カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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これは立場を利用したセクハラではなく、まともな作戦です。

 数日が経過した。俺もある程度、剣は使えるようになった。まぁ流石、新撰組一番隊隊長とローマの皇帝陛下の教えなだけある。ネロの方はたまにしか顔出さないけど。

 これならサーヴァントに勝てることはなくとも、1分くらい時間稼ぎはできるだろう。相手にもよるが。あとエミヤさんってほんと誰なんですかね。何者だか知らないけどメチャクチャ強いんですけど。

 そういえば、もう何日も戦場に顔出してないけど、そっちは大丈夫なのかな。大丈夫だと信じたいが………。

 そんな事を考えながらエミヤさんと打ち合ってると、修練場の扉が開かれた。慌てた様子で兵士が一人入ってきた。

 

「田中正臣殿はいらっしゃいますか⁉︎」

「おお、いるよー。何、どったの?もうネロ達帰ってきた?」

「皇帝陛下より伝達であります!ブーディカ殿が敵兵に鹵獲、ただちに救出せよ、との事です!」

「はぁ?あいつが?」

 

 言われて、俺とエミヤさんと沖田さんは顔を見合わせた。

 んー、まぁ確かに戦力ダウンは困るが………。

 

「一応、どうやって捕らえられたか、とか教えてくれる?なるべく詳しく」

「了解です!」

 

 との事で、詳しく聞いた。どうやら、ネロと藤丸さんが先頭、殿にブーディカとスパルタクス、呂布の部隊で進行中、ネロ達の元にサーヴァントが出現、相手をしてる間に後ろのバーサーカー二人を誘導され、捕まったという事だ。

 捕まったのはブーディカのみで、バーサーカー二人は無事、という事らしい。

 

「………罠、だな」

「そうだな、間違いない」

「? どういう事ですか?」

「えっ、沖田さん分かんないの?プークスクス、マジかぁ。この程度のことも分かんないのかぁ」

「うぐっ……!わ、分かりますよ!ただ聞いといた方が良いかなーと思っただけで………!」

「じゃあ説明してみろよ」

「………あ、アレです。その……なに?すごい、こう……ブラックホールで吸い込んだ、的な?」

「…………ぷふっ」

「あー!今、笑いましたね⁉︎そうですよ、どうせ沖田さんなんて剣しか能のない大馬鹿者ですよ!」

「よく分かってんじゃん」

「〜〜〜ッ!ま、マスター!」

「おい、マスター。あまり女性をからかうのはよせ」

「そうですよーだ!バーカバーカマスターのバーカ!意地悪!」

「えっ、女性?この人が?性別以前に人間じゃなくてゴリラでしょ?」

「っ!あったまに来ました!このクソ童貞!」

「処女に言われたくねぇんだよ若白髪!」

「うるさいすけべ!」

「ムッツリ!」

「変態!」

「低脳!」

「女の敵!」

「おっぱい剣……!」

 

 直後、俺と沖田さんの頭に拳が降ってきて、二人して「あがっ」「いだっ」と断末魔を漏らした。

 

「いい加減にしろバカコンビ。マスター、説明してやれ」

 

 怒られたので、頭を涙目でさすりながら説明してやることにした。

 

「どこでもドアでかっぱらったんだよ」

「そんな嘘に引っかかると思ってるんですか⁉︎バカにするのも大概にして下さい!」

「バカにするっつーかバカだろうがバカ!」

「さ、三回⁉︎今の短いフレーズで三回も」

「もう一撃行くか?」

「「………すみませんでした」」

 

 謝った。畜生、俺と沖田さんの関係がおかしいとか言うけど、エミヤさんだって十分サーヴァントらしくないじゃん………!

 まぁ、今は悔やんでも仕方ないので、敵の考えを教えることにした。

 

「そんな難しい事じゃねーよ。まず、注意を逸らすためだけにサーヴァントを一人捨て駒にしてるし、バーサーカー二人は相手にすらしていない。この時点で狙いはブーディカだけって事になる。そもそも、殺さずに鹵獲してる時点で、こちらを誘って来てるのが丸わかりだ」

「うぐっ………!これだから頭の良いバカは………!」

 

 しかし、懸念もある。この戦法はこちらのサーヴァントが何処に配置されてるのか分からなければ出来ない戦略だ。それに、こちらのサーヴァントが捕らわれた代わりに、こちらもサーヴァントを一人消している。メリットもデメリットも五分だ。

 それでも敵がこちらのサーヴァントを捕らえに来たという事は、こちら側の大将が誘いに乗る確信があるという事になる。それはつまり、ネロの性格を把握していることに他ならない。

 なら、目的はネロを誘い出す事、か………。もしそうなら、こちらの隊列を完璧に把握してる程の相手となる。相当、準備して待ち構えてるに違いない。

 

「あの、田中正臣殿」

「? 何?」

 

 兵士さんが声をかけてきた。

 

「皇帝陛下ご自身もブーディカ殿奪還に参加するとの事でして、一度合流を考えているそうです」

「は?あいつ来るの?」

「はい」

 

 マジかオイ。誘い込まれてる本人が来るのか。いや、まぁブーディカの命がかかってるわけだし、それでも良いけど………。

 

「ま、いーや。とりあえず合流するとしようか。行こう、沖田さん、エミヤさん」

「はい」

「ああ」

 

 そういうわけで、待ち合わせ場所に向かった。

 

 ×××

 

 しばらく歩いてると、何人もの兵士を引き連れる一団が見えてきた。そして、その先頭に立つのは我が愛しき妹だった。それが見えるなり、俺は走り始めた。

 

「ネーロー!」

「お兄ちゃーん!」

「「ひしっ!」」

 

 二人して抱き合うと、沖田さんから冷たい視線で言われた。

 

「………マスター、一々再会するたびにそれはやめてください」

「なんでだよー。良いだろ別にー」

「そうだぞ沖田。余とマスターはとても久々にあったのだ」

「久々って、昨日の夜ぶりでしょうが!」

 

 良いだろー別にー。ていうか沖田さんには関係ないじゃん。

 と、思ってると水色の髪の女の子が目を光らせて飛んでくるのが見えた。

 

「マスター!」

 

 その女の子は、俺の肩を掴んで思いっきり押し倒してきた。

 

「わたくしもいますのよ、マスター!」

「押し倒すな!下、地面だから!」

「さぁ、いつも通り再会のキスを………!」

「いつもしてねぇだろ!いつもの意味知ってる?いつもを辞書で引いてこいよ!」

 

 な、なんでこいつこんなに………!

 すると、ネロが清姫の肩を掴んだ。

 

「お、おい!離れんか!」

「あら?何故離れなければならないんです?」

「正臣は余だけのお兄ちゃんだ!」

「あら?わたくしは恋人ですが?」

「恋人ではないだろ!」

 

 ていうかなんだよ!またハーレムアニメの主人公化してるよ俺⁉︎気持ち良いけど今はそれどころじゃない。

 

「二人とも落ち着け!今はそんな場合じゃないだろ!」

「あ、ああ。そうだったな……」

 

 こういう時、流石に英霊なだけあって二人とも理解は早い。ようやく二人とも退いたので俺も立ち上がると、キュッと手を繋がれた。というか、少し痛いくらいに握られている。横を見ると、沖田さんが拗ねたような顔でそっぽを向いていた。

 

「何?」

「………別に」

 

 ………えっ、何?何拗ねてんの?それとも喧嘩売ってんの?少しイラっとした直後、「マスター」とクー・フーリンさんに呼ばれたため、話を進めることにした。

 

「今から、ブーディカの救出戦の作戦を説明する。全員、この場で頭に入れろ」

「えっ、もう決まってるのか?」

 

 エミヤさんが横から口を挟んだ。

 

「うん、ここに来るまでに考えておいた」

 

 まぁ、向こうにとって重要なのはネロだ。本来なら、ネロをその場に連れて行くのは反対だが、多分ネロは言う事を聞かない。まぁ、ネロとブーディカ仲好さそうだったし仕方ないとは思う。

 

「敵の大将は頭がキレる。だから、隙のない布陣でネロを瞬殺できるように配置してあるだろう。何せ、誘い出してきてるんだからな。つまり、地の利は向こうにある。だからこそ、こちらも隙を作らないようにする。荊軻、佐々木小次郎さんの両名は砦に潜入し、ブーディカの救出をしてもらう」

 

 その確認に、二人は頷いた。

 

「エミヤさん、それと……沖田さんは弓使えんの?」

「はい?え、えぇ、まぁ一応使った事はありますが」

「なら、エミヤさんと沖田さんは後方支援。バーサーカー二人は好きに暴れさせて良い。藤丸さん、ジャンヌオルタ、マシュは側面から砦の様子を見て来て。クー・フーリンさんと清姫は俺についてくる」

 

 作戦を決めると、全員は指示に従うように頷いた。

 すると、ネロが「お、おい」と俺に声をかけてきた。

 

「よ、余はどうすれば良いのだ?」

「ああ、ネロは俺についてきてもらう。ただし、何もしなくて良い」

「………えっ?」

 

 唖然とするネロを無視して、エミヤさんにお願いした。

 

「エミヤさん、少し作ってもらいたいものがあるんだけど」

「? なんだ?」

「俺とネロの顔」

「………はっ?」

 

 ×××

 

 そんなわけで、行動開始。俺の指示通りに全員が配置について砦に向かった。

 そんな中、俺の顔をしたネロは恥ずかしそうにモジモジしながら呟いた。

 

「うぅ……まさか……まさか、皇帝である余があんな所で着替えさせられようとは………」

 

 ネロは現在、エミヤさんの作った俺のフルフェイスマスクを被って、俺の着ていた服を着て歩いていた。その前で、ネロのお面を被り、ネロの赤いドレスを着た俺は服の匂いを嗅ぎながら歩いた。

 

「スーハァースーハァー……ああ、良い匂いが………」

「やめろ!勝手に匂いを嗅ぐな!」

「え?じゃあ許可もらったら良いの?」

「ダメだ!お兄ちゃんの変態!」

「おぅふ……も、もう三回言って!」

「ばっ、バカにしておるのか⁉︎変態、変態、ヘンターイ!」

「そう、もっと、もっとだ!もっと俺を罵れ!もっとゴミを見る目で勢い良く!」

「いい加減にしてください、マスター」

 

 後ろから沖田さんに首を締め上げられ、正気に戻った。危ない危ない、ついうっかりイク所だった。

 

「まったく……!こういう変態的な所が無ければ良いお兄ちゃんだと思えるのに………!大体、何故服を変える必要がある」

「それは説明したじゃん。相手の狙いは間違いなくネロだ。なら、影武者を用意するのは当然だ」

「そ、それでもその影がお兄ちゃんである必要はどこにある⁉︎」

「決まってるだろ!俺がネロの服を着たかったからだ!」

「なら余の服を作ればよかったであろう!」

「いやいや、これ作るのだってエミヤさんは魔力を消費するわけだし、極力節約するべきでしょう。ねぇ?」

「う、うむ………。すまんな、皇帝陛下。本当に」

「いや、主の所為ではあるまい。………余としても、お兄ちゃんの服を着られるのは悪い気はしない」

「クンカクンカスーハースーハー」

「だ、か、ら!嗅ぐな!」

 

 ああ、脳がとろけそうな匂いだ………。

 まぁ、真面目な話は俺しか候補がいなかっただけなんだけどね。まず、相手にサーヴァントがいたらバレるから、その時点でサーヴァントはバツ、人間の中から選ぶとしたら、回避に定評のある男、俺しかいない。

 つまり、キチンとしたまともな理由があるのだ。だから、そんなゴミを見る目で見ないでくれるかな、藤丸さんパーティの皆さん。

 

「変態………」

「セクハラ………」

「ストーカー………」

 

 特に佐々木小次郎さんを除いた3人から酷い迫害を受けていた。ちょっとジャンヌオルタ?ストーカーではないからね?

 すると、エミヤさんが手を軽く叩いて全員に言った。

 

「さて、そろそろ着くぞ。全員切り替えろ」

 

 その台詞で、その場の全員がゴクリと唾を飲み込んだ。さて、ブーディカを取り返しに行きますか。

 

 


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