霧の艦隊でも自由気ままに航行したい   作:やなぎのまい

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少し長いかもです


第六話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクティブデコイ、音響魚雷発射!起爆のタイミングに合わせて侵食魚雷、通常弾頭魚雷フルファイヤ!」

「了解、量子通信……………プログラム届きました。音響魚雷起爆まであと50秒!」

「音響魚雷起爆後、様子を見る。無音潜航、海底まで潜れ」

「了解」

 

タイホウから放たれていた魚雷の雨が一時的にやんだ。

それを機と捉え、群像は作戦を次の段階へと進めた。

 

次は、音響魚雷によりかき乱された海の中を移動し、アクティブデコイと位置を入れ替える。

あとは、その横っ腹に超重力砲を打つだけだ。

 

「音響魚雷、起爆まで3──2──1──起爆!」

 

キィィイイイン────

 

「無音潜航。僧、アクティブデコイは?」

「量子通信共に問題ありません。現在、アクティブデコイをこちらに移動させています」

「よし」

 

あと少し、群像は打倒タイホウに王手をかけたと、この時、思っていた(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長!」

「どうした?」

 

僧の慌てた声に群像は、戦況全体を俯瞰し、解析していたのを止め、当の本人たる僧に意識向ける。

 

「海上の様子を伺おうと思いまして、再び無人偵察機を放ったのですが……………その」

「何かあったのか」

「…………………………いえ、映像にだします」

 

そう言うとコンソールを数回いじる。

メインディスプレイに、その景色が映し出された。

 

誰もが声を失った。

 

「おいおいおいおい、群像!こりゃ50なんてもんじゃねぇぞ!」

「これは……………流石に想像出来なかったな……………」

「こんなのって」

 

大空には、当初予想していた最大戦力で艦載機は50機となっていた。

 

しかし、蒼天の世界を飛び回る兵器は50どころではなく、予想の50機を余裕で上回る数がそこには存在していた。

空母とて、甲板に待機させ、カタパルトで発射させる分を考えると予想通り、艦載機は50機ぐらいが限界であるはずだと思ったわけだが。

 

「霧の艦隊のオーバーテクノロジーと言ったところですか……………全く、我々の予測を息をするかのように越えていきますね」

「……………そうだな」

 

僧の愚痴を聞きながら、どうやったら勝てるだろうか?と思考を加速させる。

 

「僧」

「はい?」

「しばらく考え事をする。その間の指揮権を全て副長、織部僧に一時委譲する」

「……………了解しました。任せて下さい」

「あぁ」

 

その言葉を合図に、群像は思考の海へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

どうすればやつに勝てる?

 

自問自答を何度も繰り返し、生み出された考えや作戦はまたたく間に現実と事実という今までの結果(・・・・・・)に否定されては、意識の外へと投げ捨てられていった。

 

まだまだ湧いて出てきそうなあの艦載機の立体機動、そしてそれらから繰り出される三次元攻撃。

 

所詮空母、空母である限り艦載機を潰せばこの小さな巡航潜水艦でも勝ち目があると思っていた。

 

しかし、そんな読みは大きく外れていた。

 

作戦のカギである、航空戦力を削れる気がこれっぽっちも湧いてこない。

 

仮に削れたとしよう。

 

そんな予想をもちろん悪い意味で何度も裏切ってくるような奴に我々は勝てるのか?

 

マイナス思考に、弱気になってしまっては勝てる戦いも勝てなくなると頭でわかっていても、根底に眠むる無意識が『勝てないのではないか?』と囁き続ける。

 

────?

 

ここでふと思いついた。如何に霧の装甲空母といえど同じ霧の巡航潜水艦と変わらない、共通点があるじゃないか。

 

強制波動装甲(クラインフィールド)

 

絶対防御、霧の艦隊が持ちうる最強の盾。しかし、防ぐことの出来るエネルギーには必ず限界がある。

クラインフィールド、これを突破することが出来れば……………そうだ!超重力砲があるではないか!

これなら、クラインフィールドを一撃で……………

 

いや、不可能だ。

 

超重力砲は一撃必殺であるが故に、発射まで少しだけ時間がいるのだ。

 

あの数の艦載機が攻撃してくる今の状況では使うことが出来ない。

 

万事休す、なのだろうか

 

 

 

いっそ致命的な被弾を覚悟で本艦ごと突っ込むか?

 

いや、だめだ。作戦とはいえクルーを死なせる訳にはいかない……………

 

 

 

いや待て。────そうか、これなら!

 

これなら、タイホウも予測できない、いや潜水艦がこんな動きをするなんてありえない。

自分でも信じられない作戦。しかし、これ以外に何も思いつかない。

 

これで────

 

 

 

 

 

「群像?」

 

ふと気づいて横を見ると、イオナがこちらを見ていた。

 

「どうした?笑っていたぞ?」

「ッ、ハハハ。そうか」

「なにか、思いつきましたか?」

 

群像の変わった行動をよそに、僧が声をかける。

 

「あぁ、ただし。さっきの作戦よりも大博打だ。賭けで得た金を全て、いやさらに借金までして次の賭けに挑むとかそれくらいさ」

「はぁ!?」

 

杏平は「これだからうちの艦長サマは」と頭に手をやり、静かは「いつもの事じゃないですか」とニコリとわらい、いおりは「まーたはじまったよ」と言いながら機関を操作し続けた。

 

「まぁ、そういう訳だ。付き合ってくれるか?」

「「「「応!」」」」

 

「では、今から我々は────」

 

 

 

……………

 

………

 

 

 

 

「という訳だ。いけるな?」

「あぁ!火器管制システム、オールオッケーだぜ」

「ソナー、そのような動きになるとしばらくは正確な情報が出ません。ピンを打ちますがいいですか?」

「ああ、構わない」

「機関室、万事オッケーだからさ、なるべく早くしてねー」

「僧!」

「大丈夫です。我々なら」

「イオナ、お前がカギだ。いけるな?」

「まかせろ」

 

 

 

「機関出力最大、リミッター解除。両舷最大速力!かかるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら側に向かって高速推進音、感1。この大きさ、まさか!401が単艦で!?」

 

艦載機から送られてくる情報、そしてプログラムである妖精さんから、そんな情報が届いた。

 

何を企んでいるのだろうか。

 

いや、しかし。単艦で何も考えずに突っ込んでくるなど愚の骨頂。このまま艦載機で囲んでやる。そう思っていた矢先。

 

「さらに高速推進音、感2!アクティブデコイか?」

 

おや、こうなると全部アクティブデコイである可能性もある。ならば

 

「攻撃を受けて沈んだなら偽物よね!」

 

ダメ押し。私はさらに艦載機を飛ばした。もちろん艦載機『改』だ。

 

「侵食魚雷、投下!後にレーザー兵装で牽制。そちらから近づいてくるのなら、丁重におもてなしして上げるわ」

 

指示を受けた艦載機が次々と侵食魚雷を投下していく。

さらに、再びカタパルトが開き、またまた大量のミサイル発射機構が顔を出した。

 

「行きなさい!」

 

ドドドドド、と音を立ててミサイルが次々と発射しては着水し、水中を走り抜ける。

3機のうち2機は防ぐこともなく轟沈。残りはクラインフィールドで防いだようだ、

 

「3機のうち2機撃沈。残った1機から、高エネルギー反応。あれが本体か」

 

距離はやく500メートル。

 

「これで終わりよ!」

 

沈めるつもりは無いが、止めと思い最後となるであろうミサイルを発射────しようとしたところ。

 

キィィイイイン────

 

音響魚雷が起爆し、一瞬タイホウの演算が止まった。

 

そして、401の反撃は一瞬であった。

 

ガキィイイン!!

 

「なに!?」

 

音の元を辿っていくと、そこには401のものと思われる(いかり)が二つ、深々と突き刺さっていた。

 

「一体何を────ッ!」

 

船体がまたもや大きな音を立てて傾いた。突き刺さった錨はギチギチと嫌な音を鳴らしていた。

 

「401の速度が上昇!?」

 

401が錨を使って自らを引き上げていた。

本来のスペックでも出ないであろう速度で近づいてくる401に恐怖を覚える。嫌、初めてそう感じた。

 

「……………来る!」

 

ドゴォォオオオオオオオン!

 

メキメキメキと、タイホウの船体を破壊しながら海上に飛び出てきたのは401本体!まるで海中から飛びだした弾道ミサイルのように空中へその身を投げる。

 

「ッ!?これは、重力子反応?でも、たかが巡航潜水艦がこんな量のエネルギーを────まさか!?」

 

空を見あげれば、空中で姿勢を整えた401がこちらを向きいていた。艦首がワニの口のように大きく開きそこから顔を覗かせていたのは

 

「超、重力砲……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「機関室!あと200秒でエンジンがオーバーヒート!動かなくなるよ!」

「クラインフィールド稼働率90%!次の被弾で艦体の崩壊が始まります!」

「杏平!何としてでも被弾を防げ!」

「錨の巻き上げまであと5秒」

「艦長!タイホウまで残り距離、100、50、ゼロ!」

 

グンっと慣性に引っ張られ、椅子に押さえつけられるような感覚が全員を襲う。

 

「外の状況、モニターにだせ!」

 

メインモニターに映し出された景色。蒼天の世界。そこに舞う80機以上の銀色の翼。大きな船体の艦首に立ちこちらを驚きの表情で見上げるメンタルモデル、タイホウ。今、401は空に舞っていた。

 

そら、こちらも予想を裏切ってやったぞ。

 

群像は内心、すこしだけほくそ笑そえんだ。

 

「エネルギー流路、崩壊80秒前!」

「問題ありません!超重力砲にエネルギー、既に回ってます」

「ロックビーム、出力最大!目標タイホウを固定……………いや、タイホウの重力子反応増大!抜け出そうとしてます!ロックビーム出力低下!」

「超重力砲は!?」

「3、2、1────エネルギー充填完了!発射準備よし!」

 

「よろしい!」

 

 

 

 

「超重力砲、発射ッ!」

 

 

カッ!

 

 

外の景色を映していたカメラからの映像がホワイトアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ひとまずひと段落ー!

まさか、皆さんも401が空を飛ぶなんて思わなかったのではないでしょうか?

次は後日談見たいのを書いて、またタイホウをフラフラさせたいと思います。

原作にも介入させる予定なので。

あと、距離とか速度とか色々矛盾点があるかもしれませんが、なにかありましたら感想で教えて下さい。




あと!皆様のおかげで初めてランキングに乗りました!29位です!
ほんとうにありがたいです。

これからも本作品をよろしくお願いします!

(亜種特異点、三つ目……………武蔵ちゃん……………攻略……………)




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