俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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難産 次回も遅れます マーベル楽しい


俺と幼馴染の楽しみを邪魔されるのは腹が立つのだがどうすべきだろうか?

「あー、うん。これは失敗したな。背負われるんじゃなかったよ」

 

 お化け屋敷から出るなり遥は後悔したように項垂れる。その手に持っているのは一枚の写真。時間内に出てきた客は写真を撮られるのだが、ものの見事に背負った状態の写真を撮られた。

 

 

 

「ふふん。蜘蛛から守って貰ったしこれはお礼だよ」

 

 こんな風に何時もの調子で俺の頬にキスをした瞬間を撮られたのだ。流石に残るのは俺も恥ずかしい。二人きりの時にされるのは仕方ないが、今後は人目がある場所でしないように言わないとな。

 

「あそこはアレだね。無理を言ってでもお姫様抱っこにして貰うんだったよ」

 

「よし、分かった。今度の休みに好きなだけしてやるから、その写真は廃棄しろ」

 

「……まあ、良いや。後で廃棄してあげるさ」

 

 未だに俺の背中から降りない遥に対して提案すると嬉しそうに密着してくる。しかしそろそろ降りてくれないだろうか。目の前には金田と藻武が居るのだからな。

 

「えー! 君とこうして密着しているだけで私は幸せなんだ。もう少しだけ良いだろ?」

 

「俺も悪い気はせんが、人目もある。何か好きな物を作ってやるから勘弁してくれ」

 

 お化け屋敷から出た後、金田が喉の渇きを訴えたのでフードコートまでやって来た俺達は席に座ったのだが、俺の背から降りた遥は今度は俺の膝の上に横向きに座っていた。

 

 

「しかし金田。前に遊んだ時は庶民の食い物は口に合わんとか言っていなかったか?」

 

「うぇっ! あんた、そんな事言ってたの?」

 

「ななな、何を言うかっ! 多くの者の上に立つ身として多くの事を知るのは必要だと……」

 

 おや、どうやら藻武に本気で惚れているようだな。僅かに落胆されただけで慌てるなど此奴らしくもない。遥はどうでも良さそうに欠伸をしているが、出来れば力になってやりたいな。

 

「……ねぇ、折角のデートだし二人っきりになりたいな」

 

 俺の耳元で遥が甘い声で囁く。首に手を回し、体を密着させてだ。

 

 

「二人っきりなら何時もでもなれるだろう。たまにはこうしたのも刺激があって悪くない。ほら、ダブルデートを続けよう」

 

「……デート、か。君がそう言うなら仕方ないな」

 

 今回の外出をデートと言っただけなのに遥は顔を真っ赤にして俺の膝から降りて横に座る。鼻歌を歌いながら腕を絡みつかせるが、この程度なら構わないだろう。

 

「……お前達本当に仲が良いな」

 

「長い付き合いだしな。此奴と俺は既に家族同然だ。両親など式の日取りや場所まで今から決めようとしているのだから笑えるだろう?」

 

 別にこの程度の情報を教えても構わないだろうと思っていると遥が飲み物を差し出してくる。コップにストローを二つ差し、片方を咥えている所を見ると一緒に飲もうという事らしい。

 

 迷わず口をつけ、一緒にコーラを飲む。炭酸は苦手なので咽そうになるが、この状況で咽るのは格好が悪いので堪えた。

 

 

 

 

 

 

「本当に仲が良いな、お前らっ!?」

 

 二度も言うほどの事なのだろうか……?

 

 

 

 

 この後も俺達は四人で遊んだ。カラオケでは俺と遥がデュエットを歌い、ボウリングも交互に投げた。勿論こっちの圧勝だ。

 

 

 

「ほらほら、ハイタッチハイタッチ!」

 

「ああっ!」

 

「あっ、ハイタッチならぬパイタッチでも構わないぜ? あでっ!?」

 

 馬鹿な事を言ったので軽くデコピンをしておく。本当に此奴の言動にはため息が出るな。

 

 

 

 

「そういう事を他人の前で言うな。……聞いた奴が想像するのも不愉快だ」

 

「ご、ごめんよ。君と二人っきりの時にしか言わないからさ……」

 

「そうか。それなら構わない」

 

 素直に従ってくれる遥に安心し、先ほどデコピンをした部分を軽く撫でてやる。本当に困った奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし先程から思ったのだが、お前と俺はどうして偽のカップルだと疑われないんだろうな。よく分からんから普段通りにしているだけなのにな」

 

 施設内に存在する小規模な遊園地の観覧車の中で俺は首を傾げる。今回、俺達は金田が藻武を誘った時の嘘である『知り合いのカップルと遊びに行くから貴様も付き合え』に乗っかって恋人のふりをしているが、まさかデートに誘った相手が中学の時の知り合いにも関わらず疑われないのだから本当に不思議だ。

 

「そのくらい君と私がお似合いだからじゃないかい? ふふふ、本当に付き合うってのはどうかな? 君が構わないならさ……キスしても良いんだぜ?」

 

 向かい合って座っていた遥は正面から俺の膝に乗り、顔を間近に寄せる。息が掛かる至近距離で、狭い観覧車の中だから無理に振り払えない。それにだ。一台後の車内には金田達が乗っているから今の位置からして此方の内部が見えている。下手な真似は出来ない。

 

 

「キスなら何度もしているんだし、今回は君の友人の為に付き合ったんだぜ? だからさ……君からキスをして欲しい。頬や額じゃなくって唇にね」

 

「……そうか」

 

 俺の目を正面から見据え、期待するように囁く遥。少し不安そうにしながら俺の返事を待っている。……今回ばかりは仕方ないな。

 

 俺は遥の腰に手を回し、そっと引き寄せて唇を重ねる。一秒にも満たない僅かな間だが、俺は赤ん坊の時から一緒に居て、家族同然に思っていた遥にキスをした。予知夢で見た此奴と結婚した未来だが、こうして少しづつ変わっていった結果なのかもしれないな。

 

 

 

 ……俺がそう思った時、施設の一部で爆発が起きる。轟音と振動、客や職員は固まり、次にパニックに陥った。遠くで上がる黒煙と聞こえてくる警報の音。そして爆発元に立つ異形の姿。

 

 

 

「アレって確か……ラスボスの妹の力だ」

 

 遥の呟きに俺の朧げな記憶が蘇る。ヤンデレヒロイン枠だった、ラスボスの妹カーミラは他者の思考や記憶を操る力を持つが、力を限界以上に注ぐ事で人を化け物に変える。今暴れているの化け物は原作において主人公が轟とデートしている事に嫉妬したカーミラが差し向けたのと同じ姿だった。

 

 

「……ちっ! 原作との違いがこうなるとはね。折角君がキスしてくれたのに余韻が台無しだ。……君から、してくれたのに」

 

 もう直ぐ地上に到着だという時、遥は悲しそうに呟く。何度もふざけた態度で俺とキスしたくせに、俺からキスしたというのが余ほど嬉しい事だったようだ。……少しだけ腹が立ってきた。

 

 俺は遥の頭に手を乗せ、撫でながら暴れる化け物の方を向く。もうアレは元に戻せないハズだ。いや、もしかしたら戻せる方法があるのかもしれないが、少なくても俺はそんな能力を手に入れていない。エリアーデに引き渡すにしても、まずは動きを止める必要がある。

 

 

「キスならもう一度する機会もあるだろう。今は彼奴を止めるぞ」

 

「……うん!」

 

 さて、俺も楽しいと思っていたのだ。邪魔をしたお礼はしっかりさせて貰うとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれぇ? おかしいなぁ? 先輩、なんであの人とそんなに親しそうにしているんですかぁ? ふふふ、そう絶対私が遠くから見ているのに気付いて嫉妬させる気なんだぁ。先輩ったら仕方ない人なんですから。……でも、今回のデートを設定したお友達は消しますけど構いませんよねぇ?」




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