カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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イラつく人はガチャ引くのやめよう。

 沖田さんと岡田以蔵の戦闘は、ほぼ互角だった。剣の天才、というだけあって、岡田以蔵の太刀筋は見事なものだった。剣術素人の俺でもそう思うほどだ。

 が、沖田さんがそれを上回っている。今まで、多くの強敵と戦って来ただけあって、それはもう速さで翻弄していた。

 

「グッ……お、おまん……!」

「良いぞー沖田さーん!」

「頑張れ頑張れ沖田!」

「あんたらうるさいんですが⁉︎」

 

 俺とエウリュアレの応援にキレる沖田さん。でもやる事ないからなぁ。さっさと片付けて他の援護に行こうにも、相手をどんなに倒してもエウリュアレが取られたら負けなゲームである以上、他の戦場に顔を出すわけにもいかない。

 

「だから、俺達は応援する。フレー! フレー! O・KI・TA!」

「頑張れ頑張れOKITA! 負けるな負けるなOKITA!」

「だから喧しいんですけど⁉︎」

「……おまんのとこは、いつもこんな感じか」

「残念な事に!」

 

 微妙に岡田以蔵にまで同情されつつあった。が、すぐに気を取り戻した岡田以蔵は、小さく舌打ちをする。

 

「チッ……おまんらとやりおうてると、気が狂う」

「まったくですね」

 

 テキトーに返しつつ真剣での斬り合いを続ける。

 多分、岡田以蔵としては、このままでは一進一退でラチが明かない。何処かで切り崩しに来るだろう。

 

「……沖田さん」

「なんです?」

 

 斬り合いの最中、鍔迫り合いから一時、離れて沖田さんがこちらに来たのを見計らって、沖田さんに声を掛ける。それに、人差し指と親指、中指を立ててサインを放つと、沖田さんはニコリと微笑んだ。

 直後、一気に地面を蹴って急接近した。それを受け止めつつ、後ろにいなす岡田以蔵。

 それとほぼ同時に、こちらに向かって来た。

 

「……エウリュアレ、下がってろ」

「え?」

「うははは! 貴様を殺せば、それで終いじゃあああああ‼︎」

 

 十二分に引き付けて引き付けて引き付けて……よし、今でしょ。懐から銃を抜き、発砲し……ようとしたが、銃口を切り捨てられた。

 

「おまん……わしを舐めちょるんか?」

「あー、やっぱ無理?」

「おまんが死ねば、わしゃ沖田にも勝ったことになる」

「そう思うなら後ろを見ろ」

 

 直後、岡田以蔵の背後から声がする。

 

「『無明三段突き』‼︎」

「クッ……おまんら……!」

 

 岡田以蔵の背中に沖田さんの一撃が突き刺さった。ふっ、完璧。

 

「グッ……アアアアッ‼︎」

 

 銃を抜いたのなんて、一回分の居合をキャンセルさせるためよ。サーヴァントに銃で勝てる、なんて思ってないし。

 岡田以蔵を消滅させ、とりあえず俺はその場で腰を下ろす。

 

「ふぅ……疲れた」

「お疲れ様。相変わらずメンタル強いのか弱いのか分からない人ね」

「バーカ、俺はメンタル強えぞ? メンタル強くなきゃ、特異点ごとに毎回毎回毎回毎回ズボンを引き裂かれてパンツが剥き出しになっても平然と戦えないっつーの」

「あんた毎回、パンツで戦ってたのあなた……?」

「わざとじゃねえぞ」

「その方が怖いんだけど……」

 

 まったくその通りだよね。でもわざとじゃないんです。なんかみんな俺のパンツを引き裂きに来るんです。

 とにかく、そんな話をしている時だった。近くの壁が一気にぶっ壊され、そこから飛んで来たのはオルタさん。そして、後ろから悠々と追って来るのは、アキレウスだ。

 

「お、マスターとエウリュアレ、みーっけ」

「チッ……なんだあいつは。こちらの攻撃がほとんど効かないぞ」

 

 マジかー……三人がかりでも、止まらないかこの人……。吹っ飛ばされて来たセイバーオルタさんを悠々と追うアキレウスの後ろから、慌てた様子で追ってくる清姫とアストルフォが見える。

 ……あ、そうか。確かこの人の鎧って……逸話的に神性の攻撃以外は無効なんだ。

 ……あれ? でもオルタさんの剣って神造兵装なんじゃ……あ、そっか。アキレウスほどの実力者じゃ、オルタさんが攻撃を当てるには隙が必要。しかし、他二人だとタゲを取るには実力が足りない。

 アキレウスの能力を知らない三人は、オルタさんに壁役を任せ、他二人が攻撃を繰り返していたのだろう。

 

「……なるほどね。よし来た」

「何か策があるのか?」

「まぁね。清姫、アストルフォ。プランBだ」

「え……ま、マジ?」

「よろしいんですか? ますたぁ」

「ああ。よろしい」

 

 それを聞いた直後、二人は走ってエウリュアレの手を引いて走り出した。俺は勿論、その場に残る。沖田さんとオルタさんの二人を傍に置いて。

 

「ほう? まだ手があんのか。意外だな、そっちのマスターよう」

「手なんて呼べるか。大将クビが前線に出るなんてあって良い話じゃないから。あいつらが使えないからこうなるわけであって」

「ハッ、言えてんな。……けど、分かってんのか? お前が死んだらどっちにせよ終わりだぜ」

「そっちこそ分かってんだろうな。お前、俺を殺さなかったら任務失敗で終わりだぜ?」

 

 言いながら、俺は懐の拳銃を放り捨て、端末も投げ、軽くジャンプしながら両手足を振る。少しでも服装を軽くするためだ。

 よし、これで何とかなる。息を吐きながら、続けて言った。

 

「言っとくが、俺を簡単に殺せるなんて思うなよ。何故なら、逃げ腰なら俺の右に出るものはいない、と言われるほどのビビリだ。お前の攻撃なんて、怖過ぎて思わず逃げちまう程にはな」

「お前、勘違いしてやがるな」

「は?」

 

 呆れた様子で言うアキレウスは、ニタリと好戦的に微笑んだ。

 

「お前が恐怖を認識した頃には、お前の頭と身体は離れてるっつーんだよ」

 

 直後、あり得ない踏み込みの速さで、槍を突き込んでくる。俺の、持ち前の反射神経と動体視力を持ってしても、普通に腕を掠める程度の速さだった。

 

「え……早っ」

「ほう、よく避け……うおっ、と!」

 

 アキレウスの顔面に、沖田さんの刀が向かう。今度はアキレウスが避ける番だった。沖田さんの攻撃に神性があるかどうかなんて、真名を言わない限りアキレウスにはわからない。つまり、顔面に飛んでくる刃物は避けるしかないのだ。

 そして、避けた先にあるのは、オルタさんのエクスカリバーだ。

 

「……!」

 

 その一撃も、槍でガードしつつ後ろに下がるアキレウスさん。

 

「ハッ、なるほどな。つまり、タゲを取る役目を変えたってことか」

「当たり」

「……随分、簡単に正解を言うんだな。見抜かれた戦略ほど意味のねえもんはねえぞ」

「戦略ってのは、その時に応じて臨機応変に対応するものだよ。見抜かれたのなら、俺はまた別の作戦を考えるだけだよ」

「……ハッ、面白えな。あんた」

 

 俯きながらニヤリとほくそ笑むと、アキレウスは槍を横に振るった。ヒュッと風を切る音が耳に響く。たったそれだけの仕草で、ビリビリと緊張感が伝わって来た。ヤバいな、これが殺気って奴か? すごくここにいたくない。手足が震えるし、寒気もすごい。今までに味わった事ない感覚だ。

 

「ッ……!」

 

 それでも、やらないとダメだ。震える太ももに拳を叩き込み、強引に震えをかき消した。

 ……ふぅ、よし。よっしゃ来い……! 

 

「オラ、まずはお前からだ!」

 

 狙われたのは沖田さんだった。足が早い沖田さんだけど、耐久面は低い沖田さんを狙った理由は、神性があるかを判断する為だろう。

 まぁ、遅かれ早かれバレることだ。なら、バレる前提で動いた方が良いだろう。沖田さんとオルタさんにサインを出す。

 直後、沖田さんは足を使って捕まらないように動き、壁を使ってアキレウスの攻撃をさばきながら後ろに下がり始めた。最速の二人が動いたため、俺とオルタさんは遅れて後を追っ……あ、違った。まずは一人ずつ撃破するためだこれ。

 

「沖田さん、あんま動かずに戻って来て!」

『そう言われましても……こ、この男……!』

 

 通信機から、珍しく……いや、珍しくはないけど焦ったような声が聞こえる。かなり手を焼いているようだ。

 幸い、この道は一本道。見失う事はない。その辺に落ちてる壁の破片を一つ持ち上げると、オルタさんに声を掛けた。

 

「オルタさん、トスバッティングって知ってます?」

「ああ、任せろ」

「狙いは踵で」

 

 壁の破片を放った直後、オルタさんは魔力を剣に込める。一時的に黒いオーラが剣身に纏わり付き、一気に破片を打ち抜いた。

 一応、神性が込められてると言える石が、アキレウスの足元に向かう。

 

「チッ……野郎……!」

 

 キィーンッ……と空中を突き進む石片を、アキレウスはジャンプして回避する。その隙を突いて、沖田さんもアキレウスが距離を置きつつ、こっちに戻ろうとする。

 が、それはさせまいとアキレウスは槍を振り下ろした。

 

「オルタさん、千本ノック!」

「フッ、面白い」

 

 直後、俺はその辺に落ちてる石片を拾っては放り、オルタさんはそれを見事に打ち返し、アキレウスに向かっていく。

 それらの攻撃を、やはりアキレウスは回避しながらも沖田さんを逃さないように槍を振るう。やべぇ、あいつバケモンだわ、やっぱ。このままじゃ、こっちの球が尽きる。

 

「沖田さん」

『え? ……え、マジですか?』

「マジだよ」

 

 それを言うと、オルタさんにサインを出した。

 

「……良いんだな? しくったら、沖田は……」

「沖田さんなら大丈夫だよ」

「……そうか」

 

 直後、オルタさんに石片を放り、それを打ち返す。その打球は、沖田さんの方へ向かった。

 それに対し、沖田さんは石片を横から刀の峰で打ち払う。その先にあるのはアキレウスのボディだ。

 

「! 跳弾……!」

 

 胸に当たったが貫通とまではいかない。それでも、今まで何のダメージも無かったのとは訳が違う。

 後ろによろけた隙に、沖田さんはこっちは走って来て、オルタさんと俺は迎えに行く。

 作戦はうまくいった。なのに、不安が拭えない。何故だ? あの大英雄のアキレウスなら、今の現状こそ狙い通りなんじゃないか? という可能性が捨て切れない。だとしたら……。

 

「クサントス、バリオス、ペーダソス……!」

「あ、ヤバい。沖田さん、全速前進!」

「え?」

「オルタさん、宝具! なるべく引き付けて!」

「卑王鉄槌。極光は反転する……!」

 

 一直線に沿って突撃して来るつもりか……! まずい、このままだと沖田さんが必ずどちらか当たる。引きつけさせても間に合わないぞこれ。

 

『撃たせて下さい、マスター』

「は⁉︎」

『何とかします! 私の事は気にせず!』

「いや何とかって……化け物と化物の宝具だぞ⁉︎ 分かってる? さっきの魔力放出した石片を横に撃つのとは訳が……!」

『良いから早く!』

「っ……」

「マスター」

 

 隣から、オルタさんが声をかけてくる。

 

「沖田を信じろ」

「っ……」

「いくぞ‼︎ 命懸けで突っ走れ! 我が命は流星の如く‼︎『疾風怒濤の不死戦車』‼︎」

 

 アキレウスは宝具を呼び出してしまった。一直線の道であるここまで来るのに3秒もかからないだろう。

 

「……撃て。オルタさん」

「光を呑め! 『約束された勝利の剣』!」

 

 直後、アキレウスの宝具とオルタさんの宝具が正面からぶつかった。勢いで言えばアキレウスの方が上だが、純粋な威力はこっちが上。ただ、焼き切る前に向こうがこっちに到達したらアウトだ。

 

「オオオオラアアアアアアッッ‼︎」

 

 ……すごい気迫だな……。アキレウスってやっぱりとんでもないや。

 沖田さんが無事かどうかは、もう「なんとかする」という言葉を信じるしかない。

 心の中でそう願いつつ、俺は声をかけた。

 

「今だ、やれ」

『はいはーい』

 

 直後、アキレウスの遥か後方からドシュッと弓を放つ音が聞こえる。

 

「……あ?」

 

 アキレウスの踵に刺さっているのは、一本の矢だろう。それに気を取られたが最後、一気にオルタさんの魔剣に呑まれて行った。

 迷宮を焼き尽くす勢いで大きな黒い渦が通り過ぎて行く。これなら、いくらあの大英雄でも終わりのはずだ。

 オルタさんの一撃が終わり、とにかく俺は走った。

 

「沖田さん、生きてる⁉︎ 沖田さん!」

 

 が、オルタさんの立ち位置からアキレウスのいるところまで、どこを見ても人の姿ひとつ見えない。おいおい……マジかよ。なんだかんだ、ここまで一緒に戦って来た人なのに……。

 ……あれ、嘘。なんか涙が……いやいや、泣かないって。だって、別にあんな喧しい女が一人居なくなった所で……これはあれだよ。目からニトログリセリンが漏れてるだけで……。

 

「ふぃ〜……危なかったですねぇ。流石に今回ばかりは死ぬかと思いましたよ」

「……は?」

 

 何処かからか、聴き慣れた間抜けな声が聞こえた。え、何今の。幻聴? 

 ふと横を見ると、なんか壁に綺麗に切られた三角形のでかい穴があった。そこから顔を出したのは、沖田さんだった。

 

「あ、マスター! すごい威力でしたね……危うく沖田さんも殺される所でしたよ……」

「……」

 

 見りゃわかる。要するに、壁を切ってそこから別の通路に脱出したのだろう。考えりゃ浮かぶ手なのに何故、俺はそれを考えなかった……。

 

「あれ? あれあれ? マスター、泣いてます?」

「ーっ……!」

「もしかして、沖田さんが死んだと思いました? で、マスターってあれだけ私のことボロクソに言ってたのに、実際に死んだら悲しんじゃうんですか?」

 

 こ、この女……言わせておけば……! 

 

「う、ううううるせーよクソ女! テメェなんざオルタさんの一発で一片のDNAも残さずに溶かされりゃ良かったんだよ! ……ぐすっ」

「いや、しゃくり上げられながら言われても全く説得力ありませんよ?」

「調子乗ってんなよ、実は今まで俺にバレないように吐血してクソ女が! お前が病弱持ちなの知ってんだからな俺⁉︎」

「はぁー⁉︎ な、なんで知ってるんですか⁉︎ そしてなんで今、それを言うんですか⁉︎ 沖田さん、別に病弱なんかじゃ……コフッ!」

「はい吐血したー!」

「こ、これは赤のペンキです!」

「手品か!」

 

 なんて言い争いをしている時だ。倒れているアキレウスが声をかけてきた。

 

「は、ははっ……良いコンビだな、あんたら」

「うおっ、ま、まだ生きてる?」

「もう動けねーよ。俺の踵を射抜いたのは、エウリュアレか?」

「そうだね」

「つまり……最初に逃したのも、途中で『あいつらが使えない』だなんだ抜かしてたのも、ブラフだったわけか……」

 

 俺と沖田さんの横にオルタさんが来る。

 

「マスター、トドメを刺すぞ」

「え? あ、うん……」

「そんな複雑そうな顔をするな。こいつは強い。瀕死でも油断できる相手ではない」

「……」

 

 いや、まぁそうなんだけど……実際に動けない相手のトドメを刺すのを見ると、少し、こう……ねぇ? 

 ひよっていると、アキレウスが俺を意外そうな目で見ていた。

 

「なんだ……肝が据わってるし頭の回転も早ぇから戦い慣れてんのかと思ったら……素人かよ、お前」

「だ、誰が素人だい! こう見えて将棋は……」

「なら、一思いに殺せ。人理を修復する気があんなら、こういうのにも慣れておけよ」

 

 ……いや、うん。まぁね。仕方ないので、オルタさんがアキレウスにトドメを刺すところを眺めた。

 その直後だ。ドクターから耳元に通信が入る。

 

『田中くんかい? 立花ちゃんが聖杯を回収したよ。これより、カルデアに帰還させる』

「あ、うん。了解」

 

 ……ふぅ、なんかドッと疲れたな……。その場で腰を下ろすと、エウリュアレ、アストルフォ、清姫が戻って来る。

 

「あら、帰っちゃうのね」

「お前もだろ」

 

 声を最初にかけて来たのは、エウリュアレだ。

 

「残念。あなたとは、もっと一緒にいたかったけど」

「機会があったら召喚してやるよ」

「ダメよ」

「え?」

「あなたには、隣に立派な子がいるでしょ?」

 

 言われて、俺は隣の沖田さんを見……るのはシャクだったので、視線を外した。

 

「あ、ああ、オルタさんね。いやー、確かに立派だよね。胸以外」

「殺す」

「あ、いや嘘です冗談です!」

「待って下さい、オルタさん。……私が殺します」

「待つのはお前だろコラ!」

 

 なんてやってる間に、エウリュアレが俺の方へ歩み寄って来る。頬に手を当て、顔を近くにまで寄せて来る。

 

「え……な、何?」

「あなたのような人間なら、きっと人理は戻される。だから、頑張りなさいよ」

「お、おう……?」

「じゃ、私はアステリオスともお別れの挨拶して来るわ」

 

 それだけ言うと、エウリュアレはその場から早足に立ち去っていった。

 

「そういや、ドクター。クーさんとアステリオスは無事なの?」

『ああ、二人ともずっとヘラクレスを抑えてくれてた。今も無事だ』

「そっか……良かった」

 

 あの二人がヘラクレスを抑えてくれてたから勝てたからね。やっぱギリシャの人はとんでもない奴が多いな……。

 

「オルタさん、清姫、アストルフォ、沖田さん。お疲れ」

「ああ」

「ますたぁも」

「うん」

「で、泣いたんですよね?」

「殺す!」

「やってみなさいよ!」

 

 殴り合いをしながら、カルデアに戻された。

 

 ×××

 

 帰還し、俺はドクターと軽いミーティングを終え、部屋に戻った。

 クーさんもエミヤさんもみんな元気そうだ。良かった。……けど、その……なんだろう。俺、沖田さんに何を求めてたんだろ。なんか、ほんとに泣きそうになったな……いや、泣いてないから。

 クソ、なんつーか……俺ってほんとなんなんだよ。自分で自分がわからないよう……。

 

「あーダメだ! 召喚しよう、召喚!」

 

 こういう時は新しい仲間を増やして、可愛い女の子を増やして、仲良くなれば良いの! どうせ、今回でこれだけ苦戦したって事は、次に向けて新たな戦力が必要になるんだ。

 そう決めて部屋を飛び出して召喚しに行った。

 

「あ、田中さん」

「召喚ですか?」

「まぁね」

 

 さて、誰が出るかなー。可愛い子だと良いなぁ。そんなわけで、まずは藤丸さんから。

 召喚陣が回転し、光の中からサーヴァントが姿を表す。さて、やめろよ。藤丸さん。当たりとか引くのは……。

 

「こんにちは、愛らしい魔術師さん。サーヴァント、セイバー……あら? あれ? 私、セイバーではなくて……まああの…… 源頼光と申します。大将として、いまだ至らない身ではありますが、どうかよろしくお願いしますね?」

「すごいおっぱい!」

「斬ります」

「わー! ま、待って待って!」

 

 思わず漏れた感想に、慌てて藤丸さんが止めてくれた。

 

「こ、この人バカですけべでどうしようもない人ですけど、頭だけは良いから……」

「すけべだけど賢い? 性犯罪者のお手本みたいな方ですね。斬ります」

「わー! だ、だから私達に必要な方ですので待って話を聞いてください!」

 

 大慌てで止めながら、とりあえずマシュと藤丸さんは頼光さんを連れて退却した。

 ……よし、流れはきてるな。このまま引けば、俺にもきっと……! 

 

「新選組三番隊隊長、斎藤一だ。親愛を込めて一ちゃんとでも呼んでくれ。いや、やっぱだめだ。で、あんたがマスターちゃんなわけね。へぇ、いい面構えじゃないの。あ、そうそう、僕ってば堅苦しいの苦手だから、そんな感じでよろしく」

「はぁ……違うんだよなぁ……」

「え、な、何その反応……喧嘩売ってる?」

「ああ、いやごめん。よろしく」

「いや、全然よろしくお願いされてる気がしないんだけど……」

 

 あー……今の対応は良くなかったな。斎藤一って言えば、新撰組だし沖田さん経由で来たのかもしれ……ん、待てよ? てことは、沖田さんの弱点とか色々知っているんじゃ……。

 

「よろしくお願いします! 斎藤先生!」

「お前、今の一瞬でどんな心変わりしたんだ? あと先生はやめろ」

「じゃあ一ちゃん先生!」

「もっとやめろ!」

 

 よっしゃー、ある意味最高の相談役だぜ。これはもうこの人と次の特異点でお世話になるしかないな、うん。

 そんな時だった。

 

「あ、泣き虫マスターと……斎藤さんじゃないですか!」

「ああ、沖田ちゃん。ここにいたんだ」

「お久しぶりですー! また会えて良かったです!」

「あはは、そうだね」

 

 ……は? 沖田「ちゃん」? 何? 沖田さん、その嬉しそうな顔。

 …………はぁ? 

 

 


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