軽く、スープのようなものをギルドで朝食として摂り、シルヴィを背負い、次の目的地へと行く。 案内屋に聞いておいた、車椅子のようなものがある店だ。
取り敢えず、候補を一つ言ってもらったので、そこに来てみた。
「ごめん下さい。」
「はーい。」
日本式で挨拶をしてしまったが、伝わったようで何よりだ。
店内はそこそこ広く、剣やら、盾やら色々置いてある。所詮、鍛造屋と言われる店だ。
「どちら様ですか~。 っと。 初めての方ですね。 ご用は何ですか?」
「ああ、車椅子のようなものが無いか探しにきた。」
「ん~。 これでよろしいですか?」
奥の暖簾を潜ってきたのは、身長が現代で言う、中学生ほどの女性? 女の子だった。
近いものを引き寄せると、ころころと転がし、此方に寄ってきた。
「ん、シルヴィ。 これで良いか?」
「乗せて頂けませんか?」
「おう。」
出てきた車椅子は、フレームを木材で作り、要所要所を、鉄鋼で補強された車椅子だった。
四輪製で、後部の二輪が主輪で大きく、足元の副輪が小さいもので、それぞれの転輪は、フレームを鉄鋼で、地面との設置面をゴムらしき素材で覆っていた。
「これはですね、中に骨組みとして鉄柱を組み込んでいるので、耐久性はそこそこあるはずです。」
「ふーん。 どうだ、シルヴィ?」
「これでお願いします。」
「そうか。 これいくらだ?」
そう言うと硬貨入れを出し、金額を言われるのを待った。
「ん~。 金貨20で、初めてご来店して下さいましたよね? 良かったら他にも見ていって下さい。 帰りに声を掛けて下さい。 そのときに代金を払って下さい。」
「わかった。 もう使っても良いか?」
「はい、お構い無く。」
そう営業スタイルで微笑まれると、店員らしき女の子こは引っ込んで行った。
「あんなに無遠慮で良いのか? 持ち逃げされるかもだぞ...」
「見た目が優しそうですからね... 達哉さんは。」
「そうか? これでも結構年は食ってるんだが?」
「そうですか...? 私には同い年に見えるのですが...」
「ん? そうか?」
シルヴィに不思議そうに言われたので、試しに切れ味が良さそうな曲剣に顔を反射させてみる。
「ん? ん!? たまげたなぁ。 本当に若返ってやがる。」
写った顔は、高校生程度顔つきに戻っており、以前のシケた顔では無くなっていた。 思わず頬を撫でる。
「そうでしょう? なので、あの女の子は、大丈夫だろうと踏んだのだと思いますよ?」
「どっちにしろ、店員はやってはいけない事をやっていると思うのだが...」
苦笑いしつつ、近くの細いナイフを手に取る、軽く、持ち手も刄から直接作られている。
「おお、これは使えそうだな。」
三本ほど手に取り、他を見渡す。
「いっぱいありますね~。」
「そうだな... 取り敢えず、宿に戻るか。」
「はい、達哉さん。」
そう言い、店員を呼びつけると、会計を済ませ、車椅子にシルヴィを乗せて、街をブラブラと歩くことにした。
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「うふふ。 楽しかったです。」
「そうか? なら良かったんだが。」
といっても、屋台で食べ物を買い食いしながら、街を見て回っただけだったのだが。
今は夕暮れ時になり、宿に戻り、夕食を待っている。
「達哉さんと回ったから楽しかったんですね...」
「ん? なんだそれ。」
「うふふ...」
怪訝に思いつつ、料理を待つと、案内屋の女性が夕食を持ってきてくれた。
「ありがとう。」
ありがたく食事にありつくのだった。
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シルヴィを部屋に戻し、少し広場に出てきた。 目的はギルドである。
どんなのが依頼としてあるか、見に行こうと思いつき、腹ごなしのついでと思いつきである。
黙々と歩き、目的の場所に着くと、今朝とは違い、迷いなく扉を開けた。
すると、聞こえる喧騒。 今朝と騒がしさは変わらなかった。
なぜ、シルヴィを置いてきたかと言うと、疲れていたのか、ベットに横たわらせると、直ぐに寝付いてしまったからだ。
「どうされました?」
「依頼はどんなのがあるか見にきた。」
「あっ、今朝の方ですね。 あちらの板に貼られているのが只今募集の依頼で、そのしたにあるまとめたものが、常時募集している依頼です。」
「ありがとう。」
今朝と同じ職員と受け答えをすると、板と向き合い、依頼を見た。
「ふむ... 掃除してくれ? ああ、そう言う依頼もあるのか。」
雑用から、定番の魔物退治。 旅団の護衛など、幅広く載せられていた。
と、そこに、焦るようにギルドに転がり込んだ一人の兵士がいた。焦る口調で、口早に繰り出す。
「も、門が。 山賊に、あいつらに壊された!」
内容は、山賊に襲撃を受けたということだ、だが、次の言葉に、流石に焦りを浮かんだ。
「み、南門だ、 中央西門じゃねえ、あいつら、山から直接攻撃しに来やがった!」
「お、おい。 応援行くぞ、中まで入ってこられたらたまったもんじゃねえ。」
「ああ、おい、行くぞお前ら!」
ぞろぞろと南に行く集団に、流されるようについていった。
~~~
着くと、門が砕け、数人の亡骸が通りに転がっていた。
「んなっ... もう撤退しただと?」
誰かが驚き、声を上げた。
後ろ側から、人を掻き分け、宿に戻ると、泣き崩れる案内屋がいた...
「おい、どうした。」
「つれ...さられてしまいました...」
ここで、頭が逆に鎮まる。 ウインドウを開き、迷わずAK-47と40程の弾倉、数本の手榴弾を買っていた。
「シルヴィ...さんです。」
女性に近寄る。 勘違いした女性が、身を震わせ、「ごめんなさい...」と連呼する。
武装を整えながら、屈んで、女性の頭をなで、宥める。
「綺麗な赤い髪だな... 大丈夫だ。 連れ去られた事を言ってくれて助かる。」
頭を撫でつつ髪質が良いことに、顔を綻ばせて話す。
「えっ... 怒らないんですか?」
「いや、しょうがないだろ、足元の靴底のあと、複数人いるつき方だぞ。」
「えっ、そんなことまでわかるんですか?」
「まあ、そうだな。 んじゃ、寝床の準備を頼むぞ。」
ゆらりと立ち上がり、AKを取り出すと、初弾を装填し、M870に初弾を装填する。
「まあ、ちょいと一捻りして来ますか...」
~~~
宿から外にでて、門の前を無言で通るが、手を伸ばし、止めようとする人物がいた。
「いくらなんでも、ルーキーだけが行っていい奴らじゃねぇ。 おとなしく待ってろ。」
手首を捕まれ、止めた気でいる声を掛けた人物は、今朝、ギルドで大笑いをし、発破を掛けた人物だ。
だが、冷静になっていた体は、思い通りに動いた。
まず、手首を返し、強引に手首を逆に掴むと、ローキックで相手の体勢を崩した。崩れた姿勢を直そうとするまもなく、強引に手を自身に引き込み、後ろへ転がす。
「んなっ。」
少なからず見下していたのだろう相手に簡単に転がされたことに、呆然としている。
溜め息をつくと、もう一度駆け出した。
~~~
森へ入ると、不意に刃物のような鈍い光が見えた。
咄嗟に照準、セミオートで三発立て続けにAKを発砲。 一つ崩れ落ちる音がなった。
お構い無く、集団が歩いた微かな跡を追う。
広い空間に出ると、今度は奇怪な生物に出会う。
クギャ? と鳴き、振り替えれば、鬼のような顔をした、幼児程の背に、棍棒のようなものを持つ生物... 恐らく、ファンタジーな生き物である『ゴブリン』がいた。
だが、邪魔であることに代わりない訳であって、容赦なく頭に撃ち込むと、綺麗に砕け散った。
「初魔物討伐なのに、感動も何もねえな。」
引き続き、山賊の後を追う。
多少は森のなかで、足場が悪く、動きにくいはずなのだが、慣れた足つきは、道を走るような軽快さで、森での歩を進める。
笑みのない顔つきで、頭の中で考えていることはただ一つ。シルヴィ奪還のみだ。
お疲れ様でした。ふりずむです。
次回は、戦闘回です。 お相手は、十数人の山賊です。 前、シルヴィの住んでいた村を襲撃した集団ですね。 話の展開が早くて申し訳ない。 (主に時系列が
次回と、もう一話を含んで、ゼロ章を終える予定です。
見切り発車でしたが、軽く書かせて頂きました。
また、ゼロ章を元に、まだ書いていくか決めたいと思います。では。またちまちまと書きますかね...
また、改稿して出すかもです。(主にシルヴィとの日中の絡みについて。