Fate/Grand Order【The arms dealer】 作:放仮ごdz
次回からオルレアン突入で、今回は閑話的な話になります。半分シリアス半分シリアルです。マシュは出ない上にディーラーも出番少ないですが、代わりに新キャラ登場です。またオリジナルクラスです。楽しんでいただければ幸いです。
何故か暗いカルデア廊下…そこを爆走する二人の少女がいた。
「な、何よコイツ!何なのよ!」
「知りませんよ!?とりあえず、ディーラーが居る場所まで逃げましょう所長!」
「落ち着いて令呪使えばいいじゃない!?」
「この状況で落ち着けません!」
立香とオルガマリーである。そんな少女達をのしのしと追いかける巨体があった。巨大な鉈を引き摺り、血塗られた白い袖無しのローブを身に纏い、赤く錆びた歪な多角錐状の大きな兜を被っている二メートル近い異様な姿に、二人は恐怖しさらに走る速度を上げる。意思疎通は不可能、何故なら彼は、召喚した直後に襲い掛かって来たのだから。
「一体何を呼んだのよ貴方!バーサーカー!?」
「え、えっと…」
走りながら、先程の召喚で手元に現れた金色のセイントグラフを確認する立香。その裏面には巨大な鋏を構えたフードで顔を隠した人物が描かれていた。表記は、chaserとあった。
「エクストラクラス…チェイサー。真名レッドピラミッドシング、らしいです!」
「何でまたエクストラクラスな上に意思疎通も不可能なサーヴァントを呼んでいるのよ貴方は!?」
ズゥン、と振り下ろされる鉈で揺れる廊下。二人は顔を見合わせ、必死の形相で逃走を再開した。
数時間前。無事カルデアに帰還した立香一行。オルガマリーが、「あんなにかっこつけたのにおめおめ帰ってきてしまって恥ずかしい」と唸る事もあったが、全員無事生還した事により歓喜に沸くカルデアの職員たち。七つの特異点が見付かり、それを解決しようと話し合うそんな中、カルデアに召喚されたサーヴァントである絶世の美女、通称ダ・ヴィンチちゃんが提案をしてきた。
「キャスターと言えどもさすがに私ではマリーの魂を肉体に定着させるのは無理があるからね。キャスターのサーヴァントを召喚してしまえば、ぐっと楽になると思うよ。あ、でもできればクー・フーリン以外が好ましいかな」
「それに戦力も必要だ。ここに30個の聖晶石がある。立香ちゃん、召喚して来てくれないかい?」
「分かりました」
「ああそれと、ディーラー。君の武器について話がある。ちょっといいかな?」
「おう。商談かいストレンジャー?稀代の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの提案だ。話に乗るぜストレンジャー」
「あとで僕のところにも来てもらえるかい?外の世界が焼却された今、君の持つ魚や卵は貴重品だ。これからについて話がしたい」
「了解だ、ドクター。また後でな」
ロマンにそう言ったディーラーがダ・ヴィンチちゃんに付いて行き、少し寂しく思いながらもドクターから渡された大量の石とマシュ、そして見届けると言って付いて来てくれたオルガマリーを引き連れ、召喚部屋へと訪れる立香。
「じゃあ、さっそく…」
「あ」
「え」
ポイッと、手始めに三個放って召喚を行なおうとする立香。それを見て真っ白に固まってしまうオルガマリーに何かミスをしましたか?という目を向ける立香。はっきり言おう、ミスでしかない。
「ばっかじゃないの!?」
「はえ!?」
「何のためにロマンが貯蔵されている30個を渡したと思っているのよ!?一度でも大変な召喚を、一度に10回連鎖召喚する事で少しでも強い英霊を呼び出すためなのよ!?単発だなんて、台無しじゃない!」
「いやいや。信じていればディーラーみたいにいい人が来てくれますって。10回も召喚できるんでしょう?」
「…だといいわね」
ジトーッと、出現した
「召喚…できました?」
「できてないわね」
光が収まり、魔法陣の中にあったのは人物…ではなかった。生物でも無い。あったのは、麻婆豆腐であった。
「…何で麻婆?」
「これは概念礼装よ。過去の聖杯戦争に関係するアイテムやらが召喚されるの。カルデアの召喚システムはね、そう簡単に英霊を呼べたりできないのよ。だから10連だったのに…」
「ゴメンナサイ…麻婆食べます?」
「ディーラーにでも食べさせておきなさい。こうなったら仕方ないわ、駄目元で全部召喚するわよ!」
して、その結果は。
二回目、何か魔改造されたバイクが。
三回目、オルガマリー曰く黒鍵と呼ばれる短剣(赤)が。
四回目。キャスター、クー・フーリン召喚。再会の挨拶を終えて、とりあえずマシュの案内でロマンの元に向かってもらう事に。
「やった!」
「そうね。でもお目当ての本場キャスターじゃないし、正直キャスターのクラスじゃ戦力になるか怪しいわ。続けましょう」
五回目、ライオンの縫いぐるみが。
六回目、七回目、黒鍵二つ(青と緑)が。
「…来ませんね…」
「こういうものよ…」
そして問題の八回目だった。
「これは、三本線で金色の光…嘘っ、まさか大当たり…!?」
「ディーラーみたいな強力な癖のあるサーヴァントが…!?」
光が消え、期待する二人の前に出現したのは、赤い三角頭の大男であった。
「…想像していたのと違う」
「安心しなさい、私もこんなサーヴァント予想だにもしていなかったわ」
「・・・」
ノシッと歩み寄り、反射的に引いた立香のいた場所へグシャッ、と。叩き付けられる巨大な鉈。それだけで理解する、自分を殺す気だと。
「え、何で・・・!?」
「逃げるわよ、藤丸!?」
そんなこんなで冒頭へと戻る。
「廊下を思いっきり破壊して来ているのに何で誰も来ないんでしょうか!」
「知らないわよそんなの!?さっさと落ち着いて令呪でディーラーとかキャスターを呼びなさいよ!」
「落ち着けませんしどっちも耐久Eだから死なせたくありません!」
「言ってる場合か!?」
「まだ二回分あるんで、召喚して見た方がいいのでは!?」
「それもそうね、その先に物資倉庫があるからそこで撒くわよ!」
二挺のハンドガンで鉛弾を脳天に撃ち込み、怯んだところに全速力で走る二人。件の倉庫に逃げ込み、早速召喚をしようとするが召喚部屋でもない事を思いだし、ディーラーを呼んだ時と同じくとにかく自身を助けてくれる英霊をイメージして召喚する事にする立香。
「誰でもいいから、アーサー王の様に強い英霊来て・・・!」
「私を呼んだか、マスター」
「へ・・・?」
「……召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターというヤツか?」
眩い光が消え、目の前に立っていたのは冬木で相対したばかりである黒い騎士王であった。
「ッ!」
突如、目の前の扉を吹き飛ばし、突進してきた少女の一撃を鉈で受け止めるチェイサーのサーヴァント。魔力放出によってその巨体を浮かせたセイバー・・・アルトリア・オルタはそのままエクスカリバーを顔面に叩き付けて転倒させ、その胸に乗ると右掌を三角頭に突き出し、魔力放出を零距離で放射。チェイサーは沈黙し、その動きを停止した。
「ありがとう、セイバー・・・今はアルトリア・オルタって呼んだ方がいいかな?」
「好きに呼べ。ところでコイツだが、貴様たちが共に罪悪感を感じているから呼び出されたのだろう。これは断罪の化身だ」
「断罪の化身・・・?」
「商人と同じく、通常の聖杯戦争では呼ばれる事の無い英雄でも反英雄でも無い存在。商人は英雄を支えた者なのに対し、コイツは断罪されたかった人間を追い詰めた者、となる」
「・・・なんで貴方そんなのばっかり呼んでるの?」
「私が知りたいですよ・・・」
むしろ、物語の「主役」であるアルトリアやクー・フーリンを呼べた方が可笑しいんじゃなかろうかと思い始める。何か、これからもそんなサーヴァントを呼びそうで戦力的に不安になる立香。
「言って置くが、力づくで止めた所でこいつは絶対に殺せない上に制御不能だ。断罪を求める人間にその鉈を振り下ろすまで止まる事は無いだろう。死にたくなければ令呪で自害でもさせるんだな。さて、最初の命令は果たしたぞ。私は商人の元に向かわせてもらう」
「う、うん・・・これからよろしく、セイ・・・アルトリア」
「呼びにくいなら他にセイバーが召喚されるまではセイバーでいい。私を失望させてくれるなよ?マスター」
直感で感じ取ったのか、食堂の方向へと何処か嬉しそうに歩いて去って行くアルトリアオルタを見送り、立香とオルガマリーは顔を見合わせた。
「・・・取り敢えず助かりましたけど、どうします?」
「セイバーが言っていた通り、自害させるべきなんでしょうけど・・・」
「貴重な資材で呼び出した戦力ですからね・・・ところで私の罪悪感って・・・多分、ディーラーの事でしょうか・・・」
「私は絶対、レフに頼り切ったせいで今回の事故で死なせてしまった人達ね・・・」
ズーンと、自分達のしでかした「殺人」を後悔している二人の背後で、立ち上がる大男。チェイサーである。それに気付いた立香はすぐさま、迷いながらも手の甲に刻まれた令呪を掲げた。
「カルデアのマスターが令呪一画を持って命じる!ごめんなさい、お願いだから自害してください!」
赤い光と共にあまりに身勝手すぎる命令が実行され、チェイサーはその手に血塗られた槍を取り出し、自身の胸を突き刺して沈黙し、消滅した。沈黙が流れ、立香はふと、自身の手に握られたセイントグラフに載っている霊基情報を確認した。
クラス:
真名:レッドピラミッドシング
ステータス:筋力B 敏捷D+ 耐久C+- 魔力C 幸運E 宝具A
・追跡開始A:クラススキル。目標を見定めると敏捷と耐久のステータスが二段階上昇する。
・追跡続行A:クラススキル。目標が健在の場合、戦闘不能になっても数分経てば仕切り直しして復活できる。ただし体力は半減。
・加虐体質A:戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増していく。性質は狂化スキルに近い。
・恐慌の声C:聞くものの精神を弱らせる声を響かせ、対象に精神攻撃を行う。しかし彼は物理攻撃が主体なためランクは低い。
・処刑人EX:悪を以て悪を絶つ、究極の裁断行為。属性「悪」に対するダメージが向上するどころが「即死」の域となる。また、そのサーヴァントの行為が悪と見なされた場合でも対象となるが、こちらはダメージ増加のみ。
宝具:
ランク:A
種別:対罪宝具
相手の殺して来た人間の分だけ分身し、現実を直視するまで執拗に追いかけ処刑する。正体が自分の「殺人」の罪だと気付かない限り不死身の存在と化す。逆に、一度も誰も殺していない人間ならば害はないが、ほとんどの英雄にとっては最悪の敵たりえる。特に狂っていて認める事が出来ないバーサーカーには天敵。
概要:とある錆びれた湖畔の町にある「霧の日、裁きの後」と言う絵画に描かれた処刑人が断罪の化身として実体化した存在。人間ではなく知性があるかどうかも怪しく、厳密には英霊ですらない。
人理焼却の首謀者の行いに自身の必要性を感じ、召喚に応じた。罪人が目の前にいる場合問答無用で暴れ出すが、潔く罪を自覚し人生を懸けて贖罪しようとする者に対しては忠誠を誓い、手足となって外敵を討つ「精神的な守護者」である。
「これ自害させなくてもよかったのでは!?」
「あ、本当ね。強過ぎないこれ?」
「そんな訳あるか。ストレンジャーには使いこなせないだろうよ」
「あ、ディーラー」
そこにやって来たのは、後ろに何やら焼き魚を頬張っているアルトリアオルタを携えたディーラー。彼女から事情を聞いてやって来たらしく、珍しく呆れた目で二人を見ていた。
「せっかく助かった命だってのに無駄にするなストレンジャー共」
「・・・だって、できるだけディーラーを死なせたくないし・・・」
「そんな事言える甘ちゃんだからああいうサーヴァントとは付き合えないんだ。アンタは間違いとはいえ俺を殺した自分を決して許そうとしない。ああいうのには一番合わん。大人しく俺とセイバーとキャスターで満足して置け。普通の聖杯戦争なら過剰戦力って奴だぜストレンジャー」
「うん・・・じゃあ、あと一回だけ召喚できるから・・・」
オルガマリーを引き連れて召喚部屋へ小走りで向かう立香を見送り溜め息を吐くディーラー。
「懲りないなストレンジャーも。俺達が苦戦した騎士王様と盾の嬢ちゃんがいれば大概の敵に勝てるだろうによ」
「それに貴様が入るから百人力だな。だが私達のマスターはとんだ頑固者らしい。ああいう、サーヴァントのために死力を尽くす馬鹿は嫌いじゃないな。ところでお替りだ商人」
「ここの職員用にキャスターにありったけの卵と魚をやっといたから食堂で喰いなストレンジャー。案内は助かった。ここはサラザール城より迷いやすい」
「礼は受け取って置く。あとで適当に武器を見に行くからよろしく頼んだぞ商人」
「へいへい。どうぞご贔屓にお願いするぜストレンジャー」
そんな会話があったその頃。
「あら、ずいぶんと可愛らしいマスターなのね。キャスター、魔女メディア。よろしくお願いするわ」
「・・・やった、やりましたよ所長!これで多分、ちゃんと生き返れます!」
「そうね、私は屈指の魔術師にして裏切りの魔女にそう無邪気に言える貴女がちょっと恐ろしいわ」
無事に正統派キャスターが召喚され、イエローハーブで無理矢理生かされていたオルガマリーは延命できたとかなんとか。
題名からネメシスを連想した人、残念。彼はどう考えても味方になってくれなそうなので、限定的に味方になってくれそうな皆のトラウマことレッドピラミッドシング、通称▲様がサイレントヒル2から参戦です。今のところゲストですが、好評だったらオルガマリー関係でまた出します。
チェイサーは他に該当するのはバイオシリーズからネメシスやヴェルデューゴ、クロックタワーシリーズからシザーマンにハンマー男と言った、「一人を執拗に追い回す」と言う別名ストーカーなクラスです。無論、きよひーやブリュンヒルデも該当します。バーサーカーに強く、無駄に堅いのが特徴です。
仲間サーヴァントとしてキャスニキ、セイバーオルタ、メディアが参戦。メディアは基本カルデア待機なので、次回からはディーラー、キャスニキ、セイバーオルタがメインになります。ちなみに某オカンは我がカルデアにいないので、キャスニキとディーラー、あとメディアが食堂を仕切ってます。ディーラーの物資は無限に近いのでカルデアでは本当に貴重な収入源。
次回、バーサークサーヴァントVS武装サーヴァント。オルガマリーと共に行くオルレアンinディーラー。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。