ワン・フォー・ワン《独りは一人のために》   作:亡き不死鳥

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遅くなってすみません。
なんかすごい肩こりにやられました。
今も肩回すだけでゴリゴリなってちょっと怖いです。
半分くらいしかいってないのに四十肩とかですかね?


バトル3

オールマイトvsノーフェイス。

オールマイトがヒーローで俺がヴィラン役で始まった演習だったが、今のところ俺の優勢でことが進んでいる。

 

 

「………やり過ぎた、か?」

 

 

同じ階層から『エグッ!』との声が響き渡り、オールマイトとの演習も最終局面に入った。

わざわざ高濃度の酸素をわかるように撒き散らし、核がある5階をステージにした上で火花の原因となりうる火打ち石擬きで背水の陣的な布陣を敷いてみた。

だがそこまでやった後でふと考える。

…これってオールマイト、突破できるのだろうか。

基本パワーパワー&パワーなオールマイトだったので、ヴィランである利点を活用させてもらったが、これは演習なのだ。

どうせなら格好良くヒーローが勝った方がいいに決まってる。

別に勝ちにこだわりもしていなければ、尊敬の眼差しが欲しいわけでもないのだから。

 

 

「………まぁ、頑張ってもらうしかないか」

 

 

ふと、雄英の校訓を思い出す。

 

 

Plus Ultra(更に向こうへ)、ね。まずは教師が実行しないとな」

 

 

巨大な核のハリボテに背中を預け、静観を決め込もう。

なに、問題はないだろう。

なんせ、我らがナンバーワンヒーロー様なのだから。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

sideオールマイト

 

 

 

(うーーーんんんん!!!

核の存在を無視できない。かといってこのまま10分待機してるなんてあまりにも格好悪いし……。

どうしよう……)

 

 

何より問題なのは相手を視認できないことだった。

こういってしまうとあれだが、ノーフェイスこと比企谷八幡を正面から打倒することはオールマイトにとって難しいことではない。

個性『捕食』は応用性も高く万能個性と言って憚りないが、本人の火力や速さという面に絞れば常人よりも上程度。

遠距離攻撃の手段を用いることで誤魔化してはいるが、捕食という個性故に操れるのは本人そのものではなく吸収した物質への介入なので、視力の活性化などはできず増強系一本派には及ばないのだ。

 

 

「…無策で飛び込むのは論外。

ならば……」

 

 

そう言って取り出したのはこのビルの見取り図。

基本的にビルの間取りは全階層変わらない。

なので4階層を上がって来たオールマイトにも大体の間取りは掴めているが、最低でも核が置いてある場所の当たりをつけておきたかった。

 

 

「単純に距離の遠いここと、ここあたりか。

いや、そもそも私ならあの石を止めるだけなら簡単だし二段構えか三段構えかの可能性が高いな。その場合演習的に見れば私の負けだ。

ならそこから更に仕掛けるならこの廊下の奥か。

となるとそれも止められることをヴィラン側から考えるとその反対の位置にあるこの部屋ってとこか。

よーし、突破口が見えて来た!」

 

 

比企谷にパワーパワー&パワーと思われていようと、オールマイトはナンバーワンヒーロー。

ヴィランとの戦った経験値は当然一級ものだ。

そこから自分にできる最大値を考慮することも朝飯前。

 

 

(しかし、もしも考えが外れていたら…)

 

 

そしてそこまできて、()()()()不安が押しかかってくる。

別に本物の核というわけでもないし、そこまで気を負う必要はないが、ヒーローたるものこの緊張感を忘れてはならない。

失敗するかもしれない。が……

 

 

(それを成してこそ、ヒーロー!)

 

 

一層大きな笑みを浮かべ、大きな一歩を踏み出す。

 

 

 

「さあ、私が行くぞ!」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

side緑谷

 

 

 

4階までのオールマイトの進撃をハラハラドキドキワクワクと、期待と興奮を高めながら観戦していた1年A組の生徒達。

 

 

「やっべえなオールマイト!

あんな妨害普通突破できねえって!」

 

「うん。そうだね。

それに屋内なのもオールマイトの不利に働いてるみたいだ。オールマイトの得意なのは一瞬で相手を制圧する広範囲攻撃や超接近戦。それを分かってるから比企谷先生も基本的に相手に姿を見せないように戦ってるんだと思う。でもなんで初めに奇襲を仕掛けたんだろう?下手すればあそこで捕まってたのに。いや、でも足場が崩れたから想定内?それに結局比企谷先生の個性は……」

 

「だから怖えーって!」

 

「あ、オールマイトが立ち止まった!」

 

「!」

 

 

最後の5階。

間違いなくここに核は存在するため、オールマイトも慎重になっているのだろうか。

みんながそう思った時、突然ブゥンと音が鳴り今まで公開されていなかった5階全ての映像が映し出された。

 

 

『あー、見えてるか?』

 

 

そこから響くのはヴィラン役である比企谷先生の声。

 

 

『そっちの声は聞こえないから続けるぞ。

今五階のカメラを全部付けた。

で、状況分かりにくいだろうから説明すると、いま五階全体は俺の個性で高酸素状態になってる。

火花でも散ればもれなく核にも引火するって感じにな』

 

 

なるほど。

それでオールマイトが立ち止まったのか。下手な行動をして相手に悟られれば即座に敗北だ。

分かっちゃいたけどやっぱりヒーロー側がすごく不利な試験だ。

 

 

『そして意図的に引火できる方法をオールマイトに見えるようにして足止めしてる』

 

「「「エグッ!」」」

 

 

続けられた言葉にみんなの声が揃った。

もしかしたら入学してから始めてみんなの意見が一致したかもしれない。

 

 

「え、えぇ…。ヒー、ロー?」

 

「やってることが完全にヴィランそのものですわ…」

 

「ケロ…。目以外も腐ってたのかしら…」

 

「い、いや先生今はヴィラン役だから、ほら、まあ、似合い過ぎて怖いけど」

 

 

凄い言われようだった。

 

 

『…何言われてるかなんとなくわかるが、各自自分の個性でどんな対応ができるか考えながら見ろよ。

………たぶん、オールマイトのは参考にならないから。

以上』

 

 

そう言って比企谷先生の音声は途切れた。

まるでテレビの中のオールマイトを見ているような感覚でいたけれど、これは訓練。

どうすればヴィランの思惑を突破できるのかを考えなければ、この演習も意味が……って。

 

 

(そもそも今の僕にできる事ってなくない!?)

 

 

今の僕には個性を使いこなすどころかまともに使うこともできない。

そんな僕があの状況に陥ったとして何かができるわけもない。

他のみんなはどうだろう?

 

 

「んー、俺の硬化じゃあどうやったって対処できねえしなぁ」

 

「ケロ。私も無理そうだわ」

 

「俺の放電なんて発動した瞬間ボカンだぜ?」

 

「俺のダークシャドウならあの中でも索敵と制圧をこなせるが、比企谷教諭を相手に正面戦闘をこなせるかどうか…」

 

「そもそも比企谷先生が見てない状態でどうやってヒーロー側の様子を探ってるか分からないと動きようが…」

 

 

さすがは雄英に合格した生徒というべきか、一言で一斉に各々での対処法を探り出したが、大多数の生徒が『どうにもできない』という結論を出した。

というか、プロヒーローでもこの状況を覆すのは難しい気がする。

人質のようなものを取られ、相手の個性は未知数。

あと性格も悪い。

 

 

「………でもヒーローって元々そういうものじゃないかな☆」

 

 

そんな中で青山くんが唐突に呟いた。

 

 

「個性も知らない相手に自分の魅力(個性)で逮捕する。

……それって、カッコいいじゃない☆」

 

 

あれ?今そんな話してたっけ?

なんて声も聞こえてくるようだが、よく考えればこんな状況もプロになったら当たり前なのかもしれない。

ヒーローは遅れてやってくる。

それはつまりヴィランに常に後手に回っているということだ。

しかも個性が一目でわかるわけじゃないヴィランも多いのだ。

ヒーローはそんな中で事件を解決していかなければならない。そしてそのヒーローを僕たちは志しているんだから。

 

 

「………勉強することは多いな」

 

 

向上心を改めて心に持てた時、ようやく画面のオールマイトが動き出した。

 

 

『さあ!私が行くぞ!』

 

 

いつのまにか裸足に早変わりしていたオールマイト。

駆け足で5階の廊下へ進んで行く。

 

 

「オールマイト突っ込むのか!?」

 

「核を人質に取られてるんだよね!?それじゃダメなんじゃ!?」

 

 

『大丈夫!!』

 

 

ざわざわと騒ぎ始めた生徒たちを画面越しから黙らせる。

演習を思わせぬ威圧にたった一つの画面に全ての視線が集まった。

 

 

『………なぜって?』

 

 

それはもうお約束のような決め台詞。

このセリフを聞いて助けられなかった要救助者はいない。

このセリフを聞いて捕まらなかったヴィランはいない。

 

 

 

 

『私が来た!!!』

 

 

 

 

 

それは目に止めるには早過ぎて。

この部屋の誰もがカメラからオールマイトの姿を見失った。

なんせその時にはもうオールマイトは動き終わっていて。

もう一つのカメラには既に比企谷先生を捕獲用テープで制圧し終わっているオールマイトが映っていた。

ついでと言わんばかりに核のハリボテを担ぎながら比企谷先生を床に貼り付けている姿は、まごうこと無くテレビ越しで見るオールマイトそのものだった。

 

 

 

「「「すっげぇぇええええ!!」」」

 

 

 

湧き上がる歓声。当然僕も声を上げる。

正直最後は何が起きたか分からなかったけれど、それでも勝ったのがオールマイトだということだけはありありと理解できた。

 

 

『………結局ただのゴリ押しじゃねえか…』

 

 

………ただオールマイトの長い決めポーズに付き合っている比企谷先生の目がいつもより腐っていたのはどうしてだろう。

床が冷たいのだろうか。

 




長い間とこに伏せてたのでもっと早めに書き上げたいですね(フラグ)

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