水銀ロールで噂のVRMMORPGをプレイ 《SAO編》   作:獣の爪牙

7 / 7
 後編としたかったのですが、更新を待っていて下さった読者様が約一年越しにもまだいてくれた事が嬉しく、早めの更新をしたかった為さらに中編と後編に分けての更新となりました。
 それとランキング入りありがとうございます。こんな内容の薄い自己満小説に読者がいて下さる事に感激いたしました。
 ありがとうございます。


第6話茅場死す!中編

 ボス戦が始まったと同時に、阿鼻叫喚の地獄絵図が……、とはならなかった。goldによってパワーレベリングされ強化された黒円卓のギルメンが天井に張り付いているボスにいち早く気が付き、投擲やウォークライでタゲを取った。そこにエーレンヴルグ兄妹とシュライバー、続いてキリト&アスナの遊撃部隊。

 ボスは蠍座と蟷螂が合体した髑髏の巨大ボス。だが今更その程度の異様に尻込みするほど攻略組は大人しくはなかった。

 

 「どうしたどうした!?そんなもんかよテメェー!遅ぇーなぁーおい!そんなんじゃあかすりもしねーよ!オラァ!!つか邪魔すんじゃねー糞ガキ!」

 

 「ヒャッハー!狩りの時間だ!ホラホラ踊れよ不細工な骸骨くん!つかオニーサンどいて!そいつ殺せない!」

 

 白髪の二人が完全にタガが外れたように猛攻撃をくりだす。

 振り下ろされる脚や凪払われる巨大な鎌をギリギリで避けると同時に切り刻み、空中に飛んではお互いを足場にしたりして大鎌をよける。たまにぶつかりそうになってはお互いを罵倒したりなど、息が合っているようで合ってない。エーレンヴルグ妹が上手くフォローに入る事で致命的なミスを減らしていく。

 更にはユニークスキル「二刀流」を扱いかなりのダメージを与えて行くキリトと、白髪二人に追従するほどの速度でレイピアを振り回すアスナ。

 そして始まって一分もたっていない内にボスのHPバーが一本削りとられた。

 

 「少し下がれよ馬鹿共!タゲを取り過ぎるな!タンクの邪魔だ!」

 

 余りにも一度にダメージを稼ぎ過ぎた遊撃部隊を呼び戻したのは、タンク部隊の指揮をしている燃えるような赤髪のプレイヤー「eren」。横には後輩であるレイピアを構えた金髪のプレイヤー「beat」と長身黒髪の大剣使い「kain」。

 

 「先輩、次は私とカイ君が遊撃部隊と入れ替わりで前に出ます。」

 

 「わかっている。だがお前とカイだけでは不安がある。タンク部隊からマキナは外せん。結晶系アイテムも使えんので暇になってるであろう後衛のリザとアンナも一緒に連れていけ!」

 

 「了解です!じゃあちょっと呼んできます!」

 

 先ほど遊撃部隊として動いていた白髪二人やアスナとも比べててもそ遜色ないほどのスピードで後衛組の元へと向かうベアト。途中ボスの脚に狙われても一切構うことなくすり抜けていった。

 

 「凄く 一撃必殺技です///!」

 

 タンク部隊にいる全身甲冑のプレイヤー「Makina」が、切り裂かれそうになったプレイヤーをボスの鎌から助ける。素早い装備切り替えで盾から両手斧へ。そこから流れるようにボスの鎌をソードスキルを使う事すらなくへし折った。

 続けざまに振るわれた反対側の大鎌。ボスの部位を破壊したマキナへと一気にヘイトが溜まりタゲが移った。

 そこへタンク部隊の脇から白髪二人とキリト&アスナ、血盟騎士団のギルドマスターであるヒースクリフが滑りこんでくる。

 マキナへと大鎌が振り切られるより前に、白髪二人のソードスキルによってノックバックによる反動でボスの攻撃が中断された。

続けてキリトとアスナが隙を付いて連続でソードスキルを叩き込む。

 ノックバックから復帰したボスから攻撃が来るも、ユニークスキル「神聖剣」をもつヒースクリフが盾と剣で攻撃を払う。その隙にソードスキルのクールタイムの確保の為白髪二人とキリトとアスナが下がった。

 

 「さーて行くわよリザ、ベア、カイ!カイ君は大鎌の対処よろしく!リザとベアと私で削るわよ!」

 

 「「「了解!」」」

 

 入れ替わりにボスの前面に出てきたのはギルド「黒円卓」のメンバーの4人。ヒースクリフと入れ替わるようにしてカイが大鎌の対処に入り、大鎌をカイが抑えている内にリザ、ベアト、アンナの3人がソードスキルを叩き込む。ボスが怯んだ隙にカイも大剣のソードスキルを叩き込みタンク部隊と合流しつつ下がった。

 

 既に作業の域になっているボス戦だが、ギルド「黒円卓」以外の参加ギルドの殆どはギリギリであった。「風林火山」「血盟騎士団」では既に危うく全損させられそあうになった者もいた。そんな中、紐のような物に引っ張られて助けられたら者が何人もいた。

 

 そう!ギルド「黒円卓」の情報、物流、財務となんでもこなすプレイヤー「rot」さんだ!ボスには一切攻撃を加える事なく、全損間近のプレイヤーを耐久値の高いモンスタードロップのアイテムである縄のようなモノを使いかこなして、救っていく。そして彼等に回復ポーションを渡してはまた次の救助へ!

 彼こそがこの戦場の戦線を支えているのだ!

 後衛組として一緒にいたアンナとリザは遊撃部隊に駆り出されたので、独りで救助と回復を担っていた。

 

 「やはりあの人がいると後衛組に人を回さなくて済むな。このままリザとアンナは前衛だ。」

 

 「えー!ちょっとそろそろボスのモーションパターン変わる頃でしょ!他のギルドやばいんじゃない?」

 

 「いや彼ほまだ本気ではない。お前は知らないだろうが「rot」さんが本気を出せば一度に5人はプレイヤーを救助できる。」

 

 「あ~そう。なら問題ないかぁ。」

 

 「(問題大有りですよ!この六条があの怨敵茅場を目の前にして救助でイッパイイッパイ!必ずら茅場に天誅をおぉぉぉ)ぉぉあああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 全損者0名でボス戦を制した攻略組は、全員が喜びあっていた。

お互いの無事を確認して安堵し泣いている者もいるが、ゲーム故の誇張された表現によるものだろう。

そんな中、攻略組のトッププレイヤーであるキリトは、ギルド「血盟騎士団」のギルドマスターであるヒースクリフに切りかかった。

 周りは騒然とした。キリトがヒースクリフに切りかかった事による驚愕。同時にヒースクリフがシステムで護られていた事により動揺

不安の波が攻略組に波及していく中、ヒースクリフから告げられる真実はこの場にいた一部のギルドメンバー以外全員を打ちのめした。

 ヒースクリフこそがこのデスゲームを仕組んだ張本人の茅場本人であると、ヒースクリフの口から語られたのだ。

 動揺している攻略組をヒースクリフがシステムコードを用いて状態異常である麻痺にして動きを封じる中、最後の戦いが始まろうとしていた。

 始まるのはキリトと、ヒースクリフによる完全決着デュエルによる一騎打ち。

 ヒースクリフから持ちかけられた提案は、この場でキリトがヒースクリフに全損を賭けたデュエルに勝てば、このデスゲームと化したSAOをゲームクリアとし、捕らわれたプレイヤー達を解放し、ヒースクリフが勝てば予定通りに第100層まで続けるか、全てプレイヤー達が死ぬまでゲームが続けられるというもの。

 キリトはその提案を受け入れ、ヒースクリフからのデュエルを受け入れようとしていた。

 

 その時だ。ボス部屋の扉が外から開かれ、一人のプレイヤーが入ってきた。

 

 そのプレイヤーは顔以外の全身が所々がポリゴンの崩れた異様な装備であり、手に持つ黄金の槍は込められたデータ量故に、コレまで見つかって来たモンスタードロップ品やプレイヤーメイドの武器とは比べものにならない程の威圧感を放っている。

 異様な装備に身を包むプレイヤーは、金の長髪を靡かせながらヒースクリフへと視線向けた。

 黄金の眼光に射竦められたヒースクリフは悟った。「勝てない」、と。

このプレイヤーにはシステムによるアシストやユニークスキルである「神聖剣」を用いた上、本来のSAOのラスボス「ヒースクリフ」としてのステイタスで挑んでも、なお勝てないを悟らされた。

 

 麻痺によって動きを封じられたら攻略組のプレイヤー達も、異様な装備のプレイヤーを見つめていた。

 そして気がついた者がいた。攻略組参加ギルドの会議にて、ギルド「聖槍十三騎士団黒円卓」のギルドマスターを見掛けた事がある者達だ。

 一度見た者は忘れない。獅子の鬣のよう靡く金の長髪と、災厄の象徴ともされる獣の如き黄金の瞳は、見た者全ての脳裏にこびりついて離れない。

 ある者は恐怖し、ある者は歓喜し、皆が様々な感情を抱いているなか、そのプレイヤーがヒースクリフへと声を放った。

 

 

 「そのデュエル、この私が引き受けよう。

 なに、退屈はさせんよ。

 

 

     存分に殺し(愛し)合おうではないか!」

 

 放たれる威圧に、気の弱い者から気絶していった。今まで攻略組で最前線を駆け抜けてきた者達がだ。

 今まで出くわして来たどんなボスモンスターからも感じた事もない、本物の「殺意」というものを感じたのだ。

 レッドギルド「ラフィンコフィン」の掃討に参加した経験のある者達ですら、余りの殺意に恐怖を抱いた。

 

 しかし、そんな中で一番恐怖による感情に支配されたのは他でもない。その殺意を真っ向から浴びせかけられたヒースクリフ本人であった。

 そして同時に「彼」がこの場にいる事にもっとも混乱していた。

 

 「(馬鹿な!?なぜ彼がここにいるのだ!カーディナルを通して監視をしていたハズ!)」

 

 「ふむ、その表情を見るに私がこの場にいる事が不可解で仕方がないご様子だ。まあタネ明かしをするとな、カーディナルには少し本来の仕事に戻って頂いたよ。

 なに簡単な事だ、カーディナルでも処理仕切れない程の負荷をゲームに与えだけだ。あと数分、いや数十分か。まあその内カーディナルによる私の監視も戻るさ。まあ、その頃には卿は全損しているであろうがな。」

 

 カーディナルを通さした監視にて、ヒースクリフは彼を警戒していた。このSAOという世界を根本から破壊してしまう可能性のある彼を。

 バグを流用を始めとした不正行為を数々は、カーディナルによってすら未然に防げなかったことによる管理者側の落ち度だの目を瞑ってきた。だが、それにも限度がある。彼のせいでサーバーがダウンしそうになったことは数知れず。その度にヒースクリフはロールプレイを中断して原因究明に勤しんだ。その度に彼が原因で起きたシステムバグを数日かけて復旧してきたのだ。警戒しないほうがおかしい。

 

 

 そんな茅場の心中など知らぬ彼は思いを馳せていた。

 

 「(やっとここまできたか。毎度原因不明のサバ落ちで回帰を繰り返してきた私だが、やっとだ。ここまで果てしない道のりであった。)」

 

 そう、彼はギルド「聖槍十三騎士団黒円卓」のギルドマスターにして転生者であり、「やり直し」という「特典」を貰い受けたせいでこのデスゲームの世界を回帰し続けたプレイヤー「gold」。

 

 なお回帰の原因の大部分は「原因不明のサバ落ち」によるデスゲーム参加者全員の死亡である。

言わずもがな「gold」によるバグの利用や、「gold」自身が起こしたシステム的な負荷が原因で起こったサバ落ちだ。

 この事を「gold」はこの先永遠に知る由もなかった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。