日差しが眩しく、目を少しずつ見開く。
「目の前全部シルヴィ。」
「何言ってるのですか? おはようございます。」
「ん、おはよう。」
シルヴィはやはり早く起きて膝枕をし、俺の寝顔を見ていたらしい。 視界の中、ほとんどシルヴィだ。 目の前は豊かな膨らみだ。 嘘ではない。
まじまじと見るいい機会だったが、初めてシルヴィが出る所が出ている、という事に気づかされる。
馬鹿な事を考えつつ、覚醒する意識は、マップの横にメニューと言うものが出ている事に気づく、思わず手を伸ばして触ろうとすると、目の前にウィンドウのようなものが出て、ステータス、インベントリ、魔法会得、銃購入とでた。
「そう言えば、今日は何をするのですか?」
「んと、冒険者ギルドへ行って、証明証を貰う。」
「ああ、宿代が安くなるからですね!」
会話をしつつ、目の前のウィンドウを弄る。
ステータスを開くと、能力値、スキル、公開能力値、公開スキル、と並んで欄が表示される。公開~の欄ににはスキルの値を弄れるのか、カーソルが出ていて、全ての値が200となっていた。スキルは、触ると、透明色になったり、濃くなったりする。
要するに、何かを提示するとき、相手方に伝わる能力値とスキルなのだろうか? だとしたら、あまり強く見られても面倒なので、スキルをほとんど透明色にしておく。
もともとのスキルが多いので、少々時間を喰った。
次に、能力値へ目をやるが、全て文字化けしており、真面目に見ることが出来なかった。
「えと、それじゃあ、そろそろ出掛けませんか?」
シルヴィが顔を覗き込んできた。
「そうだな... 少し待ってくれ。」
そう言いつつ、身体を起こそうとすると、シルヴィにお腹を押さえられ、再び膝枕へ。
「なら、もう少し膝枕されていて下さい。」
「ん... 了解、というか、何で膝枕してるんだ?」
ふふっ... と朗らかに笑って返された。 頭に手を回され、撫でられる。
手は銃購入へと動いていた。
すると、銃の名前と、購入時の金額なのだろうか、各硬貨の枚数が表示される。
試しに、ベレッタM96の欄を触ると、弾倉の購入とでた、一弾倉、銅貨が数枚かかるらしい。
10弾倉買うと、何も起こらなかった。 続いて、スクロールをしていくと、ショットガンの項目に目が移る。
多分だが、何か金を稼ぐとなると、貫徹させる為の銃より、威力があった方が良いのだろうかと考えた。
暫く思案。 決めると、M870へと手が伸びた。 同じケージで、散弾を30、スラッグを20発づつ買う。
ふむ、と考え、インベントリを開くと、ベレッタ用の弾、M870と、それぞれの弾が入っていた。
「大丈夫だ、出よう。」
「わかりました。 おんぶ、お願いしますね?」
そういうと、立ち上がり、M870と8発分を具現化して取り出す。 手元にすっぽりとはまるように現れた。
「何ですか? それ...?」
「ん、前使った、銃ってやつの仲間だ。」
「あれ、凄かったですね...」
会話をしつつ、内臓弾倉の中に弾を装填していき、7発目で入れるのを止め、方に掛けた。ベルト付きで良かったと思えた。
「じゃあ、行こうか。」
「はい、お願いします。」
「まあ、ほとんど俺の用事なんだがな...」
シルヴィを背負い、部屋を出た。 因みに、コートのポケットに再び入れた硬貨入れは、若干軽くなっていた。
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所で少し、このフォルトヌスの街について、若干の解説をしようと思う。
シルヴィとこの街に入り、宿屋がある区画を南区画と言い、向かうギルドは中央区画、そこを挟み北区画となる、三区画で構成される街だ。
北区画は、港と面しており、物流が盛ん。 南区画は、宿泊施設や、住居が充実しているようだ。
全体的な家屋の雰囲気は、石畳やら、白塗りの壁が映える、ひんやりとした雰囲気だ。
で、現在、ギルドの前に居るわけである。
入るのにたたらを踏んでいた。
「お、おっきいですね~。」
「あ、ああ。」
因みにそれが理由ではない、ただ単に入ろうか迷っただけである。とあるテンプレ達が頭を過り、起きたらどうしようと考えてしまった。
ええい、ままよ。! と飛び込むと、おはようございます。と声をかけられ、中は喧騒に包まれていた。 思わず、ほぇ~と口にだし、眺めてしまう。
酒を朝っぱらから飲み交わす人々や、食事を取るもの、とにかく、かなりの人数が入り乱れていた。
カウンターらしき所に歩み寄ると、女職員から声を掛けられる。
「素材の買い取りですか? 冒険者登録ですか?」
「ああ、登録をお願いしたい。」
「えと、お一人様ですか?」
「そうだな。」
「少々お待ち下さい。」
そう言うと、奥へ職員が引っ込んだ
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暫く待つと、職員が紙と板らしきものを持ってきた。 その間に、近いテーブルと椅子のセットから椅子だけを拝借し、シルヴィを座らせている。
「えと、こちらに名前をと、得物を書いて下さい。 名前だけでも構いません。」
さらさらと書き込む。意識せずに違う言語で書き込むことができた。どうやら、翻訳スキルというものの賜物らしい。
「ありがとうございます、それでは、証明プレートに刻印してきますので、少々お待ちください。」
どうやら、また待たされるようだ。
「お腹空きましたねぇ~」
「そうだな... 終わったら、何か横の酒屋で買って食うか...」
「はい!」
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またまた待つと、プレートに『浅間達哉』と日本語で出て来た。 プレートの色は黒である。
「どうぞ、後は、スキル確認のために裏に触れてください。」
「必ずか?」
「はい、お願いします」
スキルと聞いて、複数人の視線が背中に刺さるのが分かる。そののち、肩に掛けているM870を見て首を傾げる様子が感じられる。
何も言わず、ひとりとプレートに触ると、職員が顔をしかめた。
「どうした?」
「いえ...魔力色がスキルの欄の色になるのですが、見事な程に真っ黒ですね... 多分、魔法適正無しに近いですよ」
「お、おう。 まあ、武器は間接攻撃するようなものだから、大丈夫だとは思うが。」
「そうでしたか... 」
「おい駆け出し―。 頑張れー」
がはは、と周りから笑い声が聞こえる。悪気は感じないので、余計にたちが悪いやつだ。
「ランクは、名前側の色でわかります。 ランクが上がると、黒から、赤、黄、緑、青、紫、銀、と上がります。」
「おう、ありがとう。」
「いえ、依頼は受けていきますか?」
「んや、また今度来るわ」
「では、取り消しに注意してください。作って5日以内に依頼を何か受けないと、冒険者登録は取り消しとなります。」
「わかった、また来る。」
ありがとうと言うと、横の酒屋へ何種類か食べ物を買い、シルヴィと食べた。 まずまず美味しかった。
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村にて...
「こ、これは...」
「どうした?」
「死体です。 見事に急所を刃物で一突きのようです。」
「ほお、これでも確か手慣れを残したはずなんだが」
直剣を鞘ごと抜き、腋に置き、屈んでみると、確かに一突きで殺されている。
「ふむ... 漸く強者がやって来た感じか。 あの街に。」
「そうみたいですね...」
無精髭がちらほら見える顎を撫でつつ、そろそろ剃らないとだなと考えていて。
「まあ、少し嗾けてみるか」
「戦争なんです? 面白そうですね」
くつくつと笑うと、フォルトヌスがある方向を一睨みし、撤退を掛ける。
「どんな奴かなぁ。 楽しみだ。」
平坦な声の中に潜む、狂気を垣間見た部下は、青い顔で身震いをしながら、身を震えさせた。
お疲れ様でした~。 またよろしくお願いします。