覚えがあるのか、ライダーは身を震わせる。
「私のこと、覚えてますか?」
「……」
数秒の間。
「ええ。お久しぶりです、サクラ」
何の偶然か、桜はその縁を頼りに――かつて喚んだものと同じ分霊を召喚したのだ。
いや、これも一つの
つい、と士郎とキャスターを見る。
「随分と大きくなりましたね。確か……シロウでしたか。それにしてもランサー。その姿は何のつもりでしょうか?衣装が違うようですが」
「ライダー、ランサーさんは今回、キャスターのクラスで現界しています。あなたはランサーのクラスでした」
「なるほど、色々と面倒なことになっているみたいですね。ところで……そちらの方は?」
所長、マシュ、立香の順に目を向ける。
立香が前に出る。
「えっと、俺は藤丸立香。ここにいるデミ・サーヴァントのマシュのマスターで、こっちの人はカルデアの所長。その、士郎たちと一緒に戦ってる……つもりではいる」
たどたどしい答え。
仕方ないだろう。別人とわかっていても、一度戦った相手だ。
それに、先の召喚は凄まじいものだった。英霊の力を借りるということは、それ相応の覚悟が必要だと認識するに至った。
「ふふ、可愛らしい人ですね。いいでしょう。サクラ、隣で戦わせてもらってもいいですか?」
「ええ、ライダー」
紫の主従が、ここにまた誕生した。
語彙力ください()
桜のサーヴァントはまあ、決めてました!
一瞬BBちゃんにしようかとか思いましたけど、やっぱりライダーかなと。
heaven's feel観たらもうそれしかないなと確信しました。
ところでイベントどうですか?
私はアーチャーでアーチャー倒したり英雄王倒したり結構楽しんでますね(笑)
とりあえずサンタム可愛い(真顔)
アーチャーも実は遊びたかったのかな?
うん、三代目のサンタも気になるけど……新CM来ましたね!!!
1.5部最終章!準備は万端です!!!
次は多分仮契約とかその辺になると思います。
それでは失礼致します!
追記:士郎たち冬木メンバーはキャスターのことをランサーと呼んでいますが、誤字ではありません。
誤字報告ありがとうございます。