完全に見切り発車。やりたくなったからやる。
病みかは……うーん
更新の間隔は結構開く。
分岐条件
カレンルートから分岐。
■■■■との
3rei ! 一話
《妹達が居なくなって数日経ちます。どうすれば良いですか》
《妹、そろそろ殺してもいいと思いませんか?》
《いろんな意味で妹すげぇな》
《二人も男がいるのにその上私の彼を盗ったんですよ?》
《だからすげぇなって、普通修羅場や》
《彼の気持ちは私だけに向いていれば良いのに、どうしてなのかしらね?》
《話通じてないですね、こっちは精神的に大変なんですよ》
《やっぱり、封じておくのは悪手だったかしら》
もういいや、やめよう。話が通じない。
携帯を閉じ、ベッドに放り投げる。
はぁ、と大きな溜息を吐く。吐かざるを得ない、と言ってもいい。
イリヤとクロエが円蔵山にて消失してから数日経つ。
一応、海外旅行という事にはなってはいるのだが……。
まあ、そうではない、という事を勝手に知り得ている。
その事が胸を突いてくる。
再び溜息を吐く。溜息を吐くと幸福が逃げていく、などと巷では言う所もあるらしいが、現状不幸のドン底に居るので至極どうでも良い。
ふと窓を見やる。
雲一つなく、青く、蒼く。何処までも澄み渡る空。
その事が一層気分を陰鬱とさせる。
そろそろ外に出よう。
最小限の身体能力は維持しないといけない。
不自然に引き篭もっていると面倒臭いからな。
適当に歩いてくるわーなどと極力不自然にならない程度に間延びした声をかけつつ、玄関に向かう。
すると大抵は士郎辺りが「わかった」と返事を返してくれる。
空は青い。窓越しで見るよりも、一層澄み渡って見える。
そんな時、着信音がする。
《ねえ、困ってるのよね?》
思わずゾクッとする。今までにない文脈。
かつてこのメールが自分の想い人以外の事を届ける事があっただろうか。
そして、また通知。
《妹に会いたいのよね?》
待て、一体何を、何が起きている?
まるでこれじゃあ、あの世界に行く方法を知っているような───
《会いたいんだったら、アーネンエルベって喫茶店に来てくれるかしら》
アーネンエルべ…だと?
なんだ?何者なんだ?
《じゃあ、待ってるわ》
冬木大橋の近くに存在するトンデモ喫茶店の筈。見た事ないから、本当に存在するのかもわからない。
まさか、アーネンエルベ…よりによってアーネンエルベと来たか……
待て?このメール、何処と繋がっているんだ?
……いや、行けばわかる、か。
しかし、拭いきれない不安がある。
うっわ本当にあった。
ドイツ風の重そうな扉が見える。
ここ……で良いんだよな。
意を決してドアを開ける。
「いらっしゃいませー。お一人様で良いのかにゃ?」
うわぁ…猫、いやヒト?ナマモノが動いている…。マジかー。
「ああ、その人はこっちよ」
「はいにゃー」
声のする先には、紅茶を飲んでいる少女。
「へぇ……あなたが…ふーん」
ま、座りなさい、と促された。
内心とんでもない事になってしまったと思いながら座る。
「本当なら、彼以外の人にこんな下らない労力を割きたくないのだけれど」
「まあ良いわ。あなたとのやり取りは嫌いじゃなかったし」
そう言うと、紅茶に口をつける。
「お客さーん、ご注文は決まりましたかにゃ?」
突然、ウェイターから声をかけられる。
背の低さに近寄ってきている事に気がつかなかった。
……同じ紅茶で。
「了解だにゃ」
注文を受けると、奥の方へ消えて行った…。
「で、妹に会いたいのよね?」
うん。
「良いわよ、会わせてあげるわ」
……どうやって。
「ああ、普通にこの店を出れば
本当に飛ばすだけなのね、そうなのね。
「あら、何か不服かしら?」
良いや、そんな訳もない。
「ふふ、でしょうね」
「お待たせだにゃー」
頃合いを見計らって飲み物が届く。
相変わらず目の前の少女はゆっくりと紅茶を嗜んでいる。
「じゃ、ごゆっくりー」
紅茶の味は…うん、美味い。
酸味と言うか、クドくない。
こんな紅茶は、なかなかありつけない。
凄い。
いやまあ、色々とめんどいからもう来ないけど。
「ところで……」
はい?
目の前の少女は、唐突に口を開く。
「彼、振り向いてくれると思う?」
不安げに言う少女。
まさしく、その雰囲気は恋する少女だった。
が、が、しかし。その恋は■■■■■■。
その筈だ。
果たして、どう答えたものか。
「そう、あなたはそう思うのね」
あっ思考を
「良いわよ、別に。こんな所で殺したりなんてしないわよ」
外だったらわからないけどね、と呟く少女。
首の皮一枚繋がったようだ。
ってか危ねぇ。
「あなたは、わたしの事を知ってるみたいね……まあ、読まないけど」
あっ、うん、もうなんでもいいです。うん。
「そう」
妙な沈黙が続く。
気まずい空気に耐えかねて、辺りを見渡す。
店の雰囲気はドイツ風、いや。ほぼドイツと言うべきか。
これで店主はイタリア料理が得意らしいからなんともはや。
客は……誰も居ないな。
「その方がお互い都合がいいでしょう?」
そうですね。
「もう、どうしてそんな固くなるのよ?メールでは軽いじゃない、あなた」
流石に殺しに来るかも知れない方とフランクに話せってのは…
「あら、そんな事言ったかしら」
えぇ……
「ふふふ、大丈夫よ、もう会う事もないだろうし、殺しなんてしないわよ」
会う事もない?
花が開いたような笑顔でそんな事を言う彼女。
「ええ、本来なら貴方と会う気なんてさらさらないもの」
笑顔で断言されると胸にクルものがあるなぁ!
「さっきも言ったけど、いろいろ楽しかったし?妹なんてわたしには良くわからないのだけれど、友人が困ってる、って言うものだし…」
友人……か。
メールだけの関係で友人とは…さてはオメー友人居ないな?
「あら。貴方も似たようなものでしょ?」
うん、そうだな。
「あ、そうね。コレあげるわ」
と言って渡されたのは、中身の入った巨大な紙袋。
それは見た目道理にズッシリとして重い。
何これ。
「ああ、ここでは開けないでね?危ないから」
危……ない?
「ええ。拾ったのだけれど……
拾ったものを渡すとかどうなんです、それ。
「要らないなら棄てるわよ?」
あーいや、ありがたく貰っておく。
「そうしなさい。ええ、損はさせないわ」
そんなシロモノなの?
「そうかもね」
と言ったっきり、紅茶を飲んで、二度とその事について話す事は無かった。
一つ聞いても?
「何かしら?」
メールって最初に送って来たの、どうして?
「不粋な人。そんな事を聞くなんて」
不快感が露わになる。グッバイ我が人生か。
「だから、そんな事しないわ。……そうね、答えるとしたら…うん、適当に送っただけなのよね」
適当に。
「ええ、適当に」
それでこの携帯に繋がった、と。
「暇だから、面白そうな所に繋がらないかしらーって思って…ね」
相談を求めるのが最初のメールだったじゃないか。それはどう説明するので?
「あら、そんな文面だったかしら」
あくまでもシラを切られる。
追求するのは藪蛇だし、面倒だし手間がかかるからしない。
「いいじゃない、なんだって。別に支障があるわけではないでしょう?」
それもそうか。
苦笑する。
「……ええ、そろそろ時間ね。彼が待ってるから、行くわ」
そう言って立ち上がる。
所で本当に待ってるんですかね〜?
「調子に乗ると消すわ」
誠に申し訳ございませんでした。以後気をつけ…以後無いのか。
「自分で言っててなんだけれど…そういえばそうね…メールはするのかしら?」
こちらに尋ねられても…そちらから飛ばすじゃん。
「まあいいわ、その時の気分ね。じゃあ、さよなら。これでお別れね」
と言って、店から出て行く。
おい、待て勘定……あぁっ!クソ!やられた!
……紅茶、もう一杯。
「まいどー」
……しかし。
外に出ればすぐ、だったか。
規格外と言うべきか。持つべきものは友、と言うべきか。
さて。
───行くか。
ドアを開けて、外に出る。
そこには───
……雪?
見慣れぬ、見慣れた風景。
雪が積もっている。
失念していた。夏服で来てしまった。
これは寒い。
……てか何処に行け「客か」
は?
思わず後ろを振り返る。
そこには、ドイツ風の扉など無く。
代わりに存在していたのは、ラーメン屋の暖簾。そして長身の店主。
「今日は多いな。入れ」
肩をがっしりと掴まれ、店に引きずり込まれる。
力づくで座席に座らされる。
巨大な紙袋は椅子に立て掛けた。
「注文は……麻婆ラーメンで良いな」
まだ一言も言葉を発していないのに、メニューを強引に決められる。
いや、あの。
「食え」
ドン!と力強い音と共に麻婆豆腐の海に埋没したラーメンが出てくる。
「残せば殺す。良かろうな?」
はい、いただきます。
うん、麻婆豆腐の旨味がラーメンに良く絡んでいる。
中々の腕前だ。
「ほぅ……」
余りの美味しさにもう食べ終わってしまった。
「良い食べぶりだ、少年。もう一杯くれてやろう」
そう言って先程よりも美味しそうな赤黒い麻婆豆腐を出してきた。ラーメン?見かけではわからないなぁ…
それにしても美味い。
一体どうしたらこんな旨味だらけの料理が出来上がるんだ…?
啜るたびに旨味が口いっぱいに広がって行く。
手を休める暇が無い、否。休めたく無い。
あっ、もうない…!
名残惜しいが、ご馳走さまでした。
「そうか。二杯合わせて5600円だ」
「高っけ!なんだそりゃあ!?」
「自家製だ。高いのは当然の事だろう」
財布を恐る恐る取り出す。
……足り…無い。
不味い。
「よもや払えぬ、と言う訳は無かろうな」
……ある程度払うので…ツケ…とか出来ませんか。
「ほう…足りない、と。そう言うか貴様」
店主は頭巾を解き、厨房からゆっくりとカウンター席。つまりこちら側へと近づいてくる。その手に包丁を握り締めて。
「誤魔化しとはいい度胸だ……!」
「ならばその身体を持って贖ってもらおう…!先程豚骨を取り損ねたのでな…!」
やっべ…逃げないと…殺される!
思わず立ち上がる。その時、椅子に立て掛けてあった紙袋が倒れ、破れる。その破れた穴から中身が飛び出る。
銃だった。
そう、銃が出てきた。
「貴様……!それを何処で!?」
え?あ、貰い物。その人曰く拾った、と言う話らしいです。
「貰い物……?」
貰い物。
その言葉に、目を細め。なにやら思案する様な様子を見せる。
「……気が変わった。少年。名前は?」
えっ……衛宮───ですけど。
「衛宮……か。そうか」
ニヤリ、と口角を上げる怪しい店主。
「払えぬなら働け、衛宮」
え?
「働け、と言っているのだ」
え、探さないといけない人が「さもなくばこの場で麻婆豆腐の具材に変えてやろう」
わかりました、喜んで働かさせていただきます。
「喜べ少年。食住は保証してやろう」
「これからは私の事は店長と呼べ」
あ、どうも。わかりました。
そんな時、店の電話が鳴る。
「ああ、五人前だな。承った」
店主…店長は電話を取って、そんな事を言った。出前だろうか。
「出前だ、行ってくる。皿でも洗え」
わかりました。
店長は、ラーメンを作り終えると、出前用の箱、岡持ちに入れて店を出て行った。
皿を洗え、とは言われたが、数枚程度だったので、簡単に終わった。
余った時間で、このライフル、とでも形容すべき巨大な銃を弄る。
曲銃床、と中々古風な出で立ちをしている。
マガジンには、銃弾が入っていない。
コッキングレバーを引くと、薬室に入っている弾薬が飛び出る。一発装填式か?
マガジンに入れ直す。
紙袋をひっくり返すと、中から銃弾が数発程出てくる。
……ただの銃だな。しかもライフル。狙撃銃として無理矢理使えなくも無い銃…だな。うん。
対人戦では役に…役に…無いよりはマシか。
元のように紙袋にしまい直す。
なんだろうな、コレ。
損はしない、けれど…かさばるな。
曇りガラスの扉を眺める。
端に霜が走っており、凍てつく外の世界を感じ取れる。
イリヤとクロエが居る、のは知ってるけど…。
「前途多難だ……」
恐ろしいのに捕まった。
探しには愚か、外に出る事すら怪しい。
銃で先にヤろうぜ!とか思っても、この取り回しの悪さだと先に食材に変えられて終わりそうだ。
金……そう、金がないんだよなぁ…ハァ。
まさしくハサンよなフハハハハ!とか聞こえてきそう。
「戻ったぞ」
お帰りなさーい。
店長が戻ってきてしまった。
「衛宮」
はい?
何を考えて居るんだかわからない、仏頂面の顔が向けられる。
「本当に、ソレが何か知らぬのか」
ソレ、と言われた目線の先には、紙袋。
寧ろ知ってるんですか、店長。
「……さあな。見覚えがあるような気がしただけだ。他意はない」
と言うと厨房に入り仕込みを始めてしまった。
鬼気迫る表情で湯切りをするのは、何ともシュールだった。
「出来たぞ。食え」
そう言うと、普通の麻婆ラーメンが出てきた。
あの、店長、金取る気じゃ…?
「金などとらん。貴様はここの従業員だ。賄い代わりに実験台にする程度、私の自由だ」
実験台…人権はどこへ行ったのか。
「食い逃げ泥棒を見逃しているだけでなく、剰え雇用までしていると言うのに、か?」
腕を組みながら堂々と言う。その目線は、見られているだけで射殺されそうだった。
正論が耳に痛い。堂々と目を逸らす。
「理解したか?なら食え」
と包丁を握り締められたので、大人しく食べる事にした。
いただきます。
あっさりしている……。かといってコクがないわけではない。なんとも不思議なラーメンだ。豆腐は絹を使っていて、喉越しにも優しい。
美味しい!
「そうか」
と言って新たな丼が目の前に置かれる。
「コレも食え」
あの、そろそろ食べる量がエゲツない事に「具材にされたいか?」
いただきます。
限界を迎えようとしている胃に鞭を打つように食べていると、唐突に店長は尋ねてくる。
「時に衛宮よ。何故こんな何も無い僻地に足を運んだのかね?」
妹たちを探しに…かな。
「妹、かね」
うん。妹。見てない?銀髪で赤目の子と、銀髪で金がかった琥珀色の目で、褐色の子なんだけど。
「両者共に見たぞ」
言い澱むことも無く答える店長。
何処で!?
「この先にある校舎でだ」
行ってもい「断る」
えぇ…
「貴様はここで暫く働いて行け、衛宮」
嘘だろ…。
「嘘だと思うなら、この店の門を出ると良かろう。その瞬間、貴様の五体は十七に刻まれているだろうがな」
わかりました、働きます。
「最初から働けと言っているぞ、私は」
「うーん…麻婆抜きの醤油ラーメンを頼んだ筈なんだけどなぁ…」
ギルガメッシュは愚痴る。
「さっきもそうだけど…お兄ちゃんを思い出すな…」
「お兄ちゃん?キミのかい?」
「うん……こーゆーの、平気な顔して食べてたからなぁ…」
ギルガメッシュの質問に、イリヤは遠い記憶を辿る様な趣で答える。
「ええ、ホント。どうやったら食べれるのかしら…」
クロエも何か思い出す様に呟く。
「田中さんはお腹がズンガズンガするです…」
「キミ達のお兄さんって……」
言峰ルートが開拓されつつある……!