Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ウェルカム!ストレンジャー…どうも、愛用しているノーパソが使いにくくなって執筆に難儀している放仮ごです。遅くなって申し訳ありません。

今回はオルガマリーVS追跡者たち。立香がエヴリン達と戦っていた際の彼女視点です。また、キーパーソンである新キャラが続々登場。ついにバイオ主人公の一人が参戦です。

楽しんでいただけると幸いです。


お安くしとくぜストレンジャー

絶体絶命のところにオルガマリーの放ったガンドにより動きを停止した三角頭のチェイサーを押し退け、攻撃は無駄だと悟っているのか全身甲冑に身を包んだ騎士はそのまま横を走り抜けた。

 

 

「くっ…オラア!」

 

その奥で全身から電気を放出し痺れているタイラントに似た巨人のB.O.W.に向けて両手に握った剣を振り被ったモードレッドと思われるサーヴァントはそのまま一閃。しかしそのコートを斬り裂く事は叶わず、金属同士がぶつかった音と共に吹き飛ばされる巨体。

 

 

「スタァズ・・・」

 

「ちっ…まだ動けるのかよ。クソッたれが!」

 

 

立ち上がり、触手を伸ばしたネメシスの薙ぎ払いを魔力放出(雷)で垂直に飛び上がって回避し、雷撃で辺りの建物を半壊させ瓦礫の雨と共に剣を振り下ろし急襲するモードレッド。しかしネメシスは冷静に直撃するであろう瓦礫のみを拳で破壊し、触手の槍を伸ばして迎撃。

 

 

「っ!?この・・・があっ!?」

 

 

フルフェイスの兜が弾き飛ばされ、一瞬視界がブラックアウトしたモードレッドは強烈な衝撃を腹部に受けて建物の外壁に叩き付けられ半壊させ崩れ落ちた。宝具でもある不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)が飛ばされた事で露わになったアルトリアと瓜二つな顔を苦悶に歪ませ、呻くモードレッド。

市街地の奥から見覚えのある青い騎士と少女達が駆け寄って来るのが見えたが、意識が朦朧としている彼女は手を伸ばし、「逃げろ…」と小さな声を漏らす。しかし、彼女にとって好機が訪れた。

 

 

「スタァズ・・・!?」

 

「・・・!」

 

 

襲い掛かろうとするネメシスに、ガンドのスタンから回復した三角頭のチェイサーが急襲。槍がその背中に突き刺さり、苦悶の声を上げたネメシスの首根っこを掴み、顔から地面に叩き付けた三角頭のチェイサーはそのまま、こちらに駆け寄ってくる少女達に向けて新たに槍を取り出して振り返り、その槍を慌ててこちらに指先を向けていた少女、オルガマリーに突き出した。

 

 

「危ない、旦那様(マスター)!」

 

「清姫!?」

 

 

しかし間一髪で前に飛び出した清姫が右肩で槍を受け止め、崩れ落ちる前に炎を放って牽制した。そのまま力なく倒れた清姫に駆け寄るオルガマリー。炎を突き破り、槍を手に振り被った三角頭のチェイサーに、不可視の刃がその三角頭に叩き込まれ大きく吹き飛ばし、それを行なった張本人であるアルトリアはモードレッドに躊躇しながら手を貸しながら不可視の剣を掲げ、警戒を続ける。

その視線の先には、難なく立ち上がる三角頭のチェイサーと、槍を引き抜いた傷を急速に再生させながら自分達と三角頭のチェイサーを見比べて迷っている様子のネメシスがいた。

 

 

「マスター!モードレッドを連れてここは退きましょう!この二体のサーヴァント、どちらも共にタフです…私一人では」

 

「ええ、此処は退きましょう。…アルトリアは風王結界(ストライク・エア)で目暗ましをしてからモードレッドをお願い!私は清姫を・・・」

 

「マスター、後ろです!」

 

「っ、また・・・清姫!?」

 

 

アルトリアの声に、慌てて飛び退こうとするも足が滑り、清姫に庇われて街道を転がるオルガマリー。清姫を気遣いながら振り返るとそこには素早く動く黒い人型の異形・・・クイック・モールデッドが四つん這いで外壁に引っ付いてこちらを値踏みしていた。その様は獲物を見定める猛獣のそれだ。

十分に危険度を痛感している三角頭のチェイサーと、正体不明の二体のB.O.W. しかも片方はアルトリア曰くサーヴァントとのこと。かつてないピンチに、腕の中の清姫を見てオルガマリーは考える。モードレッドと清姫を救い、この場から逃れる術はある。だがそれは・・・

 

 

「スタァズ!」

 

「・・・!」

 

「キシャッ!」

 

 

迷っている間にも、何故か自分を狙う三角頭のチェイサーと、それに対してリベンジでもしようというのか鉄の拳を振るうネメシス、弱っている清姫を抱えている己を獲物と定めたクイック・モールデッドが同時に動き出し、オルガマリーは意を決してピストルクロスボウを手に飛び出した。

 

 

「こっちよ、化物!アルトリアは二人を!」

 

「マスター!?何を・・・」

 

「そう何度も死ぬ気はないわ!とにかく、二人を早く!」

 

 

まずクイック・モールデッドの顔面に炸裂させて頭部を破壊し、一撃で倒す事に成功したオルガマリーはその爆発に気をとられた三角頭のチェイサーとネメシスを搖動するべく素早く番えた追撃をその真ん中に発射。同時に全速力で走り、かつて自らを存命するべくディーラーに過剰に使われたイエローハーブにより増えた体力をフルに活かし、さらに自らに礼装のマスタースキル「全体強化」を使用し、二人の事をアルトリアに任せて全力疾走。心の中で立香の事は言えないわね・・・と反省するが、二体が追いかけてきているので今は良しとした。

 

 

「邪魔よ!」

 

 

路地裏に飛び込み、そこにいたウーズを跳び蹴りで蹴り飛ばしてピストルクロスボウを背中に背負って代わりに取り出したハンドルガンブラックテイルでヘッドショットを決めて着地。訓練の成果が出たと喜ぶ暇も無く、路地裏に面する壁を破壊しながら襲い掛かって来たネメシスの伸ばした触手をオルガマリーはぎりぎりで回避、再び走り出して路地裏から抜ける事に成功する。

 

 

「えっと、えっと・・・何か奴を倒す、もしくは行動不能にする術は・・・」

 

 

ああでもないこうでもない、と自らの装備品を確かめながら大通りを駆け抜けるオルガマリー。現在装備しているのは、ネメシスの外部装甲を成している鋼鉄製のコートには通じないピストルクロスボウ残り20本と、ハンドガンブラックテイル残弾数67発。さらに服装の関係上そんなに持てなかった手榴弾と閃光手榴弾それぞれ一つずつ。

これでもゾンビやハンターなどのB.O.W.程度なら気を付けさえすれば楽に撃破できる装備ではあるが、仮にもサーヴァントにまでなったB.O.W.だ。ヴェルデューゴと同じで現代の英雄でないと倒せない怪物なのだとは理解していた。

 

 

「一個しかない閃光手榴弾で奴の目を失明できるかは賭けだから使えないとして、爆発も怯む程度。あとはハンドガンブラックテイルだけど使いやすい安定した性能が売りだから火力はそこそこだってディーラーは言っていたわね・・・ディーラーだったらナイフにくっつけた手榴弾を直接突き刺して零距離爆発で頭部を破壊するぐらいしそうだけど私にできる訳ないしそもそもナイフもないし・・・」

 

 

あーでもないこうでもないと打開案を考えながら走るオルガマリー。三角頭のチェイサーの突きを横に飛び避き、ネメシスのロケットランチャーを転がって避け、爆発から顔を庇いながら立ち上がり、突き進む。

 一度死んだためか、「死」に対して予知に近い直感の様な物を感じる様になったオルガマリーはこれまでもそれを活用し、サーヴァント共に乗り越えてきた。確信めいたものであるためにヘラクレス・アビスの真価を知った時は諦めてしまったまでもあるが、それでも撤退を選んだことから結果、生き延びた。

その直感が言っている、これらの攻撃を一つでも直撃したらそれで終わりだと。自分の持ちうる全てを駆使し、彼女は生きるためにひたすら走る。そんなオルガマリーの耳に、不快な駆動音が聞こえてきた。まるでチェーンソーの様なその、骨と骨が削り合う音は既に知っていた。露骨に顔をしかめ、一瞬立ち止まる。

 

 

「ッ・・・こんな時に・・・!」

 

 

民家の扉を突き破り現れたのは、見覚えのある白い巨漢。右腕のチェーンソーを唸らせるそれは以前見たそれより大きく、「メーデー」という特徴的な声は出さないもののそれでも危機感を感じる。外の騒ぎを聞きつけて出て来たであろうそれ・・・スギャグデッドを前に、オルガマリーは一瞬だけ振り返る。争いながら迫り来る大男二体。目の前にはでたらめに暴れながら迫り来る肥満体の怪物。

 

 

「・・・使える?」

 

 

手榴弾と閃光手榴弾を両手に取り出し、迷う。今までディーラーと立香を見て来たからこそ思い付いた策だが、できるかどうか。しくじれば確実にまた死ぬ、そんな策よりも安全な策があるんじゃないのか。数秒にも満たない間、オルガマリーは決意を固めて手榴弾のピンを抜いて振り被った。

 

 

「もう私は、死なない!あんなに死なせて、私が死んでいいはずがない!」

 

 

上向きに放り投げられた手榴弾は綺麗な放物線を描き、こちらに迫っていたスギャグデッドの口に見事ホールインワン。それを確認するや否やすかさず後方に閃光手榴弾を投げ付け、背中を向いて眩い閃光が瞬いたのを合図に「全体強化」をフルに活かして駆けだしたオルガマリーは、スギャグデッドが横にスイングしたチェーンソーの様な右腕を飛び越え、そのまま無防備な背中に蹴りを入れて着地した。

 

 

「っ・・・!」

 

 

足首を少し捻ったが気にしていられない。視界を失っている追跡者二体に、蹴りが入れられた事でバランスが崩れてスギャグデッドが圧し掛かり、一瞬遅れて手榴弾が起爆。スギャグデッドは内側から木端微塵に吹き飛び、三角頭のチェイサーを傍らのロケットランチャーで生じた二次災害の瓦礫の中に埋もれさせ、ネメシスの顔の前面が大きく焼け爛れる。そんなチャンスを逃すはずも無く、すかさず銃ではなく右手の人差指を構え、一言唱える。

 

 

「フィンの一撃、昇華・・・!」

 

「!?」

 

 

瞬間、紅い閃光と共にネメシスの胸部が焼け爛れた鋼鉄のコートごと大きく吹き飛び、その巨体が力なく崩れ落ちる。サーヴァントを構成する霊核である心臓部を狙ったその一撃は、易々と追跡者を行動不能に追いやった。

 

放たれたそれは先刻、三角頭のチェイサーからモードレッドを守るために放ったカルデア戦闘服の物ではなく、今の一瞬で組み上げた己の魔術。彼女は、マスター適正以外では優秀な実績を納める魔術師だ。そして、彼女の使用した初等呪術「ガンド(指差しの呪い)撃ち」は高い魔力密度で放てば本来ありえない拳銃弾並みの物理的破壊力を持っており「フィンの一撃」と呼ばれ、優秀な魔術師としての腕前を垣間見せた。

 

しかも、それはただのガンドではない。自らの右手に宿った令呪一画を魔力源にした、膨大な魔力を一発に詰め込んだガンドである。カルデアの影響化なら一日で一画回復するという言うなれば反則を用いたここぞという時にしか使えない裏技だ。それを咄嗟の判断で行ったオルガマリーの手際は確かな物であり、その破壊力は対魔力スキルを持たないとはいえサーヴァントの霊核を、鋼鉄のコートごと打ち砕いて見せた。

それを確認し、安堵したオルガマリーはへなへなとその場にへたり込んだ。集中が途切れて、何時ものヘタレへと戻ってしまっていた。

 

 

「や、やった・・・一体は、なんとか・・・令呪の魔力を使ったとはいえあっけなさすぎる気もするけど・・・」

 

 

小さなクレーターと化している胸部が剥き出しで倒れているネメシスに、くじいた足を庇いながらブラックテイルを手にして歩み寄るオルガマリー。何か、デジャヴを感じたのだ。嫌な予感が脳内を占め、鼻や耳などの凹凸が全くなく、右目を大きな縫合跡で潰されている異形の頭部に銃口を突きつけながら睨む。すると何かが崩れる物音が聞こえ、危険を感じて振り向けば、瓦礫の山から白い腕が飛び出してきたところだった。

 

 

「そうだ、まだ一体・・・今のうちに、逃げないと・・・」

 

 

三角頭のチェイサーの存在を思い出したオルガマリーは、ポケットからグリーンハーブ×2の入った容器を取り出し、中身の粉末をくじいた足首に擦り付け包帯で縛るとよたよたと走り出す。服の上からでも効果があるこの草は人理修復した後にじっくり調べたい、とかぼんやり思い浮かべながらどうするか決める。

 

逃げなければ、今の自分では成す術もない。アルトリアと清姫と合流し、藤丸達を捜さなければ。

 

そう考えながら、来た道を戻って行く。道中見かける黒い異形の頭部に銃弾を叩き込む事も忘れない。ウイルスの犠牲となったロンドン市民の成れの果てかも知れないが、今は一刻を争う。・・・今の戦闘で誰かが巻き込まれてなければいいが、と必死に祈ってしまうのは、罪から目を逸らせない彼女の責任感故か。

 

 

 

何とか無事に合流し、清姫とモードレッドが無事だったことに安堵するも、アルトリアのお小言に顔をしかめるオルガマリー。

自分が負傷している事に気付いた清姫が自分の怪我も気にせず心配だと駆け寄って来た時は、何時も通りだなと安堵していた。しかし、しがみ付いてまで己の無事を確認する彼女の様子が、何時もより明らかに可笑しい事に気付く。同時にモードレッドも何が感極まったのか泣き出して、必要最低限の手当てだけすると無視を決め込んでいたアルトリアに縋りついて来て、それに顔を青ざめたアルトリアに本気で助けを求められ、困惑するオルガマリー。

 

そんな彼女がウイルスの満たした市街+負傷=感染、という方程式に辿り着き慌ててディーラーを捜し出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立香達との合流後、テンションが可笑しいモードレッドの案内で訪れた、彼女曰く安全な場所・・・大通りに面するアパートメントの一室で。事の顛末を聞かされたディーラーは、縄でグルグル巻きに椅子に縛られて目の前でウンウン唸って暴れる両者から摂取した血液を鑑定用のスコープで眺めていたディーラーは結論を出した。

 

 

「よく分からない新種のウイルスに感染していたな。どうやら感染者の感情を昂らせるらしい。ダ・ヴィンチ、分析は頼んだぞ。俺はこの二人をどうにかしよう」

 

「微力ながら僕も助太刀しようか?」

 

「いいや。俺の商品で事足りる」

 

「本当なの、ディーラー」

 

「生前ならウイルス治療なんか無理だが今の俺はサーヴァントだからな、できないことを捜す方が難しいぜストレンジャー」

 

 

協力を申し出たモードレッドの協力者にしてこのアパートメントの持ち主、ヘンリー・ジキルの助けを断り、ディーラーが取り出したるは、グリーンハーブと混ぜる事で解毒や解呪を齎すブルーハーブ。それを六枚だ。

 

 

「それでどうするのよ?」

 

「まあ聞け所長。レッドハーブやイエローハーブは単体じゃ意味が無い、グリーンハーブと混ぜ合わせる代物だがな?コイツは違う。単品でもお気軽に使える便利な代物だ。レオンはラクーンシティでは常備はせずに間に合わせで凌いだらしい」

 

 

それが何だというのか。手慣れた動作でブルーハーブ三枚を調合するディーラーは首をかしげる面々にそれを突きつけた。

 

 

「それで、同じく単品で使えるグリーンハーブは三つ合わせる事が出来る。ブルーハーブでも同じ事が出来るって寸法だ。ウイルスってのは体を蝕む毒だ。三つも合わせればどんなウイルスだって手遅れじゃなければなんとかなるだろうよ。傷口から擦り込めばまあ大丈夫だろうぜ」

 

「・・・服の上からでも効果があるのはなんで?」

 

「そりゃ俺がサーヴァント化したからだろう。ところでストレンジャー、くじいた足首以外も擦り傷だらけだな。今なら救急スプレーが売ってる。安くしとくぜ」

 

「・・・・・・買った」

 

「Come back any time.」

 

 

重傷な時は無料で提供してくれるのに、割と平気そうならすぐに商売を始める武器商人に溜め息を吐きながら受け取るオルガマリーは、もしや自分はカモなのではないかと疑ったがまあいいかと笑みを浮かべた。そのまま、正気に戻ったと思われる清姫の拘束を解くも愛のタックルを受けて呻く羽目になったのは御愛嬌だ。

 

 

「ハッ!・・・・・・・・・・・・父上?」

 

「正気に戻ったなら放してくださいモードレッド卿。ディーラーの焼いた魚が食べれません」

 

「問答無用で殴ればいいだろう青いの。構うだけ無駄だ」

 

「父上・・・、じゃなくてアーサー王が二人・・・・・・・・・・・・・・・ああ、コイツは夢か。だったらもう少し抱き着いてていいよな俺の夢だし・・・」

 

「セイバー、幸せそうなところ悪いけど現実だよ」

 

 

ジキルに言われて顔を赤らめ、慌ててアルトリアから離れて威嚇するモードレッドを尻目に、真剣な顔でマイクと念話で情報交換していた立香が声を上げた。その視線の先にはマシュに協力してもらって泣き叫ぶ清姫を羽交い絞めにするオルガマリーの姿。

 

 

「所長、今ここに向かっているマイクからの報告なんですけど・・・・・・いいですか?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。清姫、気にしなくていいから!貴女さっきまでとあまり変わってないわよ!?」

 

「ですが不甲斐無い私を守ったせいで旦那様が傷付いた事に変わりはありません!こんな駄目な清姫は旦那様に迷惑をかけないためにここで死にます!」

 

「清姫さん落ち着いてください!それでは本末転倒です!」

 

「放してくださいマシュさん!ネロさんを燃やしたのは私です!私の代わりにネロさんがくればこうならずにすんだんです!」

 

「それは知ってるから!知っていて連れて来たから!ディーラー!本当にこの子、治ってるの!?」

 

「うん?モードレッドには効いてるだろう。ああ、まさか黒いのから直接攻撃を受けたか?だったらもう一丁作るから押さえて置けストレンジャー」

 

「・・・・・・・・・後にした方がいいみたい?」

 

 

どったんばったん大騒ぎを前にした立香は苦笑いを浮かべながら首を傾げた。その側では鎧を解除しているアシュリーが優雅に座って読書をしていた本を閉じて立ち上がった。

 

 

「そうみたいねマスター。ちょっと座って待ってて。ジキル、紅茶はあるかしら?淹れたいんだけど」

 

「ああ、それなら奥の棚にあるよ。ちょっと待ってて」

 

「・・・急いでエヴリンとジャックを捜したいんだけどなあ。それに、街のウイルスも早くどうにかしないと」

 

「日本の言葉で強いては事を仕損じるって言うし、マスターには小休止が必要よ。大人しく私の持て成しを受けなさい」

 

「恐れ多いよ。でも、確かに休んだ方がいいかな・・・」

 

 

そうぼやいた立香は促されるままに座り、アシュリーの淹れた紅茶を一口飲んで一息つく。まだロンドンにやってきて半日も経ってないのに色々あった。心身ともに疲れた立香は休息を取る事にした。アシュリーの淹れた紅茶は、さすがは大統領令嬢というか、上品な味がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ロンドンの街並みのとある古本屋で1人の少年が渋い声で、ぴったりとした水色のシャツのウエストに無地の白いスウェットシャツを巻いた、短いタイトスカートとブーツを着用した女性に憤っていた。

 

 

「いい加減にしろ、ヴァカめ!魔本など相手にするな、弾の無駄だ!お前は機械共やホムンクルス、ゾンビ共を倒して俺を守るだけでいい!」

 

「でも、隣の書斎のアレを放って置いたら市民に害があるんでしょう?だったら・・・!」

 

「まったく、これだからお人好しは!今は調べもの中だ、面倒な物は後回しにしろ!今ようやく「正体」が掴めて来た・・・いいか、ジル・バレンタイン!救援が来るまで死んでも俺を守り抜けよ!それがお前と俺の契約だ」

 

「ええ、分かっている。でもその代り、この大規模パンデミックの真相・・・そして首謀者、ちゃんと教えてもらうわよ、アンデルセン」

 

「ふん、上等だ。そら、来たぞ!」

 

 

本の壁を突き破って来たウーズに、ナイフを頭部に突き刺し床に押し付け銃声を立てる事無く一気に仕留める女性、ジル・バレンタイン。その横で高速で本をめくって次の本を開く少年、アンデルセン。

事件を紐解く探偵、解決に導く英雄。その両者がサーヴァントして此処に揃う。片方に限ってはとある悪縁からの召喚なのではあるが、皮肉にも彼女の存在そのものが、とある悪縁あるサーヴァントが暴れて犠牲者を増やす理由となっているのをジル・バレンタインは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、オルガマリーが去った数分後のこと。

 

ガラガラと、音を立てながら瓦礫を押し退け立ち上がる三角頭のチェイサー。よりにもよって頭部に集中して瓦礫がのっかかっていた為に時間がかかってしまった様だ。辺りを見渡し、己の獲物である罪人がいない事を確認するや否や、鉈を片手に引き摺りながらロンドンの街中を歩きだす。

 

 

そう、彼一人が残されたその場に、倒れていたはずのネメシスの姿は無かった。重傷を負った体で時計塔へと登ったネメシスは、ようやく標的の一人を見付けて歓喜し、ロケットランチャーを構えていた。

 

 

「スタァアアアアズ!!!」

 

 

放たれる機関砲を物ともせずに、発射した異形の追跡者は咆哮を上げる。ロンドンの空で大爆発が起き、複数の唸り声が聞こえる街並みに轟音が咆哮と共に響き渡った。

 

最も有名な名探偵に所縁ある街を舞台に、最も危険な推理ゲームに見せかけた最悪の追跡劇が幕を開けた。




どんな時でも商売をかかさないディーラーはまさしく武器商人。

ついに登場バイオ主人公、ジル・バレンタイン。元帥じゃないよ。クリスやレオンは今後出番があるのですが、ジルだけどうにも出しにくいなと思ってネメシスもいるので無理矢理出番を作りました。野良サーヴァントであるため事情が分かっておらず、アンデルセンを守る代わりに情報提供してもらう形でコンビで活動してます。どうやらすぐ側にいる「魔本」が気になる模様。

所長覚醒。とっておきである令呪の魔力を使ったガンドは第四次聖杯戦争の某神父が元ネタ。カルデアのマスターって一日で一画回復するからこれ強いよねって。イメージは某魔術師殺しのコンテンダーです。魔術と銃を織り交ぜたハイブリッドな今のオルガマリーは十分バイオ主人公できます。立香の無茶が移ってしまったため清姫も気が気でない模様。

決して、バイオハザードダムネーションを見てリッカーが好きになって何でTウイルスにしなかったんだと後悔して今回の美味しい役をクイック・モールデッドが持っていった訳じゃありません。本当ですよ?当初の構想では清姫が吐瀉物を受けていたからマシになったとかそんな事はありませんよ?

前回の様子が可笑しかった二名、謎のウイルスに感染していたと判明。モードレッドは兜の効果でほとんど影響は「素直になる」ぐらいしか出てませんでしたが、清姫は変な方向に爆発してました。ブルーハーブ×3って強力だと思うんや。感染したのがサーヴァントなら治せますが普通の人間は初期にしか治せず、感染が進んでいるとアウトです。あくまで「毒」にしか効果は無く、プラーガには効きません。

「STARS」を求めてロンドンを彷徨うネメシス。オルガマリーのガンドを受けて戦闘不能になったにも関わらずにチェイサーのクラススキル「追跡続行」を使用して追跡を続けます。追跡者の一番怖い所は完全に倒さない限り何度でも復活してくるところ。特にこのネメシスは、作者のトラウマになっているぐらい復帰が早いです。ラストシーンは一体何が起きたのかは、とりあえず詳細不明にしておきます。

次回は調査開始。今度こそ一気に飛ばします。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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