Fate/Grand Order【The arms dealer】 作:放仮ごdz
あ、活報にて五章、六章の構想を公開したのでぜひそちらもどうぞ。
今回はオルガマリーVS「M」&「P」、ジキル邸襲撃の顛末、そして脚本家が一足早く登場。楽しんでいただけると幸いです。
「やあ、おかえりアシュリー。彼が情報提供者かい?」
「ええ、Mr.アンデルセンよ」
「ほう。なかなかいい隠れ家じゃないか。ゾンビ共の侵入も心配しなくてよさそうだ。気に入った、俺は隣の書斎をいただこう。荷物を解いているから、何かあったら声をかけてくれ。ああ、入るときはノックを忘れずにな」
1人での護衛と言うどこぞのエージェントを思い出す命令だと張り切ったアシュリーによる体を張ったボディーガードにより、無事にジキルのアパルメントに辿り着いたアンデルセン。ジキルの承諾も得ずに書斎を陣取り絶好調であった。
「ボディーガードはいる?今なら絶賛もれなく無敵のライダーが一緒に居れるけど」
そんなアンデルセンに、わざわざ書斎にノックしてから入り問いかけるアシュリー。初の護衛でテンションが可笑しくなっていてふんぞり返っており、アンデルセンは馬鹿みたいな目で一蹴する。
「ヴァカなのか?そんなものいらん、俺についていて何になる?」
「マスターも納得の美味しい紅茶も出るわよ?」
「むっ・・・ではいただこう」
マスターお墨付きの紅茶に釣られあっさり懐柔してしまうアンデルセン。ろくなものを飲んでいなかったためしょうがない。そんな微笑ましい様子を扉越しに見たジキルが笑いながら情報を集めていると、自発的に掃除を行なっていたはずのフランがとてとてと駆けて来た。
「ウゥー、アァー」
「うん?どうしたんだいフラン。外がどうかしたのかい?」
袖を引っ張られ、笑いながら窓の傍に連れて行かれるジキルは、フランの指差す先を見て、何を言いたいのかを理解し、表情を引き締め懐のナイフの所在を確かめる。
「アシュリー、来てくれ!」
「どうしたのジキルさん?」
「なんだ騒々しい・・・さっきの言葉は取り消すぞ。何だこのゾンビ共の数は」
呼ばれて出てきたアシュリーはそれを見るなり顔を青ざめてどたばたと裏口に駆けて行き、ついてきたアンデルセンは溜め息を吐く。窓の外に目に見えてこちらに向かってくるゾンビの集団がいた。
「フラン、アシュリー、手伝ってくれ!ドアと窓を塞ぐ!立香やオルガマリーが戻って来るまで何とか持ち堪える!」
「では俺は休んで置こう。重労働など何の役にも立たんからな!」
「せめて怪しい所を確認しなさいよ・・・」
「ふん。古書店主の二の舞はごめんだ。それぐらいならきっちり仕事しよう」
棚を担いで窓へと急ぐアシュリーの擦れ違い様の文句に、溜め息を吐きながら動き出すアンデルセンは、ガタガタと何かが窓を叩く音を聞くや否や急いで向かった。
「・・・アシュリー。君、戦闘は?」
「人一人守るならともかく防衛戦は苦手ね・・・ああ、私を守ってくれた時のレオンとルイスはこんなピンチを切り抜けてたのね・・・」
「・・・危なくなったら、飲むしか・・・無いのか・・・!」
「ジキル?・・・任せなさい!マスターに頼まれたもの、守って見せるから!」
懐から取り出した霊薬を握りしめて青ざめた顔で呟くジキルに、自信満々に甲冑を身に纏い胸を叩くアシュリー。籠城戦など過去に「守られる側」としてしか体験した事が無いが、それでも以前の旅で最後までマスターと一緒に居れなかったという苦渋からの意地がある。
「心配しないで。助かる道は必ずあるから」
そうよね、レオン。そう彼方を仰ぐ。よく分からない物を植え付けられて不安だった自分を安心させるように彼の言った言葉。それが、今のアシュリーを強くする。
「この!」
謎の美青年「M」から湧き出したアワビの様な何かが集束し、人型になったそれ・・・リーチマンを、咄嗟に構えたピストルクロスボウをぶちかますオルガマリー。しかし飛び散ったアワビが集束して再びリーチマンを形作り、両腕を伸ばして来たため飛び退いた。
「その程度の爆発では私の可愛い子供達はビクともしないよ。規律・忠誠・服従。忌々しいアンブレラの三大原則だが、それすらろくに出来ない人間では敵わない」
「これが可愛い?・・・それはさぞ特殊な性癖ね・・・」
「理解されようとは思わんさ。人間なんかよりよほどいい。あの二人にはファイルからか正体共に弱点を看破され苦渋を味わったが、それがない君達には未来永劫分からない。そうだろう?」
「私も分かりませんが、ふむ。・・・そうですね、私も加勢しましょう。土よ。水よ。風よ」
「っ!モードレッド、任せた!」
「おう!」
襲い来るリーチマンの触腕による波状攻撃の合間に「P」の放ってきた魔術を、対魔力を持つモードレッドに打ち消してもらいそのまま任せて、自分は己のサーヴァントと共にリーチマンの攻撃を掻い潜りながら反撃を試みるオルガマリー。
しかしアルトリアの斬撃はすぐに再生され、清姫の炎はリーチマンが身代わりとなって受けてしまい真面に攻撃が通らない。さらに雪崩れ込んでくるゾンビの群れと、Pの生み出すホムンクルスの軍団。数の暴力を体現している光景に、オルガマリーは応戦しながら思考する。
「まだ生き残りがいるかもしれないしエクスカリバーは使えない・・・アルトリア、突破口を!Mだけを狙いなさい!」
「はい、マスター!行くぞ・・・
不可視の剣を構え、風の鞘を解放して高速で突進。立ちはだかるゾンビとホムンクルスの群れを吹き飛ばしながらMの眼前まで迫り、盾として生み出されたリーチマンを黄金に煌めく刃で一刀両断。飛び散るアワビ、吹き荒れる暴風。その中で、オルガマリーはその手にハンドガン・ブラックテイルを構え、その光景を垣間見たMはにやりと狂笑を浮かべ両手を広げた。
「撃て、撃つがいい。だが我がアンブレラへの怨念は、誓った復讐は止まらない・・・!」
「・・・ッ!」
銃声が鳴り響き、的確に眉間を撃ち抜かれてふら付く白衣の男。その光景に、アルトリアが、清姫が、モードレッドが、そしてオルガマリーが驚愕する。眉間を撃ち抜かれて尚、Mと名乗った男は倒れない。それどころか血さえ流さず、白目を剥いた顔を向けてニヤリと嗤い、その腕の先から複数のアワビとなって崩れ落ちた。
「・・・偽物。奴も、あのアワビで形成されていたのね。本物は、別の場所に・・・?」
崩れ落ちた傍から当たりかしこに散って行くアワビの群れを余所に、襲い掛かって来たゾンビを撃ち殺しながら、残ったPに向き直るオルガマリー。モードレッドを魔術の水流で吹き飛ばしたPは、散っていくアワビの光景を目にして溜め息を吐いた。
「はあ。今あなたに離脱されたら私の敗北が確定するのですが。しかし大義のためならば致し方ありませんか」
「大義、ですって?」
「はい。スコットランドヤード内部には私たちの必要とするものが保管されていました。流石は魔術協会、時計塔が座す大英帝国ではある。魔術的にも厳重な封印が施されていました。大義の障害となった彼らが死んだのには、私もどうしようもない程に哀しみを禁じ得ない。」
「・・・矛盾しか感じない言い振りね、P。いいえ、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルススさん?」
反応するP、否・・・四大精霊を操る者、真のエーテルを求む者。稀代の錬金術師として知られる伝説的な医師、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。限りない情報から真名を看破したオルガマリーはしたり顔だ。
「ほう、我が真名を見抜くとは、聡明な魔術師殿だ」
「簡単よ。ゴーレムと言えばアヴィケブロン、ホムンクルスと言えばパラケルスス、魔術師の常識よ。それに五大元素を扱えば、藤丸の様な一般人ならまだしも魔術師なら誰だって分かるわ」
「さて、彼を仕留めた銃の腕、お見事。私も、ここで貴方達の刃に掛かるべきなのでしょうね。悪逆の魔術師は英雄に倒される。それは、私の望む回答の一つでもある。ですが。まずは私も役を果たす。M。後は任せました」
ボソッと呟き、姿を消し始めるパラケルススに、本来魔法にも及ぶ空間転移を聖杯か何かの力で行なっていると気付いたオルガマリーは逃がすかと言わんばかりにブラックテイルを構えるも、再び姿を現したリーチマンの触腕に足を掬われて誤射。見当違いの方向に飛んで行った銃弾が遥か横を通過するのを見ると、パラケルススはにっこりと笑みながらその姿を完全に消した。
「くっ、やはり刃が通じない・・・!?」
「清姫、炎を!」
「はい、お任せを!」
オルガマリーの足に巻き付いた触腕を外そうとリーチマンの頭部にエクスカリバーを突き刺すアルトリアだったが手応えは無くそのままオルガマリーを捕えようと腕をさらに伸ばし、先程の事を思い出したオルガマリーの一声で清姫の放った火炎弾を受けアワビの群れに分裂し苦しみ悶えながら焼失するリーチマン。
「ご無事ですか、マスター?」
「はあ、はあ・・・なんとか、ね。ゾンビみたいに噛み付いてこられたらアウトだったかも。やっぱり、このアワビは炎に弱いみたいね。アルトリアの攻撃は防がなかったのに、清姫の攻撃は身代わりで受けていたから気になってね」
「ウーズと同じですか。しかし群体とは厄介な・・・」
「関係ねえ。全部薙ぎ払ってやるまでだ、そうだろアーサー王?」
「・・・ええ、貴方に言われるまでも無い、モードレッド」
飛び掛かろうとしていたアワビを赤雷迸った宝剣で突き刺し、笑うモードレッドに襲い掛かろうとしていたゾンビを斬り捨てながら無表情で返すアルトリア。この親子はもう少し仲良くできないのか・・・とオルガマリーは溜め息を吐くが、そんな余裕もそんなにもたなかった。
『所長!悪い報告だ!現在、立香ちゃんの元と分断されたゾンビやエネミーの群れがスコットランドヤードに押し寄せている!このままでは囲まれて・・・』
「・・・もう手遅れよ、ロマニ・アーキマン。あのよく分からないアワビとホムンクルスを生み出し続けていたパラケルススを退けたとはいえ、完全に囲まれたわね・・・」
『もう一つ悪い知らせだオルガ。ジキルのアパルメントが襲撃されている。パラケルススが回収した、スコットランドヤードに保管されていた物も気になるが、至急帰還してくれ。立香ちゃん達も向っている』
「いや、少し待って。・・・霧の中から、何かが・・・!?」
取り囲むエネミーの群れに、オルガマリー達が突破しようと身構えた時。ゾンビの群れから逃げる様にして、スコットランドヤード近くの路地から飛び出してきた男の姿があった。スピードはゾンビとどっこいどっこいで、身体能力の低さが見て取れる。オルガマリーの姿を見付けた男の顔は、満面の笑みであった。
「吾輩を召喚せしめたのはもしや貴方か!キャスター・シェイクスピア、霧の都へ馳せ参じましたが絶賛ピンチですぞ!どうやらこれは聖杯戦争ではなく、吾輩の苦手とする生死を懸けたサバイバルの様子!神よ、吾輩が傍観すべき、血沸き肉躍り心震い魂揺らす物語は何処にありや?と困り果てていたところです。どうか御助力を願いたい!」
「シェイクスピア・・・?また、新しいサーヴァントの様ですねマスター」
「どうするんだ?オレの大嫌いな搦め手野郎でどう見てもハズレだし、斬るか?」
「少なくとも敵じゃないと思うわ。それに、目の前で助けを求められて見捨てていいはずがない。救出しましょう、清姫!」
「シャアアアア!!」
男、シェイクスピアの助けを求める声に、トラウマを刺激されて何時もは見せない顔をしたオルガマリーにときめいた清姫の炎がシェイクスピアを襲おうとしていたゾンビごと周りの有象無象を焼き払う。さらに、炎を物ともせずに飛び出してきたオートマタとヘルタースケルターの一団もアルトリアとモードレッドが瞬く間に斬り伏せ、救出されたシェイクスピアは未だに燃え続ける炎に視線をやりながら拍手喝采した。
「おお、なんと熱く赤い炎か!まさに『
「何だか知りませんが何やら感銘を受けましたわマスター!」
「落ち着いて清姫。炎が溢れてるから」
「マスターが存在しないことは不幸ではありますが、こうして貴女にお会いできました。これも運命でしょう。今は貴女方の物語を紡ぐとしましょう。素晴しい恋物語を期待しておりますよ」
「・・・・・・・・・とりあえずよろしく、シェイクスピア」
シェイクスピアの言葉を気にしないことにしたオルガマリーは清姫をなだめながら、視線を周りに動かす。エネミーの数は減った、今なら炎の中を突っ切れば突破できるだろう。しかし気になるのは、ロンドンの街中でいつも感じていた違和感。いや、オルガマリーが過去に受けて来た物と同じ、観察するような視線だ。
「・・・さあ、急いで戻るわよ。それとアルトリア、モードレッド。戻る道中に何か感じたら教えなさい」
「というと?」
「あのMと名乗ったサーヴァント、私達の居場所を把握した上で待ち構えていた。監視されていると考えるのが妥当よ。特にこの、アワビの様なものにね」
リーチマンやMが消えた後もいくつか散らばったままのアワビの様なそれを指差しながら言うオルガマリー。確証はないが、そう考えれば納得行くものだ。
「分かりました。では、モードレッドが先行を。私がシェイクスピアを運びますので、マスターは清姫に」
「え」
「承知しましたわ!」
帰り道、筋力Eのはずの清姫にお姫様抱っこされて赤面したオルガマリーに、周囲を確認する余裕もなく、直感のスキルでアワビを見付けたセイバー二人が片っ端から駆除する光景を見て、シェイクスピアは一言。
「ふむふむ、なるほど……。マスター殿はご存知ありませんかな?『
その言葉に、清姫の腕の中でさらに赤面したオルガマリーが身を縮み込ませたのは言うまでもない。
一方、ゾンビが押し寄せドアが粉砕される間近のジキルのアパルメント。
「せめて外に出られれば・・・!」
窓を割りバリケードを突破しようとするゾンビを、怪力だったらしいフランと共に片っ端から殴り飛ばし、しかしそれ以上は何もできず歯噛みするアシュリー。彼女の宝具は自己防衛特化型だ。いくら怪力のスキルを有していてもろくな攻撃もできないし、そもそもスキルからして攫われて本領発揮するという、守られる事で真価を発揮するものだ。レオンやルイス・セラの様に閉じこもりながら銃で撃って撃退なんてことはできない。無力に拳を握りしめる。
「くっ、ここまでか・・・!」
その背後で、アンデルセンを庇う様に自前のナイフを手にして警戒するジキルが、観念したとばかりに薬瓶を取り出す。これさえ使えば、撃退はできるだろう。しかし、それは彼の終わりを意味する。迷っているうちにドアが破壊されて突破され、アシュリーが拳を振りかざし、ジキルが服用しようとしたその時。
「よく耐えた。上出来だぜ
「ディーラー!?」
ジキルの前に姿を現したディーラーの手にした、限定仕様セミオートショットガンが火を噴いた。100発もの弾丸が立て続けに乱射され、ゾンビ・ウーズ・オートマタ・ホムンクルス・ヘルタースケルターを粉砕して行く。見れば、先程まで襲おうとしていた黒い異形・・・モールデッドが全て、ヘルタースケルターの腕をもぎ取ったりホムンクルスの首を噛み千切ったりなどの妨害をし始め、崩れた陣形は瞬く間に崩壊し、全弾撃ち尽くされたセミオートショットガンにより殲滅された。
「よかった、間に合った!」
そこへ駆けつけたのは、何故かエヴリンを担いでいる立香と、マシュ、セイバーオルタ、ジャック、ジルといった面々。立香の背中から降りたエヴリンは前にかざしていた手を下ろし、ジャックの労いの言葉を受ける。すると困惑しているジキルとアシュリーに、マシュが進み出て説明を始めた。
「私達はドクターからここが襲撃されたという旨を聞き、急いで戻ったのですが視界に捉えたところでちょうど扉が破られているところが見えて、エヴリンさんの力を借りてモールデッドに足止めしてもらい、それでも間に合わないと先輩の苦渋の決断で・・・」
「・・・マスター、ディーラー。ごめんなさい、私が不甲斐無いせいで・・・」
「ううん。私たちが駆け付けるまで、耐えてくれてありがとうアシュリー。貴女のおかげで、ジキルさんやフラン、アンデルセンたちを助けられた」
「ああ、だから気にするなお嬢様。俺の命一つでどうにかなるなら安いものだ」
「無力な民を守る。そういう意味ならお前も立派な騎士だ、アシュリー。少なくとも私欲のために暴れるモードレッドのそれより遥かにな。それとディーラー、そんな事を言っているとまた怒鳴られるぞ」
「・・・安い物だろう?ストレンジャー」
「安い命なんてない、って何度言えば分かるのディーラー」
何時もの様に立香に怒られるディーラーと、それを呆れた目で見守るマシュやセイバーオルタ達を尻目に、アシュリーは鎧を解除した姿で微笑んだ。自分を守り、救ってくれたあの人の様に、誰かを守れた、救えた。ただそれが嬉しかった。
「無事、ジキル!?」
「あ、所長。お疲れ様です。何とか間に合いました」
そこへやってきたのはオルガマリー一行。破壊されたドアを見て焦ったのか、息も絶え絶えだ。それから、ジキル邸のドアや窓を、店を自分で作ったというディーラーが直したり、ジャックやエヴリンの存在にオルガマリーが驚愕し、モードレッドと戦闘になりかけたり、ジルやシェイクスピア共々紹介したり、ジルがフランと再会できた事を喜び、フランケンシュタイン博士がゾンビ化ではなく爆死したと聞いて顔を暗くしたり。そして立香がアンデルセンをオルガマリーに紹介したところで、ようやく絵本作家は口を開いた。
「さて、よく帰って来たと言って置こうカルデアのマスター達よ。そしてお前がもう一人のマスター、オルガマリー・アニムスフィアか。ヤードの警官たちは残念だったな」
そう言われたオルガマリーの表情が歪む。そうだ、自分は助けられなかったのだと思い出したが、それを見て溜め息を吐いたアンデルセンは続ける。
「いい加減、少しは休んでおけマスター共。聞けば、こちらへ来てから休みなしなのだろう?根を詰めて良いモノが仕上がれば作家も苦労はしない。執筆であれ聖杯探索であれ休息が必要だ。
特にお前だ、藤丸立香。人間観察のスキルを持つ俺でなくても目に見える程、精神的に参っているな。どうした、哀れなナーサリー・ライムに同情でもしたか?するだけ無駄だ、一度読み終えた本の内容を何時までも引き摺るな。次の本をろくに読めなくなるぞ」
「・・・うん。大丈夫、引き摺ってばかりじゃいられないから」
「休みついでに一つ教えて置こう。俺やジル・バレンタイン、ナーサリー・ライムは魔霧から現界した。マスターの存在も無く、召喚の手順も踏まれずに、だ。モードレッドやシェイクスピア、エヴリンにジャック・ザ・リッパー、ネメシスにレッドピラミッドシングとやらもそうだろう」
今回の事件の根本的な部分を話し始めたアンデルセンに振られたモードレッド、シェイクスピア、ジル、エヴリン、ジャックが頷く。いつの間にか召喚されていた、というのは共通らしい。
「気付けば霧の中に居た。ゾンビを見かけて、バイオハザードだとは分かったけど、フランケンシュタイン博士の家を訪れるまで全部把握とまでは行かなかったわ」
「そんなに考えなかったが何だ、サーヴァントってのは自然に湧くのか?」
「いえ、モードレッド。それは本来ありえないわ。英霊が自然発生的に現界するという意味では僅かに記録はあったけれど、その際には人格を持った存在にはならないはず。いわゆる抑止力、ね。でも、今回の事象は全然当てはまらない。そうよねロマン?」
『その通り。サーヴァントとして英霊を呼び出すには必ず召喚の手順を踏まなければいけない。これまで廻った特異点でも、サーヴァントの召喚は聖杯の影響によるものだ。サーヴァントが自然に迷い出るなんてそんなことは絶対に起こり得ないからね!』
「だとすれば帰結は一つよ。魔霧は聖杯が生み出している。もしくは、霧を生み出す何かが聖杯の影響下にある。だとすればこの魔力の濃さも納得のいくものよ」
そう纏めたオルガマリーに、満足気に頷くアンデルセン。
「現実の多くには必ず理屈が付くものだ。理屈が通用しないのは恋ぐらいだろうよ。想像力を働かせろ。それで大抵の物事は予想できるし、時には予測へ至る。特にオルガマリー、お前はそれに長けている。そんなお前はこの事件の概要をどう見る?」
「・・・今はまだ目的も何も分かった物じゃない。でもそうだ、収穫があったわ。まず、敵だと思われる魔術師三人のうち二人と接触したわ。うち「P」と名乗ったのはヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。もう一人は「M」と名乗ったけど真名は分からず仕舞い。クラスは発言から考えて「
話を振られたジルに全員の視線が向く。この中で一番バイオハザード関連の事件に精通しているのは彼女だ。そんな期待に応え、ジルは告げた。
「・・・・・・恐らく、アワビの様な物はヒルで、その人物の名前はジェームス・マーカス。私の同僚のレベッカ・チェンバースが洋館事件の前日に対峙したらしい、アンブレラ創設者の一人で元アンブレラ幹部養成所の所長よ。アンブレラの暗殺者に殺害され、死に際の彼の記憶を得た女王ヒルが擬態した姿として、アンブレラへ復讐を企てていたらしいわ。洋館事件のバイオハザードも彼の仕業と考えられている。その、女王ヒルとして復活し若返った姿が、美青年だったと聞いているわ」
「ジェームス・マーカス・・・」
判明した敵の名を繰り返す立香。全てのバイオハザードの始まりらしい男に、何かを思い黙り込む立香をディーラーはじっと見つめていた。
一方、ロンドンのどこかにある空洞。巨大な蒸気機関が存在するそこに、パラケルススは転移していた。目の前にいるのは、一人の男と、鉄塊としか言いようがないヘルタースケルターに酷似したサーヴァント。
「・・・ただいま、帰還しました」
「シュー・・・・・・。コォー・・・・・・」
「ご苦労、パラケルスス。先に帰還してすまない、よくやった。だが、いつの間にか倒されたメフィストフェレス以外の手駒になるサーヴァントは未だに回収ならず、か。ゾンビ共も増える一方とはな」
「はい。エクストラクラス:チェイサーを二体確認しましたが意思疎通は不可能でした。アレは諦めざるを得ない。それに接触しようとしていた少女二人も、既にあちらについてしまいました。如何しましょうか、「M」?」
そう尋ねるパラケルススの言葉に、黒衣の男は青髪を掻き上げて笑う。その視線の先には、アワビ・・・ではなく、ヒルに包まれた黒衣の異形が倒れていた。それを見て顔を顰めるパラケルスス。
「私の方でちょうどいいものを回収した。よって大勢に影響はない。私達は「計画」を進めるだけだ」
「ええ。そうですね。その通り。私たちは、サーヴァント。ただ
その言葉に、黒衣の男はほくそ笑む。鉄塊のサーヴァント「B」は、ただ沈黙してその場に居続け、パラケルススは溜め息を吐いた。
シェイクスピア語録難しい。多分意味が違う。
・無敵のボディーガード アシュリー
レオンと同じ事が出来ると張り切った無敵のライダー。何とか籠城戦を制する事に成功。「心配するな。助かる道は必ずある」という台詞は、バイオ4で救出後サドラーとの初邂逅から逃れた際にアシュリーの洩らした「レオン この先どうなるの?」という不安の声に応えたレオンの台詞。なおプレイヤーはそこからアシュリーを守るために四苦八苦しなければならなくなるのですが・・・立香、ディーラー、セイバーオルタに褒められてご満悦。
・ジキルとフラン
片や「飲むしかないのか・・・」と覚悟を決めれずただナイフを構えていただけの人と、アシュリーに加勢して必死に抵抗した少女。正直ジキルじゃ荷が重い。
・アワビ(ヒル)を操るマーカス
某実況者はカブトガニと呼んでいたアワビにしか見えないヒル。t-ウイルスをその身に宿しており、これを利用して列車内で瞬く間にバイオハザードを起こす程の数の暴力を見せる。全ての視界がマーカスと繋がっており、それを利用して監視できる。普通に踏み潰せるため、対処は容易。弱点は炎と日光。
・規律・忠誠・服従
アンブレラ幹部養成所の三大原則。アンブレラと言う企業がどれだけブラックかよく分かる。
・リーチマン&擬態マーカス
どっちもヒル男だが厳密には別物でありどっちも擬態マーカス。リーチマンという名前は、バイオハザード アウトブレイクに登場するみんなのトラウマだが、今回は擬態を解いた姿として呼称する。擬態マーカスもトイレでトラウマ。主に腕を伸ばして攻撃する。大量のヒルで形成している為、いくらでも再生する。弱点武器は火炎瓶とグレネードランチャーの火炎弾。老人姿にしか擬態できなかったが、サーヴァントになった事で青年姿でも擬態可能に。今回はこれを利用して別の場所から遠隔操作していた。
・ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス
よかれと思ってな人。実は今章のモーさんと同じぐらいのキーパーソン。シェイクスピアとは出会いもせず、エヴリンとジャックには邂逅して勧誘していた物のエヴリンに殺されかけて命からがら逃げ延び、諦めずにネメシスやレッドピラミッドシングにも接触したはいい物のやっぱり逃げ出したという、本編では語られない苦労を持つ。
・ウィリアム・シェイクスピア
一足早く召喚された、アンデルセンと同じぐらい使い物にならないキャスター。現在はオルガマリーと清姫の関係をむやみに盛り上げる事を目的としている。宝具は凶悪。
・清姫にお姫様抱っこされるオルガマリー
アルトリアにされた際羨ましがっていた清姫の念願叶った状態。無駄に速い。
・安定のディーラー
オケアノスでのスキャグデッド戦と同じく、死んで駆けつけ怒られる人。ちなみに迷った立香に苛立ったエヴリンが殺した。そのままモールデッドを抑圧するなど縁の下の力持ち。
・ジルとフラン
面識あり。フランケンシュタイン博士が感染したのに気付きながらどうしようもないと放置し、メフィストフェレスに爆死されたと聞いて後悔先に立たず状態のジルを必死に慰めるフランの図。その横でエヴリンジャックとモードレッドが戦闘しそうになっていたのがちょっとカオス。
・アンデルセンとオルガマリー
アンデルセンに気に入られたオルガマリー。オルガマリーも低ランクの人間観察スキルを会得してそう。もはや真名看破なレベルだが。
・ジェームス・マーカス
「M」の正体と思われる人物。復活したと思われていたが実は記憶を引きついでいた女王ヒルが擬態した姿で自分を本物だと誤認していた。アンブレラに復讐を誓い洋館事件を引き起こしたものの最終的に追い詰められ、生存本能に従い擬態を解いた事でその意識は完全に消失したのだが・・・?オルガマリーの推測したクラスは「
やっと今回シェイクスピアを出せたため、次回は一気に進みます。前回も書きましたがいい加減ロンドンを終わらせたい。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。