ヤンデレ☆イリヤ   作:鹿頭

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クロエ可愛さに筆が盛大に滑った。……まさか火種を増やさないといけない展開になるとはこの海の(ry


四話

 

 

 

我が兄弟とは違い、朝練なんかとは無縁の生活を送っているから、基

本的にイリヤと一緒に登校している。

 

そこに、最近になって、美遊ちゃんが加わった。

仲良くなった…と見えるが、美遊ちゃんが俺に向ける目が多少の嫉妬やらが混じっている様な気がする。

イリヤの他に友達居ない(自己申告)らしいし…

 

しかし、それはそれとして、目に見えてイリヤの依存は減っていった。

 

…そういえば、何かあったようななかったような。

うーむ思い出せない。

 

 

そんな思い出せないほどどうでもいい話なんて兎も角、イリヤが自立していくのは美遊ちゃんが友達で居てくれているからなのだろう。

 

今では普通の兄妹…と言って差し支えないだろう。

ほら、やっぱり環境だったんだよ!

 

ちなみに、私生活と言えばだ。

今日、学校では士郎が相変わらず遠坂とエーデルフェルトを始めとした女性陣にフラグを建てたりしたり柳洞一成とイチャイチャ(自己主観)するのを見ていて、だんだん胃が痛くなり、これ幸いと早退をした。

 

 

士郎からは「俺も早退しようか?大丈夫か?」などと言われたが、数人名の視線が突き刺さる。

このまま敵に回したく無いので、これを固辞した。

 

 

 

それから、家の自室のベッドの上にて、のんびりと何故我らが冬木市には神社が無いのか?と言う至極どうでも良い事を考えていたら、ドアがノックされた。

 

「お兄ちゃん?居るー?」

 

と言うや否や、ドアが開く事となった。

はて?イリヤ?この時間に?何で?と思っていると、そこには褐色の肌の、ふしぎな格好をしたイリヤが居たんだ。

 

「お兄ちゃんー!」

 

あー…なるほどね、こんな時期かーと、思っている最中、ボフっ、と寝転がってるこの身に向けてダイブされる。腹筋がなければ即死だった。

 

「お兄ちゃん、早退しちゃったの?……ねぇ?私が居なくて寂しかった?私は寂しかったかなー」

 

猫撫で声、とでも言うのだろうか。

甘える様に、こちらを上目遣いでじっと見つめながら言う。

しかし、本当に僅か、ごく僅かだが、肩が震えている。やっと。やっとだ。そう言った様な気持ちと同時に不安を感じているのが見て取れる。

 

寂しかったのは、紛れも無い本当なのだろう。

 

そんな彼女(イリヤ)に対して、特に変わった様な態度は取らず、ただ普通に、何時もの様に接する事に決めた。

 

手を伸ばす。刹那、体が硬直したのが伝わってくる。

そのまま、手を頭に乗せ、ゆっくりと、慈しむように撫でる。

 

「お兄ちゃん…!」

 

ホッとしたような、と言うよりは、心底安心したような声に聞こえた。が、その後に。

体を上によじらせたかと思えば、そのままギュッ、と頭を抱きしめられる。

 

「お兄ちゃん…ずっと、ずっと前から、待ってた!」

 

「無理矢理閉じ込められて、ずっと見てるだけしか出来なかったけど、今、こうしてお兄ちゃんと…!」

 

おっとこれは

 

あの子(イリヤ)なんかに渡さない…!渡しはしない!」

 

抱き締める力が強くなる。だんだん首が締まっていく。

ギブ、ギブギブ、

 

「でも、お兄ちゃんは、あの子が居なくなっても、きっと貴方は悲しむ…そう思ってたけど」

 

「貴方は(イリヤ)を選んでくれた…」

 

お、おう、ちょっと待て

 

「私をちゃんと、見て、抱き締めてくれた…!」

 

話をね、話をしよう、な?な?それから首を、首を

 

「それだけで十分。私を捨てたママやパパなんかと違って、私にはお兄ちゃんが居るから」

 

「私は迷わない」

いいから話をっ……ん…!?

 

「えへへ…シちゃった♡」

 

首の拘束が急に緩んだと思うと、唐突に唇が重なった。

 

余りの出来事に頭がついていかない。

 

「大丈夫、ちょーっとだけ待っててね?私のお兄ちゃん♡」

 

そう言うと起き上がり。

 

「終わらせてくるから」

 

と言って部屋から出ていく。ちらりと見えたその顔は、決意に満ち溢れていた。

 

………もしかしなくてもトンデモなくマズイのでは…?

 

えっ、ちょ、どうしよう。

だ、誰かに、相談…そ…誰に?

 

暫し右往左往していると、玄関のドアが開く音がする。

 

「ただいま…」

 

イリヤの声だ。

先程の事もあるので、心配になり向かう。

 

「ふぇ!?お、お兄ちゃん!?ど、どうして??!」

 

驚き叫ぶイリヤ。しかしよく見なくても怪我をしている。

こっちのセリフじゃないか!

 

「あー…うーんと、これには色々とありまして…」

 

色々!?

 

「学校で、ちょっと…ね」

 

そ、そうか。

とは言うものの、明らかに原因はさっきの、だろう。

しかし幸いにも大事には至ってない、ようだ…良かった。

 

「ど、どうしたの?お兄ちゃん。なんかヘンだよ?」

 

あー、いや。なんでもない。

 

「本当に?」

 

ほんとほんと。

 

「………嘘」

「お兄ちゃん、昔っからそうだもん。大丈夫じゃない時の誤魔化し方が下手だよ」

 

「ねぇ、そんなにやだ?そんなに頼りない?お兄ちゃん…やっぱり、今の私じゃ駄目なの?」

 

……何か言われたな。

 

益々思考の坩堝に入る。

どうすれば。どうすれば。

泣きながら話しかけてくれているであろう、イリヤを、直視出来ない。

 

「お兄ちゃん…そんなのやだよ…」

「お兄ちゃんが居なくなったら、私…私…」

 

 

きっと、今の俺は、凄く酷い顔をしているのだろう。

 

 

「…信じてる。私、信じてるから。ちゃんと、私の、(イリヤ)だけのお兄ちゃんだって」

 

「たとえどんな事が有っても、最後には私の側に必ず居てくれるって」

 

「きっと、変な女に誑かされたんでしょ?大丈夫だよ、お兄ちゃん。そんな奴は私がやっつけちゃうよ!」

 

「お兄ちゃん」

 

「大好きなお兄ちゃん、私だけのお兄ちゃん。待っててね?」

 

そう言うと、イリヤは自室に向かっていった。

 

 

堪らず、俺は家から出て行った。

 

ーーーーー

 

冬木市内を当てもなく彷徨う。

夕方になり、家路を急ぐ学生の姿が見え始める。

しかし、帰る気にはなれなかった。

 

なんども。何度も。

 

後悔が続く。

 

イリヤと、イリヤ。

 

二人のイリヤは。こうして、今にも殺し合いに突入しようとしている。

 

全ての責任は、こちらにある。

そう言っても良い。

 

二人仲良く暮らせる様になる…と言うのが、本来の定められた道筋。

しかし、ここに異物が混入した事により。

どうなるかわからない。

 

このまま二人共共倒れになるのでは無いか?

そうだ。もう一方のイリヤは、存在しているのが奇跡。

定期的な魔力供給が無ければ、消えてしまう。

それなのに、どうするつもりなのか?

肝心な時に、メル友からは返信が来ない。

 

ああ、本当に。俺は。

 

 

 

「随分と、酷い顔をしてますね」

 

一度聞いた声。

振り向くと、そこには、カレンが居た。

 

「ほら。やっぱり」

 

こちらに近づいてくる。

 

「ーー話をしましょう」

 

 

泰山。

現状財布を持ってきて居ない今、全て目の前のこの女性に払ってもらう事になる。

その事を問うと、

 

「気にしないでください。食事代を女に払ってもらう様な情け無い男に情けを施しているだけですから」

 

との様な返答が返ってきたので、甘んじる事にした。

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ハァ…妹二人が、貴方の取合いを。ですか」

 

あからさまに気持ち悪いです、と言った様な顔をする。

 

「一度頭の中を診てもらったらどうですか」

 

そうかも知れない。側からすると、警察呼ぼうか?と言われる様な話をしている自覚がある。

 

「…冗談はさておき。本当に悩んでそうですからね。今の貴方は何言っても真面目に受け止めてますし」

 

「だれも、ふたりの主人に仕えることはできません。……あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」

 

 

「何処ぞの福音書の一節です。貴方向けに位階を落として話すと、二兎追う者は一兎も得ず、と言う意味でしょうか」

 

……おい、それは!

 

「貴方の話を信じるとしましょう。考えても見てください」

 

そう言うカレンは、有無を言わせぬ口調で話す、言うより一方的に喋る。

 

「一人は貴方を信じ切っている。必ず戻ると。そしてもう一方も貴方を信じ切っている。こちらを選んでくれた、と」

 

「はっきり言って不毛です。どっちか切り捨てましょう」

 

は?

 

「お互いがお互いとも自分が選ばれたと信じているんですよ?両方取るなんて選択肢なんて有る訳ないでしょう?」

 

それは…

 

「どちらかを捨て、どちらかを取る。二つに一つ。貴方は、規模こそ小さいですが、人類の命題に直面している、と言っても過言では有りません」

 

「………何も言い返しませんか」

 

「無様ですね。それとも貴方が死んでみますか?ま、貴方が死んだらあの二人も確実に後を追いに地獄へ落ちていくでしょうけど」

 

「それとも、私と逃げますか?」

 

思わず顔を上げる。

 

「何もかも捨てて、私と」

 

微笑みながら彼女は言う。

それもいいかも知れない、と言う自分がいる事を否定出来ない。

 

「………ま、冗談ですけど」

 

どうやらまた馬鹿にされた様だ。

 

「多分私達を殺して自分も死にますよ。無駄に死体を積み上げる程罪深い事は有りません」

 

手を組み、祈る様な所作を見せるカレン。

しかし別に神を特別信じている訳ではない、と聞いた後じゃ、なんだかなぁ、とは思う動作で有る。

 

私は兎も角、貴方が死ぬのは嫌ですし…

 

何か言いました?

 

「いいえ、何も」

 

そう言うと、立ち上がるカレン。

 

「では、お先に失礼します」

 

退店するカレン。

しかし去り際に、こんな事を言い残して言った。

 

「人類と言うのは、共通の敵が現れて結束するものです」

 

「ま、貴方にそんな女性が居るとは思えませんし。それに、私ではーー」

 

 

 

ーーーーー

 

 

店から出て、柳洞寺の方面をフラフラと覚束ない足取りで歩く。

 

ふと時計を見ると、門限は過ぎて居る。恐らく心配をかけて居るのだろう。

 

けれども、帰りたくない。

愚かな男は、結論を出すのが一番嫌なんだ。

どちらかを棄てるなんて、出来ないし、したくない。

 

これは代償だ。

何の力も勇気も持たず、只々己が欲望を優先させた愚かな男への。

お前は何も出来はしない。

何も選べやしない。

 

ほら見ろ。余計な事を。

 

お前なんて、最初から最後まで異物。邪魔者だったんだ。

 

地獄の業火に身を包まれてれば良かったんだ。

 

その事を今になって後悔する。

 

救いようの無い愚者はその場に思わず倒れこむ。

 

夜の帳に冷やされたコンクリートの感触が死体の様にひんやりと冷たい。

 

ああ、このまま。何も考えず。

 

意識を手放しーーーー

 

「あの、あの!そこのお方、大丈夫ですか!?」

 

朧げな視界で声の先を見つめる。

 

「まあ…これはいけません…大丈夫ですよ、ですからどうか、しっかりなさっーー!?ー!ーー、ーーー!…!」

 

耳が遠くなる。

 

視界が閉じていく。

 

ああ。俺のことなんて、どうか構わず。

 

そのまま、意識を手放した。

 

 

 

 

 




もうどうなってもしらないぞ
ちなみに精神的にぶっ壊れると簡単に気絶します。念のため。


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