Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ヴェルカム!ストレンジャー・・・どうも、何とか年末までに書き上げる事が出来てほっとしている放仮ごです。UA90,000越えありがとうございます!

今回はオケアノス完結編。ついにディーラーの宝具の真名解放、当初の方針であったディーラーとバイオ兵装による無双が繰り広げられます。楽しんでいただけると幸いです。
【ディーラーのコンティニュー回数、残り21】


ヴェルカム!ストレンジャー…!

《ストレンジャー。どうだ、見えるか?》

 

「ううん、まだ!どうしたの、ディーラー!」

 

 

森の中を爆走するメイドオルタのバイクの後部座席にて、立香は海の方角から聞こえる爆音に意識を寄せながら念話に応える。立て続けに発されるあの音は大砲だ、クィーン・ディードで遭遇したクジラと同等なのは容易に想像がついた。

 

 

《知りたいのは敵の特徴だ。どの銃が効果的か考えないと行けないからな》

 

「ディーラー達と別れた後のロマンからの情報だと、敵はウェスカーの発言から支配種プラーガを使った敵の魔女メディアなんだって!正気を失っていて、スピードは巡洋艦並、堅さはあのクジラのそれより上!ネロの砲撃も内側に通じないって言ってる。どうしようディーラー!」

 

《よりにもよって支配種か…種類によるな。支配種は、宿主自身を強化するタイプか、母体と融合して強化するタイプの二つがある。前者の場合は弱点が露見しやすいが戦闘能力が高く、後者の場合は防御力と攻撃力が凄まじい代わりに殆んど単調な動きしかできない。恐らくだが後者だ。なら、ついたらすぐ俺を令呪で呼べ。プラーガだったら簡単だ、俺の宝具で一気に仕留める》

 

「…うん、分かった。もう私じゃ何も考えられないから、ディーラーを信じるよ。オルタ、お願い飛ばして!』

 

「令呪を使うか…いいだろう。決して離れるな!」

 

 

覚悟を決めるや否や、所長を救うためだけに自身の事を考えずに令呪を切る立香。道なりに進むのではなく木々を破壊しながら直線コースを突き進み、メイドオルタは先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その目を狙えネロ!」

 

「そこを動くなマスター、てぇーい!」

 

 

フォルネウス・アビスに喰われるかという瞬間、オルガマリーを救ったのは砲身をファンネルの如く飛ばしてフォルネウス・アビスの目を潰して妨害したネロと、オルガマリーの肩から指示したオリオンであった。力を失い海に戻って行くも、道連れにしようとフォルネウス・アビスが伸ばしてきた触手を炎を纏った大剣で切り裂きながらオルガマリーを回収、オリオンを降ろしてからそのまま背負って海に乗り出すネロ。剣では埒が明かないと判断したアルトリアも二人の傍に走って来て、簡易的な作戦会議をする。

 

 

「危なかったなマスター。それでどうする?ドレイクの船を壊させる訳には行かないのだったよな?」

 

「とりあえず砲撃でこちらに搖動。私はアルトリアに掴まるから、遠慮なくぶちかましなさい!」

 

「夏の話題を独り占め!だな!?」

 

「夏かどうかは知らないけどそう言う事よ!」

 

「では、しっかり掴まっていてくださいマスター。私は遠距離攻撃できないので貴女の補佐に徹します」

 

「では準備は良いな?余はもう止まらぬぞ~!」

 

「ッ!」

 

 

水上を滑走しながら砲撃の嵐を叩き込むネロと、その後ろを追走するアルトリアにおんぶしてもらいブラックテイルとガンドを乱射するオルガマリーに、一度水上に出て黄金の鹿号(ゴールデンハインド)に体当たりをぶちかまそうとしていたフォルネウス・アビスはダメージを受けた訳ではないが目障りに思ったのか方向転換。水中に沈み、三人に迫る。

 

 

「ここが正念場よ。あんな急激な変化をしたならきっとどこかに弱い部分があるハズ。私の読みが正しければ、奴はあの大口を開けた時こそが弱点よ!」

 

「なるほど、本体を叩くのか!」

 

「外側の堅さは規格外です。一見弱点に見えるあのナマコの様な部位も近付けば大口を開き、さらに節足が飛び出て来て捕まえようとして来る。側面を叩くのはほぼ無謀ですね」

 

「でも、喰われるかやるかの一本勝負よ。アタランテとダビデ、ドレイク達も援護してくれている。プラーガだからってずっとディーラーの助けを待っている訳には行かないわ。何とか打倒するわよ!」

 

「はい、成し遂げましょうマスター!」

 

「そうと決まれば行くぞ!どどどどっ!どぉーん!!」

 

 

水中に砲撃し、海面へ飛び出し突進してきたフォルネウス・アビスの顔面に、くるりと一回転して遠心力を加えた拳を叩き込むネロと、巨体の上に跳び乗り、オルガマリーを背に担ぎながらエクスカリバーで表面を斬り裂きながら駆け抜くアルトリア。

 

 

「これは・・・プラーガの変形!?」

 

「その程度!」

 

 

するとアルトリアの眼前、フォルネウス・アビスの中心部分の表皮を突き破って魔神柱が姿を現し、その至る所から伸ばした刃を備えた複数の触手を叩き込んできて、オルガマリーを一度下ろしてから応戦し弾き返していくアルトリア。アタランテの矢とダビデの投石の援護も加わり、触手群による猛攻を何とか凌いでいく。

 

 

『熱源、感知。――――標的、発見。観測所、起動。深淵に至れ、清浄であれ。其の痕跡を消しましょう』

 

「出たな!ついに自分の言葉さえ失ったか。哀れな、手向けだ受け取るがよい…!?」

 

『焼却式 フォルネウス・アビス』

 

 

一方、大口を開けて姿を現した舌の様な触手と一体化し目に生気が無いメディアリリィ目掛けて砲撃を放とうとするネロであったが、その手に握られた杖から魔法陣が浮かび上がり、最大まで開いた口を砲口として特大の魔力砲撃が放たれ、咄嗟に横に高速回避。

海面を蒸発させ、黄金の鹿号(ゴールデンハインド)に迫ったそれはドレイクが有する聖杯を使って周囲に出現させた砲口と共に放った黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)が相殺。その余波で津波が起き、ネロは流されてしまう。

 

 

「しまっ…マスター!今、援護を…!?」

 

『動体、発見。消滅を提案します』

 

 

流されながらも援護しようと砲門を動かすネロであったが、再びメディアリリィの杖から浮かび上がった魔法陣が回転、高威力の魔力弾をガトリングの如く連射し、剣を振るって弾き返していくも耐え切れず、爆発。海面を水切りの様にして吹き飛び、砂浜に打ち上げられてしまった。

 

 

「ぬぅ…正面突破は無理か。弱点自身が攻撃するなど反則だぞ…」

 

 

ネロが行動不能になったのを確認したためか、口を閉じてその中に引っ込んで行くメディアリリィを見て哀れみと共に悔しさを感じるネロ。ダメージが大きすぎたため、今は休むしかなかった。

 

 

「風よ、舞い上がれ!」

 

 

一方、纏めて襲い掛かって来た触手群を跳躍し、回転しながら剣を振るう事で放った風の渦で切り刻み着地したアルトリアはそのまま突撃。鎧を消して使っていた魔力を機動力に回し、魔神柱に向けて突貫するも、突如魔神柱が電撃を纏ってアルトリアは弾き飛ばされていた。

 

 

「グッ…今のは?」

 

「今の、クィーン・ディードで藤丸が受けた物と同じ…まさか!避けなさい、アルトリア!受けちゃ駄目!」

 

「なにが…グアアッ!?」

 

 

再び放たれた刃を持つプラーガの触手群に、オルガマリーが警告するも時既に遅し。首に放たれた刃をエクスカリバーで受け止めるも、電撃が直撃し体が痺れてふら付くアルトリア。さらにシークリーパーの節足が背中の体表から飛び出してきてアルトリアの足を拘束、一斉に襲い掛かる触手群に飛び退こうとするもそれは許されず、アルトリアはその場に崩れ落ちる。

 

 

「やっぱり、あの盾のB.O.W.みたいにプラーガが電撃を使える様に……」

 

 

プラーガとは神経組織等に寄生する生物である。そして盾のB.O.W.ことスカルミリオーネは、上半身が過剰にダメージを受けると姿を現す下半身から伸びた神経組織が電撃を帯びている。t-Abyssを取り込んだプラーガが変異したらしい。厄介な事だと思いながら令呪の宿った右手を掲げるオルガマリー。

 

 

「令呪を以てオルガマリー・アニムスフィアが命じます!アルトリア、私を連れて撤退しなさい!」

 

「…!」

 

 

触手群がオルガマリーに殺到するや否やの刹那に、令呪を受けて余力を取り戻したアルトリアがシークリーパーの拘束を引き千切りオルガマリーを抱えて海面に飛び込み、そのまま全力疾走。ネロの居る浜辺まで逃げ延び、追撃しようとするフォルネウス・アビスをアタランテの宝具が全身にある目を潰す事で海中へと撤退させた。

 

 

「はあ、はあ…あのナマコと白いカブトガニはヘラクレスに投与されたもの、クィーン・ディードのゾンビ達の感染したウイルスだとして、それとプラーガ、しかも強力な支配種プラーガの組み合わせ……聖杯の魔力だけでなく海から魔力を常時吸収してさらに変異して、手が付けられなくなっている…」

 

「弱点らしき口内も、ローマでの魔神柱の火力を有した魔女メディアが迎撃して来て攻撃するどころじゃないぞ」

 

「魔神柱の物らしき複数の目も潰せば怯みますが直ぐに回復する…魔神柱本体が出て来ると電撃を帯びた触手群と、拘束が襲い来る…遠距離に徹するしかないですが、あの表皮には生半可な攻撃は通じずあの口を開かせても意味が無い…」

 

「令呪も一画切った。全員の宝具を叩き込めば、あるいは…?」

 

 

息絶え絶えに今の戦況を見返して焦燥を隠せないオルガマリー達。それを船上のアタランテの肩から見守るオリオンがボソッと口を開いたのをダビデは見逃さなかった。

 

 

「あー…ここまで来ると俺の役立たず感がすごいな本当…アルテミスに顔向けできないなこれ」

 

「いやいや。君も頑張っている方だと思うよ?聞いたよ、所長さんが君の彼女に襲われて生きているのは君の功績だと言うじゃないか。まだまだできる事はあるさ、今は僕達に任せてくれと言うだけさ。海中に引っ込まれたらどうしようもないけどね」

 

「その通りだ。汝は…認めたくないがあのアルテミス様に愛された男なのだろう?役立たずと言う事は絶対にない。何かできる事がある筈だ」

 

「そう言われてもなあ…ん?来たぞ、だがありゃあ何事だ…!?」

 

 

顔を出したフォルネウス・アビスだったがその動きは完全に止まっており、背中に戻していた魔神柱を再び外に出し、そのまま動かない。しかし魔力が凝縮されているのが目に見えて、アタランテとダビデ、ドレイクが妨害するために遠距離攻撃を叩き込むも意にも介さない。明らかに異常だった。

 

 

『大変だオルガ!早く彼女を止めろ!』

 

「な、何事よダ・ヴィンチちゃん。アレは何をしようとしているの…!?」

 

『宝具を使おうとしているんだ!あの魔女メディアの本来の宝具は恐らくあらゆる呪い、魔術による損傷を零に戻す回復宝具だ。だがその効果が、ウイルスによって変容している。あのままでは、彼女の中のウイルスがこの特異点の海を汚染するぞ!』

 

「なっ…!?」

 

 

どう足掻いてもこの特異点を崩壊に導くつもりらしい。体内で濃縮したt-Abyssを海に放出し、海を感染源として爆発感染(パンデミック)させる事が目的。単純な破壊力と影響力ならばローマのGカリギュラさえ凌駕する。

 

 

「藤丸達は!」

 

『まだだ、少なくともあと五分はかかる!その前にあの大口から放射されるぞ!』

 

「対抗手段は!?」

 

『私とロマンの考えだとあの大口を完璧に塞ぐ巨大な物で栓すれば物理的に防げる。だが、そんなものどこにも…』

 

「…いえ、ネロの黄金劇場があるわ。でも、宝具は令呪で使えるとしてもあの口に飛び込む事は出来ない…」

 

「とにかく、船に上がりましょう。まだ何か手はある筈です」

 

『時間が無い、急いでくれ立香ちゃん!』

 

『あと一分!』

 

 

焦るカルデア管制室の通信を尻目に、アルトリアに背負ってもらいネロと共にドレイクの船に搭乗するオルガマリー。見れば、フォルネウス・アビスはその大口を開けていてその中心にいるメディアリリィが膨大な魔力を溜めているのが見えた。アタランテとドレイクが矢と砲撃を叩き込んでいるが、魔神柱から伸びた触手の刃が全て防いでいて、どうしようもなかった。

 

 

「あの防御を掻い潜り、何とかネロをあそこまで持って行く…でもどうすれば…?!」

 

「………所長さん、後は任せたぜ。ダビデ、頼む」

 

「オリオン?何を…」

 

 

思考の海に陥り頭を抱えるオルガマリーを見やったオリオンは一言かけてからピョンッとアタランテの肩からダビデの肩に飛び乗り、その手に委ねられる。

 

 

「任された。何時もは四つ外すんだけど、今回ばかりは一撃目を当ててあげよう。

―――五つの石(ハメシュ・アヴァニム)!」

 

 

かつて巨人を倒した、渾身の投擲により音速で空気の壁を突き破り一直線に空を飛ぶオリオン。脳裏に浮かぶは、何だかんだで愛していた恋人の笑顔。

 

 

「行くぜ、アルテミス…お前の仇討ちだァ!」

 

「どうか誰も傷つけぬ、傷つけられぬ世界でありますように……!?」

 

 

そして、いざ放とうとしていたメディア・リリィの顔に激突。完全な不意打ちを受けたメディアリリィは戸惑うも、すぐさまフォルネウス・アビスの口内から飛び出してきた触手を伸ばし、オリオンを引き剥がすと四方八方から串刺しにし、さらに簡単な魔力砲を放つべく魔法陣を形成する。しかし、オリオンは笑っていて。

 

 

「ああ、俺はもう無理だ。だがな、アンタも道連れだぜお嬢さん」

 

『消滅を提案し「マスタースキル!オーダーチェンジ!」ます…!?』

 

 

瞬間、魔力砲を当てるべく触手から解放されたオリオンの姿が消え、代わりに出現したネロが笑みを浮かべてメディアリリィの胸元に大剣を突き刺した。

 

 

「令呪を以て命じる!ネロ・クラウディウス!宝具を使用しなさい!」

 

「劇場は、海より来たり──豪奢!荘厳!しかして流麗!」

 

 

オルガマリーの令呪により魔力が迸り、口外に飛び出しながら砲口からビームの嵐を放って牽制したネロはそのまま宝具を展開、纏めて汚染しようとしたのか今にも放とうとしていたフォルネウス・アビスの口を塞ぐように自らの宝具を展開する。

 

 

「味わうがよい!これぞ、誉れ歌うイルステリアス!すなわち、余の!黄金劇場である!!」

 

『!?!?!?』

 

 

蓋をされ、放とうとしていた流動体の行き場を失い窒息しかけて痙攣するフォルネウス・アビス。その鼻先(?)にてネロは降り立ち様子を窺うも、フルフルと頭部を揺らしたフォルネウス・アビスの口から黄金劇場がすっぽ抜け宙にてエーテルに還元され、ネロは吹き飛びながらも、上手く受け身を取って着水。やっと砂浜に飛び出してきたそれを見て満足気に唸った。

 

 

「やっときたか冷血メイドよ。聊か遅いぞ、まったく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっとついた…ありがとうオルタ。――――令呪を以て藤丸立香が命ずる!」

 

 

メイドオルタのバイクからふら付きながら降りて、眼前の巨大クリーチャーを見据えながら令呪を掲げる立香。黄金の鹿号(ゴールデンハインド)を相手に、触手と砲弾で近接戦を行っているそれは、今直ぐにでも止めないといけないのは明白で。

 

 

「来て、ディーラー!」

 

「―――ヒッヒッヒッヒェ。ヴェルカム!」

 

 

姿を現し、青い炎に照らされた黒衣のサーヴァントが同時に取り出したるは、辛うじて銃に見える薄い青のカラーリングの機械仕掛けの銃。彼の、とっておき中のとっておき。立香が思い出すのは、冬木でのセイバーとの決戦前。

 

 

―――――「これはとっておき過ぎる上に局地的な戦況でしか使い様がない武器があるぜ。一応教えとくか?」

 

―――――「…じゃあ、一応」

 

 

その時は守秘義務だと言う事で己にだけ耳打ちで教えられたその内容があまりに微妙な上に、サーヴァント戦では絶対役に立ちそうにない武器で。苦笑いを隠しきれなかったのを覚えている。それが、今更何になるのだろうかと不安になった。

 

 

「ストレンジャーには教えているが、コイツはPlagaRemovalLaser412。通称【P.R.L.412】光に弱いというプラーガの性質を突き、対ガナード兵器としてルイス・セラが極秘に開発していた未完成のものを俺が完成させた武器だ。だがまあチャージしなければただの閃光弾としての効果しか出せず、フルチャージすればどんなガナードも一撃で倒せる貫通する強烈な光線を正面に発射する」

 

 

聞けば、理論上あのサドラーでさえ一撃で倒せるんだとか。確かに最初聞いた時は強力だと思った。しかしデメリットがあまりにも大きすぎた。

 

 

「…問題点はガナードのみに対する兵器だから他の物体を破壊できない。さらに言えばプラーガとはいえあんな肉の装甲を着ているデカブツには通用しないと言う事だな」

 

「やっぱり駄目じゃん!?」

 

「話は最後まで聞けストレンジャー。その効果は、通常の状態での話だ」

 

「はい?」

 

 

ピピピピッ…と電子音を響かせ、砲口に光をチャージするディーラー。眩く輝き、それが解き放たれると光線がフォルネウス・アビス目掛けて放たれ、着弾と同時に視界を奪う閃光を放ち混乱させる。これが、ディーラーが宝具展開するためのキーだった。

 

 

此処が我ら武器商人の射撃場(ウェルカム!ストレンジャー)…!」

 

 

瞬間、立香は信じられない物を見た。P.R.L.412を構えたディーラーの他にさらに一人、その傍らにディーラーが現れ、さらにポツポツとアルゴー号の残骸、黄金の鹿号(ゴールデンハインド)の上、今いる島の高台、さらには海に浮かんでいるネロのパイプオルガンの上まで。一度、計28人のディーラーが現れ、その中で残った20人がそれぞれ別の武器を手にしてフォルネウス・アビスを包囲する様に出現していた。

 

 

「こ、これは…!?」

 

「答え合わせだストレンジャー。これが俺の「コンティニュー」の正体だ。まあつまり、俺達は28人で一人のサーヴァントだ。一人だけ常に姿を現し、残りは常にストレンジャーの周囲に霊体化して潜み、一人が死ねば代わりに別の俺が姿を現す。そういう仕掛けだ。

魔力の問題で全員一度に姿を現すのは宝具を発動している数分の間のみ、さらに武器の種類の問題で20人しか同時に出せないが、それでもメリットが存在する。例え残機数が数人減っていても、10人以上いればその現界するための魔力を使って全員を一度に出せる。…まあ、宝具を使用する度に10人減るから二回しか使えないがな」

 

 

そう言えば、ディーラーは今まで霊体化した事がなかった。そう言えば、ジャンヌ・オルタの事をジャンヌに聞く際に「別個体が暴走したのか?」と言っていた。そう言えば、遠く離れていた柳洞寺に居たはずなのに瞬時に密室の、それも立香の背後に現れていた。

 

 

「さらにもう一つ。宝具を発動すれば俺達の持つ武器の中で唯一、このP.R.L.412のリミッターが解除される。最初か最後しか撃てないが、それでもお釣りがくる性能だ」

 

 

再びチャージを始める立香の前に居るディーラーを余所に、他20人全てのディーラー達が動き出す。

 

 

「「「「「全弾、受け取れ!」」」」」

 

 

近距離、アルゴー号の残骸に立つショットガン三種類を持つ三人とマシンピストル、シカゴタイプライターを持つ二人の計五人が撃ち尽くすまで連射。複数の目とグロブスター部分に集中放火を浴びたフォルネウス・アビスは咆哮を上げて魔神柱を出して触手群を放つが、それはドレイクの船に乗っているハンドガン組五名の乱射で弾かれ、さらには高台に居るライフル組二名からの遠距離狙撃により根元から撃ち抜かれて触手を失っていく。

 

 

『集束、放射』

 

 

辛うじて残った一本から電撃を放ち牽制しながら大口を開き、魔法陣に魔力を溜めるメディアリリィ。するとフックショットを手にしたディーラーがネロのパイプオルガンからワイヤーを伝ってフォルネウス・アビスの上に乗るとそのまま電撃を掻い潜りながら走り、一閃。ナイフで最後の触手を一刀両断し、勢いのままに旋回したネロの元に戻った。

 

 

『動体、発見。消滅を提案します』

 

 

魔法陣にディーラーの数だけ式を組み、全て同時に葬ろうとするメディアリリィ。しかしそれは砂浜から放たれたロケットランチャーのニ連撃とピストルクロスボウの爆弾矢の爆発に口内に直撃した事で阻止された。

 

 

「ここから仕上げだ」

 

「ここから先はR指定だ」

 

「お子様にはちょっときつい」

 

 

さらに無防備になったメディアリリィに砂浜に立つ残り三人のディーラーによるマグナム二丁とハンドキャノンが連射され炸裂。全身を蜂の巣にされ、血塗れになりながらも杖を構えるメディアリリィの姿はいっそ痛々しい。

 

 

『無意味なり…無意味なり……』

 

 

本体とも言えるメディアリリィが立て続けに大ダメージを浴びた事により攻撃を止めて再生に全力を費やすフォルネウス・アビスだったが、爆発により顎が歪んで閉まらず、魔力障壁を一応張ってはいるもののその口内は明らかに無防備で。

 

 

JACKPOT(大当たり)!」

 

 

最後のディーラーが、性能が大幅に向上して対象物をすべて破壊可能になったそれの引き金を引いてフルチャージ。引き金から指が離れると同時に幾重にも分散した光線が口内からフォルネウス・アビスの内側に殺到。

 

 

「GoodBye.Stranger…!!」

 

 

内側から細胞を破壊し尽くし蹂躙。光線が外側に突き抜けてまるで流星群の様に空に散り、フォルネウス・アビスはフランスでのファヴニールと同じように粉々に粉砕され、残されたのは海に漂うメディアリリィと、その傍らに浮かぶ聖杯だけだった。

 

 

「…魔女メディア。貴方も、レフの仲間だったの?」

 

「…それを口にする自由を私は剥奪されています。魔術師として私は彼に敗北した。…魔術師では、あの方には絶対に及ばない。今の貴女方では彼には敵わない。いくつもの輝く星を集めなさい。私を倒した貴方の様な、どんな人間の欲望にもどんな人々の獣性にも負けない、嵐の中でさえ消えない(そら)を照らす輝く星を…今の、貴女方には少し難しいでしょうが」

 

 

立香の問いかけにそう答えたメディアリリィだったが、息も絶え絶えで。恨みがましくディーラーを睨みつける。

 

 

「くっ…かはっ。イアソン……残念、でした。本当なら、あなたと共に世界が沈んでいたのに…私は、初恋だった貴方に、これ以上、裏切られないよう、に、したかった…それで得た手段が、一緒に滅ぶことなんて…ああ、ああ。憎らしい人、私が「彼」以外に完膚なきまでに破られるなんて…」

 

「Come back any time。アンタの未来の姿ならカルデアに居る。いくらでも相手をしてやるぜ、ストレンジャー」

 

「私がお断りよ」

 

 

何時の間にか合流したメディアがボソッと付け加え、それを見て何を思ったのか笑みを浮かべたメディアリリィはそのまま消滅。ディーラーも一人に戻りながら聖杯を回収し、オケアノスを懸けた戦いは終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えているかしら?いえ、目が潰れてるから無理ね。……藤丸が何とか、間に合ったわ。全部、貴方のおかげよオリオン」

 

「あー、気にするな所長さん。俺にできる事はこれしか無かったって話だ。立香の嬢ちゃんにもよろしく言って置いてくれよ、マスター」

 

「…もし貴方達を呼べたら、今度こそ一緒に戦いましょう」

 

「ああ、もちろんだ。…その時はアルテミス共々よろしくな。それはそうと所長さんよ。せっかくだから、一発別れのチューとかどうよ?」

 

「貴方の恋人は怖いから謹んでお断りさせていただくわ」

 

「ダメ?あ、そう。じゃ、後腐れなしだ。あばよ」

 

 

その片隅で、オケアノスの始めからずっと共にいてくれたサーヴァントに別れを告げるオルガマリー。自分の力不足を痛感し、彼女はまた前を向いた。




満を持して登場、professionalをクリアする事で手に入るバイオ4最強と名高いP.R.L.412。元々はガナード専用だったのが、機種が変わって何でもかんでもぶっ壊す光線を放つ様にパワーアップしたという経歴がある兵器です。これを手に入れる為だけに約三ヶ月をバイオ4につぎ込みました。水の間とかで精神的に死んだりしました。

ファヴニール戦以来となる真名解放したディーラーの宝具【此処が我ら武器商人の射撃場(ウェルカム・ストレンジャー)】。文字通り、武器商人が無敵となる場である射撃場の如く標的目掛けて撃ちまくる宝具です。真名解放しなくても28人のディーラーとして展開しています。つまり、立香の傍にはずっとディーラーがいたのです(ストーカーではない)。

電撃、刃付きの触手、魔力砲と充実した装備を持つフォルネウス・アビス。圧倒的な破壊力の前に敗北。移動要塞と言ってもいい強さなのですが相手が悪かった。

ディーラーが到着するまでの時間稼ぎとして奮闘し、黄金劇場で蓋をすると言うトンデモ作戦を実行に移すなど度胸面でも成長してきたオルガマリー。オリオンとの別れは彼女に成長を促します。

次回、恐らくキャラ設定の後にロンドン編序章。本編から先に書くかも?次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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