ヤンデレ☆イリヤ   作:鹿頭

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分岐条件
カレンとの関係を追及された際に、相談相手と断じるのではなく、言葉を濁す。


カレンエンド

 

 

 

「おにいちゃん、しょーじきに答えてほしいかなー?」

 

イリヤ?何に?

 

「あの人。私たちの学校の保健室の先生だけど、どうしていっしょにいたの?」

 

え?あー…うんとね?それはね?

 

「随分仲よさそうだったねー。お兄ちゃん?腕なんか組んでさ」

 

【さて、帰りま……おや】

 

この事だったのかー!やられたぁ!

 

「どう言う関係なの!?お兄ちゃん!好きな人、いないんじゃなかったっけ?」

 

どう言う関係も何も…付き合ってないし。

 

別にいいだろう、なんだって。

 

 

「別…」「に…?」

 

固まるイリヤとクロエ。

 

「そう、ね。わかったわ、お兄ちゃん」

 

「ほえ!?ちょっとクロ!何言ってんのさ!

「……お兄ちゃん、今日はごめんね?おやすみ。ホラ、イリヤ。行くわよ」

 

「えっ、ちょ、クロ!?」

 

クロエはイリヤを引っ張りながら、部屋から出て行った。

なんとも言えない静寂が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日が経ち、海水浴の日が訪れた。

男は士郎と一成との3人だけである。

相変わらずと言っていいのか。士郎と一成は独特の空気感を醸し出し、一部の女子陣に好評を博している。

 

そんな中。

 

「きゃ───ッ!?タッツンが車にはねられた───っ!?」

 

タツコが車に撥ねられたので有る。

受け身をとれただか、頑丈なんだか、よくわからないけど無事、との事。

車の主は一万円を握らせ、その場を後にして行った。

 

いや、ダメだろ。

 

 

「車に撥ねられた、と聞いてやって来たんですが…期待ハズレでした」

 

「うお!華憐先生!」

思わぬ人の登場に驚いたタツコが叫ぶ。

 

「…ここまで来たんだ」「うっ…わ」

 

イリヤとクロエは、忌み嫌うかのような言葉を漏らす。

 

「えーっと?」

 

一体この女性が誰なのか。色々と事情が飲み込めていない士郎。

 

説明するとだな、イリヤたちの保健室の先生だ。

 

「へぇ、先生。そうなのか」

なら安心した、と胸をなでおろす士郎。

一成もそれに同意する。

 

「おや、奇遇ですね。貴方も来ていたので?」

 

カレンがこちらへ話しかける。

しかし、その口角は釣り上がっており、奇遇などではない、と言う事を明確に示している。証拠はないが。

 

「水着かと思いました?残念でしたね」

 

そう言うカレンの服装は、サングラスにウィンドブレーカー、ホットパンツにビーチサンダル。

海に来る格好では有るが、水着では無かった。

 

てか何故それをこちらに聞くのか。

 

「生憎、救護の仕事でここに来てまして」

 

と、言いつつブレーカーのジッパーを僅かに下げる。

そこから僅かに見える、水着。

着てるじゃねぇか。

 

救護の仕事なんて絶対嘘だ。そう言いたくなるのをグッと堪える。

 

「……イリヤのお兄さんってもしかして…」

 

「ナナキ!何考えてるの!?」

ナナキ、と呼ばれた少女が思わず呟いた言葉をイリヤが拾い、それを否定する。

何時もならどうでもいいと断ずるところだが…

 

しかし、今はまずい。今は二人きりではなく、多数の目が有る。

下手な事を言うのは、避けなければならない。多大なる誤解を招く。

 

「なぁ、一成…」「ああ、衛宮…」

 

なにか得心した様に互いを呼びあう二人。

おい、何を考えた、おい。

 

「あー、ほら、イリヤにクロにみんな、行くぞー」

 

「うむ、色々準備もせねばならぬからな」

 

士郎と一成が小学生組を纏めて何処かへ移動しようとする。

やめろ!何を忖度している!そんなのしなくていい!やめろ!

あぁ!士郎テメェ!サムズアップしてんじゃねぇ!

一成!お前はニヤついてんじゃない!

 

まさか歳上が趣味だったとは…

 

オレも驚いたぞ、一成。それにな小学部の養護教諭だしなー

 

なんと業が…

 

 

イリヤ…とクロエ…はうわぁすっげえ怖い顔してる。

違うんだ。だから睨まないでく…

 

「……フッ」

 

イリヤとクロエが睨んでいるのに気づいたのか、カレンが鼻で笑う。

火に油を注ぐ行為でしかない。

 

「な…な、ななななななな」

 

「まずいよクロ!このままじゃお兄ちゃん盗られちゃうよ!?」

 

ここからでは聴き取れないが、イリヤとクロエが何やら深刻そうな顔で話し合っている。

 

 

「ま、救護の仕事、と言うのは本当です。ちょうど良い所に人手が増えてくれました」

 

ニヤニヤしながらこちらを見るカレン。

やめろ、まさか───!

 

「さて、こちらに来て下さい」

 

 

 

「良い感じに傷を負った人達が転がってません…ね」

 

そらそうでしょう。救護室とは言え、そんなに怪我人が転がってたまるか。海だぞ。

 

想定していなかったのか?と言いかけた所、カレンの雰囲気が違うものになっていた事に気づく。

 

「……そう、ですね。貴方は怪我などしていませんか?」

 

見ればわかるだろうに、突如として不思議な事を聞いてくるカレン。

意図が読めない、と思っていた。

 

「そんな事聞いていません。さ、そこに座って下さい」

 

目を軽くとじ、投げやりに話すカレン。

そして、仕切りなどで簡易に設置されているとは言え、ここは人目につかない。

 

つまり。

 

「ほら、診察…してあげますから」

 

じっと顔を覗き込んでくる。その金色の瞳が、こちらの目を捉えて離さない。

 

が、その時。

外から、騒音が響く。

 

アイスいりませんか?、と。

 

次第に大きく、近づいてくるその声は、聞き覚えがあった。

 

「………バゼット。こんな所で何を」

 

仕切りから身をのりだすようにして、カレンは外の様子を覗き込み、声の主と会話する。

バゼット?

 

「な…!カレン・オルテンシア!貴方こそ何故ここに!」

 

うーわ、あん時のダメットさんじゃん。お久しぶりです。

 

「バゼットです!って、貴方は!……2人はどう言う…」

 

知り合いの登場に次ぐ登場に混乱するバゼット。

それだけならまだしも、なんら接点が見出せない2人が、()()()()から出て来たのだ。混乱するのも無理はない。

 

「貴方には関係の無い事だと思うのだけど」

 

機嫌を損ねたのか、食い気味になって話すカレン。

いや、こっちとしては、色々と危なかった様な気がするんだけど。

 

「……シスターは、その、そういったのはご法度では?」

 

「はい?シスター?何の事ですか?」

 

顔をほんの少し赤らめながらカレンに対して問うたバゼットに対して、取りつく島もなく切り捨てる。

 

「何の事って…ああ、そう言う…」

 

こちらを一瞥するバゼット。勝手に質問して勝手に得心したらしい。

 

「でも歳下…しかも高校生に手を出すのは…」

 

待て何の話だ。

 

「えっ」

 

え?

 

「……ハァ」

 

「………いえ、何でもありません。しかし、何と言いますか。人は変わるものなんですね、カレン」

 

先程の言葉を撤回し、話を逸らすバゼット。

 

 

 

「貴女には言われたくないわ、バゼット。生活の為にプライドをゴミ箱に投げ入れれるなんて」

 

「何を言いますか!」

 

相変わらずの毒舌っぷりだ。どうやら誰に、とかそう言うのはなく、万人に等しくキツイようだ。

 

「お兄ちゃん!ちょっとこっち…に…って」

 

「バゼットーー!?」

 

「なんで!?なんでここに!?」

 

イリヤ達がやって来た。

 

どうやら呼びに来たらしいけど、開口一番はバゼットに対する驚きの声だった。

 

 

「おに…い、ちゃん…ですと…?」

 

バゼットが信じられないモノを見るかの様な眼でこちらを見てくる。

頼む、違うと言ってくれ。などとでも思っているのだろうか。

 

ざんねん!イリヤとクロエの兄なんです。

 

 

「世界はこんなにも狭いモノだったとは…」

 

くっ…と頭を抱えるバゼット。

 

 

「お兄ちゃん、バゼット……さんと知り合いなの?」

 

イリヤが尋ねてくる。

今回は純粋な疑問、と言った様な表情だ。

普通に答えても良さそうだ。

 

路上に転がってるバゼットを見かねて食事を奢っただけだし。

 

「食…事…?アレが?」

 

失礼な奴だなぁ…

店主に謝れ!

 

「一種の拷問ではないので?」

 

「泰山に連れて行ったのですか……なかなかやりますね」

 

「貴女もアレを食事と言うのですか…」

 

抱える頭は低く、露骨に落ち込む、と言うか、常識が信じられない、と言った様子。

 

「イリヤスフィール、貴女もアレを食事と言うのですか?」

 

縋るような声音でイリヤに尋ねるバゼット。

最早威厳も何もない。

 

「いや……流石に、アレは…ね、クロエ」

 

「確かに…うん。いくらお兄ちゃんでも…」

 

「よかった…!おかしいのはあの2人だけか!」

 

安堵を通り越して歓喜するバゼット。

 

失礼な奴だ…な…?

 

カレンは無言のままだった。

 

「……ねぇ、イリヤ」

 

「うん、まずいね」

 

クロエとイリヤが何やら耳打ちをしている。

 

「何がまずいの?イリヤ」

 

「うーん…ミユには悪いんだけど…こっちの話…かな」

 

「……ずるい」

 

 

沈黙。

 

 

「……では皆さん、仕事があるのでこれで失礼します!」

 

頃合いを見計らったのか、それとも何も考えていないのか、沈黙を破り、バゼットが離脱して行った。

 

 

「おーい、みんなー!そろそろ時間だぞー!」

 

そんな気まづい空気の中、士郎が遠くから声をかけてくる。空気は入れ替わった。

 

うん、行くか。

 

あ……カレン?

 

「私も仕事が有りますので」

 

では、と戻って行くカレン。

 

「お兄ちゃん、はやくいこー!」

 

「ほらほらー!」

 

イリヤとクロエに押される様に向かう事になった。

 

 

「イリヤ、クロ、置いてかないで」

 

 

 

 

 

 

突然ですが会場の空気が勝手に重く感じています。

 

美遊ちゃんの誕生日祝った事ない発言も良い。

しかし、プレゼントが…圧倒的、致命的に失敗した…!

 

表面では嬉しそうな顔をしているが、あの女と選んだ…とか聞こえたんだ。

士郎と一成は聞こえてなさそうだが…

 

「ありがと、お兄ちゃん」

 

笑顔が怖い。

 

「大切にするね!」

 

だから怖いって。

 

 

どうしよう…いやほんと。一見和やかな空気が流れているが、イリヤとクロエから感じるプレッシャー。

これに気づくか気づかないかで違う。

 

ナナキちゃん…だっけ。うん、彼女は只ならぬ空気を感じ取っているようだ。

わかる。

 

そんな中、大きな音がする。

どうやら隣で工事か何かが行われているようだ。

しかし、今現状ではまさしく救いを齎す福音に他ならなかった。

 

ちょっと見てくる、と称して席を離脱する。

 

「あ、まってお兄ちゃん!」

 

「私たちも行くわ!」

 

イリヤとクロエが着いてくる。

 

「ちょっと待って、イリヤ、クロ」

 

美遊ちゃんもだ。

 

「おいおい、オレも気になるぞ」

 

士郎もか!もういい!全員で行くぞ!

 

 

 

 

結論から言おう、遠坂とエーデルフェルトが居た。

 

エーデルフェルトは士郎に惚れている。間違いない。遠坂もだろう。

 

するとそこにバゼットが通りかかったりともうカオスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおやー、イリヤさーん、お困りのご様子ですねー!」

 

「なによ、ルビー」

 

ルビーがイリヤの様子を察したのか、それとも自分の愉悦の為か、イリヤに悪魔のささやきをしようとする。

 

「ズバリ!お兄さんの心が、盗られそうかもしれない…それでお悩みでしょう!ルビーちゃんにはわかりますともー!」

 

 

「ルビーに言われるのはなんか腹立つけど…まあ、うん」

 

「よろしい!イリヤさんに頼まれて製作を開始したこの惚れ薬!これをお兄さんに撃ち込めばイチコ「ガンド」ろぉぉぉお!ナニするんですか!」

 

「薬で人の心を操ろうとは、感心しませんね」

 

「カレン…先生」

 

「ナニすんですか!痛いじゃないですかー!いきなりそんなモンブッパさないで下さいよー!凛さんじゃないんですからー!」

 

さほど痛くもないのに、大袈裟にわざと痛そうにするルビー。

 

 

「イリヤスフィール」

 

凍てつく刃の様な、冷たい表情をするカレン。

 

 

「な、なんですか」

 

その気迫に気圧されるイリヤ。

 

 

「フッ」

 

しかし、カレンは先程の表情とは打って変わって小馬鹿にする様に、鼻で笑った。

 

 

「な…!」

 

その反応を見届けると、踵を返し、来た道を戻って行くカレン。

 

 

「あちゃー、コレは一本取られましたねー。オトナの余裕?って言うんですかねー」

 

 

「……なによ

 

 

「負けない、負けないんだから」

 

 

固い決意に漲るイリヤ。

果たして、その決意は届くのか。

 

 

 

 

 

 

 

「今日は疲れたな、一成」

 

「うむ、まあ年甲斐もなくはしゃいだ結果だな」

 

「おいおい、まだ高校生だぞ?」

 

帰り道、士郎と一成は2人でなにやら親密そうな空気を醸し出している。

スズカはよだれを垂らしている。

 

イリヤとクロエは…なんかひそひそ話し込んでるな。そこに美遊ちゃんがボソボソと合いの手を入れて…。

 

まあ、気にしない気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、数日後、イリヤとクロエ。そして美遊ちゃんは、失踪した。あと遠坂とエーデルフェルトにバゼット。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その事を知っているのは、この家では士郎以外全員。

一応、父さんやエーデルフェルト家と海外旅行に行った、事になっている。

 

しかし、知っている。そうではない、と。不思議な話だが、知っているんだから仕方がない。

 

不安で不安で堪らない。それ以降、どうなるかわからないからだ。

空虚な精神は、より脆くヒビ割れ始めるのを実感している。

 

部屋に籠る様になっていた。

 

そんな折に。

 

コンコンコン、とドアがノックされる音。

どうぞ、と声をかける。

しかし、声は無い。

 

疑問に思っていると、ドアが開く。

そこには。

 

「陰鬱な部屋…まさに貴方を如実に表していると言っていいですね」

 

カレン…?どう、して…?

あり得ない。ここに来るなんて、想定も想像もつかない。

そも、どうして家に入って来ている!

 

「ああ、それはですね。貴方に会いに来た、と言ったら、衛宮士郎は喜んで貴方の部屋がここだと教えてくれましたよ」

 

 

おのれ士郎、今すぐ殴り飛ばしてやる。

立ち上がろうとするが───

 

「ああ、この家には現在、貴方と私の二人だけですよ」

 

は?

 

「気を利かせてくれました。いい兄ですね、彼は」

 

お前……余計な所で気がきく癖にどうしてフラグの一つも解体ないし回収出来ないんだ…!

思わず頭を抱える。

 

 

「フフッ、少しは元気になりましたか?」

 

その言葉に思わずカレンの方を向く。

すると、すぐ近くに顔があった。だいぶ近寄られていたらしい。

 

「……貴方は、生きる意味、と言うのを理解していますか?」

 

唐突にそんな禅問答めいた事を問われる。

生きる、意味。

確か。

 

「妹だけ、なんでしょうね。貴方の場合」

 

背筋に寒気が走る。

ああ、確かにそうだ。俺には、イリヤ、それにクロエ。二人の幸せ以外に、何もなかった。

むしろ、考えてはいけないと思っている。

 

「妹がもしも、帰ってこなかったら、貴方はどうしますか?」

 

その時、は……考えてもみない、いや、考えたく、無かった。

 

「死んでみますか?」

 

 

………。

 

顔をそらし、俯く。カレンの顔を見たくない。直視したくない。

いや、現実を見たくないのか。

 

 

 

「ま、後を追う人が居るかもしれない、とだけ考えてから死んでくださいね」

 

 

後を?

突如として、カレンは奇妙な事を語り始めた。

 

 

「例えばの話ですけどね。貴方が自分から死ぬ事で、結果的に2つの命を奪う事になるとしたら、それでも貴方は死にたいですか?」

 

 

…………。

 

 

「答えが出ません、か。ええ、結構。それで死にたいなんて言われてたら、今ここで貴方と死んでましたよ」

 

それは、つまり。

 

 

「さあ?」

 

蠱惑的な表情で笑みを浮かべるカレン。

おちょくっているのか。果たして。

 

 

「ま、簡単に言えば、人間、()()()()()()()()()()()()()()()()そうそう死なないって事ですよ」

 

 

と言うと、背中に身体を押し付けてくる。

 

柔らかな膨らみが背中に当たるのを感じる。

 

「ナニカおかしな事でも…?」

 

後ろから囁かれる。

囁き声特有の吐息が耳にかかる。

 

カレンはその手を下に伸ばしてゆく。

 

「どうします…?良いんですよ……?」

 

頭が真っ白になる。

何が一体どうしてこうなっているのか、脳が理解を拒んでいる。

 

 

「っ……ええ、わかりました。もういいです」

そう言うと、無理矢理に身体を引き倒されてしまい──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……キズモノにされました」

 

 

もうおれしらない。

あれ?ってかキズモノってどういうことなの。え?

 

 

「……普通そんなこと聞きますか。このバカ」

枕に顔を埋めるカレン。

 

 

あれれー?どうしてこうなったー?おかしいぞー?

 

 

 

「もう一度、分からせないとダメみたいですね」

 

 

えっ、あっちょっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日から数週間後。

 

 

「やっと、やっと帰ってきた……」

 

「美遊も救った、世界も救った…お兄ちゃん…褒めてくれるかなぁ…」

 

「どうやって説明するつもりなのよ…」

 

玄関のドアを開ける。そこには────

 

知らない人の靴が、一足。

 

 

「え…」「誰の…?」

 

嫌な予感がする。

走って物音がするリビングにかけよる。

 

すると、驚くべき光景が広がっていた。

 

 

「お帰り、イリヤ、楽しかったか?」

 

事情を知らない士郎。

料理をしている。その、横には──。

 

「カレン先生!?」

 

「ああ、料理を教えて欲しい、っていうからな。それにしても、良い人と知り合ったよなぁ…」

 

 

「まさか…まさか…」

 

 

 

 

「お帰り、イリヤ、クロエ」

待ち望んでいた筈の。兄の、声。

 

 

しかし、聞きたくない。

聞いてはならない。

けれども。

 

 

 

 

「イリヤスフィー…いいえ、イリヤ、クロエ」

 

カレンが。

 

 

「今度から、お義姉ちゃん、って呼んでもいいんですよ?」

 

 

勝ち誇った笑みで、そう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お兄ちゃん…盗られちゃった……」」

 




ある意味ハッピーエンド

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