俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか? 完 作:ケツアゴ
ほーんと、世の中は馬鹿ばっかしだよねー。今の幸せを幸せだって知らずに幸せになりたい幸せになりたいって口にするだけなんだから笑っちゃうよ、あははははー。
「・・・・・・しつこいナンパでしたね」
「私の胸ばっかり見てきたし、助かったよー」
電車の中でチャラチャラした男の人達が下心だけの瞳を向けてお茶に誘ってきたけど、たぶんお茶だけじゃ済まなかったよねー。一緒に居た轟さんが追い払ってくれて助かったよー。
でもでも、ほーんとああいう人達ってお馬鹿。今が良ければ其れで良いって、未来のことをなーんにも考えてない。今ですら幸せじゃないのに目を逸らして、適当に生きていれば幸せがやってくると思ってるのー? そんなんじゃ待っているのは不幸せなのにねー。
「・・・・・・今日は宜しくお願いします」
「私もプールに行きたかったし別に良いよー」
今日は暇だけど一人で行くのも、と言って轟さんにレジャープールに誘われたのー。でも、本当の理由を私は知ってるよー? いいんちょーが神野さんと一緒に行くから気になってるんだってねー。
ほーんと轟さんって馬鹿。一度幸せを手放したからって幸せなんて必要ないって自分から遠ざけるような真似をしてるけど、心の底では諦められずに指を咥えて幸せが来るのを待っているだもんねー。
ぷぷぷー! 幸せってのは手を伸ばしても手に入らないものなのに、勝手に口の中に入ってきたりしないよー?
・・・・・・恵まれているくせに自分から放棄しようとか本当に馬鹿だ。私や私のお母さんなんて幸せになろうと頑張っても無駄だったのに。
「おや、奇遇だね。ふふふ、君達と私は赤い糸で繋がっているようだ」
「・・・・・・誰ですか、貴女?」
更衣室でタイミング良く神野さんと会ったけど、何時もの様に口説かれた。周囲に人が居るのに恥ずかしかったし、轟さんはウンザリした表情だけど多分伝わってない。ほら、照れてるんだね、とか言っているし・・・・・・。
ほーんとこの人も馬鹿。幸せを既に持っていて、一歩前に踏み出せば凄い幸せが手に入るのに、あれもこれもって余所見をして全部手に入れようとしているんだからねー。何が一番だって自分でも分かっているのにさー
この人は本当に恵まれている。理論上だけとされていたレベルⅩに生まれつき至り、私が欲しいモノをぜーんぶ持っている。
・・・・・・私もお母さんも欲しいモノは殆ど持っていなかった。恵まれた人達に奪われて奪われて、今は本当にマシになったけど、羨ましい妬ましいって気持ちは消えたりはしない。
私達能力者はゴミみたいな能力でも身体能力は上がるし、だいたい目覚めたら保護やスカウトの対象になるのー。ほら、詳しく知らないと自分は選ばれた特別な存在だって思い込むし、実際にカルトの教祖とかに能力者が居たらしいよー。
でも、戦い向けの能力はほんの一握りで、殆どが後方部隊に回されるけど、希少な能力を優遇しすぎて後方部隊は見下されてるんだー。命を懸けて無いからって気持ちは分かるけど、人間扱いされるのって今の支部を含む一部だけ。・・・・・・私は自分の父親を知らないし、お母さんも誰だか分からないって言ってた。
今の支部に移るまで、私は回復アイテムとしか見られていなくて、遅いだの何だの罵声を浴びながら任務をこなしていたのー。
「二人とも来ていたのか。・・・・・・取り敢えずこの馬鹿が悪かった」
私達の顔を見るなり、開口一番にいいんちょーは謝ってくる。きっと何があったか分かってるんだねー。いいんちょーって、ほーんと馬鹿なんだよー。
簡単にもっと幸せになれるのに今で十分だって満足して、他の人の世話まで焼くんだもん。私、初対面で言われた言葉を今でも覚えてるんだー。本当に馬鹿みたいだったよー。
「ありがとう。君の能力のおかげで何人も助けられた」
私より私の能力を使えるくせに、支部長の息子で将来が約束されているくせに、レベルⅡの私にお礼を言うなんて・・・・・・本当に馬鹿だよねー。
本当に・・・・・・馬鹿。何時も後方部隊にまで気を使って、助けられた事も何度もある。レベルが下で居ても居なくても大して変わらないのにね。恵まれた者の優越感と思った事も有るけど・・・・・・馬鹿なだけだよねー。
「それにしても・・・・・・弾む双丘、滴る水滴、晒された地肌。やっぱりプールは最高だよ。後は君以外の男が居なければ良かったのに」
「言動がエロ親父だぞ、お前。少しは自重してくれ、俺が大変だ」
嘗め回すような視線を周囲に向ける神野さんにいいんちょーは呆れてるけど、何時もこうなのに何故か見放さない。二人を知っている人は相思相愛だって言う人が多いけど、互いに自分の気持ちに無自覚なら・・・・・・利用できそうだよねー。
「後ろ盾になる便利な男をさっさと手に入れなさい。男の操り方は仕込んであげる」
お母さんに教わった結果、この喋り方も癖になっちゃったよねー。あっ、目を離した隙に神野さんがいいんちょーの背中に乗ってる。
「プールまで乗せていってくれないかい? 日差しのせいで道が熱いんだ」
「乗る前に頼め、乗る前に。・・・・・・行きだけだぞ」
黒ビキニの神野さんはいいんちょーの背中に体を預け、いいんちょーは渋々といった様子でプールまで歩いて行ってるけど、二人とも本気で相手を恋人って思っていないから不思議ー。・・・・・・でも、だから付け入る隙があるんだー。
「いいんちょー。流れるプールに行こうよー」
「治癒崎、くっつきすぎだ」
「えー? なんでー?」
からかうように色仕掛けをする神野さんと違い、私はそういう気がないように体を押し付ける。私は少し小さい花柄の水着。このサイズじゃないと身長に合わないのー。胸は神野さんと同等だから少しキツいけど、強調されてるし、都合が良いんだー。
「あっ、二人で滑るウォータースライダーだー。ねぇねぇ、いいんちょー。皆と一回ずつ滑ろうよー」
「あれはカップルで滑る物だろう。流石にな・・・・・・」
轟さん、貴女がいいんちょーが好きだって見てたら分かるけど、神野さんが居るのに自分には幸せは必要ないって格好付けてたら絶対に無理だよー?
見てて。私が横から掠め取って見せるからねー。・・・・・・でも、少しだけ嫌だな。いいんちょーは優しいし、きっと神野さんが好きだから。利用する気の私より、神野さんと一緒の方が幸せになれるもん・・・・・・。
私は恵まれた人が嫌い。幸せを自分から手放す人が嫌い。だから轟さんや神野さんが嫌い。でも、一番嫌いなのは自分。いいんちょーの事は・・・・・・。
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