真・恋姫†無双 転生伝   作:ノブやん

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十四話

「でえぇぇぇぇぇぇい!」

 

「はああああああっ!」

 

如月「テメーら逃がさねーぞ。イオラ!」

 

砦内の黄巾党は曹操軍に簡単に殲滅させられた。

 

「副長!周囲の掃討、終わりました。」

 

如月「お疲れのところ悪いが、周囲の確認を頼む。黄巾党はいないと思うが念のために。」

 

「はっ!了解です。」

 

「火を放て!糧食を持ち帰ることまかりならん!全て燃やせ!」

 

中央の広場に集められた糧食が春蘭の指示で燃やされていく。

 

「目的は果たしたぞ!総員、旗を目立つところに挿して、即座に帰投せよ!」

 

如月「さて、どこに挿そうかな。あ、あそこが一番高そうだ。」

 

「あ、如月兄ちゃん。挿すところ決めた?」

 

如月「お、季衣か。あそこに挿そうと思ったんだが。」

 

「わー。一番高そうだね。ボクもあそこにする。」

 

如月「じゃあ、一緒に挿すか?」

 

「うん。あれ?でも如月兄ちゃんあそこまで登れるの?結構高いよ。」

 

如月「俺、空飛べるんだが。まあいいや。季衣一緒に連れてってやるぞ。」

 

「え、いいの?やったー!ボク、空飛んでみたかったんだ。」

 

如月「んじゃ、失礼して。」

 

右腕で季衣を抱え、左に軍旗を持ち、トベルーラを唱える。

 

「うわー!浮いてる!すごーい!」

 

如月「ついたぞ。降ろすからな。気を付けろよ。」

 

季衣を降ろし、二人で軍旗を挿し、地上に降りる。

 

如月「んじゃ、皆に合流するか。」

 

「うん。」

 

城までの帰り道に簡単な会議を開き、凪、真桜、沙和と義勇軍が警邏隊に組み込まれることが決まった。あと、帰ったら片付けに専念してすぐに休むようにだって。ありがたい。

 

「ああ、そうだ。例の旗を一番高い所に飾るという話だけれど……結局、誰が一番だったの?」

 

如月「たぶん、俺と季衣の二人じゃないか?二人で一緒に挿したから。」

 

「……どうやって挿したの?」

 

如月「季衣を抱えて、トベルーラで上までいって、挿した。」

 

「なら、その勝負は如月と季衣の勝ちね。二人とも何か欲しいものはある?」

 

「うーん……特に、何もないんですけど……」

 

「欲のない子ね。何でも良いのよ?」

 

「何かあるだろ。食べ物とか服とか……」

 

「え?どっちも、今のままで十分ですし……」

 

「領地まではさすがにあげられないけど……何か無いの?」

 

「そんなものいりませんよー。」

 

「まあいいわ。なら、季衣は一つ貸しにしておくわね。何か欲しいものが出来たら、言いなさい。」

 

「はいっ!ありがとうございます!」

 

「如月は何か欲しいものはあるの。」

 

如月「そうだな、何個か試しに作りたいものがあるから、それにかかるお金と城の一部を使わせて欲しい。」

 

「何を作るつもりなの?」

 

如月「保存食と俺らの国の調味料やお酒とか作ってみたいな。」

 

「別に、役立つものを作るのであれば、草案を出してくれればいいのに。」

 

如月「自分の趣味みたいなものだからな。作ってみて、出来そうなら出すよ。」

 

「そう。ならそれにしましょう。さあ、みんな帰るわよ。」

 

その後、陳留に戻った俺達は、片付けを終わらせた後、凪、真桜、沙和の歓迎会を開いた。そこで、コロッケを作り、振る舞った。みんなには好評だったみたいだ。

 

凪、真桜、沙和の歓迎会の翌日。

本日より、『北郷警備隊』の始動だ。もともと、俺と一刀は警備隊で働いていたのだが、義勇軍が新たに警備隊に組み込まれたことにより、警備隊の隊長と副長に昇進したのだ。

そして、新入隊員の三人に仕事の説明をすることになったのだ。

 

「隊長、何緊張しとるん?さっきから『さて』しかゆうてへんがな。」

 

一刀「いやぁ……人前に立つのって緊張するよなぁ。俺は基本的に恥ずかしがり屋の小心者だから。」

 

「あははっ、そーいうコトを自分で言っちゃうコトが隊長らしいねー。」

 

一刀「多少その台詞に引っかかるが、まぁ、そういうことだ。」

 

はっはっはーと笑う一刀に凪の厳しい一言が突き刺さる。

 

「隊長、もっと堂々としてください。あと副長も黙ってないで何か言ってください。」

 

如月「すまんな凪。一刀、気持ちは分からんでもないが、さっさと説明しろよ。日が暮れてしまう。」

 

一刀「ああ、すまん。えー、それでは、俺達が担当する仕事の説明をします。俺達五人は華琳の命により、街の警備隊の指揮を任されることになりました。その時に、俺が隊長、如月が副長に任命されました。これからはよろしく。」

 

如月「副長の龍谷如月です。これから、よろしく。」

 

「はっ!よろしくおねがいします。」

 

「よろしゅうおねがいします。」

 

「よろしくおねがいしますなのー。」

 

一刀「とりあえず今日は、街の見回り、警邏をしたいと思うから、街に行くぞ。」

 

「「「「おー!」」」」

 

で街に出てきたわけだが、のんびり屋の沙和、ツッコミ役の真桜、一人真面目な凪。

誰も彼もマイペースで、すぐにグダグダになってしまった。

 

「あーー!新しい阿蘇阿蘇が出てるー!」

 

一刀「阿蘇阿蘇?……ああ、つまりana……むぐ」

 

「「(一刀)(隊長)それは言っちゃダメ(だ)(なの)」」

 

と一刀の口をふさぐ。俺も初めて見た時は驚いたがと思っていたら、

 

「おー!見てぇ!発売中止になった超絶からくり夏候惇!」

 

次は真桜か。警邏中だぞ今は。ハァーと一刀と二人でタメ息をついていると、

 

「まてぇーいっ!」

 

「待てといわれて、止まるヤツがいるもんかっ!」

 

一刀「どうしたんですか?」

 

「盗人だよ!店の売り物、かたっぱしから盗んでいきやがったっ。」

 

それを聞いて走り出す俺と一刀。だが賊もなかなかすばしっこく、狭い路地に入り込み、ちょこまかと走り回る。見失わないようにするのが精一杯だ。

 

「ええいっ、まどろっこしい!」

 

凪の背中に、メラメラと赤い炎が浮かび上がる。気弾を撃たれて、街を破壊されるわけにもいかないので、

 

如月「一刀、お前にピオラを唱えたから、そのまま賊を追ってくれ。凪は、そこまで。」

 

自分にもピオラをかけ、凪に追いついて、足払いをかける。

 

「へっ?きゃあ!」

 

尻餅をつこうとする凪を抱きとめるとお姫様抱っこの形になる。

 

「あっ、副長。」

 

凪は自分の状況を把握すると顔を赤く染める。

 

如月「まったく。可愛い悲鳴と顔するじゃねえか。っと、それどころじゃなかった。凪降ろすぞ。」

 

「あっ、はい。」

 

凪を降ろし賊を追いかけると一刀が捕まえていた。

 

一刀「如月、縄あるか?」

 

如月「一刀すまんな。今、こいつを縛る。」

 

縛り終えた盗人を他の隊員に引き渡す。一刀は事後処理のためについていった。

 

「副長。」

 

「なんや、なんや。どないしたん?」

 

「みんな集まって、なにやってたのー?」

 

凪はとにかく、沙和と真桜の手には、阿蘇阿蘇とからくり夏候惇が握られていた。

さてと、三人へ説教を開始する。

 

如月「まず、沙和。阿蘇阿蘇を見るなとは言わないが、警邏中に必要なことか?買ったり、読んだりするのは、仕事が終わってからにしろ。真桜もだ。絶版になったものがあったのは嬉しいよな。その気持ちはすごく分かる。だが、仕事をほったらかしにするな。そういう時は、取り置きとかしておいてもらえ。凪、まどろっこしい気持ちは分かるが、こんな街中で気弾なんか撃ってみろ、皆に被害が及ぶぞ。真面目なのはいいが、少し肩の力を抜け。周りを良く見ような。」

 

「うう。ごめんなさいなの。」

 

「すんません、副長。」

 

「申し訳ありません。副長。」

 

如月「明日から頼むぞ。じゃあ、一刀を捕まえて飯に行くか。」

 

「「「え?」」」

 

如月「ん?飯食いにいかないの?」

 

「え、だってなぁ……」

 

「ああ……」

 

「副長、いいの?」

 

如月「説教は終わったし、ちゃんと反省して明日からちゃんとやってくれるんだろ?だから明日への活力のために飯を食いに行こうと誘ったんだが。あーあ、奢ってやろうと思ったのに。」

 

「行きます。」

 

「行くに決まってるやろ。」

 

「絶対に行くのー。」

 

如月「んじゃ、一刀を捕まえて飯に行くぞ。」

 

「「「おー!」」」

 

こうして、北郷警邏隊の初日は幕を閉じた。飯代は、一刀と割り勘です。

 


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