Fate/Grand Order【The arms dealer】 作:放仮ごdz
今回はディーラーがひたすら不運な回。楽しんでいただければ幸いです。
ディーラーがいなくなったカルデア一行とバーサーク・サーヴァント二名の対決は一方的なものとなっていた。
セイバーオルタの振るうエクスカリバーを杖で弾き返し、マシュの構えた盾を蹴りつけて吹き飛ばすと、杖から鎖に繋がれた巨大な棺の様なモノ・・・アイアンメイデン(拷問器具)を振り回し、セイバーオルタに強烈な一撃を浴びせ、そのままマシュにぶつけて転倒させるカーミラ。
クー・フーリンの槍を易々と受け流し、ジャンヌの放った矢を紙一重で躱し、地面に突き刺した槍から地面に生えた血の槍を多数伸ばして二人を追い詰めるヴラド三世。
「当たらなければどうという事も無いわ」
「この程度、見切る事など造作もない」
時折セイバーオルタとマシュの放つ弾丸とジャンヌの放つ矢は完全に見切られてしまっており、光弾と血の槍でお返しされる始末だ。
狂化された事による筋力と敏捷、魔力を使いこなす二体に、追い詰められるカルデアのサーヴァント達。連携している訳でもないのに強過ぎる相手・・・元より、バーサーカーとは理性を失う「狂化」と引き換えに上昇したステータスを持つクラス。その特性を別のクラスでも扱えるようにしたのだ、ヘラクレスには劣るものの圧倒的な強さに、立香とオルガマリーは怯んでしまう。
「こんなものかしら。そろそろ乙女の血を戴くわ・・・せいぜい絶望を謳って頂戴」
「そうだな。幾千幾万の血を流し、そして余に捧げよ。その血、その命を」
溢れる魔力。構えられる武器に、宝具発動を予感しマシュに宝具を指示する立香。そして。
「血に塗れた我が人生をここに捧げようぞ。
「宝具、展開します・・・!
ヴラド三世の胸から放出した大量の杭の波が襲い掛かり、それを盾と魔法陣で受け止め、弾き飛ばすマシュ。しかしその背後から、鎖に繋がれた乙女を模した鉄の箱が開いて内部の針の山を露出させながら襲い掛かっていて。
「全ては幻想の内……けれど少女はこの箱に……
「マシュ!・・・スキル発動!緊急回避!」
それは、立香が咄嗟に発動させたカルデア礼装のマスタースキルにより空振りに終わった。
「ちっ・・・正規のマスターがいるサーヴァントは面倒この上ないわね」
「つ、強い・・・!」
「やっぱりカルデアの召喚システムじゃ騎士王の霊基でもかなり弱体化するのね・・・」
「皆さん!私が時間を稼ぎます、逃げてください!」
敵の強さに戦慄し策を考える立香と、相手との戦力差に半ば絶望しているオルガマリーを隣に見て、ジャンヌは決意の宿った目で旗を握り、コンパウンドボウと矢束を立香に渡してから腰に下げた剣の柄を握り突進する。立香は彼女が宝具を使い、己を犠牲にして自分達を逃がそうとしている事に気付き手を伸ばして止めようとするも届かない。万事休すか、と懐から取り出した閃光手榴弾を投げて撤退しようとしたその時・・・!
「―――優雅ではありません。この街の有様も、その戦い方も、思想も主義もよろしくないわ。そしてこの助太刀の仕方も。でも嬉しいわ、これが正義の味方として名乗りをあげる、と言うものなのね!」
「・・・ガラスの、薔薇?」
「危ないマスター!」
突如、舞い降りてきた透明の花びらに気を取られたジャンヌ・オルタを襲う凶弾を、目の前に出現して斬り飛ばす少女の様に剣士のサーヴァント、バーサーク・セイバー・・・シュヴァリエ・デオンの参戦と共に、それ・・・ガラスの馬に引かれたガラスの馬車はヴラド三世とカーミラを轢き飛ばしながら止まり、立香達の前で扉を開いて中へと誘う声の主。それを見て、驚愕の表情を浮かべたのはバーサーク・セイバーだった。
「貴女、は・・・!」
「まあ。私の
「あ、はい!」
ディーラーの名を聞いた途端、疑いもせず満面の笑みを浮かべた立香を先頭にカルデア一行はガラスの馬車に乗り込み、その場を立ち去ろうとする。それを追おうとするヴラド三世とカーミラであったが・・・
「黒いジャンヌ・ダルク。貴女は世界の敵でしょう?では、何はともあれ・・・まずは貴女達が殺めた人々への鎮魂が必要不可欠。お待たせしました、アマデウス。落ちない様にしながら機械みたいにウィーンとやっちゃって!」
「任せたまえ。宝具、
「それではごきげんよう皆様。時間があれば、もっとお話ししたかったわ!オ・ルヴォワール!」
馬車の屋根の上に現れた、アマデウスと呼ばれた金髪の男性が放った宝具による壮麗で邪悪な音による重圧が二人を推し止め、その間にガラスの馬車はラ・シャリテから逃げて行った。
「ちっ。バーサーク・ライダー!追いなさい、貴女の"馬”なら追い付けるでしょう。戦う必要はありません、居場所を報告してくれれば一気に叩き潰しますから。もし戦闘になっても貴女の宝具なら確実に殲滅できましょう」
「・・・了解。追い付いてみせるわ」
現れるや否やそう言って去って行くバーサーク・ライダーを見送り、ジャンヌ・オルタはバーサーク・セイバーに問いかける。
「バーサーク・セイバー。知っているなら答えなさい、彼女は何者?」
「・・・狂化の熱に浮かされていても彼女の美しさは忘れない。ヴェルサイユの華と謳われた少女・・・彼女は、マリー・アントワネット。彼女と共にいたろくでなしはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトかと」
「・・・そう。フランスでの知名度は圧倒的、もしかしたら私の知名度さえ超えるだろう難敵ですね。念には念を入れます、私はオルレアンに帰還して新たなサーヴァントの召喚に掛かります。貴方達は好きに暴れなさい。彼らと運良く遭遇したのなら蹴散らしてもいい。まさか、宮殿で愛でられていた妃如きに遅れを取る貴方達ではありませんよね?」
その言葉に、それぞれでいがみ合いながらも頷くバーサーク・サーヴァント達。それを見てジャンヌ・オルタは満足気に嗤い、ワイバーンに飛び乗り彼らを見下ろしながら言葉を続ける。
「後は任せました。好きに行動しろ、とは言いましたがあまり羽目を外さない様に。反英霊にも礼節はあります。ただの殺人鬼に落ちないよう、気を付けなさい」
そして飛び去って行くジャンヌ・オルタを見送り、彼等もまたラ・シャリテから去って行く。その様子を、一人の男が見ていた事に気付かないまま。
「・・・霊基が弱いのもいい物だな。至近距離でも気付かれないとは。元々敵地のど真ん中で構えるのは得意だがね。ヒッヒッヒッヒェ。さて、ストレンジャーに情報も送った事だし、俺も合流するとしますかね」
「特異な英霊なのね、貴方。うっかり騙されてしまう所だったわ」
「Arr・・・アイアンメイデンは勘弁してくれストレンジャー」
しかし、気配遮断を持つクラス故か去り際に気付いたバーサーク・アサシンに見つかり、先程マシュを捉え損ねた宝具の餌食となって命を散らすディーラーであった。
ガラスの馬車が逃げたジュラの森にて。
「何か言う事は?」
「・・・・・・・・・そこのお二方、いい武器があるんだ。ヒッヒッヒッヒェ・・・」
「そこで反省してなさい!」
「今回逃げれたのは俺の功績だろう、勘弁してくれストレンジャー・・・」
地面の上に正座をし、罰としてマシュの盾を背負わされたディーラーを尻目に、助けてくれたライダーのサーヴァント、マリーとキャスターのサーヴァント、アマデウスに立香達はお礼をし、聖杯戦争における異常事態によるバグの為、自分達の他にも野良サーヴァントが召喚されている可能性を聞いて、一先ず戦力を増やす方針にしたカルデア一行。今の戦力でも本来ならば十分だろうが、カルデア召喚の影響で半ば弱体化しているクー・フーリンとセイバーオルタだけでは足りない、という判断だ。
「ここは霊脈なので、サークルを設立して物資を補充するついでに英霊召喚をしてみるのはどうでしょうか、先輩!」
『う~ん、残念ながらそれは無理だね。彼女、倉庫にあった石全部どころか、私のショップの石も買い占めて無駄に使って、石がすっからかんなんだよ。オルガが購入していけばよかったんだけどねぇ』
「今の戦力で十分だと過信した私のミスです、まさかここまで弱体化しているなんて・・・」
「すみません所長、私はただ、ディーラーの負担を減らしたかっただけなんです・・・」
『ごめんなさいね。せっかく召喚できた私があまり戦力にならないで。今の霊基だと私の魔術は心許無いし、何より竜種にはあまり魔術は通じないし、こればかりはしょうがないわ』
「いえ、メディアさんは所長を生き返らせて(?)くれただけで・・・」
「なあストレンジャー。俺は何時までこうしていればいい?」
「夜通し」
「なん・・・だと・・・?」
「私、怒っているんだからね。また二回も死んで!死なない努力をしなさい!」
「泣けるぜ・・・」
ブチ切れた立香の言葉に本気で落ち込むディーラーを放って置き、ジャンヌとマリーが友情を築いたり、オルガマリーがマリーと自分の名が紛らわしいとぼやいたり、一先ずの休息を得て。野営をする事になったその夜。異変が起きた。それに気付いたのは、やはりと言うかオルガマリーであった。
「ロマン、索敵!」
『所長、何時にも増して頼もしくないかい?何はともあれ、敵襲だ皆!複数の生命体・・・ワイバーンの群れに、サーヴァント反応!これは、ラ・シャリテで唯一直接確認できなかった反応だ!』
「みんな、戦闘準備!ディーラーも!」
「この鬱憤、ワイバーン共で晴らしてやる・・・!」
「・・・なんか、ごめんね?」
駆逐が始まる。所構わずマインスロアーで誘爆して纏めて撃墜し、そこにシカゴタイプライターを死ぬまで撃ち続けると言う鬼畜な戦法でワイバーンが一掃され、マリーでさえも引き気味な面々の前に、彼女は現れた。
「バーサーク・ライダー・・・聖女マルタね!」
「こんばんは、皆様。寂しい夜かと思いましたが、・・・地獄絵図ですね」
「それは気にしないでもらえると・・・」
「・・・はい。私は貴方達を追ってきました。聖女たらんと己を戒めていたのに、此方の世界では壊れた少女の使いっ走りです。我々は彼女のせいで理性が消し飛んで凶暴化しています。実は監視が役割だったのだけど。最後に残った理性が、貴方達を試すべきだと囁いている」
バーサーク・ライダー・・・マルタは、十字架を模した杖を握り直し、真剣な表情で立香を、ジャンヌを、オルガマリーを見詰めた。単なる敵ではないと、冬木の時のセイバーオルタと同じ様な敵だと彼女達は察する事が出来た。
「貴方達の前に立ちはだかるのは"竜の魔女”、究極の竜種に騎乗する、災厄の結晶。私如きを乗り越えられなければ、彼女を打ち倒せるはずはない。例え、不死身のサーヴァントが居ようとも」
睨みつけるは、やはりというかディーラー。やはり、相容れないものがあるらしい。特に彼は、邪教集団の狂気の末路の形である。聖女からしたら不快感しかないだろう。でも、だからこそ躊躇なく狂気へと身を委ねる事が出来るらしい。彼女は杖を握る手とは別に、拳を握っていた。
「私を倒しなさい。躊躇なく、この胸に刃を突き立てなさい、凶弾で貫きなさい。其方の女性に看破されましたが、我が
「気を付けなさい、藤丸!聖女マルタは、かつて竜種を祈りだけで屈服させた聖女!それはつまり・・・彼女は、ライダーはライダーでもドラゴンライダーよ・・・!」
「我が屍を乗り越えられるか、見極めます!」
「なっ・・・!?」
瞬間、ぶん投げられた杖を反射的にマシュが弾き飛ばすも、そのあまりにも突拍子の無い行動に全員が気をとられた隙にマルタは大きく踏み込んでおり、
「ハレルヤ!」
「Chris・・・!?」
拳の一撃の元、ディーラーの頭部を殴り砕いていた。死ぬ直前、ディーラーは脳裏に固まった溶岩をゴリラの如く殴って落とすマッチョの姿がよぎったらしい。
「まずは一人。さあ、次は誰にする?」
「いやいやいやいや!?」
「・・・泣けるぜ」
復活した直後、ちょうど振って来た杖で頭を打ってまた死んで本気で涙し、思わず女運の悪いストレンジャーの口癖をぼやくディーラーであった。
題名はレオンの名(?)台詞から。レオンと武器商人の声は同じなので違和感ない…かな?
鎖で振り回すアイアンメイデン(拷問器具)ってかっこいいと思うんだ・・・!間違いなくアラフィフのせいですね、分かります。カーミラさんのモーション変更はよ。
マリーとジャンヌの会話は大幅カット。正直、長いんです。いい話なんだけど・・・武器商人が主人公なので、戦闘メインで行きたいです。
今回だけで三回殺されたディーラー。アイアンメイデンで、ハレルヤな拳で、落ちて来た杖で。ごめん、でも宝具を説明するのに必要なんだ・・・
カルデアの英霊はマシュとディーラー以外、弱体化してます。それでも一応第一再臨を終えた状態で召喚されてます。種火を上げよう。
次回、バーサーク・ライダーとの激闘!勝てるかな・・・というか初期のFGO鯖はモーションがアレなので、戦闘を考えるのが大変です。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。