Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ウェルカム!ストレンジャー…どうも、脱ニートすぐにはきつい五日間の激務を何とか終えて執筆し終えた放仮ごです。ゆっくりできるって素晴らしい…!

大奥イベントのカーマがエヴリンとベストマッチ過ぎるから欲しいなと引き続けてるけど来ません。アンタに愛してほしい子がいるんだよ!あ、依り代の実父の星5礼装なら来ました。なんでや。

今回は「バイオハザードクロニクルズ監獄塔に復讐鬼は哭く」最終話!実は前々回から切ったので3500字と短いです。しかしバイオハザードクロニクルズのラストを飾るにふさわしい人物が登場します。楽しんでいただけると幸いです。


待て、しかして希望せよストレンジャー

―――――観察者は、《共に生きる者》である、そして《生ける者》にしがみつく

 

フランツ・カフカ

 

 

 

 

 

 

 

 ごめんなさい、ごめんなさい。生きるためにと目を背けて、みんなを見捨てて自分だけ生き残ってごめんなさい。

 

肉体から乖離し記憶も失ってしまった私の魂が入ってしまった英霊の自我に、記憶に押し潰される。涙が出てくる。聞きたくない、「助けて」なんて声、あの地獄と化した空港で何度でも聞いた。いやだ、いやだ、いやだ。でも、助けたい、と思ったのは事実なんだ。ただ、私は両親が生きてと願ったから自分の生だけを考えて、それ以外のことなんて考えられなかった。でもそれをこの英霊は赦さないという。全ての人間を救えと、そう語りかけてくる。

 

もう絶対に、誰一人見捨てないから、私一人だけ生き残ろうなんて思わないから。誰かを殺してでも、私を犠牲にしてでも助けるから。悲劇しか生まないバイオハザードなんて、絶対に根絶させてやる。だから、だから。空っぽの私を、これ以上押し潰さないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足先から黄金の粒子となって消えていくアヴェンジャーは、手首と足首を握りつぶされ古傷を無理矢理開かれた挙句銃弾で腹部を撃ち抜かれて、大量出血しズタボロになった己の姿を見て苦笑する。

 

 

「………クハハッ、悪くない気分だ。だが一つ詫びよう…オレは最初からお前の名前を知っていた、メルセデス…お前は、藤丸立香だ」

 

「…貴方は、誰が何と言おうとエドモン・ダンテスだ、アヴェンジャー。…エヴリンを守ってくれて、ありがとう」

 

 

アヴェンジャーからその名が告げられた瞬間、メルセデス(藤丸立香)の目の色が真紅から琥珀色に戻り、本来の彼女の口調で礼を述べた。アヴェンジャーは不敵に笑んで、それに返す。

 

 

「ふん、言っていろ。誰が何と言おうとオレは復讐鬼モンテ・クリストだ。復讐者として成し遂げられぬまま、オレは勝利の味をつい知らぬまま命を落とした。かつてオレを導いた敬虔なるファリア神父の様に…絶望に負けぬ者を我が希望として送り出すことで…一度でも味わってみたかった。だがお前は!お前たちは、オレに導かれ障害を砕き今、監獄塔を脱出する!勝利なき復讐者のままであるオレに、お前たちは導き手として役割と勝利を与えたのだ!なんと希望に満ちた結末だ!」

 

「え、でも…まだ、終わってない…」

 

「…いいんだよ。終わったんだ、エヴリン」

 

 

呆然とするエヴリンと、メルセデスの姿でなにか納得した様子の藤丸立香に、アヴェンジャーは続ける。

 

 

「クハハッ、エヴリンよ!藤丸立香よ!オレたちの勝ちだ……!あの時、おまえは見逃されたのではない。もう”終わるもの”と見捨てられたのだ。だが―――はは、ははは!結果はこの通りだ!残念だったな魔術の王よ!貴様のただ一度の気まぐれ、ただ一度の姑息な罠は、ここにご破算となった!オレなんぞを選ぶからだバカ者め!二人纏めて絶望に落として地獄に引きずり込もうと欲張るからだ、ざまあない!」

 

 

見物していたのかどうかも定かではない魔術王に向けて嘲笑い消滅していくアヴェンジャーは、ふと、自らの血とアヴェンジャーの返り血を浴びて血塗れの姿でこちらに心配げな表情を向けるメルセデス…藤丸立香に微笑んだ。

 

 

「お前の答えはとうに知っている、藤丸立香。安心しろ、奴はお前が彼女を殺すことしか望んではいない。お前の選択ならば上手くはいくだろう。お前が助かるかどうかも分からない茨の道だろうが、歩むがいい!足掻き続けろ!魂の牢獄より解き放たれて―――おまえは!いつの日か、世界を救うだろう!」

 

「アヴェンジャー…また、会える?」

 

「…再会を望むか、エヴリン。アヴェンジャーたるオレに?はは、ははははははははは!ならばオレはこう言うしかあるまいな!――――待て、しかして希望せよ、と!」

 

 

もう胸から上までしか残っていないアヴェンジャーの答えに、涙ながらに頷くエヴリン。殺そうとしてきたけれど、決して己の存在の否定はしなかった巌窟王に、一種の情を感じていた。それを感じ取ったメルセデスの姿をした藤丸立香は、宣言した。

 

 

「絶対喚んでみせるからね、アヴェンジャー!」

 

「クハハッ、よく分かっているじゃないか、マスター!オレは永遠の復讐者(アヴェンジャー)だ、まだエドモン・ダンテスと呼ぶならしばいていたところだ!それにもこう答えよう!―――待て、しかして希望せよ」

 

 

その言葉と共に、完全に消滅したアヴェンジャー。残された二人は、じっと見つめ合い、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、目が覚めましたか!」

 

 

目覚めると、そこは自室で。周りには、泣きながら抱き着いてきたマシュと、一歩下がって見守るディーラーとオルガマリーがいた。わんわん泣くマシュをなだめつつ、立香は残る二人に尋ねた。

 

 

「…私、どうしたんだっけ?」

 

「会議が終わってからずっと寝たっきりだったのよ。三日も起きないから心配してたのよ」

 

「ようやくか、待ちくたびれたぞストレンジャー。やっぱりあの異常な速度の治癒が原因の疲労か?なんにしてもよかった、せっかく作った新武器をお披露目したかったんだ」

 

「あー…それは後でね」

 

 

布にくるんで両手に抱えたそれを見せびらかすようにするディーラーに苦笑し、立香はマシュに顔を向けて頭を下げた。

 

 

「ごめんね、マシュ。怒鳴ったりして。…少し、考え事があったんだ」

 

「いえ、いいえ…でも、本当によかった。…私、先輩を怒らせてしまったんじゃないかと…」

 

「大丈夫。ちょっと疲れていただけだから。それより所長、召喚しましょう。…多分、戦力になるサーヴァントが来てくれる予感がします」

 

「…そうね、しっかり休んだからコンディションは最高潮かもしれないわ。すぐにでもしましょうか」

 

 

そして召喚部屋に向かう道中、立香の脳裏には監獄塔での最後の光景がよぎっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私が自害すれば、ママはカルデアに戻れる。もう、私の幻影に苦しむことも無い。…どんなに洗っても消えないばかりか増えてくるしつこいカビなんかに感染させてごめんね」

 

「私を助けるためだったなら、文句は言わないよ。それに、多分…アヴェンジャーの言葉が正しければ、私が死ねば、全部元通りになる。ソロモンは私に貴方を否定させて、こびりついてしまったカビ…つまり感染を抹消することが目的だったんだ、私なんてどうでもいいはず。それに私の身体は別のサーヴァントのものだから、多分魂は元に戻る。そうすれば私もエヴリンも消えなくて済むはず」

 

「でも、私という自我が生まれるぐらいに感染は進んでる…このまま戻ったら、ミアやジャックたちみたいにママが別人のようになる、それは嫌だ」

 

「…この身体の霊基が言ってるんだ。目の前の命を救えって。自分が死んで命が助かるなら喜んで引き金を引けって。それに…ロンドンで、私は消えない傷を負った。体にじゃなく、心に。…私は、貴方が死ぬのを二度と見たくない。だから…ごめんね?」

 

 

 

 

 

 

結局、止めてきたエヴリンを無視して、立香はピストルで頭を撃ち抜き自害する道を選んだ。自殺する、というのは初めての感覚だったが怖くなかった訳じゃない。でも、エヴリンを見捨てることの方が怖かったのだ。アヴェンジャーの言っていた答えとはこのことだろう。

あの復讐者もエヴリンに情が移っていた様だ。最初の邂逅の記憶の中でアヴェンジャーは、エヴリンのことを「先輩」と呼んでいた。「地獄を一人抜け出したお前の温かく脈動する魂」とも「貴様は俺と同じく地獄を一人抜け出した」とも。夜明けが来て、光を得たエヴリンに何を思ったのだろうか。

 

なんにしても、藤丸立香(エヴリン)メルセデス(藤丸立香)の記憶は同期した。あの監獄塔での戦いは忘れない。既にこの藤丸立香からは二人の英霊(エヴリンとナイチンゲール)の力は残ってないけど、後者の方は半ばすり潰されながらだが記憶は得た。

 

せっかく得た力だし、活かせるといいんだけど。そんなことを思い浮かべながら、オルガマリーに続いて召喚する立香。召喚部屋を眩く照らす金色と虹色の光。合わせて20連鎖召喚。相変わらず礼装が転がりながら、三騎の英霊がそこにいた。

 

 

 

「サーヴァント・アーチャー、エミヤ。召喚に応じ参上した」

 

「サーヴァント・ライダー、マリー・アントワネットよ。ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

 

かつての敵。かつての味方。そして、現れたのは予想外の人物。まるでマフィアの様な黒のスーツに帽子をオシャレに着込んでシカゴタイプライターを手にした金髪の男。

 

 

 

「アーチャー、レオン・S・ケネディだ。どうやら俺はどこに行ってもバイオハザードが付きまとうらしい。泣けるぜ……ああ、一つ言っておく」

 

 

 

バイオハザード根絶という、半ば脅迫されながらも自覚した目標が同調したのか召喚された、真打である紛うことなき現代の英雄たる英霊は、たっぷり溜めてからこう言った。

 

 

 

「――――――俺のギャラは破格だ」

 

 

 

その一言に固まる一同。なにはともあれ、新たな仲間と共に、特異点攻略の旅路は続く。




アヴェンジャー「フッ、どうやらオレはおあずけらしい。難儀なものだ…」
まあ出番はまだあるから、うん。一応うちカルデアのエースの一人なんですけどねえ。


そんなわけでついに登場、レオン・S・ケネディ!知り合いしかいないカルデアへようこそ。アメリカが舞台で大統王が出てくるのに出さないわけがないよね。
あとついでにエミヤさんとマリーさん。以前はいなかったけどロンドン編やってる途中で来たのでやっと召喚できました。所長の新鯖です。立香がエミヤの夢を見たとか言ってましたが、実は「ウェルカム、ディーラー」の独白は結構前後してて予定もちょっと変わっています。すまない。

レオンの召喚台詞はバイオハザードディジェネレーションの有名(?)なネタです。ギャラはQPと再臨素材的な意味で。もちろん星5サーヴァントなので。服装は第一がマフィア風、つまりはバイオ4のスペコス2です。ライダー(ネタ)かアーチャー(ガチ)で迷った。服装チェンジする度にスキルが変わるという超高待遇な特殊なサーヴァントです。詳しくは次回にて!


立香が自殺したことで、元の鞘に収まることになった両名。アヴェンジャーのカミングアウトで人格破綻はしませんでしたが、状態を言えばむしろ悪化してます。ソロモン的には立香がエヴリンを殺すことでエヴリンを絶望させて、立香の「守る」発言を撤回させて、ついでに立香にこびりついてしまったカビも消せるという超私怨な結末がよかった模様。消滅はしなかったエヴリンはどうなったのかはおいおい…まあ、生きてると言っても本体は既にロンドンで消滅してるから立香に寄生している真菌が見せている幻覚なんですけどね。

エヴリンの自虐的な「どんなに洗っても消えないばかりか増えてくるカビ」という台詞は大奥イベントの台詞を使わせていただきました。愛する関連でカビの話題とか、ファミパン聖女並に狙ったとしか思えない私。バイオハザードに侵され過ぎたか…?

次回はちょっと小休止してからついに五章に突入。休みの日にコツコツと書かせていただきます。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。むしろ感想くださいお願いします。

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