霧の艦隊でも自由気ままに航行したい   作:やなぎのまい

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すみません、遅れました。
感想で貰った意見について考えていましたら、と言い訳をさせて下さい。

まぁ、そんなことを置いておいて、やっと原作に入れました。ここから、また楽しみながら書いていきたいと思いますので、どうぞ、お付き合いの方よろしくお願いします。

(感想でもらったことについてのことを後書きに書いておきますので、よろしければ最後までよろしくお願いします。)

ではでは







第十一話

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

この店で買っていった商品が入ったビニール袋を下げた女性が店の軒先から表通りへと消えていくのを、お辞儀をして見送る。

 

401と別れ、ここ要塞港・横須賀に来てからはや半年以上。現在、私ことタイホウは文献やデータにあった『八百屋』とやら(もどき)を経営している。

 

 

 

 

 

少し昔の話になる。ほんの少し昔の話だ。

 

 

 

文化→『食』文化

 

文化から食文化へと繋がったタイホウはまず食料の自給自足を始めてみた。霧のミサイルやレーザーで荒れ果てて誰も近づかなくなった土地を見つけ、耕し、ナノマテリアルで偽造(シミュレート)した日本の通貨でいくつか野菜や果物の種を買い、育て始めたのだ。汗をかき、体の節々を使っているなぁと実感しながら進める農業はなかなかに刺激的なものだった。人間の解析、アルゴリズムにおける経験値の蓄積も街をフラフラとめぐり歩くことに比べて桁違いである。

戦術データ・リンクに経験値やデータをアップロードするか迷ったが、やめておいた。もしかしたら総旗艦直属の偵察部隊にはバレているかもしれないが、なんとなくこの経験値(思い出)は自分だけのものにしておきたかったのだ。それに、人間や人間の性質などを毛嫌いしているコンゴウに知られたらでもしたら面倒なことになるに決まっている。

 

そんな訳でひたすら農業と人里への徘徊を繰り返すうちにあっという間に一年がすぎた。

 

野菜や果物の生産ラインは確実に整ってきているし、その規模もだんだんと増えてきたため扱いに困るまである。

最初の方は食文化の一端たる『料理』なるものに手をつけ、全部自分一人で消化していた。野菜を焼いたり、ナノマテリアルで作った寸胴鍋にぶち込んで煮込んだり。はたまた、物々交換で手に入れた魚を一緒に使ったりした。一年以上も料理をしていたおかげで技術もなかなかのものになったとおもう。

しかし、農園の規模が大きくなるにつれてそれも出来なくなっていた。収穫量が消費量を軽く超えたのだ。

 

どうしたものかと、シミュレーションをチチチ、と行っていると、データベースに興味深いものを発見した。

 

『商売』

 

そうか、これも立派な文化だ。国々では商売の手法や雰囲気も違うとも聞く。ならば、まずはこの国でお店を開いてみよう。

思い立ったがなんとやら。その日にお店を出せそうな場所を探しに行った。ほぼ毎日、街にフラフラと徘徊しに行くもので顔も覚えられていた。笑顔で会釈を返したり、子供に手を振ったりと、『これも文化……………』と内心感動しながら土地を見て回る。

 

そんな時

 

「401会敵、相手は……………軽巡洋艦ね」

 

丁度、佐世保の辺りを飛行していた艦載機から連絡が入った。

なんでも、SSTOの打ち上げを聞きつけた霧の船の攻撃を防ぐためだとかなんだとか。あ、日本の護衛艦が速くも沈められてしまった。

 

なんにせよ。本気を出していなかったとはいえ、1度は私を倒したことがあるのだ。心配することは無さそうだ。

 

あ、戦闘が始まった。

 

そんなことを考えながら、タイホウはまた歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり一番活気があるのはここかな、とタイホウはその足を止める。

 

そこは、政府が市民に様々なものを配給するために作った総合施設と移動を兼ねた大型列車がある場所だ。今では、移動するための車輪と線路は役割を失い、その車体は商店街の連なった店のようになっていた。

ここの一角、列車の中とは言わず近くにテントでも掘っ建て小屋でも建てればお店を開くのに申し分ない。

早速、と思ったがここで一つ問題が浮上した。

 

「この国の身分証明がないわ」

 

そう、何を隠そうタイホウは人類の天敵たる『霧』のメンタルモデルだ。日本の身分証明など持っているはずがない。もちろん、身分証明が無ければこんな目立つところに店を開くことなどもってのほかである。

 

(身分証明、政府の管轄かしら?)

 

意識を政府のデータサーバーへと潜り込ませる。

 

(セキュリティシステム、プロトコル解析……………パスワード解除。あっち側(政府側)は気づいてないはず……………えっと、個人情報の管轄のシステムはどこかしら?)

 

何を隠そう、タイホウは今から個人情報のサーバーへと侵入し、データを書き換えるつもりなのだ。

 

(これでもない……………これかしら?)

 

とりあえず、とフォルダを開く。

 

(振動弾頭輸送作戦?何かしら)

 

さらにファイルを開いていく。

 

(固有振動を割り出して同調、それによって霧の装甲を破壊する人類製の新兵器。作成者は刑部蒔絵、プロジェクトの考案者は上陰龍二郎。へー

 

 

 

 

 

 

え?)

 

もしかすると、これは結構あれなものを見つけてしまったのではないだろうか?

 

これは、総旗艦(ヤマト)に報告するべきなのだろうか?いやいや、固有振動を持たないクラインフィールドもあるし。そもそも、あの試験データの映像だってメンタルモデル持ちでもないただのピケット艦だった。きっと、他のメンタルモデルも知ってるに違いない。

 

見なかったことにしよう……………

 

そんなことよりもだ、今は個人情報のサーバーを探すのが先だ。話を先送りなんかしてないわよ……………。

 

 

 

えぇと、これかしら。

その後も、いくつか国家機密なにもデータを覗いてしまい、見なかったことにしているのだが、ようやくそれらしきものを見つけることが出来た。

 

(やっと見つけた。あとはここに)

 

そう言って、データの書き換えを行う。

 

 

 

『国民情報

 

海野(うみの) 名 タイホウ

 

性別 女

 

生年月日 2040年 3月7日

 

年齢 15

 

住所 大海戦による被害で家を喪失。住所不定

 

家族構成 大海戦による被害で両親を含む全ての親族を喪失。

 

顔写真 以下のデータに記載

 

 

 

 

 

 

 

 

よし、こんなものだろう。

そもそも、戦死してしまった人がほとんどなこの状況で、個人情報もクソもない気がしなくもないが、念には念をである。

 

ここまで準備すれば大丈夫なのではないだろうか?むしろ、よくここまでやった。自分を褒めてしまおうか。

にやけてしまいそうな顔を必死に抑える。

 

鉄は早いうちに打て。さっそくここらに住む人に店の設置の許可を取りに行こう。ついでに挨拶もできたら嬉しい。そんなことを考えながら意気揚々とタイホウは足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、タイホウは気づいていなかった。

監視カメラに今まで一度も映ったことのない少女が頻繁に映るようなことがあれば、監視システム、及びその管理人が少し不審に思うことを。産まれたばかりでデータがサーバーに追加されるならまだしも、15歳にていきなりデータが追加されていれば嫌でも怪しいと思わなければならないこと。これによって、国に目をつけられてしまったことを。そして、生年月日にも不備があったということを。

 

彼女(タイホウ)は、そういった所でうっかり(ポンコツ)だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧に寝返った人類の敵、千早翔像の息子であり、401の艦長を務める千早群像と話をし終えた上陰龍二郎は、ここ、佐世保から分散都市のなかでもトップに位置する、東京を含む中央管区へと舞い戻るために、専用車に乗っていた。過ぎてゆく窓越しの景色を眺めながら、上陰は先程のやり取りを振り返る。

千早群像との話、いや簡単な取引と言った方が正しいだろうか。

上手くいった。これが上陰の印象だった。

こちら側の提示するもの、と言うより与えてしまったもの。『イ401を所持することを正式に認める証書』、『千早群像らが犯していた違法行為を特赦する証書』の二つだ。そして、こちらが要求するのは『振動弾頭のアメリカへの輸送作戦』だ。

日本の国力では、量産できず、それでも何とかして増やした5セットあった振動弾頭のサンプルも、もはや残り一つ。北先生が関わっているのかはわからないが、陸軍の動きも最近怪しくなってきた。

確実にアメリカへサンプルを届けるべきだ。世界の流れを変えるため、官僚達の権力争いの道具になどしてはいけない。確実にアメリカへ届けるにあたり、最も可能性が高いのが彼ら、401クルーにサンプルを託すことだ。何としてでも、彼らに受け取ってもらわなければ。話をした時、群像氏も乗り気ではなかった。、しかし、彼は必ず横須賀へ来るだろう。なんせ、父である千早翔像氏の話をちらつかせたからだ。

 

当面の問題は、陸軍や他の議員の目を如何にしてくぐり抜けるかだ。

 

そう言えば、以前確認された霧の空母と思われるもの。あれはどうなったのだろうか?部下の予想では、ここ関東圏に向かって来ているのでは?と言っていたが果たして……………。

 

プルルル、と車の備え付けの電話から電子音が響く。

 

「もしもし、どうかしたか?」

『政府の国民情報管理のサーバーに気になる点がありまして』

「なんだ?」

『事の発端は、今まで一度も確認されていない少女が頻繁に映るようになった、ということから始まりまして。サーバーで検索をかけたところ、産まれたばかりならまだしも、15歳で追加されていました』

「それで」

『そして、生年月日なのですが。産まれは2040年なのです。それで、両親を大海戦で失くしたとあるのですが』

「それはおかしい。大海戦があったのは2039年だ。それなら」

『はい、彼女は産まれていないはずなのです。極めつけに彼女の名前は『海野タイホウ』とありまして』

「タイホウ……………たいほう、大鳳。まさか」

『えぇ、深読みかも知れませんが、過去の世界大戦において、日本が建造した空母の中に大鳳というのがあるのです。もしかしたら』

「メンタルモデルか」

『可能性はあると思います。何人か私服で偵察させています。なにか情報が入り次第連絡いたします』

「あぁ、ごくろう」

 

そう言って電話を切った。

 

これは、また……………

 

そう呟くと、上陰は窓越しに、宇宙へと伸びていくSSTOの飛行機雲を眺めながら、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








感想でありました、転生しているメリットって何?というものがありまして。
たしかに、原作知っている体で進めていません。個人的な設定では、憑依転生と言いますか。大海戦後に産まれたタイホウのメンタルモデルと憑依転生、どっちかというと融合かと作者は思っています。そこで、人としての性質と、兵器としての性質が混ざりあって、『人の側面をよく見せる兵器』に落ち着いたものだと思ってます。
もしかしたら、前の話などで、違うふうに書いているかも知れませんが、こういう設定ですので、頭の片隅にでも置いておいてください。



さて、話は変わりまして。
本作品を、読んでくださりありがとうございます。感想で「一気読みしてしまいました」などの感想を受け取り飛んで喜ぶ来宮でございます。また、評価につきましても7.30と、なかなか高めにつけていただき本当に感謝しております。いつも通り、もし何かありましたら感想によろしくお願いします。最近は、感想に、返信していない事がしばしばありますが、ちゃんと読ませていただいております。本当にありがとうございます。
これからも、楽しみながら書いていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。

ではでは





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