先発隊として、出発した俺たち。運よく賊が街を襲う、夜明け前に到着することが出来た。
如月「まずは、街の代表に会って、住民の避難と、義勇軍を募っていいかの確認かな?」
「ああ、そうだな。あと華琳様に早馬を出しておこう。」
「すみません。あなた達は一体?」
如月「ああ、陳留の曹操軍だ。街の代表はいるか?住民の避難誘導の手伝いと義勇兵を募りたいんだが。」
「陳留の曹操様の!はい、街の代表はこちらです。案内いたします。」
体中に傷跡があり、銀髪を後ろで三つ編みにしている少女に案内してもらう。
「代表はこちらにおります。では、私もやることがありますので。」
如月「ああ、ありがとう。あなたが街の代表ですか?我々は陳留の曹操軍です。住民の避難誘導の手伝いと義勇兵を募らせていただきたいんですが。」
「なんと、陳留の曹操様の。ありがとうございます。ならば、住民の避難誘導を手伝っていただきたいのでお願いいたします。義勇兵たちはこちらにおります。」
秋蘭が兵たちに避難誘導の指示を出した後に、代表に連れられて義勇兵のもとへ案内してもらった。
「あ、あなた達はさっきの……。」
如月「よう。」
「ん?凪どないしたん?」
「凪ちゃんどうしたのー?」
「我らはお主たちと共に戦うために来た陳留の曹操軍だ。」
「うん。この街のみんなを守るために来たんだよ。」
如月「ああ、君らと共に戦わせてもらいたい。」
「え?ほんとなん?しかも、陳留の曹操様の?」
「大歓迎なのー!」
如月「一緒に戦うのに自己紹介をしてなかったな。俺は龍谷如月。如月と呼んでくれ。よろしく。」
「私は、夏侯淵だ。曹操様の所で将をしている。」
「ボクは、許緒って言うんだ。」
「私の名は楽進です。」
「ウチは李典や。」
「沙和は于禁なのー。」
各々、自己紹介を済ませすぐに軍議を始める。街の地図を見ると東西南北に門があり、そこに防壁を築き、弓矢による遠距離射撃で数を減らし、援軍到着まで乗り切ろうと言う事になり、東門に秋蘭と季衣、南門は李典と于禁、西門は楽進、北門は俺の担当になった。
「あの、夏侯淵様。」
「どうした?楽進?」
「如月様はお一人で大丈夫なのでしょうか?」
「そうですよ、秋蘭様。如月兄ちゃん一人で大丈夫なんですか?」
「季衣も楽進もそんなに心配するな。あやつは面白い技を持っているからな。あれがあれば、北門の賊どもは全滅するんじゃないか?」
「本当ですか?」
「ああ、見に行くことは出来んが、ものすごい音がするんじゃないか?この戦いが終わったら、見せてもらえ。ほら、しゃべってる暇があれば早く防壁の準備をしてこい。」
「あ……はい。分かりました。」
「はーい。」
如月「みんなー。きついだろうけど、頑張って防壁を作れー。もうすぐ、攻めてくるぞ。」
「はっ!」
「俺はちょっくら、時間稼ぎしてくるから。その間に完成させとけよ。」
「え?如月様、お一人で大丈夫ですか?」
如月「おう、気にするな。ちゃんと防壁を完成させとけ。」
「はっ!お気をつけて。」
俺は今、一人で黄巾党の前にいる。
「へっへっへ。馬鹿な奴だ。たった一人で来るなんて。野郎ども、こんな奴さっさと殺して、街を攻め落とすぞ。」
「「おおーー!!」」
あーあ、好き勝手言ってくれちゃって。まあ、たった一人だからな。しかたないか。
さて、ちょっくら、暴れますか。
如月「イオナズン!」
ドゴーーーーン!
「ギャー!」
「なんだ!いきなり爆発が起こったぞ。」
「ええい、怯むな!突撃しろ!」
如月「バギクロス!」
「うぎゃー!」
「た、竜巻が!」
「ギガデイン」
「うわー、雷がおちてきた。」
「なんだ、やつは妖術使いか?」
如月「もういっちょ、イオナズン!」
ドゴーーーーン!
イオナズン二発、バギクロス、ギガデイン各一発。まあ、逃げてった奴らもいるがほぼ全滅させることが出来たな。
如月「さて、他の門の助けに行くか。」
北門の兵たちのもとへ、一旦戻る。
如月「お前ら、とりあえず全滅させてきたが、念のためここを守ってろ。俺は他の門へ行ってくる。」
「如月様。すごいですね。あんなに居たのに全滅させるなんて。」
如月「まあな。んじゃ、行ってくるから。何かあったら、伝令を飛ばせ。」
「はっ!お気をつけて。ここはお任せください。」
と兵たちに指示を出し、トベルーラで街の中心に飛んでいく。
「如月様、空も飛べるんだ。」
「あの人が味方で良かったな。俺たち。」
トベルーラで飛んでいると街の中心に秋蘭たちを発見した。
如月「よう、秋蘭。こっちはどうだ?」
「うわっ!如月兄ちゃん!どこから来たの?」
如月「空から来た。てか季衣は一回見たことがあるだろ。で、秋蘭どうなんだ?」
「如月か。西側の防柵があと二つだ。南の連中が東西の門に合流したために、かなりきつい。そちらは?」
如月「こっちは全滅させたあと、兵たちに念のため守らせてきた。何かあれば伝令をよこせと言ってあるが、思ったよりも北門で時間食ったな。」
「いや、それでよかろう。北門を攻めようとしていた連中がいなくなったのだから、すごく助かった。」
「しかし、夏侯淵様たちがいなければ、我々だけでは、ここまで耐えることが出来ませんでした。」
「それは我々も同じこと。貴公ら義勇軍がいなければ、数に押されて敗走していたさ。」
如月「たしかに、俺らだけだったら、街、兵たちの損害がひどいことになってたな。」
「いえ、それも夏侯淵様の指揮と如月様が北門の賊を減らしてくれたからこそ。いざとなれば、自分が討って出て…」
「そんなのダメだよっ!そういう考えじゃ……ダメだよ。春蘭様達が絶対助けに来てくれるんだから。最後まで頑張って守りきらないと!」
「……せやせや。突っ込んで犬死しても、誰も褒めてくれんよ。」
「今日、百人の民を助けるために死んじゃったら、その先助けられる万人の民を見捨てることになるんだよ。わかった?」
「……肝に銘じておきます。」
「……ふふっ」
如月「はっはっは。」
「あ、何がおかしいんですか二人ともー!」
「いや、昨日あれだけみなに叱られていたお前が、一人前に諭しているのが…おかしくてな。」
「うう、ひどーい!」
如月「楽進。季衣の言う通り。万人の民を助けることが出来る力を持っているんだから、そんな簡単に命を粗末にするな。」
「はい、申し訳ありません。如月様。」
「夏侯淵様ー!東側の防壁がやぶられたのー!向こうの防壁はあと一つしかないの!」
「……あかん。東側の最後の防壁って、材料が足りひんかったから、かなりもろいで。すぐ破られてしまう!」
「しかたない。如月、東側を頼む。残り全員で西側を守ろう。」
如月「ああ、まかせろ。そっちのほうが、消耗が少なくなるだろ。それに、兵たちをこっちに回されても、巻添えになっちゃうからな。」
「すまん。お前ばかりに無理をさせて。」
如月「気にするな。ついでに、みんなの体力を回復させてやる。ベホマラー。」
ベホマラーを唱え、皆の体力を回復させる。
「すまんな、如月。」
「如月兄ちゃん、すごーい!」
「マジかいなー。体力が回復しとる。」
「すごいのー!」
「如月様、これは?」
「説明は後で聞いてやる。お前ら、西側を頼むぞ。」
「先発は、私が切ります。」
如月「楽進、絶対に死ぬなよ。」
「はっ!」
「皆、ここが正念場だ。力をつくし、何としても生き残るぞ。」
「分かったの!」
「おう、死んでたまるかいな!」
「報告です!街の外に大きな砂煙!大部隊のようです。」
「敵か!それとも……」
「お味方です。旗印は曹と夏候!曹操様と夏候惇様ですっ!」
その後、本隊が到着したため、黄巾の賊どもはなすすべなく全滅し、俺らは、街を守りきることが出来た。
「三人とも無事でなによりだわ。損害は大きかったようね。」
「はっ。しかし彼女らのおかげで、防壁こそ破られましたが、最小限の損害で済みました。街の住民も皆無事です。」
「…彼女ら?」
「…我らは大梁義勇軍。黄巾党の暴乱に抵抗するため、こうして兵を挙げたのですが…」
「「「あー!」」」
「…何よ、一体。」
一刀「前に街へ視察に行った時の、変な絡繰を作ってたカゴ屋の子!」
「変な絡繰ってなんやねん!すごい絡繰の言い間違いやろ!」
「…思い出したわ。どうしたの、こんな所で。」
「ウチも大梁義勇軍の一員なんよ。」
「姉者も知り合いなのか?」
「そうなのー。前に服屋でむぐぐ…」
春蘭が于禁の口をふさぎ、耳元で何か言っていて、于禁がコクコクとうなずいている。
「で、その義勇軍が?」
「はい。黄巾の賊がまさかあれだけの規模になっているとは思いもせず、こうして夏侯淵様に助けていただいた次第…」
「そう。己の実力を見誤ったことはともかく、街を守りたいというその心がけは大したものね。」
「面目次第もございません。」
「とはいえ、あなた達がいなければ、大切な将を失う所だったわ。助けてくれてありがとう。」
「はっ!」
「あの、華琳様。凪ちゃん達を…華琳様の部下にしてはもらえませんか?」
「義勇軍が私の指揮下に入るという事?秋蘭、彼女たちの能力は?」
「は。一晩共に戦っておりましたが、皆鍛えればひとかどの将になる器かと。」
「そう…。季衣も真名で呼んでいるようだし…いいでしょう。三人の名は?」
「楽進と申します。真名は凪…曹操様にこの命、お預けいたします。」
「李典や。真名は真桜で呼んでくれてもええで。以後よろしゅう。」
「于禁なのー。真名は沙和っていうの。宜しくお願いしますなのー♪」
「凪、真桜、沙和。そうね……一刀、如月。」
如月・一刀「「ん?」」
「さしあたり貴方達三人と義勇兵は、この男たちに面倒を見させます。別段の指示がある時をのぞいては、彼らの指示に従うように。」
一刀「ちょっと待てよ、華琳!」
「あら。何か問題でも?」
「大ありですっ!なんでこんなやつらに、部下をお付けになるんですか…!」
一刀「…あ、桂花。いたんだ。」
「あんたとちがって、私はちゃんと仕事をしているの。華琳様、周囲の警戒と追撃部隊の出撃、完了いたしました。支援物資の配給も、もうすぐ始められるかと。」
「ごくろうさま桂花。で、何の話だったかしら?」
北郷のことです!如月ならともかく、こんな変態に華琳様の貴重な部下を預けるなど…部下が穢されてしまいます。」
一刀「初対面の連中に変なこと吹き込むなよ!」
「「「……」」」
如月「うわー、一刀。性癖に関しては何も言わないけど、どんびきだわー。」
一刀「誤解だから。てか、如月。変にあおるなよ!」
如月「すまん、すまん。三人とも大丈夫。変なことする奴じゃないから。」
「私は関知しないから。三人とも一刀に無理に迫られたら、痛い目にあわせて構わないわ。あと、如月は一刀の補佐をするように。」
如月「了解。なら一刀が隊長で、俺が副長ってことか。そういうことになったから、よろしくな三人とも。」
「そういうことなら了解ですわ。よろしゅうな、隊長、副長。」
「了解しました。隊長、副長。」
「はーい。隊長さーん、副長さーん。」
一刀「隊長…ねぇ。」
「とくに問題ないかと。」
「良かったね、三人とも!」
「春蘭はどう?」
「いえ、これで北郷も少しは華琳様の部下としての自覚も出るのではないかと。」
「それではこの件はこれでいいわね。各自、作業に戻りなさい。」
こうして、一刀が部隊を持つことになった。俺は、補佐へ回ることになり、部下が三人出来た。