俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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私の食欲が落ちて辛いのですがどうすべきですか?

 最近少し悩みが有ります。そのせいで食欲も減り、チャレンジメニューを十店目で危うく失敗しそうになる程に……。

 

「先輩! お早うございます!」

 

 最近、朝早く起きてウォーキングをするのが日課です。学校に直ぐに行ける様に制服を着て、コンビニのパンを半分ほど買い占め、偶々……ええ、適当に決めたコースに偶然存在する委員長の家の前でついでだからと合流して登校しています。少し早い場合は上がらせて貰ってコーヒーを飲みながら朝食に買ったパンを食べるのですが、最近、見慣れない後輩の姿をよく見かけます。

 

 柳堂寺リア、転校してきたハーフの少女で、毎朝のように家の前で待って居るようです。どうも顔見知りが居ると不安が紛れるとかで、委員長も転校したてで不安なのだろうと思っているようです。胸は……敵意を持つほどではないですね。いえ、胸の大きさ程度で敵意は持ちませんが。

 

 

「あ、あの、お昼ご一緒しても……?」

 

 ですが、お弁当の時間までやって来るのは感心できません。ふと教室の前を通ったついでに視線を向けた際、クラスメイトと談笑していましたし、絆を深めるためにも其方とご飯を食べるべきではありませんか? 私達も裏の話が出来ませんし困っています。

 

「まあ、断るのもアレだが、自分から積極的に行かないと友達は増えんぞ? この馬鹿などオレの十分の一程度しか友人が居ないからな」

 

「は、はい! でも、先輩とお話しするのが楽しくってつい……」

 

 委員長、人がよいのも結構ですが、時と場合も考えてください。特盛り牛丼を私がかき込む中、柳堂寺さんは嬉しそうに委員長の隣に座って弁当箱を取り出す。何故、隣に座るのですか? 正面の方が話しやすいでしょうに。私が折角特盛りカツ丼と特盛り豚丼と特盛り天丼と特盛り唐揚げマヨ丼と特盛りカルビ丼と特盛りカレーと牛すき弁当ご飯特盛りを入れた袋を此方に寄せて座りやすくしたというのに。

 

 ……ああ、成る程。彼女は委員長に惚れたのですね。他の後輩や同級生や先輩達は神野さんとの仲……といってもあくまで幼馴染みでしかなく恋愛感情は皆無ですが、を見て友達以上の関係を諦めるというのに、転校してきたばかりだから。

 

「……くだらない」

 

 恋愛なんて馬鹿馬鹿しい。私には不要なことで、理解できない。

 

「ん? どうした、轟。何か買い忘れた弁当でもあったか」

 

「いえ、別に……あっ」

 

 不意に今日までの限定メニュー八種類が行きつけの弁当屋であったのを思い出す。今晩はバイキングに行く予定ですし、放課後のオヤツに買いましょう。しかし委員長、私を本当に理解している。……ええ、恋愛は興味ないですが、貴方が望むなら一緒に買い物に行ったり、二人で遊びに行ったり、膝枕をして耳掃除をしたり、キスをしても……別に構いませんよ。

 

 

「ふふふ、その弁当は私が作ったのさ。美味しいかい?」

 

「ええ、美味しいですけど、神野先輩より先輩のお弁当の方が美味しかったですよ?」

 

 委員長に料理のこつを聞いた柳堂寺さんに対して差し出されたのは委員長のお弁当箱。色々食べて勉強するのも大切とのことです。ええ、確かにそうですね。非常に意見が合います。

 

 ……では、皆さんが先程から言いたくても言わなかった事を代表して言いましょう。

 

「……神野さん、どうして委員長の膝の上に座っているのですか?」

 

「ああ、嫉妬してくれるのかい? なら、後で私の膝に座らせてあげよう。私が彼の膝の上に座るのは……私にとって特等席で、お気に入りだからだよ」

 

「……もう俺はどうこうするのを諦めた」

 

 神野さんは何時もの様に見当違いな事を言いながら委員長にもたれ掛かる。顔は幸せそうに緩み、口振りとは別に委員長に嫌がる様子は見られない。寧ろ先程から黙ってお茶を注いであげたり、今も口元についた米粒を指先で摘まんで除けています。

 

「だらしのない奴だ。柳堂寺もこの馬鹿の言葉の七割は脳を通さずに出ていると覚えておけ。気にするだけ無駄だ」

 

「おや、酷いな。なら、私が何を言っても君は気にしないね? 私はね、ずっと君が好きだったんだ。何時も側にいて守ってくれて、私だけの王子様って奴だ。君になら何をされても構わないし、寧ろ君に無茶苦茶にされたい。私の心も体も君の物さ」

 

「ああ、そうか。それは結構。俺もお前が好きだぞ?」

 

 何故か箸をへし折ってしまいましたが、真っ赤になって俯いている神野さんと違い、委員長は勝ち誇った顔ですし、からかいにからかいで返して勝っただけでしょう。

 

「……少し顔が赤いな。ほら、俺の上着を着ていろ。保健室行くか?」

 

 神野さんの顔が赤く染まっているのに気付くなり委員長は上着を脱いで肩に掛ける。神野さんは掛けられた上着を内側から引っ張るようにして密着させています。

 

 

「……いや、大丈夫さ。でも、出来ればもう少しこうしていたいかな?」

 

「そうか。好きなだけしていれば良いが無理はするなよ?」

 

 先程から私達は何を見せつけられているのでしょうか? いえ、只の仲の良い幼馴染みのやりとりですね。恋人には微塵も見えませんし。

 

 

 

「……先輩達、随分と仲が良いんですね」

 

 あっ、柳堂寺さんが驚いて居ます。ですが仕方がないでしょう。何だかんだ言って二人は……。

 

 

 

「まさに幼馴染みの姿って所ですね! 恋愛感情なんて皆無の男女の絆って素晴らしいです」

 

 おや、彼女がそう思うのなら、私が同じように思うのも勘違いではないようだとホッとする。しかし、先程から誰か居ないような……田中さん! ……はよく見たら焔さんの隣に居ました。

 

 

 

「おーい! 待たせたんだねっ!」

 

 あっ! 誰も待っていなかったエリアーデがやって来ました。そういえば居ませんでしたね。非常に楽しかったので忘れていました。

 

 

「…あの、先輩。私、用事を思いだしたので失礼します。……こ、今度お茶に行きましょう。良いお店知っているんです!」

 

 何を忘れたのかは分かりませんが、柳堂寺さんは慌てて去っていく。エリアーデが嫌だったのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

「主殿、主殿! 鬼共を狩って参りました!」

 

 今日の任務は雑鬼の群れの討伐。発生した範囲が広いので、最高戦力の委員長と神野さんは別行動。私と委員長……ついでに小鈴の三名で数だけの雑魚を狩って行きます。先程三つに分かれた群れを手分けしたのですが、小鈴は誇らしげに委員長に近寄ると体を密着させていました。

 

 ……アレは犬が飼い主にじゃれつくのと変わりませんよね。さて、帰ったら暇潰しに委員長が私を好きだと言った録音を聞きましょう。ええ、暇潰しです。

 

「……よしよし」

 

「むはっ!気合いが入って参りました! このまま全滅させたらご褒美を頂きたいです!」

 

 臆面もなく要求できるのは凄いと思いますが、委員長に何が欲しいのかと聞かれた途端にガッチガチですが、玩具や散歩の回数を増やすなどではないですね。

 

 

 

「わ、私と交尾して欲しいのです」

 

「いや、貴女はロボットでは?」

 

「……黙れ貧乳。認めたくはないがエリアーデは天才なので私には発情期が有るのだ。あ、あの、駄目でしょうか?」

 

「……他のにしてくれ」

 

「では、一緒にお昼寝を……良いのですね!」

 

 嬉しそうに飛び跳ねると気合いを入れて残った鬼へと向かっていく小鈴。委員長は精神的に疲れた様子で大変そうです。此処で優しい言葉を掛けるべきかと迷った時、今日は冷えるのか冷たい風が吹く。思わず体を震わせた時、上着が差し出された。

 

「俺は能力を使えば平気だから着ていろ」

 

「……はい」

 

 少し大きめの上着を昼間の神野さんの様に密着させる。温かくて委員長の香りがして、まるで抱き締められているようで幸せな気分がしました。




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