ヤンデレ☆イリヤ   作:鹿頭

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分岐条件
あの日、クロエと出かける。


クロエエンド

 

 

クロエ、そう言えばさ。2人で出かけた事って有ったっけ?

 

「うーん…ない、わね…」

 

やっぱりな。よし、今から出かけないか?

 

 

「ええっ!?い、今から?」

 

あ、なんか用事あった?

驚くクロエに、やはりか、と再確認する。

 

「あー、いや、うん。ないわ!お兄ちゃん」

 

しかし、予想とは、否。ある意味では予想どうりに、クロエは賛同の意を示す。

そっか。じゃあ行くか。

 

「はいはーい!」

 

「お兄ちゃんとクロ、2人で出かけるの…?」

 

イリヤ。

 

「へっへーん。なぁに?イリヤ、羨ましいんでしょー?」

 

「何さクロのくせに!」

 

ま、まあまあイリヤ。クロエはこれが初めてだからね?イリヤはまた今度2人で出かけよう、な?

 

「………そう、だね。うん」

 

 

「ホラホラ、お兄ちゃん!早く行こうよ!」

 

玄関からクロエに押されるように出る。

外は然程陽射しが高くなく、過ごしやすい。

 

さて、どこに行きますかね。

 

「お兄ちゃん、私新都の方に行きたいかなー」

 

よし、わかったぞイリ…「あー…そこなんだけどね」

 

 

「クロエでいいわ、もう」

 

…そっか。決着ついたん?

 

 

「ま、そんなとこね。改めてよろしくね!おにーちゃん!」

 

言い切ると、クロエは抱きつく、と言うよりは、飛びついてくる、と行ったほうが適切だろう。

 

うおっ、あぶね、いきなりくっつくなって。

 

「それくらい構わないでしょ?お兄ちゃん」

 

はよ行くぞ。

 

「はーい」

実に自然な動きで腕を絡め組む形に変更するクロエ。

それでいて歩きにくくないように考えられている。

 

それにしてもねぇ…新都かぁ…

…ファンシーショップ有ったな、そこでいいか?

 

 

 

 

にしても色々あるんだな、…なんだこの《せーはいくん》って。キモい。

 

 

「ぬいぐるみかぁ…」

 

あー、やっぱそう言う感じじゃない?

 

「そういえば私、持ってないわ…」

 

よし、セーフだったか。

 

 

「何にしよっかなー」

 

楽しそうでなによりだ。思わず安堵の溜息をつく。

 

それにしても、《せーはいくん》の圧が凄い。

てかショーケース半分以上圧迫してるじゃん。

どうなのさソレ。

しかもすんごい高いのね。

 

「お兄ちゃん、見てこれ!イリヤにそっくりじゃない?」

 

と言って見せてきたのは、クマのぬいぐるみ。

……確かに似てる、な。うん。

 

「これにするわ!」

 

お買い上げありがとうございまーす。

 

 

 

 

 

 

 

冬木中央公園。

 

曰く付きと専ら穂群原学園の生徒には有名。別に人が死んだ訳でもないんだけどね。

ふしぎだね。

 

 

「なーんもないわね…」

 

そりゃまあ、自然公園だからな。

 

「まあ、お兄ちゃんが居るから別にどーでもいいんだけどねー」

 

おいおい、曲がりなりにも自然公園だぞ…

 

「そんなのどーでもいいわよ、お兄ちゃんがいるところに意味があるんだから」

 

ンな訳ないだろ、こちとらただの一般人だぞ?

 

「そんな事ないわ!」

 

何気なく言った一言に、声を張り上げてそれを否定するクロエ。

 

「お兄ちゃんはいつもそう。自分の事になると途端に卑下しちゃって…そりゃあ、ね?私らの事を大切に想ってくれてるのはわかるんだけど…」

 

んな事言われてもなぁ…

()()()()()()()()()()…うーん

 

「お兄ちゃん…」

僅かに涙を浮かべるクロエ。

どうやら、悲しませてしまったようだ…。

 

悪かったよ、うん。

頭を撫でる。自分で言うのもなんだが、いつもよりぶっきらぼうな感じがした。

 

「……まあいいわ、うん。追い追い考えればいい事だし…うん」

 

何を考えるって?

 

「こっちの話よ。お兄ちゃんにはナイショ!」

悪戯が成功したような、そんな柔らかい笑顔を浮かべる。何を考えているのかな?

だけど内緒と言われてしまったからには聞くわけにもいかないだろう。

 

「お兄ちゃん、次はどこ行くの?」

 

道を当てもなく歩き始めて、少しすると言われてしまった。

当てもないんだよねー。

 

「あは、イジワルな事聞いちゃ…お兄ちゃん!危ない!」

 

路地に差し掛かった時、死角になっている右側から車が突っ込んでくる。

咄嗟に、クロエを突き飛ばす。

 

「きゃっ!…お兄ちゃん!!」

 

 

死の寸前には時間が須臾の如く引き延ばされると聞く。

前回は、そんな事もなく死んだので、これがそうかー。走馬灯は無かったなぁ…などと割と呑気な事を考えていた。

 

うーん、これ死んだ…か…アレ?

 

気がつけば、先程とは違い、出逢った当初の様な、露出の割と高めな格好をしたクロエに俗に言う、逆お姫様抱っこをされて宙に浮いて居た。

 

お兄ちゃん!何してるの!

 

鬼懸かった形相で怒鳴られる。

先程から時間もそんなに経たない。

その事が益々怒りを煽っている。

 

適当な所に着地する。

クロエはゆっくりと地面に腰を下ろしてくれたが、上半身は離す事は無く、寧ろ。より強く抱きしめられる。

 

「なんで…どうして…」

 

抱きしめられながら、伝わって来る震え。

 

「お兄ちゃん!私なんか轢かれても別に死にはしないのよ!?なんで庇うの!?」

 

いや、幾ら何でも限度があるでしょ。

 

「…もういい!わかった、わかったわ!私がバカだったわ!」

 

自分が轢かれても構わないって事?

 

「ちーがーうー!お兄ちゃんはアレね、まるで赤ちゃんね。目を離すとどうなっちゃうのかわかんないんだもん」

 

赤…士郎じゃないけど、なんでさ。

 

「だからね、お兄ちゃんは私がずーっと守るわ」

 

妹に守られる兄とか…嫌なんだけど…

 

「ダーメ!いくら大切なお兄ちゃんの頼みでもそれだけは譲れないわ!」

 

何故か得意げな表情を浮かべるクロエ。

不意に逆に頭を撫でられる。

 

「大丈夫、お兄ちゃんがしっかりするまで、ちゃーんと私が側にいるわ」

 

顔をしっかりと見て、微笑むクロエ。

その顔は、今まで見た事のない表情だった。

 

 

 

「あ!」

 

あ?

 

「うーん…時間…よね」

 

やっぱりなんか用事あったの?

 

「まあ、ね…。ああ、お兄ちゃんが気にする事じゃないから安心して?」

 

お、おう。

 

「まーでもそうねー。私の用事なんだけど…帰っても良いかな?お兄ちゃん」

 

いや、クロエが用事ある、ってんなら別にそれでも構わないけど。

 

「……私に合わせてない?」

 

と言うより、この後の予定は無いからね。

 

「それなら良かった!あー、またお兄ちゃんが無理してんのかなーって考えたらさ、不安で不安でしょーがないのよねー」

 

妙にそわそわするクロエ。その表情も相まって、不安そうな感じが伝わってくる。

そこまで不安にならなくても…とは思ったが、口には出さない。

 

「じゃ、帰りましょ?お兄ちゃん」

 

うい。

 

 

「あ、気をつけてね!お兄ちゃん、またさっきみたいに車が来るかもしれないし、マンホールの穴に落っこちるかもしれないから…」

 

いや、流石に落ちないし、そこまで過敏にならなくても…

 

「ダメダメ!お兄ちゃんはちゃーんと私が見てないとダメなの!」

 

……そうなの?

 

「そうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ってこれた。

その間、クロエが心配に心配を重ねていた。

心配してくれるのは有り難いけども。流石にコレは…

 

寝る前なんか。

 

「お兄ちゃん、ちゃんと寝てね?もしも次の日起きた時に体調崩してたりするといけないから…そうなったら…私…私…」

 

泣く事か!

ふっつーに寝るよ、言われなくても!

 

 

なにやら大変な事になってしまったぞう!

 

もういい、寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イリヤ…!」

 

聖杯としての自らを夢幻召喚(インストール)したイリヤ。

 

あれ程苦戦していたギルガメッシュを煩いの一言で消しとばし、自分の意のままにその権能を振るっている。

 

しかし、それは兄と一緒にいる為、と言う。

 

「なによ…それ…」

 

 

「あは、クロ?まだいたんだ?」

 

イリヤがクロエの方を向く。しかしその眼は細く、睨みつけている様だった。

 

 

「ねぇ、イリヤ。お兄ちゃんと一緒に居るって、具体的にどうするのよ」

 

クロエは冷静にイリヤの真意を問いただす。

 

「ほぇ?そんな事聞くんだ…いいよ。最期だと思って、教えてあげるよ」

 

最早眼中に無い、と言った様子だ。

 

「私ね、多分このままだとね、世界から追い出されちゃうと思うから…その時にお兄ちゃんの魂をね、一緒に連れてくの!」

 

そう笑顔で。狂った様な笑みで無邪気に言うイリヤ。

クロエは、許せなかった。

 

そんなことはさせない。

 

させてなるものか。

 

兄を守らないといけない。この妹から。

 

だって、それは余りにも、本人の意思を無視している。

けれども、あの兄なら、確実に肯定するだろう。そう確信していた。

 

「……ぃで」

 

「うん?」

 

「……ないで!」

 

「なぁに?クロ。もう煩いから消えていいよ」

 

そう言って指を鳴らすイリヤ。

 

────しかし。

 

「ふざけないで!イリヤ!あんたの心中にお兄ちゃんを巻き込むなんて…」

 

そんなの、許さない。

 

 

 

「一発ぶっ叩くわよ、イリヤ」

 

 

それが、兄の妹の。この(イリヤ)の姉としての役割だ。

 

 

「……おかしいな、消えるはずなのに…まあいいか、殺しちゃおっと」

 

イリヤの背後に魔力の塊が収縮して行く。

 

 

それを前にクロエは棒立ちとなっている。

 

「?まあいっか」

 

しかし。それは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている。)

 

この詠唱の為の、準備だった。

 

 

「死んじゃえ!」

 

収縮していた魔力が、極光となってクロエに向かって行く。

その光は、禍々しくも、かの聖剣に劣らぬ質量を持っていた。

 

────熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

 

魔力の極光を六枚の花弁が防ぐ。

しかし、一枚、また一枚と徐々に消えて行く。

 

Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で、心は硝子。)

身体が軋む。とある無銘の英雄へと繋がるカードを触媒に現界しているとは言え。

起源は剣では無い。

 

 

本来なら到底不可能。そんな事はクロエとて知っている。

 

しかし。

聖杯、否。第三魔法(イリヤ)は、世界に容認されていない。つまりは────

 

I have created over a thousand blades.

(幾たびの戦場を越えて不敗。)

 

 

今の彼女(クロエ)は、アラヤによる後押しを受けていると言う事に他ならない。

 

 

Unknown to Death.(ただの一度も勝利はなく、)

 

Nor known to Life.(我が人生は偽りで。)

 

「何よ…何よ何よ!なんなのよ!ソレ!!!」

 

イリヤは気づく。その権能を持って。目の前の敵は、自らへに対する抑止力だと。

その上クロエが、だ。

 

現実を突きつける様に、今もあの忌々しい楯を破壊しきれていない。

 

 

 

My hands will never don't hold anything.(故に我は剣を打てず。)

 

 

「────ふざけないで!」

 

極光を追加する。

いやだいやだいやだいやだいやだ。

 

認めない。認めれない。

 

 

 

 

 

 

「────yet,(でも)

 

 

 

それでも、何故楯は砕けない。花弁はあと一枚の筈なのに。

 

 

 

 

 

 

My whole life was dedicated to you.(この生涯は一人のために。)

 

 

 

しかし。時は既に遅く。

 

 

 

So as I pray,UNLIMITED BLADE WORKS.(だからこの体は、きっと剣で出来ていた)

 

 

 

世界が、塗り潰される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼下に広がるは、辛うじて回る、壊れかけた歯車に。

 

曇天の切れ間から僅かに日が荒野を照らしている。

 

それは、彼女の心象風景、と呼ぶには、余りにも歪だった。

 

 

「行くわよ、イリヤ」

 

 

「魔力の貯蔵は充分かしら?」

 

 

 

「────クロ!!!」

 

 

イリヤは自らの力である第三魔法を最大限に引き出す。

 

無尽蔵の魔力を、一つに。無限を束ねて、無と為す。

 

 

落とす。堕とす。陥とす。

 

全ては、あの忌々しい敵を屠る為。

自らの恋路を邪魔する外敵を滅するが為。

 

 

 

 

 

 

そんな中、クロエは、一振りの聖剣を投影する。

 

 

 

「エクスカリバー…?なーんだ、クロ。コレははただのこけおどしだったの?」

 

騎士王の聖剣なぞ役に立たない。

たかだかがバーサーカーを屠る位だ。

無限の魔力を誇る天の杯()には芥も同然。

 

 

しかし。

 

「ええ、そうよ」

その嘲笑に肯定するクロエ。

 

 

「────は?」

思わず憮然とする。何を言っているんだ。

訳がわからない。

嫌な予感がする。

 

 

「この空間はね、とある抑止の代行者の心象風景。」

 

 

「───だからね」

 

 

抑止の力が、最大限発揮される。

言外に、そう言っていた。

 

 

そしてクロエは、それを今から実証する。

 

 

 

「こう言う事が、可能なのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

十三拘束解放(シール・サーティーン)――偽証開始(ディシジョン・スタート)!」

 

 

 

 

心の善い者に振るってはならない

 

 

この戦いは誉れ高き戦いである

 

 

是は、生きるための戦いである

 

 

是は、己より強大な者との戦いである

 

 

是は、一対一の戦いである

 

 

是は、人道に背かぬ戦いである

 

 

是は、真実のための戦いである

 

 

是は、精霊との戦いではない

 

 

是は、邪悪との戦いである

 

 

是は、世界を救う戦いである

 

 

 

 

 

 

「13のうち10個。うん、十分!」

 

それは、とある世界の騎士王が、忠義の騎士達と共に定めた、13の拘束。

真実の力をこの贋作が発揮する事は無いが───

 

 

「いくわよ、イリヤ!歯ぁ食いしばりなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

そう。この戦いは、世界を救う戦い。いまやイリヤは、世界の敵となってしまったのだ。

 

故に、模倣とはいえ星の聖剣は、拘束を外し、かつて遊星の巨神を吹き飛ばした力に近づく───!

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ーー!

 

 

正面からなぎ降ろされた聖剣が、比類なきその極光が光線となって向かう。

 

イリヤは、全力の一撃を持ってそれに向かうも───

 

 

「なんで…!なんで!なんで!なんで!なんでなんでなんでなん「決まってるじゃない」

 

 

イリヤの慟哭をクロエが割って入る。

 

 

 

「お姉ちゃんに勝とうなんて、千年早いのよ」

 

 

 

曙光の光が、辺りを包んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうしようかしら」

 

「………何よ、クロ」

 

「うん?いやね、勝ったからには敗者は勝者の言う事を聞くのが当然じゃない?」

 

 

「………勝手にすれば?」

 

 

 

「ふーん…言っちゃうんだ」

 

 

「あ、じゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おはよう、お兄ちゃん!よく眠れた?」

 

あ、クロエおはよう。うん、よく眠れたよ。

 

「そう!なら良かった。早く降りてきてよ?お兄ちゃん」

 

と言って部屋から出て行くクロエ。

 

……とりあえず、降りるか。

 

リビングに降りると、そこには衝撃的な光景が!

 

 

「おはよー、イリヤ?」

 

「おはよークロ…お、お姉ちゃん…」

 

「はーい、よくできましたー!」

と言ってイリヤに抱きつくクロエ。

 

「むうぅ…」

それを受けて、なにやら不服そうに唸るイリヤ。

 

なんだコレ。

 

「あ、お兄ちゃん、おはよー」

 

「お、おはよー…お兄ちゃん」

 

何これ何がどうしたの?

 

「今日から私がお姉ちゃんって事に決まったの!」

 

「むー…私まだ認めたワケじゃ…むぐぅ」

 

「なぁーに?イリヤ」

 

「なんでもないよ、お、お、お姉ちゃん…」

 

「はーい、お姉ちゃんですよー?」

 

 

 

 

 

 

 

士郎、どうしたのコレ。

 

 

「オレに聞いてもわかるか…!」

 

 

 

 

 

 

 

本日も、平和である。




病み…?
いやね、なんか、うん。

色々とごめんなさい。細かい設定とか見逃してください!姉妹喧嘩がやりたかっただけなんです…

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