霧の艦隊でも自由気ままに航行したい   作:やなぎのまい

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第五話

 

 

 

 

 

「機関出力最大!全レーザー発振システムフル稼働!ソナー、水中騒音に注意しつつ戦況解析!1番から8番、通常弾頭ミサイル!プログラムは空中の高速移動物体の自動追尾!全魚雷管注水開始、終了し次第全弾発射!副兵装もフル稼働だ!イオナはクラインフィールドの操作と、敵魚雷群の回避に専念するんだ!」

「「「「了解」」」」

 

ゴンゴンゴンと重力子エンジンが熱を帯び、その力を推進力へと変えていく様が良くわかる。

 

「注水完了!1番から8番、通常弾頭ミサイル発射!しばらくは対空だよな!?」

「あぁ、墜しまくれ!」

「敵艦回頭、方位198!敵艦、こちらを完全に補足していると思われます!続いて着水音、前方より感48!後方より感25!すみません!水中騒音により、艦載機の動きは把握しきれていません!」

「予測できるものだけでいい、データを杏平へ転送!」

「了解……………ッ!魚雷、真上からも来てます!感8!」

「致命傷になりうる魚雷のみを狙え!パッシヴデコイ、魚雷誘導兵装ばらまけ!」

「敵攻撃の約6割を無力化、クラインフィールド稼働率は59%です」

「こちら機関室!なかなかこっちは熱いよー、まだまだ最大出力は出せるから!早めにやっちゃって!」

 

まさに戦場だった。

互いの連携を忘れ、一瞬でも情報処理が滞れば死ぬ。そんな環境の中、二十歳にもなっていない、成人でも軍人でもない少年少女達がやって退けるのだから驚く以外の感情が出てこない。

 

「魚雷から送らせたデータより!敵艦載機、18機撃墜!群像の話どおりならこれで艦載機の三割くらいは潰したぞ!」

「僧!」

「ええ、たしかに後方より飛来する魚雷も少なくなってきました。艦長の予想は的中していたのではないかと思います」

 

杏平と僧からの報告に頬を緩めそうになるが、まだ作戦も始まっていない段階から何をやっているんだと自らを叱責する。

 

「よし!このまま艦載機を八割まで潰してしまえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本気────本来の艦載機のスペック、魚雷やレーザー兵器の5、6発は耐えれる小規模なクラインフィールドを張れる────を使わずとも勝てると思ってたが。これは見込みが甘かったかもしれない。

もちろん、手を抜いていた訳では無い。これで勝てる、そう予測したものに対する全力だったのだが、その予測が大きく外れていたらしい。

そもそも、艦載機にクラインフィールドを張らせるのも簡単ではなく、発艦させるまえに少しやらなくてはならない事があるため、余裕がある時しか出来ないのだ。

 

目の前の景色、私の艦載機が次々と墜されていくのを見つめながらそんなふうに考えた。

 

「やってくれるわね」

 

この戦い中に墜された艦載機の数は18機。

 

「そう、私の保有する全艦載機数は100!あなた達が落としたのはその内の18!あまり海域強襲制圧艦隊旗艦を舐めない事ね」

 

恐らく、こちらへの攻撃が止んだのは艦載機を墜し、航空戦力を削るため。

艦載機からの魚雷による全方位包囲攻撃。文字通り、の攻撃に海中を多次元航行する潜水艦にとっては脅威以外の何物でもないであろう。

前方からくる本艦から発射される魚雷やミサイルだけなら対応もしやすくなるというもの。

 

しかし、艦載機を墜した後はどうするつもりなのだろうか?

 

「まぁいいわ」

 

攻撃してこないというのならそうしていればいい。

薄れつつある原作知識、そこから得た情報。

 

イ401とそのクルーは世界を変える。

 

メンタルモデルの、考え方にが染み付いてしまった自分としては今のイオナの状態、心を聞いてみたい。

 

沈めることはしないが、沈めるちょっと前くらいなら……………。

 

最悪、補給艦でも呼び出せば……………。

あ、自分のナノマテリアルを分け与えるとかでもいいかもしれない。

 

まぁいい、今はこの戦いのことだけを考えよう。

 

「残念だけど、艦載機はまだまだ沢山あるの」

 

ミサイルの発射機構となっていたカタパルトを閉じて元に戻す。

ゴウンゴウンと重々しい音を響かせながら、装甲空母タイホウ本来の姿へと変化した。

カタパルトが元々の形となった今この状態こそがタイホウの本気と言うわけだ。

 

「おいでなさい!」

 

そう言うと、カタパルトが太陽の光を反射した大量のナノマテリアルの銀色の輝きにつつまれ、銀の息吹が吹き荒れた。

 

光が収まると、そこには最初に呼び出したものとは比べ物にならないほど沢山の艦載機が整列していた。

 

「少し改良した艦載機()達よ。数は40、存分に味わうといいわ」

 

先程述べた、クラインフィールドを展開できたり、レーザー兵器を積んだ艦載機『改』だ。

今、海上の空中を舞う艦載機達は霧の武器といえども、人類の攻撃、それこそ機銃の玉が数発当たっただけで落とすことができるほどの耐久値しか持っていない。

しかし、この艦載機()達は違う。そう、特別製なのだ。

 

そう言うと、今も尚、魚雷に対応しながらも重力子エンジンの轟音をかき鳴らしながら海中を目にも留まらぬ高速で移動し続ける401を見やる。

 

ふぅ、と一息。

 

実のところ、艦載機を運用するのも楽ではないのだ。

全てとは言わないが、より素早く、より予測できないような立体機動をさせるのは自分で動かさなくてはならないのだ。よって、1部の戦艦をも凌駕するとんでもない演算領域を持っていたとしても、かなりカツカツだったりするのだ。

 

「半径800メートル以内の高速推進物へと自動反撃システム……………構築完了」

 

そうするとポンっ、とタイホウの肩に二頭身ほどの小さな小人が現れた。

手のひらくらいの大きさ。こげ茶色の長袖にスカート。緑色のマフラーに、薄緑が少し混じった茶髪。おでこに巻き付けた白いハチマキを付けた小さな妖精だ。

 

空母である限り、万全の状態で常に艦を守れる訳では無い。なので普通は随伴艦を連れるのだが、生憎タイホウはそんなものを持ってなかった。

どうしようかと考えた結果、各兵装にプログラムを組めばいいと気づいたのだ。

思い立ったが吉日、早速プログラムを組んでみると、今みたいにポンっとこの小人が現れたのだ。

ちなみにプログラム事に違う種類のものが現れる。例えばラーメンを食べてたりする娘や頭に被ったモコモコ帽子の上にペンギンを乗せた娘、なぜだか分からないがいつも風に煽られて涙を流しながら飛んでいってしまう娘など多岐にわたる。

 

私は彼女たちを『妖精さん』とよんでいる。

 

「しばらくの間、この船をお願いね。妖精さん」

 

そういうとピシっと敬礼を返してきた。

なんというかとても微笑ましい。

 

「さぁ、タイホウ。もう少しだけ本気、出しましょうか!」

 

 

 

「全機発艦!」

 

 

 

 

バババババ、と小規模な重力子エンジンを吹かし、順々にカタパルトを走り抜ける、発艦して行った。

 

 

 

白銀の翼が蒼天(ソラ)へと舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも。

二回連続投稿です。

感想、ありがとうございます。なんかこう……………嬉しいです。

次回決着とか言いましたけど無理でした!

次頑張ります!


それはそうと今日はFate/stay night heaven'sfeelの公開日ですね。自分は勉強があるので無理でした。来週の金曜日に行こうかと思ってます。自慢ではないですが、一応FGOは最後までクリアしてまして……………
(言えない!今日もガチャが爆死したなんてッ!)

あ、兵装の話なんですが。まだまだ募集してますので。活動報告を作っておきますのでドシドシ送ってください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=163895&uid=138666


今後とも本作をよろしくお願いします。

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