Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ヴェルカム!ストレンジャー・・・どうも、前々回から順調にお気に入り数が減り続けてモチベーションが下がっている放仮ごです。理由が分からないからどうしようもないんだ…

今回は海賊船団VS人類最古の海賊船ことアルゴナイタイの対決。立香のぶっ飛んだ奇策が炸裂です。楽しんでいただけると幸いです。


おいおい、一方的だなストレンジャー

 黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)の船尾にて、黙々と無限ロケットランチャーの整備をしていたディーラーの元に、肩にオリオンを乗せたオルガマリーが黒髭を伴って訪れた。一声かけるがゴゥゴゥと言う擬音が五月蠅いためか反応せず、近くまでよって大声でオルガマリーは叫ぶ。

 

 

「ディーラー!聞いてるの!?」

 

「…ん?なんだ!ストレンジャーが何かまた問題を起こしたか!?」

 

「違うわ!ただ、念のためにブラックテイルの整備と弾の補充をお願いしに来たの!」

 

 

大声で会話する二人を見て、ふむと何か考えるそぶりを見せた黒髭は、ディーラーの手元の銃器群に目をやり問いかけた。

 

 

「よくもまあこんなところで整備なんてできますな商人殿!」

 

「ああ!商人にとって商品は生命線なんでね!洞窟の中でも落とし穴の底でも敵地のど真ん中でも整備するぜ!海賊のアンタにゃ分からんか?!」

 

「そうですとも!略奪強奪はお手の物、略奪品の質なんて考えないでござる!金になればそれまでですし?!」

 

「やっぱアンタとは気が合わないな!」

 

 

強烈な風に叩き付けられながら、悠々と新たにシカゴタイプライターも取り出し整備するディーラー。飛ばされそうになっている弾薬は逃さず掴み、懐に突っ込んでいるが黒衣もバサバサとはためき、黒髭は面白いモノを見るような目でそれを見詰めてほくそ笑むと、今度はディーラーから問いかけられる。

 

 

「ところで黒髭!ヘクトールの狙いはアンタの持つ聖杯とエウリュアレだって気付いていたのか?!」

 

「いんや!聖杯狙いなのは何となく分かっておりましたがエウリュアレたんまで狙うとは予想外でござった!海賊ならば人身売買が目的でしょうが!あの男に限ってそれは無いはずですぞ!」

 

「聖杯はまあ分からなくもないけどな!エウリュアレちゃんはさっぱりだ、自他ともに認める貧弱だぞ!」

 

「オリオンの言う通り、彼女の妹のメドゥーサでもあるまいし戦力増強とは考えられないわ!そもそもヘラクレスがいる時点で強化する必要性なんてないし!」

 

「俺とアルテミスみたいに純粋な神がサーヴァント化する事象の方が可笑しいからな!特別な目的があるんだろうさ!特に女神ってのは生贄の役割が多いから心配だ!」

 

「そうね、神を生贄に捧げる事こそが人理崩壊の手段って事も考えられるし、アステリオスと「必ず助ける」って約束したし早く追い付かないと!それがどんなにとんでもない手段でもね!」

 

「ムハッ!男、黒髭!マスターのために踏ん張りますぞ~!」

 

 

突風に吹き飛ばされそうになり、思わず掴まって来たオルガマリーに何やら滾る黒髭に呆れた目を向けながら飛びそうになったオリオンをフックショットで引っ掛けて手に取り、飛ばれては困るので懐に仕舞うディーラー。男の胸は嫌だとは文句を言われたが気にしない。

そして何とか手摺りに掴まり、飛んで来た樽に頭をぶつけ滑って壁に張り付けられてしまった黒髭から離れて歩み寄って来たオルガマリーが一言尋ねた。

 

 

「…ところで嵐も突っ切るこの作戦、藤丸にしては割と名案だったのかしらね?」

 

「どこがだ。魔力が持つかどうかも賭けだぞ。自分への負担を全く考えていないのはストレンジャーらしいがな。体力なら無理矢理グリーン+イエローハーブを喰っていたから多少持つだろうが」

 

「………まあ、おかげで倒れてくれたから無茶な事は出来ないだろうし、こちらとしては万々歳だけどね」

 

「無茶はしないって約束した先からこれだ、マシュもお冠だろうな」

 

「ええ。今頃説教しているはずよ」

 

 

そう会話する彼らの眼下には、高速で流れて行く暗雲が立ち込めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、こちらはヘラクレス・アビスに乗ったままアルゴー号に飛び乗ったヘクトールと、彼に縛られ気絶されたエウリュアレ。それを見たイアソンはまずヘラクレス・アビスに労いと言葉を掛け、ヘクトールから状況の報告を受けると高笑いを上げた。

 

 

「ほう、報告にあったよく分からん化物だけではなく獣人…「ミノタウロスですよイアソン様」…そう、人間の出来損ないもあちらにはいるのか!英雄に倒される宿命を背負った、滑稽な生き物!そう、『反英雄』が二人も!それに加えて海賊か!向こうの人材不足も深刻だなあ!あっはっはっはっは!」

 

「一応アーサー王が二人もいたんだがね。黒髭も生きたままですしアレは中々厄介だぜキャプテン」

 

「しかしヘクトール!君ほどの男が手傷を負うとは!どこの英雄にやられたんだい?」

 

「お恥ずかしながら、死んだ無銘の英霊による置き土産でね。あれは偶然じゃない、宝具の産物だ。申し訳ないがキャプテン、利き腕がやられたんでアンタの姫様に治してくれません?」

 

「なるほど、宝具ならば致し方ないな。お前は宿敵と違って無敵ではないのだからね。構わないともヘクトール!女神もいる、聖杯も手に入れている!それぐらいの報酬ならよろこんでくれてやろう!さあメディアよ、傷を癒してやれ」

 

「はい、イアソン様」

 

 

言われるまま、治癒魔術をかけてくるメディアリリィを見やり、イアソンの背後に控えるヘラクレス・アビスを見上げるヘクトールはある事を思いだし問いかけた。

 

 

「ん?あのいけすかねえ野郎は居ないんで?」

 

「ああ、アークを探しに行ったらしい。英雄ではない彼なりに我々に尽くしているんだ。だったよなメディア?」

 

「はい。アルバート様は現在、近くの島を探索中です。彼の成果に期待しましょう」

 

「ふむ。では君の神託もそろそろか。…折角だ、ヘクトール。君が私のヘラクレスに頼るまで追いこむとは中々の強敵だったのだろう?だが、私のヘラクレスは無敵だ。君を追い掛けて来る世界を修正しようとする邪悪な集団と、我々世界を正しくあろうとさせる英雄達による聖杯戦争に相応しい幕引きをあげようじゃないか!」

 

「…俺らが正義ね。あの野郎を仲間にした時点で悪い冗談だな」

 

 

聖杯を受けとり、傍らに縛り上げられたエウリュアレを置いて上機嫌でそう宣言するイアソンに、ボソッと毒づくヘクトール。彼の英雄としての勘が、あの男こそ諸悪の根源だと言っていた。

治療を終えたメディアリリィに視線を向ける。何時も笑顔だが、曲がりなりにも彼女はカルデア一行にもいた裏切りの魔女その人だ。それがなおのこと恐ろしい。

 

 

「…姫様よ。アンタ、何時真実を告げる気だい?あの野郎もどうせ探索なんかじゃないんだろう?」

 

「真実を告げる必要があるの?いずれ世界は消えるのです。アルバート様みたいに世界が消えた後に何か企んでいようがその結果は必ず来ます。この海だけが永遠だなんて、そんなことをあのお方は許さない。なら最後まで幸福な思いに浸る事は、悪い事ではないと思うけれど?」

 

「…アンタがそう言うんなら、オジサンは黙っておきますがね。だがあの野郎だけは信じちゃ駄目だ。これはオジサンからの忠告だぜ」

 

「心配ご無用です。何があろうと私の魔術で治します。それよりヘラクレスはどうでした?厄介な知性は残っていましたか?」

 

「ああ、最初はエウリュアレを殺そうとしていたが、途中からウイルスとやらが頭に回ったのかちゃんと言う事を聞いてくれたぜ。まあ注意した方がよさそうだ」

 

「エウリュアレが鍵であることを知っていたのでしょう。だから殺して崩壊を防ごうとした。念には念を入れて、私からアルバート様に進言して彼にウイルスを投与したのですがやはり抗いますか。さすがはイアソン様が絶大な信を預ける大英雄です」

 

「あの状態で“知性”があるとは思えないがねえ。いいさ、オジサンの視界にいる限りは注意をきっちりしておくよ。やれやれ、真っ当な聖杯戦争に召喚されてアキレウスの野郎とやり合いたかったねえ…」

 

「終焉の針が進みました。世界を救うべき大英雄はウイルスに侵され、カルデアの者達ではヘラクレス・アビスにはまず間違いなく敵いません。あと一押しで世界(ちつじょ)は崩れ落ちるでしょう。…愛しいあなた。それまでどうか、私を夢から覚まさないでくださいね?フフフフフッ…」

 

 

アルバートから受け取った容器を手に不気味に笑むメディアリリィに引いていたヘクトールはそう言えばと思い出したようにを告げた。

 

 

「…ああ、そうだ。敵陣にアンタの未来の姿があったぜ。キャプテンにはどやされると思って言わなかったが大丈夫か?」

 

「…イアソン様が居ない私など、敵ではありません。もしもの時はこれもあります。例え格上の私が相手であろうとイアソン様は守って見せますわ」

 

「…本当、キャプテンに同情するねえこれは……ん?」

 

 

視線を海の彼方に向けるヘクトール。そこには、水上を高速で走るバイクを駆る黒き騎士王の姿があった。それを確認したヘクトールは未だに上機嫌でエウリュアレを眺めていたイアソンへと告げた。

 

 

「キャプテン、やっこさんおいでなすったようだぜ。まずは一人だ、ああ見えて強敵だぜ」

 

「ふむ、やっと来たか。後の奴等は嵐に足止めされているのか?まあいい、さっそく血祭りに上げて見せしめにしてやろう。私のヘラクレスよ、行け!あんなふざけた格好で私の前に姿を晒した愚者を叩き潰してしまえ!」

 

「■■■■■■■■■■■ーーッ!」

 

 

イアソンの言葉に応え、咆哮を上げて跳躍、海に飛び込んでサメの如き速度でメイドオルタに向けて猛進するヘラクレス・アビス。それに対しバイクを走らせながらメイドオルタは立ち上がり、背中に背負っていたそれを取り出し、バランスよく構えて引き金を引き絞った。

 

 

「■■■■!?」

 

「なっ、ヘラクレス…!?」

 

 

構えたそれ…ボルトアクション式のライフルから放たれた、イアソンどころかヘクトールやメディアリリィでさえも捉えきれなかったその弾丸はイアソンの頭部を捉えたが、瞬時に戻ったヘラクレス・アビスに防がれ、しかしその胸部を貫通して確かなダメージを与えた。蹲るヘラクレス・アビスに困惑の声を上げるイアソンだったが、直ぐに立ちあがったヘラクレス・アビスに戸惑いながらも虚飾の笑みを浮かべた。

 

 

「はっ!まさかヘラクレスを一度とはいえ殺すとはお前も英雄か?だが残念だったな、ヘラクレスはね、死なないんだよ!やってしまえヘラクレス!」

 

「ああ、知っている。冬木では埒が明かなかったから一撃で葬ったからな。だが、商人の仮説通り現代の武器が通用するのは確認した。来い、大英雄。我が鉄の馬の速さについてこれるか?」

 

「■■■ー■■■■■ッッ!」

 

 

アルゴー号の上から巨大な鉤爪と化した右腕を振り下ろし、放たれた衝撃波をバイクを駆って易々と回避するメイドオルタは運転しながらセクエンスをアルゴー号に向けて撃ち挑発し、激昂したイアソンの声にならない叫びで再び海中に潜ったヘラクレス・アビスが猛追。

 

 

「やれ!叩き潰せ!サーヴァントの身とはいえさらに強くなったお前の力を見せてやれヘラクレス!ええい、メディア!ヘラクレスに常時治癒魔術をかけろ!余裕があれば魔力砲撃で援護だ!」

 

「援護したくともあのスピードではしがない魔女である私ではどうしようもありません。しかし全力を尽くします」

 

「やれやれ。オジサンでも辛うじて状況が把握できるってどんなスピードだよ…ん?」

 

 

高速で追走劇を行なう両者にイアソン達の注意が引きつけられ、ふと嫌な予感を感じたヘクトールが振り向くと、そこには気絶しているエウリュアレの拘束を解いて左腕で担ぎ、聖杯に手を触れようとしていたディーラーと目が合った。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

思わず無言の間が流れ、ディーラーは思い出したように聖杯から手を引っ込めると代わりに、傍らに置いていたワイヤーが天まで伸びたフックショットを握り、スイッチを入れた。

 

 

「…………ヒッヒッヒェ。いい武器があるんだが閉店だ」

 

「お前、どこから…!」

 

「Goodbye!」

 

 

シュルルルルとワイヤーが巻き上げられ、ディーラーの姿が空へと持ち上がって行き、ヘクトールが見上げると巨大な入道雲の中に消えたディーラーの姿が。そしてそれに気付き、慌てて最初にメイドオルタを視認した海域を常人よりも優秀な視力で見てみると、そこには限りなく透明に近い糸が先端が輪になって浮かんでいた。

 

 

「そういうことか…あのメイドは陽動か!キャプテン!上だ!」

 

「なに?ヘラクレスが苦戦していると言うのに何を騒いで……!?」

 

 

ヘクトールの叫びに、文句を言いながら上を向いて絶句するイアソン。同じくそれに気付いたメディアリリィが間一髪で防護壁をアルゴー号を囲む様に張り、同時に空から砲弾の雨が降り注いだ。

 

 

「いくでござる!いくでござる!―――アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)!んんw一方的ですぞ~!」

 

 

それは、空から降って来てすぐ目の前に着水した黒髭の宝具、海賊船に備え付けられた四十門の大砲であった。砲弾の雨は防護壁が張られた虚空と、近くの海域で辛うじて気付いたヘラクレス・アビスに炸裂し、大爆発がアルゴー号の視界を覆い尽くす。

 

 

「一体何だ!何が…」

 

「…まだだキャプテン。奴等、とんでもない手段できやがった…」

 

「エウリュアレは取り返したし、聖杯は後から回収すればいい話よ!黒髭、ネロ!魔力は回すから全火力、叩き込みなさい!」

 

「うむ!行くぞ新参者の海賊よ!」

 

「BBA!先陣は拙者とオルガマリー殿達で務めさせていただきましたぞ!とっておき、決めちゃって~!」

 

 

さらに黒髭の隣に掴まっていたオルガマリーの号令で再び放たれた砲弾の雨と、搭乗しているネロの砲門による一斉砲火が襲い掛かり、防護壁を解く事が叶わず一方的に攻撃されるしかないアルゴー号へ、影が差す。

上を向けば、アステリオスが船首に掴まって無理矢理落としたと思われる、空中に浮かんでいた黄金の鹿号が船首を前にして落下して来た。既にドレイクの持つ聖杯により周囲に砲門が展開され、濃密な魔力が集まって行くのを肌で感じたイアソンは青い顔を浮かべる。

 

 

「おいおい、人類最古の海賊船だかなんだか知らないけど、アタシの船員を顔も見せずに奪っていくたあ、舐めてくれたねぇ…青二才。こいつは高くつくよ?」

 

「えうりゅあれ、もう、とらせない!」

 

「くっ、そんな馬鹿な…どうしたら空を飛ぶなんて頭の悪い作戦を考えてそれが実行できるんだ…!ヘラクレスは…!?」

 

 

ヘラクレス・アビスの居た場所を見ると、そこではメイドオルタにアルトリアとヴェルデューゴが加勢し、猛攻を押さえられている大英雄の姿が。アレでは直ぐには来れないと直感してしまい、さらなる絶望が彼を襲った。

 

 

「あら。相変わらずヘラクレス任せなのね、イアソン?」

 

「え。あの……。その声は……まさか、君がカルデアに加担しているなどありえな…ギャー!!ホ・ン・モ・ノー!?」

 

「イアソン様?それでは私が偽物みたいですけど?」

 

「い、いや違うんだ…君は素直な私の伴侶で、奴は裏切りの魔女で…そうか、こんなとんでもない事が出来たのも彼女の魔術か…!」

 

 

船首に掴まるアステリオスの陰からひょっこり顔を出したのは、今もなお魔術を行使中なのか少し焦燥しているように見えるメディア(リリィじゃ無い方)であった。思わず絶叫を上げたイアソンに、防護壁を展開しながら不満そうに頬を膨らませ睨んでくるメディアリリィに冷汗タラタラながらも何とか理解するイアソン。いわゆる修羅場であるが、今なお海賊船がゆっくりとはいえ落ちてきている為に緊急事態で焦りに焦りまくっていた。

 

 

「ええ、うちのマスターは魔術師見習いだけど発想がずば抜けていてね。黒髭に自分の船を一度消してもらって、全員乗ったこの船を私が浮かせ、それを繋げたバイクで海上を走るメイドオルタに引っ張ってもらうと言うぶっ飛んだ作戦よ。まさか貴方がいるとは思わなかったけど、貴方みたいな狡賢いけれどお約束を守る輩には効果覿面だった様ね」

 

「裏切りの魔女をサーヴァントにだと…そのマスター、正気か!?」

 

「正気も正気!…です!メディアさんを馬鹿にすると許さない…ガクッ」

 

「先輩!無茶しないでください!?」

 

 

何やら青ざめた顔の立香が顔を出すも直ぐに倒れてしまい、それを慌ててマシュが引き摺って行く。どうやらゴールデンハインドの上の重力は一定であるようだった。立香が倒れるぐらいにメディアが本領発揮している恩恵である。

 

 

「畜生!私が正義なんだ!この船はアルゴー号だぞ!?不死身の大英雄ヘラクレスもいる、負けるはずがないんだ!それがこんな、おまえらのような寄せ集めの雑魚どもに倒されてたまるものかァ!!!!」

 

「落ち着いてくださいイアソン様、私が何とかしますから!」

 

「クソッ、クソッ、クソッ!そうだ、アルバートはどこだ!ヘラクレスがああなって奴等を蹴散らせない原因は奴にあるんだろ!…アイツ、一人で逃げやがったな!こうなったら令呪でヘラクレスを…!」

 

「逃がさん。水面を駆けるは不撓の魔弾。ロック!」

 

 

ろくにメディアリリィの声も聴かず、動揺して令呪を掲げたイアソンを見るや否や、一度離れてから高速でヘラクレス・アビスに向けて突き進むバイクの上で、モップとなったエクスカリバーとセクエンスを合体させ、スナイパーライフルにしたメイドオルタが狙い撃った。

 

 

「――――不撓燃えたつ勝利の剣(セクエンス・モルガーン)!!」

 

「へ、ヘラクレス…!?」

 

 

先程の一発目、心臓を狙ったハートブレイクショットとは違う、極太の水流の様な魔力砲撃がイアソンの指示と迎撃で手一杯だったヘラクレス・アビスを飲み込み、二つ目の命を散らすとさらに衝撃がアルゴー号を襲い、ドレイクの手に持つピストルの引き金がついに引かれた。

 

 

「さあて!ここが命の張りどころってね!…ワイルドハントの始まりだ!」

 

 

聖杯の力で限定的に英霊としての自分の宝具を得たドレイクの、黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)と、黒髭のアン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)が上と横から襲い掛かり、防護壁は耐え切れずに砕け散り、アルゴー号は木端微塵に吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おいおい、一方的だなストレンジャー。完全勝利だが、その立役者のストレンジャーがこれじゃあ締まらないな」

 

「…面目ない、凄い脱力感が…あ、今揺れたら吐き気がヤバい…」

 

「ハーブでも喰っとけ」

 

「もごっ!?」

 

「く、草のままはさすがに窒息しますディーラーさん!?」

 

 

着水して大きく揺れた黄金の鹿号(ゴールデンハインド)の船室にて、そんな会話があったとかなかったとか。




イアソン、未知なるマスターとちゃんと対話することなく完全敗北。原作から思いっきり離反します。あとは聖杯を回収すればカルデアの完全勝利ですが…?

原作でヘラクレスが猛威を振るったのは、彼を足止めできるようなサーヴァントがアステリオスぐらいしか居なかったからだと思うんだ…ヘラクレス・アビスは余計な要素を埋め込んだせいで高ランクの宝具以外にも弱点を狙った銃器の類に滅法弱くなっていて弱体化しています。…まあ、防御面のみなんですが…(ボソッ)

立香の作戦→まず黒髭に船を宝具として一時的にしまってもらってゴールデンハインドに同乗してもらう→カルデアの魔力だけじゃ足りないため自分の魔力も使わせてメディアにゴールデンハインドを浮かばせ、さらに透明で頑丈な糸(ディーラー製)でメイドオルタのバイクに繋げて凧揚げの様に引っ張ってもらい空の上を行き嵐などを回避(なお、メイドオルタは嵐の海でも爆走した模様)。
敵船が見えたところで切り離し、メイドオルタに糸を切らせて陽動してもらうと勢いに任せてその敵船上空まで突き進んでメディアの魔術で緊急停止→メイドオルタが注意を退きつけているうちにディーラーにフックショットを使わせてエウリュアレ(と、できれば聖杯も)回収して、同時に空から宝具を展開して少しだけ宙に浮かべて軌道修正した黒髭の船で大砲を撃ちながら襲来。ヘラクレスと分断させ、混乱させたところにさらにゴールデンハインドで追い打ち。
という、かなり来る自分へのダメージを省みていないぶっ飛んだ作戦でした。これ、当然ながらヘラクレスが万全ならアウトでした。

冒頭の会話が嵐の上を突っ切っていた時の物。その時既に立香は寝込んでます。ディーラーの事を強く言えないマスターですが効果は覿面でした。

船を失ったイアソンがどう出るのか。何とか二回は倒せたヘラクレス・アビスとの決着は。謎の男アルバートの行方は。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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