「でえぇぇぇぇぇぇい!」
「はああああああっ!」
如月「テメーら逃がさねーぞ。イオラ!」
砦内の黄巾党は曹操軍に簡単に殲滅させられた。
「副長!周囲の掃討、終わりました。」
如月「お疲れのところ悪いが、周囲の確認を頼む。黄巾党はいないと思うが念のために。」
「はっ!了解です。」
「火を放て!糧食を持ち帰ることまかりならん!全て燃やせ!」
中央の広場に集められた糧食が春蘭の指示で燃やされていく。
「目的は果たしたぞ!総員、旗を目立つところに挿して、即座に帰投せよ!」
如月「さて、どこに挿そうかな。あ、あそこが一番高そうだ。」
「あ、如月兄ちゃん。挿すところ決めた?」
如月「お、季衣か。あそこに挿そうと思ったんだが。」
「わー。一番高そうだね。ボクもあそこにする。」
如月「じゃあ、一緒に挿すか?」
「うん。あれ?でも如月兄ちゃんあそこまで登れるの?結構高いよ。」
如月「俺、空飛べるんだが。まあいいや。季衣一緒に連れてってやるぞ。」
「え、いいの?やったー!ボク、空飛んでみたかったんだ。」
如月「んじゃ、失礼して。」
右腕で季衣を抱え、左に軍旗を持ち、トベルーラを唱える。
「うわー!浮いてる!すごーい!」
如月「ついたぞ。降ろすからな。気を付けろよ。」
季衣を降ろし、二人で軍旗を挿し、地上に降りる。
如月「んじゃ、皆に合流するか。」
「うん。」
城までの帰り道に簡単な会議を開き、凪、真桜、沙和と義勇軍が警邏隊に組み込まれることが決まった。あと、帰ったら片付けに専念してすぐに休むようにだって。ありがたい。
「ああ、そうだ。例の旗を一番高い所に飾るという話だけれど……結局、誰が一番だったの?」
如月「たぶん、俺と季衣の二人じゃないか?二人で一緒に挿したから。」
「……どうやって挿したの?」
如月「季衣を抱えて、トベルーラで上までいって、挿した。」
「なら、その勝負は如月と季衣の勝ちね。二人とも何か欲しいものはある?」
「うーん……特に、何もないんですけど……」
「欲のない子ね。何でも良いのよ?」
「何かあるだろ。食べ物とか服とか……」
「え?どっちも、今のままで十分ですし……」
「領地まではさすがにあげられないけど……何か無いの?」
「そんなものいりませんよー。」
「まあいいわ。なら、季衣は一つ貸しにしておくわね。何か欲しいものが出来たら、言いなさい。」
「はいっ!ありがとうございます!」
「如月は何か欲しいものはあるの。」
如月「そうだな、何個か試しに作りたいものがあるから、それにかかるお金と城の一部を使わせて欲しい。」
「何を作るつもりなの?」
如月「保存食と俺らの国の調味料やお酒とか作ってみたいな。」
「別に、役立つものを作るのであれば、草案を出してくれればいいのに。」
如月「自分の趣味みたいなものだからな。作ってみて、出来そうなら出すよ。」
「そう。ならそれにしましょう。さあ、みんな帰るわよ。」
その後、陳留に戻った俺達は、片付けを終わらせた後、凪、真桜、沙和の歓迎会を開いた。そこで、コロッケを作り、振る舞った。みんなには好評だったみたいだ。
凪、真桜、沙和の歓迎会の翌日。
本日より、『北郷警備隊』の始動だ。もともと、俺と一刀は警備隊で働いていたのだが、義勇軍が新たに警備隊に組み込まれたことにより、警備隊の隊長と副長に昇進したのだ。
そして、新入隊員の三人に仕事の説明をすることになったのだ。
「隊長、何緊張しとるん?さっきから『さて』しかゆうてへんがな。」
一刀「いやぁ……人前に立つのって緊張するよなぁ。俺は基本的に恥ずかしがり屋の小心者だから。」
「あははっ、そーいうコトを自分で言っちゃうコトが隊長らしいねー。」
一刀「多少その台詞に引っかかるが、まぁ、そういうことだ。」
はっはっはーと笑う一刀に凪の厳しい一言が突き刺さる。
「隊長、もっと堂々としてください。あと副長も黙ってないで何か言ってください。」
如月「すまんな凪。一刀、気持ちは分からんでもないが、さっさと説明しろよ。日が暮れてしまう。」
一刀「ああ、すまん。えー、それでは、俺達が担当する仕事の説明をします。俺達五人は華琳の命により、街の警備隊の指揮を任されることになりました。その時に、俺が隊長、如月が副長に任命されました。これからはよろしく。」
如月「副長の龍谷如月です。これから、よろしく。」
「はっ!よろしくおねがいします。」
「よろしゅうおねがいします。」
「よろしくおねがいしますなのー。」
一刀「とりあえず今日は、街の見回り、警邏をしたいと思うから、街に行くぞ。」
「「「「おー!」」」」
で街に出てきたわけだが、のんびり屋の沙和、ツッコミ役の真桜、一人真面目な凪。
誰も彼もマイペースで、すぐにグダグダになってしまった。
「あーー!新しい阿蘇阿蘇が出てるー!」
一刀「阿蘇阿蘇?……ああ、つまりana……むぐ」
「「(一刀)(隊長)それは言っちゃダメ(だ)(なの)」」
と一刀の口をふさぐ。俺も初めて見た時は驚いたがと思っていたら、
「おー!見てぇ!発売中止になった超絶からくり夏候惇!」
次は真桜か。警邏中だぞ今は。ハァーと一刀と二人でタメ息をついていると、
「まてぇーいっ!」
「待てといわれて、止まるヤツがいるもんかっ!」
一刀「どうしたんですか?」
「盗人だよ!店の売り物、かたっぱしから盗んでいきやがったっ。」
それを聞いて走り出す俺と一刀。だが賊もなかなかすばしっこく、狭い路地に入り込み、ちょこまかと走り回る。見失わないようにするのが精一杯だ。
「ええいっ、まどろっこしい!」
凪の背中に、メラメラと赤い炎が浮かび上がる。気弾を撃たれて、街を破壊されるわけにもいかないので、
如月「一刀、お前にピオラを唱えたから、そのまま賊を追ってくれ。凪は、そこまで。」
自分にもピオラをかけ、凪に追いついて、足払いをかける。
「へっ?きゃあ!」
尻餅をつこうとする凪を抱きとめるとお姫様抱っこの形になる。
「あっ、副長。」
凪は自分の状況を把握すると顔を赤く染める。
如月「まったく。可愛い悲鳴と顔するじゃねえか。っと、それどころじゃなかった。凪降ろすぞ。」
「あっ、はい。」
凪を降ろし賊を追いかけると一刀が捕まえていた。
一刀「如月、縄あるか?」
如月「一刀すまんな。今、こいつを縛る。」
縛り終えた盗人を他の隊員に引き渡す。一刀は事後処理のためについていった。
「副長。」
「なんや、なんや。どないしたん?」
「みんな集まって、なにやってたのー?」
凪はとにかく、沙和と真桜の手には、阿蘇阿蘇とからくり夏候惇が握られていた。
さてと、三人へ説教を開始する。
如月「まず、沙和。阿蘇阿蘇を見るなとは言わないが、警邏中に必要なことか?買ったり、読んだりするのは、仕事が終わってからにしろ。真桜もだ。絶版になったものがあったのは嬉しいよな。その気持ちはすごく分かる。だが、仕事をほったらかしにするな。そういう時は、取り置きとかしておいてもらえ。凪、まどろっこしい気持ちは分かるが、こんな街中で気弾なんか撃ってみろ、皆に被害が及ぶぞ。真面目なのはいいが、少し肩の力を抜け。周りを良く見ような。」
「うう。ごめんなさいなの。」
「すんません、副長。」
「申し訳ありません。副長。」
如月「明日から頼むぞ。じゃあ、一刀を捕まえて飯に行くか。」
「「「え?」」」
如月「ん?飯食いにいかないの?」
「え、だってなぁ……」
「ああ……」
「副長、いいの?」
如月「説教は終わったし、ちゃんと反省して明日からちゃんとやってくれるんだろ?だから明日への活力のために飯を食いに行こうと誘ったんだが。あーあ、奢ってやろうと思ったのに。」
「行きます。」
「行くに決まってるやろ。」
「絶対に行くのー。」
如月「んじゃ、一刀を捕まえて飯に行くぞ。」
「「「おー!」」」
こうして、北郷警邏隊の初日は幕を閉じた。飯代は、一刀と割り勘です。