Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

6 / 76
ヴェルカム!ストレンジャー・・・どうも放仮ごです。お気に入り数250突破、UA10000突破…ありがとうございます!

今回も長いです。主人公はオルガマリー。彼女は一体どうなるのか。かなり無理矢理な上に、自己解釈大目なディーラーのチートが発揮されますが少しだけ赦してもらえると嬉しいです…楽しんでいただければ幸いです。


いい武器があるんだストレンジャー

「・・・ここまでか」

 

 

崩れ落ちる黒き騎士王。その体は自らを吹き飛ばしたマシュと、彼女に駆け寄ったマスターに向いていたが、その目はジロリと己に敗北を与えた男に向けられていた。当の本人はどこ吹く風である。

 

 

「・・・その面、その外道なる手法、覚えて置くぞディーラー・・・」

 

「ヒッヒッヒッヒェ。何の事か分からんな?アンタはその嬢ちゃんに負けたんだ、俺は単なる武器商人だ」

 

「そうか商人。次会ったらいい武器を見繕え、そうしたら許してやる」

 

「顧客は歓迎するぜストレンジャー。今度会ったらその聖剣や嬢ちゃんの盾について教えてくれ。それが報酬でいい。その武器を見てると商人としての魂が疼くんだ」

 

 

ガチャガチャと使った武器を拾い、弾込めして直していき、未だに消滅していなかったキャスターに肩を貸しこちらに歩み寄るその姿に、溜め息を吐くセイバー。

 

 

「考えて置こう。・・・そうだな、聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いたあげく敗北してしまった。結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは同じ末路を迎えるということか」

 

「あ?どう言う意味だそりゃぁ。テメェ、なにを知ってやがる?」

 

 

ディーラーに連れられて来たキャスターがその言葉が引っ掛かったのか突っかかると、セイバーの姿が金色の粒子へと変わって消滅して行く。ここまでの様らしい。

 

 

「いずれ貴様も知ることになる、アイルランドの光の御子よ。そして、名も知らぬ武器商人とそのマスターよ。―――グランドオーダー。聖杯をめぐる戦いは、まだ始まったばかりだと言うことをな」

 

 

その言葉を最期に完全に消滅するセイバー。それを追う様に、キャスターも黄金の粒子へと変わって行く。

 

 

「おい待てって、ここで強制送還かよ………おい嬢ちゃん、あとの話は任せた!次があるなら、ランサーで呼んでくれよな!それとディーラー!アンタの槍、悪くなかったぜ!」

 

 

そして笑みを浮かべて消滅するキャスター。この場に残されたのは、立香とマシュ、ディーラーと・・・セイバーの言葉を聞いてから何やら考え込むオルガマリー、そしてセイバーのいた場所に残された黄金の水晶体のみ。

 

 

「セイバー、キャスター、共に消滅を確認しました。……私達の勝利、なのでしょうか?」

 

「・・・勝ったんだよね?」

 

「俺の知る男に死んだふりする奴もいたが消滅したから問題ないだろう」

 

「だよね!」

 

『ああ、よくやってくれたマシュ、立香ちゃん、そしてディーラー!所長もさぞ喜んでくれて……あれ、所長は?』

 

「冠位指定・・・何でその名を英霊が・・・・・・え? そ、そうね。よくやったわ、藤丸、マシュ、それにディーラー。不明な点は多いですが、ここでミッションは終了とします。まず、あの水晶体・・・小聖杯を回収しましょう。セイバーが異常をきたしていた理由……冬木の街が特異点になっていた原因は、どう見てもアレのようだし。キャスターにもう少し詳しく聞ければよかったわ」

 

「既に回収している。帰るんならさっさと・・・うん?」

 

 

水晶体を回収してリュックに入れたディーラーが突然、何かに気付いて上を見上げる。それは、セイバーが始めに立っていた丘と同じ場所。そこには、先程まで存在しなかったはずの人物が立っていた。

 

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適正者。まったく見込みのない子どもだからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」

 

「レフ・・・教授・・・!?」

 

 

ぼさぼさ、というよりはもじゃもじゃの赤みがかった長髪に、にこやかに微笑んでいるが冷たい目つきの顔。モスグリーンのタキシードとシルクハットを着用したその人物は、マシュの呟きの通り、カルデア爆発の際に死亡したと思われていたカルデアの顧問魔術師、レフ・ライノールその人であった。

 

 

『レフ!? レフ教授だって!? 彼がそこにいるのか!?』

 

「うん? その声はロマニ君かな? 君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく…………どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

 

笑みが醜悪な物に変わり、『そうだろう?』と言うように立香を見下す視線を向けるレフに、素早く前に出て盾を構えるマシュ。ディーラーも弾込めし終えた中折れ式マグナムを構えて臨戦態勢だ。

 

 

「マスター、下がって・・・下がってください! あの人は危険です……あれは、私達の知っているレフ教授ではありません!」

 

「同感だ。俺は知らんが、奴からはサドラーと同じ気配を感じる。凄まじい極悪外道の香りだ。恐らくだが、信頼する仲間だろうが奴は平気で切り捨てるぞ」

 

 

サーヴァント二名の言葉に頷き、マシュの陰に隠れる立香だったが、全く状況判断ができず、彼に駆け寄って行く者が一人いた。

 

 

「所長!いけません、その男は……!」

 

「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ! 良かった、貴方がいなくなったら私、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」

 

 

所長であるはずなのに彼に頼りきりだった少女、オルガマリーである。彼女が近づいてくるのを見るや否や、再び温厚な笑みを浮かべるレフ。それを見て、立香は今度こそ違和感に気付く。まるで苛立ちを隠す仮面の様な、そんな貼り付けただけの笑みが不気味に見えた。

 

 

「やあ、オルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったようだね」

 

「ええ、ええ、そうなのレフ! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし、頼れるのは三流マスターに最弱サーヴァント!予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった!

・・・でもいいの、貴方がいれば何とかなるわよね? だって、今までそうだったもの。今回だって私を助けてくれるんでしょう?」

 

「ああ。もちろんだとも。まず、君達が手に入れた聖杯を渡してくれ。・・・本当に予想外のことばかりで頭にくるな。その中でもっとも予想外なのが君だよ、オルガ。爆弾は君の足元に設置したのに、まさか生きているなんて」

 

 

今度こそ、その言葉に駆け寄る足を止めるオルガマリー。その顔は困惑に満ちていて、信じたくない物になお、縋り付く哀れな物で・・・ディーラーはその表情に、頭に稲妻の様にある感情が迸る。

 

 

「──え?……レ、レフ?あの、それ、どういう・・・意味?」

 

「いや、生きている、というのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念になった君をこの土地に転移させてしまったんだ。ほら、君は生前、レイシフトの適性がなかっただろう? 肉体があったままでは転移できない。わかるかな。君は死んだ事ではじめて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ。だから、カルデアにも戻れない。だって、カルデアに戻った時点で、君のその意識は消滅するんだから」

 

「え……え?消滅って、私が……?ちょっと待ってよ……カルデアに、戻れない?」

 

「そうだとも。だがそれではあまりにも哀れだ」

 

 

立香達を眼中に入れず、オルガマリーだけを見つめてニッコリと親愛を表すように笑うレフ。しかし表情とは裏腹に彼の目付きは冷たく、誰も彼もを蔑んでいる事は明白だった。

 

 

「生涯をカルデアに捧げた君のために、せめて今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう。・・・そこの小汚いサーヴァント、聖杯を渡したまえ」

 

「アンタは俺の顧客じゃないからお断りだ。買い取ると言うなら話は別だが?」

 

「・・・あまり私を怒らせるなよ?」

 

 

ディーラーの返しにレフの声が一瞬で冷えた瞬間、強烈な衝撃波がディーラーに直撃し、その全身が肉片と布きれとなって砕け散り、その場に黄金の水晶体だけ残される。あまりにも一瞬の出来事に怯み、じりじりと後退してしまう立香。目尻に涙が溜まっているが、流さない様に耐えているらしく今にも飛び出しそうな体を精一杯抑えていた。

 

 

そして何事も無かったかのように手に聖杯を引き寄せたレフの背後の空間が歪み、真っ赤な巨大地球儀、カルデアスの姿が現れる。

 

 

「な……なによあれ。カルデアスが真っ赤になってる……?嘘・・・よね?あれ、ただの虚像でしょう、レフ?」

 

「本物だよ。君のために時空を繋げてあげたんだ。聖杯があればこんな事もできるからね。さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがおまえたちの愚行の末路だ。人類の生存を示す青色は一片もない。あるのは燃え盛る赤色だけ。あれが今回のミッションが引き起こした結果だよ。良かったねぇマリー? 今回もまた、君のいたらなさが悲劇を呼び起こしたワケだ!」

 

「ふざ──ふざけないで!私の責任じゃない、私は失敗していない、私は死んでなんかいない……!アンタなんか、レフじゃない!アンタ、どこの誰なのよ!?私のカルデアスに何をしたっていうのよぉ……!」

 

「アレは君の、ではない。私が作った物だ。まったく──最期まで耳障りな小娘だったなぁ、君は」

 

 

するとオルガマリーの体がレフの腕の動きと共に空中に浮き、徐々にカルデアスへと身動きの取れぬまま引き寄せられていく。咄嗟に、ハンドガンマチルダを構え、レフ目掛けて乱射する立香だったが、見えない何かに弾かれてしまう。ただ、見詰める事しかできなかった。

 

 

「なっ……体が、何かに引っ張られて・・・!?」

 

「言っただろう、そこは今、カルデアに繋がっていると。このまま殺すのは簡単だが、それでは芸がない。これで君の面倒を見るのも最期だ。そのくだらない望みを叶えてあげよう」

 

 

弱者を虐げる愉悦を感じさせる三日月の様な笑みを浮かべ、レフは嗤う。

 

 

「君の宝物とやらに触れるといい。なに、私からの慈悲だ。ありがたいと思ってくれたまえ」

 

「ちょっ──なに言ってるの、レフ?私の宝物って……カルデアス?や、止めて。お願い。だってカルデアスよ?高密度の情報体よ? 次元が異なる領域、なのよ?」

 

「ああ。ブラックホールと何も変わらない。それとも太陽かな。まあ、どちらにせよ。人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。遠慮なく、生きたまま無限の死を味わいたまえ」

 

「いや──いや、いや、助けて、誰か助けて!わた、わたし、こんなところで死にたくない!だってまだ褒められてない……!誰も、私を認めてくれていないじゃない……!

どうして!?どうしてこんなコトばっかりなの!?誰も私を評価してくれなかった!みんな私を嫌っていた!やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……!だってまだ何もしていない!生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに──!」

 

 

その、心の底から響き渡る本音の叫びに、立香とマシュが、カルデアの面々が、苦々しい顔を浮かべ、レフはそれを見て満足気に唸り、オルガマリーがカルデアスに吸い込まれ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――いいや。アンタは、俺のストレンジャーの一人だ。アンタの指示があったから、ストレンジャー(マスター)はここまで来れた、俺を召喚できた。そして何より、頼りないと言っていた俺から商品を買ってくれた客だ。―――だから、俺はアンタを評価する」

 

 

シャーッと言う何かが滑る様な音と共に、オルガマリーの手に何かが巻き付いて引っ掛かり、下へと引っ張られる。それを見て、立香はつい先刻、己のサーヴァントから見せられた商品の一つ、フックショットだと気付いて。

 

 

「死なせるかよ・・・俺の顧客だ!」

 

「貴様・・・があっ!?」

 

 

背後にいたその人物に気付いたレフが再び不可視の衝撃波を放とうとするも、放り投げられていた焼夷手榴弾から放たれた炎で焼かれ、さらにガシャコンというポンプアクションの後に放たれた散弾と衝撃をもろに受け、燃えたままゴロゴロとそれほど急ではない丘を転がり落ちて行く。

 

 

「・・・ディーラー?」

 

「ヒッヒッヒッヒェ。アンタに泣き顔は似合わねえな。気丈に振るまえ、アンタは強いんだから」

 

 

自分を引っ張って抱き寄せ、至近距離でそう言ってきた人物・・・ディーラーに、照れて顔が赤くなるオルガマリー。それを見て安堵の表情を浮かべる立香とマシュ。しかし、それを許さない人物がいた。

 

 

「おのれ・・・何故、生きている貴様!」

 

「何故って言われても困るな。それよりアンタこそ何で生きている。燃えて散弾を喰らったんだ、戦闘員ガナード程度ならこれで絶命するはずなんだがなあ?」

 

「く、は……くはははははははっ!そうだ!残念だったな、使い魔風情が!この程度では私は死なない!そう!私は死なない!そして貴様達はこれから知る地獄と化した世界と残酷な未来に絶望し、苦悩し、自ら死すことになるのだ!」

 

「勝手に決めるなイカレ野郎が」

 

 

ダダダダダダッ!と、シカゴタイプライターの銃撃がレフをハチの巣にしていく。しかしそれでも瞬く間に修復されるレフに、嫌気がさしたのかマインスロアーを取り出しその心臓部を狙う様に発射、同時にハンドガンを撃って着弾して直ぐに爆発させるディーラー。

 

 

「クハハハハハハハッ!無駄だ無駄だ無駄だ!王の寵愛を受けし私に、その程度の攻撃が通じるかあ!」

 

「・・・通じないにしても、奪うぐらいは出来たみたいだぜ」

 

「なに?」

 

 

振り返るレフ。そこには、何時の間にか黄金の水晶体・・・聖杯を回収したマシュが、立香を守る様に立っていた。己の失態に、レフは恥じるよりもまず怒りが頭を支配し憤怒の表情を浮かべる。

 

 

「おのれ!・・・まあいい、私の使命は既に完遂している。これならば我が王もお怒りにはならないだろう。では、さらばだ諸君。私には次の仕事がある。君たちの末路を楽しむのはここまでにしておこう。このまま時空の歪みに飲み込まれるがいい!」

 

「サドラーにも負ける小物だな。ウェスカーを見習えクソが」

 

 

何やら金色の粒子となって消滅し始めるレフに、逃げようとしている事を察したディーラーはすぐさま、オルガマリーの手を握り、語りかける。

 

 

「・・・いい武器があるんだ、ストレンジャー」

 

「・・・渡しなさい」

 

 

ディーラーの言葉に頷いたオルガマリーが受け取ったのは、ピストルクロスボウと専用の矢を数本。ディーラーに導かれるまま矢をセットし、遥か下で立香達に向けて高笑いしている外道へと照準を向ける。

 

 

「ではな、全員仲良く死にたまえ。・・・ああ、良かったじゃないかオルガ。君は最後の時にようやく一人ではなく、皆と死ねるんだ」

 

「ええ、貴方も一緒よレフ!」

 

「なに・・・ギャアアァアアアアアアアアアアアッ!?」

 

 

手始めに放られた閃光手榴弾で目をやられ、彼の意思が必要なのか帰還が一旦停止される。そこ目掛けて、火薬が取り付けられた矢が飛来、視力を一時的に失ったレフの顔面へと直撃。爆発四散するもまた戻る。ならばと、次の矢を番えて構え、トリガーを引くオルガマリー。

 

 

「死ね、死ね、死ね、死ね!私を騙し続けたアンタも、アンタみたいな外道を信じた私も、全部全部吹き飛べぇえええっ!」

 

 

先程の絶望の声とはまた違う、心からの怒りの声が響き渡り、爆発が立て続けに緑の紳士を襲って行く。いくら元に戻るからと言って精神まで無事ではない。もう何度目かという時、何とか元に戻って疲弊しかすれる目で見上げたレフが、「怒らせなければよかった」と後悔しながら見たのは。

 

 

「コイツでとどめだ。しぶとい野郎にはコイツが一番だ」

 

「ええ、そうね・・・!」

 

「・・・おのれ、おのれ、オノレェエエエエエエッ!?」

 

 

無機質な赤いロケット弾頭。彼は知らないだろうが、これはレオンがプラーガの力を解放したサドラーに引導を引き渡した商品、ロケットランチャー(特殊弾)であった。胸に突き刺さり、内側から大爆発を起こして吹き飛ぶレフ。爆炎の後、そこに彼の姿は無かった。

 

 

「やった・・・やったわ、ディーラー・・・」

 

「よくやったぜストレンジャー。後はアンタを助けるだけだな」

 

 

へたれこんだオルガマリーに、リュックを置いて何かを探しながらそう言うディーラー。その言葉に嬉しく感じながらも、オルガマリーは悲しげな笑みを浮かべた。

 

 

「・・・無駄よ。あの聖杯はただの魔力リソース、死人を生き返らせる事は出来ないわ」

 

「俺は顧客を死なせない」

 

「無駄な事はしないで、私は貴方に感謝しているんだから。ロマン、通信を開きなさい。私はこれから死ぬ。だから、カルデア所長としてこれよりスタッフ全員に最後の命令(ラストオーダー)を・・・」

 

「必要ないぜ、ストレンジャー」

 

 

そっと、オルガマリーの髪に何かを取り付けるディーラー。駆け寄ってきた立香がそれを確認すると、水色の宝石が付けられた銀の髪飾りだった。

 

 

「そいつは蛍石の髪飾り。アンタに合いそうなのはそれしかなかったから我慢しろ」

 

「いったい、何を・・・私はもう、死んでいるのよ・・・?」

 

「死にながら生きている連中もいる。大事な物さえ忘れなければ、それはまだ死んでいない。生前の俺の様にな。・・・生きたいか。今からやるのは見よう見まねで成功するかは賭けだ。それでも、アンタが生きたいなら何とかしてやる…俺は武器商人だ、客からの注文(オーダー)には応えるぜストレンジャー」

 

 

そう言う彼に、我慢していた涙を決壊させるオルガマリー。レフとの決着をつけ、自分なりのケジメは付けた。後は責任を果たすだけだったのに、彼の言っている事に・・・心が揺れた。

 

 

「・・・きたい。そりゃあ、生きたいわよ!まだ、私は生きたい!あんな奴に、こんな事で、死にたくない!」

 

「・・・了解だ、オーダーに応えるぜ。――――モリル エス ビビル…モリル エス ビビル…モリル エス ビビル…」

 

 

いきなり、何やら目を瞑り両手を天に掲げて呟き始めるディーラー。しかし、その間にもどんどん特異点が崩れていく。既に、立香とマシュの強制送還は始まっていた。それを見て、覚悟を決めるオルガマリー。

 

 

「ロマニ・アーキマン!貴方に私の後任としてカルデアの全権を任せます。スタッフ全員も聞きなさい。

・・・我々の希望、人類最後のマスターである藤丸立香を全力でサポートしなさい!逃げることも負けることも私の様に死ぬことも許しません。貴方たち一人一人の肩に世界の命運は掛かっている、一人として欠けることなく世界を救いなさい!これが私の、最後の命令(ラスト・オーダー)です!」

 

 

その言葉に、立香の端末映像から何時にも増して真面目な顔を浮かべるドクターロマンは、決意の籠った表情で彼女を見つめ返す。

 

 

『人理継続機関フィニス・カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィア。貴女の命令(オーダー)は必ず守ります。…マシュ、立香ちゃん。強制送還する、気を引き締めて…!』

 

 

そのロマンの言葉と共に、光の粒子となって消滅する立香とマシュを見送り、こちらも消えかかっているオルガマリーと共に残されたディーラーは呪文(?)を終え、オルガマリーに向き直る。

 

 

「いいのかい?まだ、助かるかもしれないぜ?」

 

「諦めたわ。私、生きたいけれど…カルデアの所長として最低限の事は成し遂げた。満足よ。…付き合せちゃってごめんね、ディーラー」

 

「なに、俺は死んでもマスターの元に帰れるからな。…それより、何を諦めているんだ?」

 

「え?」

 

 

呆けるオルガマリーの綺麗な髪から、蛍石の髪飾りをそっと引き抜いたディーラーはそれを大事そうにリュックに仕舞い、初めて顔を隠す布を下げて安心させるように笑みを浮かべた。

 

 

「言っただろう。俺の顧客は、死なせないってな」

 

 

そして、オルガマリーは消滅し、共に特異点Fも瓦解。それに巻き込まれ、ディーラーもまた消えて行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからな?俺は一度、ストレンジャー(レオン)に武器を売買していた所を見つかり邪教徒共に捕まって檻に入れられた事がある」

 

 

何処か安心するガラガラ声を聞きながら目を覚ます。ありえないはずだが、目を覚ます。ここはどこだ?視界に映るは、知っている天井。聞き覚えのある声が隣から聞こえてくる。視線をずらすと、青い炎とオレンジ色の髪と藤色の髪が見えた。

 

 

「その後、何を考えたのか邪悪なる宝玉何て言うお宝と十字架を使って何かの儀式を始めてな。そこを、戻ってきたストレンジャーがロケットランチャーで邪教徒共を吹き飛ばした。爽快だったな。その時聞いた儀式の呪文が、アレだ」

 

「なるほど。何で降霊だって分かったの?」

 

「太古の昔から宝石と儀式を使うんだったら降霊の儀式って相場が決まっているもんだ。あんな不気味な大広間でやるんだ、それなりに重要な儀式だったんだろうよ」

 

「それを、今回蛍石の髪飾りを媒体に所長の霊体を使って再現したと言う訳ですね」

 

「そういうことだ。咄嗟な思いつきで、見よう見まねでもサーヴァントパワーで何とかなる物だな」

 

「世界中のキャスターに怒られるよ…?」

 

「質のいい宝石を売ってご機嫌をとるさ」

 

「それができるのが恐ろしいですねディーラーさんは…」

 

 

と、そこで会話が途切れる。どうやら、自分が目覚めた事に気付いたらしい。顔を上げ、傍にある鏡を見ると、自分の髪に綺麗な宝石の付けられた銀色の髪飾りが付けられている事に気付く。

 

 

「起きたかストレンジャー。ダヴィンチちゃんとやらに仮の肉体を用意してもらい、俺がありったけのグリーン+レッド+イエローハーブを飲ませて命を少しだけ繋げた。悪いな、かっこつけていたところを本当に助けてしまった」

 

「ダ・ヴィンチちゃんさ!彼の規格外っぷりと私の天才っぷりに感謝したまえ!」

 

 

突如自動ドアが開いて入って来た知人の騒がしさに、溜め息が零れる。次に見えたのは、涙を目いっぱいに溜めた少女二人で。

 

 

「…おはよう。藤丸、マシュ」

 

「「…っ、おはようございます、所長!」」

 

 

どうやら自身を救ってくれた彼の様に、生き汚く生き残ったのだとそう実感し、少女二人の抱擁を受け止めるのであった。




「いい武器があるんだ、ストレンジャー(オルガマリー)」

オルガマリー救済ルート。何故か武器商人が捕まっていたノビスタドールからの逃走劇後の出来事を、自己解釈してみました結果です。降霊術にしか見えなかったんだ赦して。今の所長はダ・ヴィンチちゃん製の人形に降霊させただけの状態。髪飾りが媒体です。蛍石の髪飾りなのは単純に似合うかもと思ったため。邪悪なる宝玉よりは、ねえ…?

裏技。イエローハーブで命をちょっと増やす。これは武器商人もできますが元の耐久がアレ過ぎて焼け石に水。原作の描写ってそう言う事だよね…?

オルガマリー、カリスマ発揮。レフ教授フルボッコ。イメージは近付いてくるサドラー人間態にありったけの爆弾矢叩き込むエイダの図。最後の一撃はタイラント。レフの攻撃描写はこれでよかったのか…

オルガ「貴方が後悔するまで爆発させるのをやめない!」
こんな感じでした。なお、爆発四散したレフは魔術王に回収されましたとさ。


次回は閑話です。新たなサーヴァントを召喚してオルレアンに備えます。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。