Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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※諸事情により題名を変更しました。(4/20 7:34修正)
ウェルカム!ストレンジャー…どうも、最近ネタ集めのために見始めた実況動画でバイオ6が普通に好きになってしまった放仮ごです。レオン編のラスボスしつこすぎるけどすごく好み。Cウイルス入ること決定です。

そろそろ題名ネタが尽きて来ました。リベレーションズの題名風にもしたいですがアレはアレで僕自身のセンスが足りない・・・とりあえず四章が終わるまでは頑張って見ます。

今回は場面の移り変わりが激しいです。ネメシスVSマイク、ジルVSアリス(字面だけ見ればゲーム版VS実写女性主人公対決?)、そして最後には今回の黒幕が・・・?楽しんでいただけると幸いです。・・・あ、ナーサリー好きの方はプラウザバックをお勧めしておきます。


託されたんだ応えないとなストレンジャー

偵察を終えたライダーのサーヴァント・マイクは、自らのヘリのローター音に集まってくるゾンビやウーズを機関砲で駆逐しながら、ライトで濃霧を照らしロンドンの空を舞っていた。

 

 

「マスターとの合流地点までもう少しか。余裕だな」

 

 

銃火器を扱えるガナードなどならまだしも、群がるのは有象無象の衆。空を飛ぶというアドバンテージには遠く及ばない。そう確信しているからこその余裕であったが、時計塔を横切ったその時。彼を形成する人格の一人が警鐘を鳴らした。

 

 

「ちいっ!?」

 

 

飛来した飛行物体を、自らの人格をカークに替えてハットトリックのスキルを駆使、急旋回して回避する。見れば、そのまま放物線を描いて建物に直撃したのは、巨大な時計の短針であった。マイクに戻った彼は嫌な悪寒を察知し時計塔、ビッグ・ベンの文字盤をライトで照らすとそこにいたのは、異形の大男。

 

 

「スタァアアアアアアズッッッ!」

 

「クソッたれ!」

 

 

自らの人格の一つの持つ生前の知識から追跡者(ネメシス)と確信し、機関砲の銃口を向ける。重傷の様で腕だけでなく背中からも触手を伸ばしたネメシスは、文字盤に残る長針を両手に取ると二つにねじ切り、ヘリに目掛けて二連続で投擲。マイクは咄嗟に横に回避しながらミサイルを発射、投げられた二発目とぶつかり大爆発がロンドンの空に轟き爆炎が視界を埋め尽くした。

 

 

「スタァアアアアズ!!!」

 

「・・・そいつは反則だ」

 

 

爆炎が晴れた時、ネメシスが取り出しこちらに向けていたのはロケットランチャー。己の天敵であるそれを前に、マイクは、否。彼を形成する人格の一つは。逃げるだけでしかなかった生前と異なり、覚悟を決めた。

 

 

 

「・・・マスター。俺は、あの時。一人だけ逃げ出したんだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マイク?こんな時に何の話?!」

 

 

古書店から離れ、急ぎウェストミンスター橋に向かう立香に突如送られてきた念話。それは初めて聞く声だったが、何となく分かった。マイクの、ヘリパイロットたちの一人の懺悔の声だと。

 

 

『俺は、ラクーンシティ警察の精鋭ともいえるS.T.A.R.S.αチームのリアセキュリティとして配属されて、調子に乗っていた。

 でも、他の奴等とは根本的に何かが違うって気付いてたんだ。プレッシャーに弱いし長いものに巻かれるしかない小心者。それが俺、ブラッド・ヴィッカーズという人間だ』

 

「ブラッド・ヴィッカーズ・・・」

 

 

マイクからは「救援が主だから滅多に出て来ない人格」と聞いていた人物の名に立香は嫌な予感を感じ、走りながら大人しく聞きに徹した。

 

 

『洋館事件の際、俺はゾンビ犬にビビって皆を置き去りに一人だけ逃げ出して、それで何人も仲間が死んで。怖くなって。

 しばらくして戻って、でも無線で連絡がつかなかったからただ偉そうに早く脱出してくれ、って。ただそれだけを何度も何度も流して。俺はお前達を見捨ててないんだ、って大義名分を作って。一晩中ただグルグルと上空を飛んで待機していた』

 

 

それは・・・しょうがないだろう。普通の人間なら、そんな怪物がうようよいる場所に戻ろうなどと思わない。自分だって逃げるだろう。むしろ、離れなかったのは十分凄いと思う。

 

 

『夜明けがもうすぐって所のガス欠寸前で合図が来て、でもクリス達を追い掛けて屋上に現れたバケモノが怖くて、バリーが持ち込んでいたロケットランチャーを落として。バケモノが死んでから迎えに降りて、飛び立って。ただ、それだけしかできなかった。いや、しなかったんだ』

 

 

そこで立香は気付く。彼は、無力な自分を卑下する己と一緒なのだと。いや、むしろ周りに英雄とも呼べる人間達がいたからその卑屈感は想像もつかない。

 

 

『せっかく生き延びたのにアンブレラと敵対するなんて言いだしたクリス達を拒絶して、非難して。そのうちラクーンシティが地獄になってS.T.A.R.S.を付け狙う刺客に襲われて逃げ惑って、ゾンビに襲われた俺を助けてくれたジルにS.T.A.R.S.に入らなきゃよかったと八つ当たりして。最後はジルの前で奴に殺された』

 

「なんで、今、そんな話を・・・?」

 

『・・・そいつが今、俺達を撃墜した追跡者(ネメシス)なんだ』

 

「なっ・・・!?」

 

 

慌てて進路方向、ウェストミンスター橋方面を見上げる立香。濃霧に隠れて見えないが、オレンジ色の火を上げたナニカが落ちているのを見付けた。遅かった。だがしかし、だとすればあそこには・・・

 

 

「皆、あそこ!」

 

「なんだ、ストレンジャー?・・・ちっ、野郎か!オルタ!」

 

 

言われるままに立ち止まり、マシュが盾を構えて自分を守るのを確認するとディーラーがロケットランチャーを構え、セイバーオルタがディーラーから受け取ったセミオートライフルを遥か遠くに霧の中に影だけ見える時計塔に照準を向ける。そこには、落ちて行くヘリには目もくれずこちらを見据えてロケットランチャーを構えるネメシスの姿があった。

 

 

「私が先輩を守ります!お二人は・・・」

 

「奴が(くだん)のチェイサーか。ここで仕留めるぞ!」

 

 

マシュの盾が直撃を防ぎ、爆発の余波に耐え抜いたセイバーオルタとマシュの影に隠れたディーラーが反撃。しかし器用に文字盤の縁を移動して回避したり、背中から伸ばした触手を鞭の様にしてロケット弾頭を叩き落として隙あらばロケットランチャーを撃ってくるとネメシスも負けてはいなかった。

オルガマリーから話は聞いていたものの初めて相対した追跡者の脅威に、立香は戦慄する。アレで何世代も前の生物兵器なのだというから恐ろしい。サーヴァント(反英霊)にまで至ったのは伊達ではない。

 

 

『なあ、マスター。今、下で苦戦しているジルが見えた。やっぱりアイツは俺達と違って一人前で英霊なんだな。それでももう、見て見ぬふりしていい訳が無いよな?』

 

「待って!今、令呪で助けるからちょっと持ち堪えて!」

 

 

絶え間なく襲い来る爆発に怖気付きながら盾から顔を出し、霧の中でもはっきり分かるほど火を噴き今にも地面に激突寸前のヘリを見る立香。最初の念話の時点でどうにかしなければいけなかった。今更間に合わないと分かっていても何とかしたい、そう思ったのに。返って来たのは否定の言葉。

 

 

『それは駄目だ。俺達の宝具はこうしないと活用できない。もう俺達は今回はこのまま落ちるしかないけど。後は頼んだ。ジルを、俺の仲間を、』

 

「駄目、ブラッド!」

 

『必ず助けてくれ、マスター』

 

 

そして爆発。ウェストミンスター橋からそう遠くない路地に墜落したヘリの残骸が周囲にばら撒かれ、その一つ。ヘリのローターがヒュンヒュンと唸りを上げて時計塔の文字盤に激突。ネメシスの体勢を崩し、それを好機と見たディーラーがハンドキャノンを取り出して構える。

 

 

「お願い。オルタ、ディーラー!」

 

「オーダーには応えるぜ。・・・よくやった、ストレンジャー」

 

 

ネメシスの放ったロケットランチャーを、オルタのセミオートライフルから放たれた弾丸が弾道を僅かに逸らし、発射後の硬直を狙いディーラーが両手で構えたハンドキャノンの引き金を引いた。決して遠距離用の武器ではないそれではあったが、的確な狙撃がネメシスの顔面に直撃。

 

 

「スタァ・・・ズ・・・」

 

 

ディーラーの持つ武器の中でも圧倒的な威力を以て頭部上半分を失ったその巨体は、足を踏み外して真っ逆さまに落下した。武器の扱いに精通したディーラーだからできた芸当に、立香は一息吐いて通信機器を操作した。

 

 

「・・・ドクター、ブラッd・・・マイクはちゃんと帰って来た?」

 

『ああ、でもダメージは大きいらしく今は回復に専念しているよ。今から彼が抜けた分の増援を送る準備を行なう。でも・・・これは不味いね』

 

『アシュリーも抜けてるし、今の三人じゃ君を守りきれないかもしれないね。さっきまで耐えていた爆発の音で誘き寄せられたのか、君達の居る場所に多数のエネミー反応が集まっている事が確認できた。マイクの援護があるならまだしもこいつは不味い』

 

「量はどれぐらいだダ・ヴィンチ?」

 

『それが・・・百を超えている』

 

「なんだと?」

 

 

ダ・ヴィンチちゃんの報告に、オルタと共に返り討ちする気満々で尋ねるディーラーであったが、続けて返されたロマンの言葉に思わず固まってしまった。そんな数が纏めてくれば一溜まりあるまい。応戦はできても立香を守り切れるかと言われると微妙だ。

 

 

『どうやらロンドン全体のエネミーが二か所に集い始めている様だ。そこ・・・正確にはウェストミンスター橋付近と所長達の向かったスコットランドヤード付近だ、サーヴァントが扇動して操っているとしか思えない動きだ。これは一体・・・?』

 

「もしかして、エヴリン?」

 

「ロンドン全体って事はゾンビやウーズ、ホムンクルスや機械人形もだろう。恐らく奴は関係ないぞストレンジャー」

 

 

B.O.W.を操ると聞いて先刻対峙した少女のサーヴァントを思い出す立香であったが即座にディーラーに否定される。思わず安堵の息を吐いたがすぐに背筋が凍り付く事になった。

 

 

「そんなに私が嫌い?」

 

「え・・・?」

 

「酷い人だね、おかあさん」

 

「先輩、下がってください!」

 

 

背後から聞こえた声に固まり、恐る恐ると振り返ると微笑を浮かべて立っている黒衣の少女と、その隣で不服とばかりに頬を膨らませている無表情の銀髪の少女。マシュとセイバーオルタが間に立ちはだかるも、余裕で佇む二人に立香はたじろぐ。その表情に浮かぶのは、焦燥と罪悪感。それを目にした黒髪の少女は不満げに鼻を鳴らした。

 

 

「エヴリン、ジャック・・・」

 

「覚えてくれたんだ。・・・ママでもないのに」

 

「じゃあ、約束どおり。おかあさんたちを解体するね」

 

 

苛立ちを形にするように両腕を黒く異形のものにするエヴリンと、無表情のまま楽しげに二本のナイフをマントの下から取り出し体勢を低くするジャック。ディーラー達も警戒態勢を取り、動揺する立香に指示を仰いだ。

 

 

「・・・どうする、ストレンジャー?」

 

「マシュ・キリエライト。何時でもいけます、先輩・・・!」

 

「やるとしても短期決戦だぞマスター」

 

「わ、私は・・・」

 

 

迷う立香を余所に、徐々に確実に異形の群れは近付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふっ、逃がさないわ!」

 

 

一方、濃霧に包まれたウェストミンスター橋の上。行く手を遮るのは炎。氷。突風。メルヘンな見た目なのに爆発するお菓子に人形。そして巨腕の怪物(バンダースナッチ)

 

 

「武器が、足りない・・・!」

 

 

ジル・バレンタインはそれらを紙一重で掻い潜りながら、ハンドガン・サムライエッジの引き金を引いて確実にバンダースナッチを仕留めていく。

しかしどこから魔力を得ているのかナーサリーライムを中心に無尽蔵に放たれ続け、ついに弾切れしたハンドガンに弾込めしながら、橋の下から欄干に腕を伸ばして飛び出してきたバンダースナッチの顔をナイフで斬り付け怯ませると蹴り飛ばすジル。

 

どうやら足腰が弱く一本しかない腕で移動するバンダースナッチは直線的にしか動けない事を悟り、しかし増え続ける現実を直視し、武器がいる・・・そう確信したジルは手元の地図・・・己の宝具の一端に目を移した。

 

 

飛び掛かって来たバンダースナッチの頭部をナイフで一撫でし蹴り飛ばしながら見れば、すぐ真下にその表示がある。なんたる幸運か。手元にある、完全に弾が尽きた強化版ベネリM3S・・・ショットガンに目を移してから、欄干に手を付け・・・躊躇なく、飛び降りた。

 

 

「ええ!?」

 

 

その光景に驚愕したナーサリーライムは攻撃の手を一瞬止めて呆然と立ち尽くした。すぐに気を取り直し恐る恐る欄干に手をかけ見下ろしてみると、その顔に容赦なく炸裂弾・・・と呼ばれるグレネードが叩き込まれ、ナーサリーライムは咄嗟に突風で防ぎながら飛び退き、ジルは再びその場に返り咲いた。その手には、小型のグレネードランチャー・・・Hk-p グレネードランチャーが握られていた。

 

 

「・・・うふふふっ、まだやるのね!安心したわ、逃げられたらつまらないもの。楽しいわ楽しいわ楽しいわ!」

 

「貴女が完全にB.O.W.になったというのなら、容赦はしないわ。火炎弾!」

 

 

装填していた弾を入れ替え、構え直して引き金を引き、炸裂と同時に炎を発する火炎弾を発射。ナーサリーライムはそれを風で吹き飛ばしながらジルの傍らにバンダースナッチを向かわせると、瞬時に弾を入れ替えたグレネードランチャーから硫酸弾が放たれバンダースナッチは苦しみ悶えて消滅。

次々とバンダースナッチを向かわせるも、再度入れ替えれたグレネードランチャーから放たれた、極低温の液化窒素を噴出させる冷凍弾により凍り付き、蹴りで全て破壊されてしまい、たじろぐナーサリーライム。

 

 

「おかしいわおかしいわ!そんなに強いならさっきはなんで・・・」

 

「私は持てる物が限られているの。サーヴァントになったおかげでさらに極端にね。私の宝具はそれを補う物。これまたランダムだから使いにくいのだけどね」

 

 

詰め込まれた道具箱(アイテムボックス)。それがジル・バレンタインの持つ宝具の一つだ。ダビデの契約の箱(アーク)と同じく彼女の召喚と同時に複数個が半径五キロにランダムに設置される代わりに武器・弾丸などを最大六個までしか持てなくなる。設置されるのは人気の少ないところか、休憩所のような場所が多い。事実、先刻までいた古書店にもアイテムボックスは存在していた。

その内部は全て謎空間で繋がっており、さらに内部では時間が止まっており爆発物などでも安全に保持される他、一度入れて別の場所から取り出すという事も可能でさらに無尽蔵に収納できる空間拡張接続宝具である。彼女の所持しているマップには自動的に現在居るエリアが描かれ、それを元に探さないと行けないという一見面倒な宝具でもある。

 

彼女は橋の下のちょっとした足場にアイテムボックスがある事に気付き、飛び降りると同時に現在所持していた弾が切れたショットガンとハンドガンを仕舞う代わりに、生前対峙したネメシスに対して有効的だったグレネードランチャーの炸裂弾、火炎弾、硫酸弾、冷凍弾の五つを持ち出して来たのだ。ちなみに最後の一つはナイフである。

 

 

「まだ、やるのかしら?」

 

「まだ、まだよ。貴女と遊んでも楽しくないわ!ありすを捜す邪魔をしないで!」

 

「!?」

 

 

炎と氷が同時に放たれる。温度に落差があるそれらが合わさればどうなるか分からないジルではなく、咄嗟に飛び降りて回避。水蒸気爆発を背中に受けて水面に打ち付けられるも、水がクッションになったためそこまでダメージは受けなかった。

何とか岸に上半身を出してグレネードランチャーの弾を炸裂弾に交換し、見上げるジルだったがその時、予想だにしないことが発生した。

 

 

「逃がさないわ!“くるくるくるくる廻るドア。行き着く先は、鍋の中!”」

 

「なっ!?」

 

 

風で水ごと空に舞い上げられたかと思えば、ゴキッゴキッという嫌な音と共に、まるで人形の様な球体関節の右腕が伸びて来てジルの首を掴み持ち上げる。

ナーサリーライムの「ありす」への執着心が彼女の持つスキル「自己改造A」が発動し変異の進行を早めていた。今、マスターが彼女のステータスを確認すればキャスターには似合わぬ「筋力A」が見えるだろう。意地の悪い表情を浮かべたナーサリーライムは苦悶に歪むジルの顔を見て笑みを浮かべた。

 

 

「あはっ、楽しいわ楽しいわ楽しいわ!どうかしら!なくなっちゃうの?!脆いのね!」

 

「グッ・・・!?」

 

 

グレネードランチャーを手放してしまい、自らの首を締め上げる人形の腕に必死にナイフを突き立てるジル。血が噴き出るもナーサリーライムは意にも介さず締め上げ続けた。

 

 

「“あわれで可愛いトミーサム、いろいろここまでご苦労さま、でも、ぼうけんはおしまいよ。だってもうじき夢の中。夜のとばりは落ちきった。アナタの首も、ポトンと落ちる!”」

 

「キツいわね、これは・・・」

 

 

歴戦の戦士であるジルといえど、ここまで追い込まれた事は無い。ネメシスによってtウイルスに感染し行動不能になった事はあるが、それとは違い確実に殺す気で来ている締め付けだ。握力だけならネメシスにも勝っていると確信できた。

確かにグレネードランチャーの策は上手く行った。が、こうなるまでは予想だにしなかった。tウイルスに感染したからゾンビに変異するならまだしも、B.O.W.の形を取って来るとは思わなかったのだ。リッカーの様に他のゾンビを捕食し遺伝子情報を取り込んだからでもない。訳が分からない。

自己改造なんていうスキルがあるとは考えもつかなかった。また、短期決戦を想定しすぐそばにアイテムボックスがあるからと回復手段を持って来なかった。それが敗因だ。

 

 

「・・・アンデルセンは合流できたかしら。彼との約束は守れなかったわね・・・」

 

 

ふと、置いて来た少年サーヴァントを思い出す。彼の忠告も聞かずに誤って呼んでしまい実体化させてしまったらこれだ。侮っていた。サーヴァントにとって容姿なんてものはろくな判断基準でもないのに。

 

 

「中々死なないわ?うふふふ!見飽きてしまったけど貴女はもうバッドエンドよ」

 

 

業を煮やしたのか、引き寄せられる先には何時の間にか復活していた、腕を伸ばすバンダースナッチの群れ。応戦しようにもナイフでは無理がある。万事休すか、と諦めかけたその時。ナーサリーライムの肩に、異形の手が乗せられた。

 

 

「な、に・・・ヒッ!」

 

 

不機嫌な顔でナーサリーライムが振り向くと、そこにいたのはサメの様な不揃いの牙をカチカチと鳴らしたモールデッドが拳を振り被る光景があって。

思わず怯んでジルを締め上げる力を弱めたナーサリーライムを守るようにバンダースナッチの一体が迎撃。それにより生まれた明確な隙を突き、霧が立ち込める空から黒い影が飛来した。

 

 

「邪魔するぞ」

 

「なっ・・・!?」

 

 

ナーサリーライムの背後に舞い降りた黒い影、セイバーオルタは声をかけてナーサリーライムの標的を無理矢理変えさせると、モールデッドを迎撃したバンダースナッチを一閃。そのまま手にした剣を振り上げる。

 

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

「解体するよ」

 

 

暴風がモールデッドごとバンダースナッチの群れを薙ぎ払い、ナーサリーライムがその光景に茫然としていると高速で何者かが橋の上を駆け抜けたかと思えば、自らを掴んでいた腕の力が抜けるのを感じて抜け出し、着地したジルが見上げるとナーサリーライムの右腕が肘口から切断されていた。

 

 

「痛いわ痛いわ、すごく痛いわ!」

 

「終わりだ、魔本・・・!」

 

 

グレネードランチャーを回収してから橋の上に登り欄干にしがみ付いて確認すると、切断された腕を庇いながら叫ぶナーサリーライムを、右斜めに斬り捨てるセイバーオルタの光景が。よく見れば、古書店の方角からマスターだと直感的に分かる少女とそのサーヴァントだと思われるフードの男と三人の少女がやって来ていた。

 

 

「・・・ありがとう、ジャック。・・・それにエヴリンも、ジルさんを助けてくれて」

 

「礼はいらないよ、おかあさん(マスター)

 

「・・・ジャックが言うから。お前のためじゃない」

 

 

立香をマスターと呼ぶジャック・ザ・リッパーと、そっぽを向くエヴリン。先刻までありえないはずだった光景がここにあるのは、ちょっとした理由(ワケ)があるがしかし、それを語るのは後にしよう。

 

 

「もういいでしょ、あっちいけ!私に近づくな!ジャックはお前に心を許したかもしれないけど、私に構わないでよ!・・・お前に私の気持ちがわかるもんか!」

 

「うっ・・・」

 

「エヴリンさん、言いすぎです。先輩は・・・」

 

「まあマシュ。こいつはストレンジャーの自業自得だ。明らかにやり過ぎだったからな。今は殺さないでくれるだけありがたい。それよりも・・・無事か、ジル・バレンタイン」

 

「え、ええ。助かったわ」

 

 

そう言ってフードの男、ディーラーの差し伸べて来た手を受けとり橋の上に登り終えたジルは困惑気味に頷き、橋の反対側の入り口で斬られた腕を押さえながらセイバーオルタに向けてバンダースナッチを嗾けているナーサリーライムを確認、警戒しながら尋ねる。

 

 

「貴方達、もしかしてアンデルセンの救援かしら?」

 

「はい。カルデアという機関からこの特異点を修復に来ました、マシュ・キリエライトといいます。こちらの・・・ちょっと落ち込んでいる人が私達のマスターである藤丸立香です」

 

「つまり、この事態を解決するために来たのね。助かるわ。ところで彼女、一般人みたいだけど大丈夫?」

 

 

落ち込んで欄干に手を付き溜め息を吐いている立香と、「大丈夫?」と心配しているジャックとそっぽを向くエヴリンを見ながらそう尋ねるジルにマシュはちらっとディーラーに促し、集まって来たゾンビ達をマシンピストルを手に迎撃し始めていたディーラーは続けた。

 

 

「アンタ等BSAAには遠く及ばないが銃の扱いは様になってきたところだ、自衛ぐらいはできる。危なっかしいから保護者同伴だがな?

それよりも、だ。アレが変異した魔本、ナーサリー・ライムか。ジャックとエヴリンの協力からうちのセイバーオルタの不意打ちが決まったが・・・ストレンジャー。どうやら一筋縄じゃ行かない様だ」

 

「え・・・?」

 

「マスター、避けろ!」

 

 

ディーラーの言葉とセイバーオルタの叫びに、視線を向けてそれを見るや否や咄嗟にエヴリンを抱えて飛び退く立香。咄嗟に盾を橋に突き立てたマシュが弾いたのは、バンダースナッチの様な腕であった。

 

 

「“変身するわ、変身するの。私は貴方、貴方は私。変身するぞ、変身したぞ。俺はおまえで、おまえは俺だ”」

 

 

それは、呼び出すたびにバンダースナッチを容易く葬るセイバーオルタに苛立ち、スキル:自己改造Aにより身体に馴染んだt-ウイルスを用いたスキル:変化A+を使用したナーサリーライムの成れの果て。帽子がぱさりと地に落ちて、巨大な腕に潰された。

 

斬られた右腕の残った肘から上を突き破って現れた鎌の様な爪を持った腕とバンダースナッチに酷似した伸縮する剛腕、左腕の人形の様な腕はそのままいくつも球体関節を増やしながら伸びて、斬り裂かれた胸部と背部の傷口からそれぞれ人形の様な腕とバンダースナッチの剛腕を生やして、二つの剛腕で自らの小さな体を支えて持ち上げ、こちらに人形の様な腕を伸ばしながら鎌の様な腕を振り回す異形の姿ははっきり言って痛々しい。

 

 

「これはあたしが、私がありすに出会うための道程・・・ジャバウォックが居ないから負けるなら、私がジャバウォックになればいいの。そうよ、そうよねあたし(ありす)!楽しいわ楽しいわ楽しいわ!」

 

 

ジャバウォック、正確にはジャバウォックS3というB.O.W.が存在する。バンダースナッチを基盤に別のウイルスを用いたことで、足腰が強くなる代わりに伸縮自在の右腕は失われたが、代わりに身体の各部から5本の腕が生えて鋼鉄並みの硬度を持つ大鎌のような爪で攻撃や防御を行う、南米でレオンが遭遇した量産型B.O.W.である。

自らが感染したものとは異なるウイルスから生まれたそれに、偶然にも酷似した変異。彼女(アリス)あの子(ありす)を守るジャバウォックとは似ても似つかないとは、本人は決して気付かない。

 

 

「寂しい。アナタがいなくて悲しいワタシ。今、逢いに行くわ―――――何時か私たちが逢う為の寓話劇(ナーサリー・ライム・グラン・ギニョル)!」

 

 

誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)なのか。血生臭い大衆芝居(グラン・ギニョール)なのか。自らが何なのかさえも見失った魔本を前に、立香達は身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、スコットランドヤードでも局面は動いていた。ホムンクルスとゾンビ・ウーズの群れを蹴散らしたオルガマリー達の前に現れたのは、黒髪で片目を隠した白衣の優男と、裸の上からローブの様な衣服を着込んだ謎の美青年であった。

 

 

「貴方が、フランケンシュタイン氏の手記に書かれていた「魔霧計画」の三人の首謀者の一人かしら」

 

「はい。私は、キャスターのサーヴァント。貴方達の知る「計画」を主導する者の一人です。ああ、私の事は「P」とでもお呼びください」

 

「・・・P、それにホムンクルスを従えるキャスター。貴方の真名は・・・」

 

 

察したオルガマリーを制する様に炎が放たれ、清姫が振り払う。Pと名乗ったキャスターのサーヴァントはやれやれと首を竦めた。

 

 

「私たちにもいくらかの都合と事情がある。彼もその一人です。ゾンビが溢れだしてきたため、ある程度抑制し扇動するために我らの一人が召喚したサーヴァント。彼の事はそうですね、「M」とでもお呼びください」

 

「何をしてもムダさ…この街は既に私のものなのだ。君たちも邪魔なんだよ…」

 

「くっ・・・」

 

 

そう言った「M」の掌から湧き出してくるのは、一見アワビの様にも見える大量のナニカ。オルガマリーは生理的な恐怖に怯むも、直ぐに立ち直りピストルクロスボウを構えた。




謎の美青年「M」一体誰なんだー(棒読み)

・マイクVSネメシス
ネメシス+ロケランと言う天敵との対決。時計塔の針は映画スパイダーマン2が元。時計塔と触手で何か思いつきました。最後のアシストであるローターの攻撃は宝具の本領発揮。ここで脱落は、とある展開をするために必須でした。四章最初だけしか出番が無いなんてあんまりですよね。

・ブラッド・ヴィッカーズ
初代の脱出に置ける功労者にしてバイオ随一のヘタレ。ジルの目の前でネメシスの恐ろしさをその身で知らしめた人物。あと何故かコスプレロッカーのキーを持っている人。「救援」という局面にて顔を出す珍しい人格。最も立香と感性が似ている人間でもあります。

・ネメシス撃破
ハンドキャノンで顔面の上部を破壊し、時計塔から真っ逆さまに落下。これで生きているB.O.W.なんて・・・・・・6とかに普通にいたなあ(汗)忘れちゃいけない彼のクラスは追跡者(チェイサー)

・扇動されたエネミー軍団
無差別に徘徊していたはずが二か所に集中攻撃を開始。さらに立香達を襲撃するエヴリンとジャックコンビ。彼女達が仲間入りした理由は次回にて!

・英霊ジル・バレンタイン
クラスはアーチャー。宝具詰め込まれた道具箱(アイテムボックス)を用いて複数の銃火器を使用して戦う。3基準なのでメインウェポンはグレネードランチャー。なお宝具はあと三種類存在する。ジル・バレンタインの宝具といえば・・・?と考えたら、リベレにて(確か)ジルしか使えなかったアイテムボックスに決定しました。

・宝具詰め込まれた道具箱(アイテムボックス)
割とチートなバイオシリーズお馴染みの品。456とご無沙汰でしたが7で復活しました。また、アイテムボックスが置いてある部屋はネメシスやゾンビから逃げる避難所としても起用します。リベレではボス戦だけでなくラスボス戦真っ只中でも使用できる様に。今回ナーサリー戦の真っ只中に使用したのはこれが理由。

・変異ナーサリー(バンダースナッチ)
第一段階。バンダースナッチを無制限に召喚する他、自己改造Aスキルを用いる事で右腕を伸ばせるように。ジルを締め上げる程の筋力Aを持ち、ナイフ程度じゃダメージが通らないほど痛覚が失われている。元ネタはバイオハザード マルハワデザイアに登場する実験体C16こと変異ナナン。

何時か私たちが逢う為の寓話劇(ナーサリー・ライム・グラン・ギニョル)
第二段階。ダークサイドクロニクルズに登場したB.O.W.ジャバウォックS3を模した事で生まれたトンデモクリーチャー。簡単に言えば、上半身が異様に変異してクモみたいになったナーサリー。ジャバウォックS3と言うよりはダークサイドクロニクルズのラスボスの方が似ているかもしれない。元ネタはマルハワデザイアに登場する変異ビンディとCODE:Veronica及びダークサイドクロニクルズに登場するノスフェラトゥ。

・PとM
Pは原作と同じくよかれと思ってな人。原作ジャックのポジションで登場した謎の美青年こと「M」。原作FGOで「M」と言えば彼の事ですが・・・?そういえばどっちも若い頃は美青年で正体はアレだよねって話。共通点が在り過ぎたんだ入れるしかない。


次回はエヴリンとジャックが加わった立香達VSナーサリーライム決着戦。ジルの第二宝具が登場です。そして・・・?次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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