現代傭兵の異世界休養録   作:フリズム

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四話目ー二 護衛業、二日目、三日目につき

大分日差しが差し込み、各々が移動するために、野宿した後が片付けられていく様を、寝てしまっているシルヴィを抱えながら眺める。回りから、なんとも微笑ましそうな表情で見ていくため、どうにもこうにもやるせない気持ちになった。

当然、起きてきた古庄と、シャノンに見られている訳で。

 

「うらやm...じゃなくて、破廉恥ですねぇっ!」

「いいな、今日の夜私もやってもらお」

 

と返して頂いた。言いたい事は山ほどある。

 

ここで、ふと思い出した。

―――あれ、そういや、インベントリの中に入ってる剣って使えるのか?

 

思い立ったが吉日と、早速取りだし、ついでに籠手も出した。籠手といっても、ミトンのようなものではなく、指先によって別れているタイプのものだった。ガンドレットと言っても良いのかも知れない。

取り敢えず、程よい長さの刃身と、片手で持つには少し長めの柄の直剣を、簡素な鞘から抜くと、シルヴィがもぞもぞと動き、欠伸を上げた。

 

「おはようございます...達哉さん」

「おはようさん。今日は寝坊助だったな...」

 

インベントリに突っ込んである車椅子を出し、座らせると、立ち上がり、剣を握った。

 

「何するんですか?」

「剣で戦えないかと思ってだな」

 

身体を弛緩させ、掴んだ剣も垂れ下がらせると、右足で瞬発的に踏み込み、右下から左上にかけて切り上げる。 豪、と音がなり、砂煙が少し舞う。

 

「達哉さんは剣も使えるのですね~」

「いや、刀ってやつならある程度は使えるんだがな...」

 

持ち上げ、刃身を流し見るが、特に装飾がついていなく、両刃の細い身で、(つば)の辺りに透き通った黒い石が嵌め込まれているだけの、本当に質素な剣である。

両手で、剣道でいう中段に構える。が、辞め、鞘に納める。

 

「出ますよー」

「んじゃ、行くかぁ」

「はーい」

 

久し振りにシルヴィの車椅子を押し、馬車に乗せる。これが二日目の主な出来事である。

 

 

 

~~~

何事もなく、二日目は過ぎ行き、三日目の出発後。

 

「しっかり整備されてる道なんだな。管理もしっかりされているから、確かにギルドの依頼に対しての要求ランクが低いのも頷ける」

 

現在浅間達は緑ランクであり、中級者より少し下辺りの位置付けである。 護衛というのは、状況に応じ判断が迫られ、特に敵対勢力とぶつかった場合、戦うのではなく、いかに護衛対象を逃がすかも重要になるため、一言で言っても簡単とは片付けられない依頼のはずなのである。

 

「私たちがフォトルヌスに来るときも、特に襲撃とか、盗賊に襲われるとかは無かったですね」

 

と言うのは、最近王都からやって来た古庄である。

 

「ふむ... 確か日中には着くんだったな?」

「はい、商団の移動予定ではそのようになっています」

「そうか... 何事もなくこのまま王都に着いてくれれば良いが...」

 

茶葉の商人と話していると、急に後ろからガタガタと音が鳴る。

 

「ん?」

 

気になり、馬車から後ろを覗くと、奴隷商の馬車が道端にいかにもそこにありましたと言わんばかりの穴が空いており、そこへ馬車の車輪がはまり、車体が傾いていた。

 

「ん? トレース... 前の馬車と同じように動いて、なぜ後ろだけ穴にはまったんだ?」

 

道幅自体は、馬車が四両程度並べれる程の広さで、両脇は木々が密集して生えている。 

穴がずれるということはないはずだとすると、前の鉱石を乗せた馬車もその穴にはまったはずなのである。

 

「むっ... 狙ってやられたのか?」

 

その考えにたどり着くと、両脇から飛び出した影が見えた。

 

「なっ、召喚獣かっ!」

 

そう叫んだのは奴隷商の護衛をしている、酒を飲む約束をしていた奴で、バスターソードを構えていた。

魔法は正直疎い。 シャノンに召喚獣を訊ねる。

 

「召喚獣は、呼び出した人物を主として契約し、使役するタイプと、使役用の属性別の魔獣の二つのタイプがある。 多分、あれは契約するタイプではないほう、細かい指示は出せないけど、魔獣間でリーダーを立たせれば、呼び出した人物が大まかな指示を与えるだけで勝手に動く。」

「何で契約しない方ってわかったんだ?」

「契約した魔獣は、見たことある魔獣であることが多い。だけど、今襲っている魔獣は、明らかに召喚専用の属性別の魔獣。実在しない魔獣だから、そう分かる」

「ふむ... そういや、シャノンは誰から魔法を習ったんだ?」

「お父さん」

「そうか...」

 

以外にお父さんっ子なのかもしれない、とシャノンの認識を改め、少し離れた奴隷商の馬車を見る。

両脇から大きいのが一体、中くらいが五体程の狼の群れが、二人づつに別れた冒険者に襲いかかっている最中だった。

 

「死なれちゃ困るしな、手伝ってくる」

「気をつけて。もしかしたら、召喚した魔法使いが近くに居るかも。 私も着いてく?」

「いや、大丈夫だ。シャノンは万が一の時に、迎撃を頼む」

「わかった」

「では、私は馬車の進む速さを速めるように頼んでおきますね」

 

シルヴィの車椅子を任せ、馬車から転がり出ると、何割か馬車の速度が上がり、去っていった。

 

「バックアップか... どうすっかな...この頃、銃を買ってばっかだが、ライフルでも買うか?」

 

と呟くと、どうせ買えるのなら、使ったことのない銃をと思いつき、VSSと呼ばれている特殊用途狙撃銃を買い、ついでにスコープと、レーザーサイトを買う。 レーザーの色は赤色である。

スコープと銃の調整をしていないので、手早くレーザーサイトだけを取り付けると、道路脇の木に隠れ、冒険者に襲いかかってる五体の狼の後ろで、ふんぞり返っている大型の狼に照準を合わせ、一発放つ。

 

少しずれ、狼の胴体を直撃する。 すると、身体をなぎ倒しながら、片腕をふきとばす。 なかなか性能が良い。

ソビエト製、消音機と一体化したこの銃は、発砲時の音をかなり掻き消す能力を持つ。 銃弾も太めのため、威力も高い。

 

 

 

 

道路とは反対の茂み側から近づき、かなり接近する。 ここで銃を持ち変えて、UMPを出す、これはホロサイトの調整を終えている。

バサリと狼の後ろから躍り出ると、なるべく斜線が冒険者に被らないように、二体倒す。 既に三体はバスターソードによって倒されていた。 

 

「ありがとう、何度も助かる」

「死なれちゃ困るからな」

 

そう話し合うと、もう片方は自力で倒したようで、こちらに商人を連れてやって来た。

 

「あ、ありがとうございます。 助かったですね、商品も傷つかずに良かったです」

 

ゴマを擦りながら近寄ってくる商人を見る、確かにこれは悪どい商売をやっていそうな顔である。

 

「この奴隷は、何の奴隷だ?」

「ああ、こやつらは娼婦奴隷ですよ。 結構高値で売れるんですよ」

 

ふーん。と呆けた返事を返し、馬車の奴隷らを見る。 間近に見るのは初めてだったので、奴隷らからは怯えた表情で見られる。

 

「興味がおありで? でも、商品なので、気に入ったら買って頂けると幸いですよ」

「いや、無い。取り敢えず。車輪を起こそうか」

 

冒険者らと協力しながら、穴から車輪を起こすと、馬車の回りを歩きながら、王都へ向かうことになった。

奴隷、と聞き、奴隷の制度が存在することに顔をしかめたが、割り切った。 存在している以上、必要なものなのだろうと思い至ったからだ。 とにかく、奴隷ということで、売られた先で、不遇な扱いを受けないことを願うばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様です。ふりずむです。

特に...無しですね。 強いていうなら、今週は週末しかお話を挙げれそうに無いですね...

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