俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか? 完 作:ケツアゴ
「……あ~」
早朝四時頃、目覚ましに起こされた私は二度寝しようとする気持ちを何とか押し止めベッドから起き上がる。低血圧の私は早起きは苦手なので毎朝彼に起こされているが、今日はある目的のために起きなければならなかった。ガシガシと頭をかき乱し、大欠伸をしていると足元で気配がした。
「んなー?」
飼い猫の猫座衛門が物音に気付いて目を覚まし、何処か呆れた様な声で鳴く。・・・・・・なんでだろう? 何故か、また馬鹿なことをする気?って言われている気がするんだけどな。彼ならこの子の言葉が分かって非常に狡い。今度通訳して貰わないと。
「どれが良いかな? チャイナドレスにするかチアガールにするか……」
私は彼同様に多趣味で収集癖がある。漫画にラノベにヌイグルミ、ゲームにフィギュアにコスプレ衣装。鏡の前で買ったばかりの衣装を体に当て、どれが
「よしっ!」
今回の衣装をバニースーツに決めた私は寝間着と下着を脱ぎ捨てると素早く着替える。片方の耳は折れていて後ろはシーム。少し胸がキツいけど、強調されている方が効果的だろうしね。
抜き足差し足忍び足、足音を殺して彼の部屋に侵入する。途中罠があったが今回はギリギリ回避。先週は足の小指を強打したから慎重にもなる。この寝起きドッキリは毎回毎回ドキドキなんだよ。毎日繰り返してたら辞書を叩き落され過ぎてパーになってしまいそうだから週一にしているけどね。
「じゃあ、今日も失礼しまーす」
声を殺して布団に潜り込み、寝息を立てている彼の寝顔を覗き込む。この安らかな寝顔が驚愕に染まる瞬間が堪らないんだよ。まあ、その内彼の理性がどうにかなって襲われるかもしれないけど? そうなったら責任取って貰うだけだし、彼を私の傍に縛り付けられるだろうからね。
今日は少し大胆に彼の頭を抱きかかえて胸に押し当てる。どんな風に驚くか楽しみにしながら私は眠ろうとして喉の渇きを感じ、枕元に置かれたコップに目を向ける。喉が乾いた時用に持ってきて、そのまま寝てしまったのか少ししか減っている様子はない。
「うん、飲んじゃえ」
躊躇せずにコップを手に取り喉を鳴らして飲む。やっぱり麦茶が最高だよ。……寝よ。
「……うーん」
朝日が窓から差し込む頃、悪戯の為にお昼寝をした私は珍しく早く起きる事が出来た。……早起きは三文の徳っていうけど、彼の驚く声で起きれなかったのは少しそんな気分かなと思いつつ違和感に気付く。抱きかかえた彼の頭が少し小さくなっていたんだ。
「むにゃむにゃ」
私の胸に顔を埋めて眠る彼はなんか小さくなっていた。具体的に言うと五歳くらい。寝間着はブカブカだ。私はショタは男だから興味ないけど、このショタは悪くないね。
「また変な能力を覚えて寝ぼけて使ったかな? ……寝よう」
それならそれで彼には変わりないし、驚く声が楽しみだと思いながら二度寝を決行する。二度寝が出来るんだか早起きも悪くないね。起きた時にまだ寝ていられるって凄く幸せじゃないかい?
「おい、おきろ。おきろ、はるか」
ペチペチと弱い力で頬を叩かれた私は目を覚ます。目覚ましを見ればまだ寝ていて良い時間。彼が鞄の中身を確かめたり後ろから髪をセットしてくれる等の準備を代わりにしている間に朝食を食べるようにしている何時もの起床時間まで三十分はある。
「まだ寝かせてくれよ。寝ている間、胸を触って良いからさ」
「バカいわないでよ! なぜかオレは小さくなってるんだ」
「……なーるほど」
大体今の状況を把握する。私達は互いが嘘をついているかどうか位は分かる間柄だし、何らかの要因で肉体が五歳児まで若返ったんだろうね。口調からして記憶はあるけど精神年齢も若返っていると……。
「よし! 思い切り弄ろうかっ!」
辞書を叩き落される心配無しに彼をからかう絶好のチャンスだ。まずは上半身だけ起き上がると彼を抱き寄せ、頭を撫でる。
「やめてよ。恥ずかしいよ」
「うりうり。気にしない気にしない。今日はお姉さんが遊んであげるからさ」
学校だけどこんな状況だから休みだね。でも、どうしようか。彼が病欠とかクラスメイト全員がお見舞いに来るレベルだし‥‥…私が病欠にするか。母さん達が居ないから代わりに看病するって事で……。
あっ、今日は好きな作家の電子書籍が大量に出る日だ。小さくても彼はしっかりしているし……うん、駄目だ。
「何して遊ぶ?」
遊んであげるって聞いた途端に凄く嬉しそうな顔するんだから放置とか無理だ。仕方ないなぁ。今日は私がお世話して、どうせ何かしでかしてこの状況を作ったエリアーデは刹那達に確保して貰おうか。
「キャッチボール!」
「よーし。じゃあ家の中で遊べる柔らかいボールを使おうか、庭で遊んだら近所の人に見られるからね」
まずは朝ごはんを食べよう。あっ、今日は私達だけだから彼が作ってくれるはずだったけど私が作らないといけないのか。
「朝ごはんの卵焼きは甘いのが良いかい?」
「えー。オレ、だしまきが食べたい」
……仕方ないなぁ。私は甘いのが好きなんだけど、彼に頼まれたら断れないや。後で本とかも読んであげよう。……うん、なんか良いな。こんな風に私が彼のお世話をするとか。もし結婚するなら尽くしてあげようか。
「めでたしめでたし。‥‥…ふぅ」
キャッチボールを散々した後で昼食を終わらせ、今度は懐かしい絵本を読むこと七冊目、せがまれ続けて読んだけど懐かしいな。昔は私が彼に読んでいて貰ったのにさ。私の膝の上で目を輝かせていた彼はスヤスヤと寝始めている。
「はるか……」
「おや、私の夢を見ているんだね。‥‥…そういえばこの頃だったっけ。君が結婚の約束をしてくれたのはさ」
あどけない顔で眠る小さな彼を抱きしめて頭に顎を乗せる。さて、起きたら何をしてあげようか。君が望むことなら何でもしてあげるよ。
「出来心だったんだねっ! 小さくしたら能力に何か影響が出るかと思っただけなんだよっ!」
夕方、逃げようとしたエリアーデを縛り上げた刹那達が家までやって来た。如何やら昨日の内に飲み物に薬を仕込んだらしい。よし! 有罪確定!!
「悪気しかないじゃないか! 人の迷惑を考えて行動しろよ。……うん?」
袖をクイクイと引っ張られたので下を見れば彼が手鏡を私に向けていた。別に顔に何もついていないし、何の用かな?
「……それでどうやって戻すんだい?」
「そりゃあもう、普通に成長するのを待つ……冗談なんだよっ!?」
刃を呼び出して突き付ければ直し方を話し出す。普通に二十四時間で戻るらしい。じゃあ、明日の朝には戻っているのか。
「……では、神野さんでは心配なので私がお世話します」
「私がしてあげるよー」
刹那と鹿目ちゃんが彼に手を伸ばすけど、彼は私の服を掴んで顔を横に振る。
「オレ、はるかがいい。しょーらい、オレのおよめさんにすんだから」
二人の表情が固まる中、私はついつい彼を強く抱きしめて頬擦りする。小さい君は可愛いなあ。でも、何時もの彼と早く会いたいよ。君が居ないと私の精神が持ちそうにないからね。君が居ないと本当に寂しいなあ……。
さて、じゃあ夕ご飯にしようか。
「何が食べたい?」
「グラタン!」
「よしよし。じゃあお姉さんが作ってあげよう。子猫ちゃん達も食べていくかい? ああ、そこのお前は縛られている馬鹿を持って行ってくれ。埋めるなり犯すなり好きにすれば良いさ」
「しないからなっ!?」
「私にも人権はあるんだよっ!?」
さて、雑音は無視して作るか。マカロニや玉葱はあったけどホワイトソースは無かったな。まあ全部作ればいいか。
「私も手伝うねー」
「お姉ちゃんはオレと遊ぼう!」
「私も貴女と遊びたいです!」
助かった。さてさて、恐怖の大王がキッチンに降臨する前に作ろうか。
「ほら、動かない動かない」
夕食後、二人をお風呂に誘ったけど断られた。代わりに自分達が彼をお風呂に入れるって言ったけど流石に譲れないよ。今は髪の毛を洗ってあげたので次に背中を洗ってあげている。昔は一緒に入ってたのに、急に別に入る様になった時は寂しさで泣いたっけ。
「次はオレが背中をあらってあげるね」
「そうかい? じゃあお願いするよ」
ぎこちない動きで私の背中を洗う彼。ふふふ、こんなタイミングで戻ったら面白そうなんだけどな。
「私の肌は綺麗だろう? 結婚したら触り放題だぜ」
「うん! ぜったいにはるかとけっこんするね」
うん。流石の私も恥ずかしくなったぜ。本来の彼もこのくらい素直ならなあ。あっ、そうそう。この機会に聞いてみよう。
「君って好みの見た目はどんなのだい?」
「はるかだよ」
「オッケー。これは面白くなりそうだ」
良いネタゲット。さて、そろそろ入ろうか。私は幼い彼を抱き締めてお風呂に入る。結婚したら立場が逆になるのかな?
お風呂からあがり、寝ている間に元に戻るだろうとブカブカの寝間着を着せた彼を抱き締めてベッドに入る。何も言わずに私の手を握ったけど、多分これは私が彼の手を握るのが好きだからだ。まったく、彼には勝てないぜ。
「やあ、お早う。昨日は楽しかったね」
翌朝、目を覚ませば彼は元に戻っていた。顔を背けているけど昨日の記憶はバッチリ残っているのか。面白いなあ。
「……世話になった」
「気にするなよ。君と私の仲じゃないか」
照れちゃって可愛いぜ。やっぱり君と一緒にいる時間が一番好きだな。……ハーレムは絶対に諦めないけどね!
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