魔法のお城で幸せを   作:劇団員A

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セドリックとハリー視点です
花言葉は「深い悲しみ」「正しい主張」


アリウム

予選を全て終えた次の週、六月にもなったその日、ざわざわとした大広間は普段と様子が大きく変わっていた。マクゴナガル先生の協力によって古代ローマの闘技場のようになっている。観客席も全て石でできているかのようになっていた。

 

「いやー流石先生、すごいもんだな」

「……多分、劇団総出でも不可能」

「もうそろそろ時間だよね、とりあえず準備しようか。僕、選手の誘導してくるね」

 

待合室に待機している選手たちを舞台の中心に移動するように話しかける。

 

「みんな、もうそろそろ開会式やるからステージによろしくね」

「おー」

「さぁいっちょ蹴散らしてやるぞぉ」

「いんや勝つのはグリフィンドールだ」

「脳筋どもに負けるレイブンクローではない」

 

みんなが火花を散らしながら会場へと入っていく。演出としてはまずは舞台に幕をかけておき、幕が上がると寮ごとに集まってそれぞれ何らかのパフォーマンスをやってもらう、ということにしている。みんなが進む中で一人だけ具合の悪そうな人物がいた。

 

「えっと、確か、ジニーだよね。顔色悪いけど大丈夫?」

「っ……だ、大丈夫、問題ないわ」

 

一年生ながらも天才的なまでの操作で僕たちよりも上級生を破っており、もはや「劇団にスカウトしないか」とか話していたのだ。なんでもウィーズリー家の一番下の子で紅一点らしい。フレッドとジョージとは似ても似つかぬほど静かな子で、体が弱いのか常に顔色が悪い。

そんな彼女は体を抱えるようにして待合室を去っていった。

 

みんなが会場に行った後で僕だけは残っていた。僕はみんなのパフォーマンスの後に選手の代表者として、劇団の一員として挨拶をした後、実況であるケビンの宣言により開会するというプログラムである。

 

心臓がばくばく脈打っていのを感じた。クィディッチの試合よりも緊張している気がする。アイクはいつもこんな感覚なんだろうか?巻き物を取り出して実況席にいるケビンとフレデリカに『準備完了』とメッセージを送る。すぐに『オーケー』と返事が返ってきた。

 

ドスンというような振動音が聞こえた。幕が降りたのだろう。僕は拍手の方へと一歩踏み出して

 

「え……?」

 

目の前の惨状に言葉を失った。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「ハリー、早くしろよ。ディーンたちが席取ってくれてるんだって」

「待ってよロン」

 

先を行くロンを追いかけるように走り、大広間に着くと部屋を間違えたのか僕は思った。そこにはみんなが食事をしたりするような部屋ではなく、古代ローマのような闘技場になっており、雄々しくも繊細に豪華な装飾がされた石で観客席も中央にあるステージもできていた。辺りにはそんな雰囲気に見合ったように筋肉隆々な男たちの石像が囲んでいる。

 

「すごい……」

 

そんな感想が思わず自然と口からこぼれ落ちていた。これもまさか劇団の人達がやったのだろうか。

 

「ハリー、ディーンたちを見つけた。こっちだ」

 

ロンの案内に従って人集りを抜けて席に着くとディーンやトーマス、ネビルたちがいた。みんなそれぞれクィディッチのときのように応援グッズを着たり手に持ったりしている。

 

「すごい大勢いるね」

「そりゃそうだろハリー。今までの予選大会では自分の寮以外見ないってやつもいたけど今回はそんな予選大会を見てたやつだいたい全員来てんだろうからな」

 

そんな風に解説されたあと、誰が強いとかどこが手強いとか(僕らはみんな勝つのはもちろんグリフィンドールと信じていた)を話して盛り上がっていた。

 

「そういえばロン、お前の妹代表になってただろう。そんなに魔法が上手いのか?」

「僕だって初めて知ったよ。そんなこと」

 

そういうロンはどこか拗ねているようだった。まさか妹がグリフィンドールの代表になるなんて想像もしていなかったのだろう。そんなロンとは打って変わってフレッドとジョージは大喜びしていたが。まさか一年生が代表になるなんて誰も考えていなかったのでかなり大儲けしたらしい。

 

「あ、始めるよ」

 

ネビルがそういうと中央にあるステージにかかった段幕に文字が映る。

 

《開会式》

 

『あー、あー。放送できてる?あ、問題ない?オーケー』

『……これより寮対抗FOC大会、開会式を始めます。まずは選手入場。カウントダウンスタート』

『あ、ちょっ、俺の台詞』

 

段幕の文字が動いて数字へと変わる。《10》と表示された数字が小さくなって行く。

 

「「「「5!!……4!!……3!!……2!!……」」」

 

会場中が一体となって小さくなって行くカウントダウンに合わせて叫んでいく。会場中がみんなの熱気と動きに合わせて揺れ動いていた。表示される数字が《0》になった瞬間、段幕がさぁっと霧になるようにして消えて全て蝶に変わって羽ばたく。

 

そしてステージの上には各寮の代表選手が集まって立っていた。みんなが揃いも揃ってピクリとも動かずに立って固まっている。歓声と応援が爆発するように響いた。しばらくそんな状態が続き観客は思い思いに叫び始める。

 

「負けるなーグリフィンドール!!」

「元祖の力を見せつけろ!!ハッフルパフ!!」

「レイブンクロー、蹴散らせ!!」

「ぶっとばせ、スリザリン!!」

「頑張れ、リアム!」

「グスタフ一回ぐらいは勝てよ」

 

 

個人に対するものから寮に対するものまで。拍手喝采とともにエールが送られた。そんな音声にもピクリともニコリともしない人々流石に不審に思ったのか、会場近くの人がとんと強く押すと抵抗なくパタンと倒れた。転がった生徒は身じろぎもせずにそのままころがる。奇妙な沈黙が大広間を支配した。ひぃっと短い悲鳴が押した生徒から聞こえ、それから伝播するように会場中から悲鳴が聞こえた。

 

「きゃあああああ」

「え、うそだろ」

「みんな石になってる?」

「おいおいおい」

「スリザリンもなってるぞ!」

「純血は大丈夫じゃなかったのかよ!?」

「うわぁぁああ」

 

みんなが悲鳴をあげて逃げるように大広間から走り去っていく。

 

『おい、どうなってんだよ!?』

『……いいから幕を元に戻して!早く!!!』

 

聞こえた実況席からの声に反応してすぐに段幕が元に戻る。そんな中でマクゴナガル先生の声が響き渡る。

 

「各生徒はそれぞれの寮に避難しなさい!!良いですか、教師の許可が出るまで一切の出入りを禁止します!!!」

 

僕たちも人の波に流されるように寮へと動かされる。しかしそれに逆らうようにしてロンは会場の方へ行こうともがいていた。

 

「ロン?!何してるんだよ!!寮はこっちだよ?!」

「違う、僕、戻って確認しなきゃ!!」

「確認って何を!?」

「居なかったんだよ!!」

「誰が!?」

「僕の妹、ジニーがだよ!!!」

 

 

 

 

 




そういえばエマ・ワ◯ソンの弟がめっちゃイケメンでした(こういうのってここに書いていいのかね、ダメならそっと教えてください)

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