新年明けましておめでとうございます。
そしてお久しぶりです。
更新遅れてすみませんでしたぁぁあああ!!
楽しみにしてくださった方々!お待たせしました!
今年もこんな感じでやっていけたらと思ってます。
ではでは
「サイドキック!!取舵いっぱい!!!」
群像の声が響くと同時にイオナが艦首側部に付いているジェットから出力し、遠心力がクルー一同を襲う。休むまもなく、今度は船体が大きく揺れた。まるで超巨大なビームにでもかすったかのような。
「艦長!各種解析結果出ました、対ヒュウガ戦で使用されたものより出力が低いですが、同じく超重力砲かと思われます!かすったおかげで強制波動装甲臨界寸前です!」
「杏平、全火力最大出力!僧、迎撃システム全て起動させろ!ばらまけるものは全部ばらまけ!」
「おう!」
「了解しました」
「杏平、音響魚雷発射!無音潜航!」
「音響魚雷発射、起爆まで3、2、1!」
キィィイイン────
重力子エンジンの波動も止まり、艦内は静寂に包まれた。
ふぅ、と各自息をついて肩の力を抜く。
「どうしてこちら側の位置がわかったんだ……………あの時、タイホウですら潜水艦である我々を探知していなかったというのに」
そう言って群像は戦況図が表示されている正面ディスプレイを睨んだ。
初めてタイホウと対峙した時のことを思い出す。
そう、大戦艦級と同等である装甲空母、そのトップたるタイホウより、重巡洋艦であるタカオは劣っているはずなのだ。
もし、仮に探知することができるとすれば、偵察のために探知に優れた巡航潜水艦や駆逐艦。そしてタカオは、これのいずれかにも当てはまらない。
何かあるに違いない。
「艦長」
「なんだ?」
静が椅子を回転させ、こちらを向くと手を挙げて言った。
「この401は、ヒュウガから鹵獲した超重力砲を積むことで攻撃型へと改造しました。同じく、タカオも索敵型に改造したということでしょうか?」
「たしかにな……」
もちろんこの間で群像はそのことも考えていた。
しかし、だ。
「しかし、本当にそうだろうか。霧の艦隊は言わばオーバーテクノロジーの塊だ。もし、索敵型に改造したのなら、こんな台風などものともせずに的確に攻撃して来そうな気もするが」
「確かに、それならもっと早く轟沈させられていてもおかしくありませんね」
群像の言葉に僧も頷く。
「イオナ、戦況マップを。今の攻撃を含めて、タカオの索敵範囲はどれくらいだ?」
「こんなものか」
イオナが指示に答えて戦況マップの配置を変える。
「おいおいまじか!こんなの大戦艦級じゃねぇか!?」
杏坪は驚きの声を上げ、他のクルーも目を見開いて固まった。
初期に、予測していた範囲よりとてつもなく広い範囲で索敵ができると、戦況マップはそう伝えていたのだ。
群像は考える。
自分たちの勝利の条件を。
ここから生きて脱出するのが最終目標だとしてだ。最初に静から提案された、台風を迂回して横須賀へ向かうという案。確かに敵の攻撃力も判明していない状態ではむやみに突っ込むのは得策ではない。しかし、タカオはまるで横須賀へと北上する我々を邪魔するかのように進路へ乗り上げてきたのだ。もし、このまま迂回して横須賀へ向かへば、陸にどんな被害が出るかわからない。
すなはち、ここでタカオを叩くしかない。
そのためにはどうしたらいいのか。
そのとき
『こんにちは401、そして401クルーの皆さん』
量子通信をとおして響いた声。
『仮にも私を倒した方々がいったいどうしたのかしら?』
忘れもしない、海域強襲制圧艦隊旗艦という霧の立場にも関わらず、自分たちと話をしてくれた装甲空母タイホウの声だった。
「そういうことか」
群像からの話で大体の事情は把握した。
しかし、私を倒した401が重巡洋艦相手にここまで苦労するとは。
メンタルモデルを手に入れたこと、戦術ネットワークを有効活用すること。
霧も霧なりに進化を遂げているということか。
『それで、タイホウ。あなたはここへ何をしに?』
「完全装備の重巡洋艦に、手負いで立ち向かう友達を見て見ぬ振りがてきるかしら?」
『…………なるほど、その通りだ』
「流石に
『装甲空母タイホウ、あなたの協力に感謝する』
そう、私はこの世界が変わっていく様を見届けたい。それには401とそのクルーが必要不可欠なのだ。
タイホウの中のコアが、そう叫ぶ。
それに、この世界でも、友軍が攻撃されたら援軍を送るらしい。ならそうしなくては。
以前、401と会ったとき。「あなた達の航行の邪魔はしないわ。きっとあなた達の目の届かない特等席で観察させてもらうわ」なんて言っていたが、やはり共に行動した方が楽しいかもしれない。
楽しい?
私はこの戦いを、この世界を楽しんでいるのか?
なるほど確かに。そうかもしれない。今では全く思い出せなくなった原作という知識を引っさげて生まれ変わり、この世界に生を得たこの身だが、これだけは覚えている。
『世界の歯車は回る。停滞した世界は動き出す』
外側の人間だったころ、物語を読んで感じたことだろう。そう、世界は回るのだ。そう知っていながら黙ってそれを見るだけでいいのか。否だ。
その変化をこの身もって感じることができるのだ。この手を逃すわけがない。
ああそうか。助けたいというのもあるが、私は彼らと共に居たいのだ。
「さぁ、千早群像。あなたはこの盤面をどうひっくり返すのかしら?」
自分でも気づかない。
その心はいままでかつてないほど激しく燃え上がっていたことに。