今日のお昼、またまたランキング13位でしたし。これも皆様のおかげです。本当にありがとうございます!
これからも本作品をよろしくお願いします!
ではでは
海沿いの建設された要塞港・横須賀。
霧との大海戦の少し前から建設が始められていた外壁に囲まれた港町。最終的には、この壁は17の主要都市で建設される予定だったが、霧の海洋閉鎖によって頓挫したことはこの街に住むものなら誰しもが知っていることらしい。分断された日本の三大都市の一つもここだ。壁が作られたことで安心感を得ているのか、人々の営みも空から観察した日本の中でも断トツで活発であった。
そんななか、私は早速八百屋とやらを使っていた。
「まいど、合計590円ね」
「これでお願いするわ」
そう言って私は野菜などの商品が入ったビニール袋と引き換えに千円札を店員に渡す。
「見ない顔ね。どこから来たの?」
「ちょっと山の方からね」
「そう…………幾つ?」
「15よ」
「こっち来たばかりで大変でしょう?」
「えぇ。山では無いことばかりでいつも大変です」
そう、店員とたわいのない
(ふふふ、予備知識の量そして経験の少なさに不安になることもありましたが問題なく人間達に紛れ込むことが出来たようですね)
トントン拍子に事が進んでいく様を思い返すだけで笑みがこぼれる。
ビニール袋を腕に下げ、適当に歩いているとそこには小川があった。魚でもいるかな、いやいるはずないか。と自問自答をしながら小川を覗く。
川の中には、魚はいなかった。変わりに、そこには少女が映っていた。焦げ茶色の長袖パーカーに、濃い赤紫色のショートパンツのしたにタイツを穿いている。
頭につけた装甲空母タイホウの艦首をイメージしたヘッドギアは外していた。
(服も適当ですが、まずまずと言ったところかしら)
再び歩き始めた。
(もっと、警戒されているものだと思ったのだけれども……………そうでもなかったわね)
ここまでの道のりを振り返っていた。
「さて、どう攻めようかしら」
北東方向へ向かっていたところ、このまま日本列島沿いを航海するのは不味いのでは?と考えたタイホウは進路から少しそれて、現在は小笠原諸島周辺にある小島の浜辺にその身を停泊させていた。
文化を知りたい
目的ははっきりしているのだが、肝心な方針が全く決まっていなかった。
例のごとく、世界中を飛び回っている超高高度偵察艦載機を中継地点にして、近場のインターネットをハッキングしては文化とは何なりやと情報を集め続けた。
「分からないなあ」
調べてみてもよく分からなかった。
文化とは。社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体。言語・習俗・道徳・宗教、種々の制度などはその具体例である。
例えば、アジアでは稲作が盛んであり────ヨーロッパでは乾燥した大地を利用して────アメリカは工業や映画がとても発展しており────アフリカは産業革命などの影響を受けておらず伝統を引き継ぎ続けて────クリスマスやお正月、ハロウィンなどなど。
そんな感じで、情報収集は問題なく進むのだが、如何せんパッ、とこないのだ。
「やっぱり直に触れないと分からないか」
そう結論づけると、日本に降り立とうと船を前進させた。
しばらくするとレーダー内に日本列島を捉えるほどの距離に到達した。
「やっぱりこのままじゃ不味いわよね」
海原を堂々と割って進む自らの
どうしたものかと考えること数秒、
「そう言えば海上艦も海に潜れるのだっけ?」
そう言うと、艦主をどんどんと海面へと傾けていくよう
服や髪が海水で濡れたり、ガボガボともがいたりみっともない姿は晒したくないためもちろん、自らの周りにフィールドを張ることも忘れない。
「ヤマトがやっていたのを思い出したのだけれども、上手くいってよかったわ」
改めて周りを見回す。
静かな場所だった。海上は、潮がぶつかり、波が生まれては打ち消し合ったり、鳥達の鳴き声がやまなかったりと常に音に囲まれていた。しかし、海中は無音と言っていいほど静かだった。
(なるほど、ヤマトが好んで潜水するのもわかる気がするわ)
重力子エンジンの出力を限りなく下げ、潮の流れに乗って日本を目指した。
───要塞港・横須賀から60kmの海底───
「この当たりでいいかしら」
海底火山が連なってできた谷、さらにその隙間に
ここなら、音や光、波というあらゆる観測手段に用いられるものが反射し、正確なデータをとることは出来ない。いい隠れ家を手に入れたものだ。
「こんなところまで来て私に攻撃することなんてないと思うけれど、一応ね」
そう言うと、攻撃性のある、またあると疑わしいものへの自動迎撃システムのプログラムを組む。
例のごとく妖精さんがポンッと音を立てて現れた。戦時中の飛行機のパイロットが着るような服を着て、ラーメンを食べていた。
「じゃあ、お留守。よろしくね」
そう言うと妖精さんは器用にもラーメンを食べながら敬礼をした。
フフ、と小さく微笑むと、立っていた場所、艦主から海底へと飛び降りる。
「日本はこっちの方向ね」
そう言い、歩き出したところであることに気づく。
「ここから先日本にまで60kmあったわよね……………」
「歩いていくしかないわよね」
この後、忘れてしまった人としての一面。『辛いという感情を思い出すのだが』それはまた別の話。
すみません、まだまだ日常回が続きそうです。
それと。誤字報告してくださる方々。本当にありがとうございます。助かっております。
なるべく確認はしますが、もし、もし見つけてしまったらそっと誤字報告して頂けると幸いです。
前書きにも書きましたが、諸々。ありがとうございます!
これからもこんな感じでやっていきたいと思ってます。
ではでは