Fate/Grand Order【The arms dealer】 作:放仮ごdz
多分分からなくなると思うので今回から前書きにコンティニュー回数を書こうと思います。
今回は閑話的な回。黒髭は一体どうなるのか。楽しんでいただけたら幸いです。
【ディーラーのコンティニュー回数、残り24】
立香達の知らない海域にて。穏やかな海に浮かぶ人類最古の海賊船の上にて、メディアを幼くしたような少女、というより幼いメディアであるサーヴァント、メディア・リリィが己のマスターであり伴侶である金髪の男に報告を上げていた。
「失礼します。お邪魔しますねマスター。ヘクトール様から連絡がありました。ヘラクレス・アビスの助けを借りてようやくですがエウリュアレを確保したそうですよ」
「そうか、やっとか。…あの日、我が友ヘラクレスが奴のせいでああなってしまって狼狽えたりしたが、姿こそ変わり果てても今まで通りオレの言う事を聞いてくれてむしろパワーアップした大英雄を向かわせたんだ、できて当然だが…そうか!そうか、そうか、そうかあ!やった!」
「ふむ、不満か?あの御方が言った通り、女神エウリュアレを捧げれば更なる力を得る事が出来る。貴様は誰よりも強く、無敵の存在…つまりは
そこに姿を現したのは、S.T.A.R.S.と背中に描かれたジャケットを着た若いサングラスの男。ニヒルな笑みを浮かべたその男に金髪の男は嫌悪で顔を歪ませてそっぽを向いた。
「ふん、礼は言わないぞアルバート。オレのヘラクレスをあんな姿にした報いは何時か受けさせる…が、今じゃない。それより疲れている様だが大丈夫かい愛しい君よ。君の笑顔はまるで太陽だ、何時でも私の胸を満たしてくれる。だが長時間この船の動力源になっているんだ、辛くなったら言って欲しい。ほら、ほんの少しぐらいなら休憩を考えてあげるからね」
「あ、ありがとうございます…!でも大丈夫です、そのお気持ちだけで頑張れます!」
「ああ…素直で可愛い私の妻になる
「ふん、海上では聊か俺の宝具も使い勝手が悪くてな。期待はしないでもらおう」
「恐らくヘクトール様たちが帰還すると共に向かうべき先を示した神託は下るのだと思います」
「なんだそりゃあ、回りくどい…オレの足ばかり引っ張りやがって…あ、いやすまないね。彼等を悪く言うつもりあない、ないのだが…私にだって神託を受ける権利はあるはずなのにどうして君だけが…まあいい、急いては事をし損じる。今は君の神託を信じて船長として最善を尽くそう」
「ええ、それでこそ。早くお二方を迎えに行きましょう。半日もかかりません。我等アルゴナイタイのメンバーは絶対不敗の英雄達。…剣客であるアルバート様を抜いてですが…寄せ集めの彼等に勝てる道理はありませんもの」
「そうだね、その通りだ!我々は最強だ!間違いなく、文句なしに最強だ!何しろ世界最強最大の英雄と魔女がついている!ああ、一人どうしようもない女がいたがそれはアルバート、よくやった。ふん、
「ああ。既にネプチューンを放った。手負いの奴一人ではどうしようもないだろうな」
まあ、それが戻って来てないと言う事は逆に返り討ちにあったという証明なのだが話す事も無い、と内心ほくそ笑むサングラスの男。嘘は言ってない、もしサーヴァントの介入が無ければ間違いなく喰われていたはずだ。そんな事も露知らず、金髪の男は高らかに声を上げる。
「さあ諸君!出立の準備だ!『
「はい!マスター…いいえ、イアソン様!」
盛り上がる二人を余所に、アルバートと呼ばれた若いサングラスの男は、静かに言葉を紡ぎながらメディア・リリィの脇を通って船内に入って行く。
「…馬鹿め。どんな歴戦の英雄であれ負けたからこそ死に、英霊なんぞになるんだ。アルゴナイタイであれ例外ではない。貴様では神には至れない。…しかし都合のいい神託だな、魔女殿?」
「神託とはそういうものですよ、アルバート様?」
「…まあいい。あの男には上手く言っておけ。それとこれは例の品だ、使い所は考えろよ?」
ニッコリと笑みを浮かべたメディア・リリィに何かの瓶を渡したアルバートはそのまま歩いて行き、金髪の男に気付かれる事無く海に飛び込んだ。
…金髪の男、イアソンが率いる人類最古の海賊船に乗る彼等はアルゴナイタイ。ヘクトールの真の主であり、即ち立香達の真の敵であった。
ちょうどその頃。黒髭を裏切り深手を負わせたヘクトールと突如出現したヘラクレス・アビスにエウリュアレが攫われ、圧倒的な力の差を見せつけられた上で一つの敗北を味わった立香達。とりあえずとゴールデンハインドで追う準備を進める中、立香は死に際の黒髭に歩み寄っていた。
「くぅ…聖杯を奪われ致命傷を負うのはいいとしてもエウリュアレ氏を連れ去られてここで果てるとは…無念なり、ガクッ」
「ねえ黒髭」
「…死に掛けの拙者に何か御用?ここはドラマチックに消えたいところなんですが?」
「貴方の手下、そこのサーヴァント二人以外消えちゃったんだけどどうして?」
「拙者の魔力で生み出していた仮初の手下ですしおすし?聖杯が無くなったから維持できなくなったと思うでござる。…そこの御二方」
「なんだ、船長。…裏切りから救ってやれなくてすまねえ」
「……」
黒髭が声を上げると肩身狭そうに待機していたパーカーとヴェルデューゴが歩み寄る。無言でジッと続きを促してくるヴェルデューゴと、心底悔いているパーカーの姿に黒髭はにんまりと笑った。
「ヴェルデューゴ氏は最後まで無言を貫くとはこれまた手厳しい。ホント、喋れたら語り合いたいものなんですがねぇ…気にしなくていいでござるよパーカー氏、完全に拙者の油断が招いた結果でござるからして。
御二方、まだ拙者の言う事を聞いてくれると言うなら、この皆さんと一緒にエウリュアレ氏を連れ戻してくれない?いやー拙者、エウリュアレたんの一ファンとして意地でも助けに行かないといけないところだけどこんなザマだし、頼まれてくれない?」
「…アンタが望むなら」
「…(コクッ)」
「忠実な部下を持って感無量ですぞ!…さあて、そろそろサヨナラのお時間ですな!BBA、これで勝ったと思うなよでござるよ!?」
その言葉に、寂しげな笑みを浮かべるドレイク。結局、決着は付けれず仕舞いであった。
「…海賊としてのアンタと一戦交えたかったんだけどねえ。引き分けって事でいいよ。さっさと消滅しちまいな、黒髭。生き続けるのもキツいんだろ、今のアンタ」
「おおおのれ。そんな優しい言葉を掛けられれば…BBAにデレたくなってしまう…結婚します、一生幸せにしますとか言っちゃう…BBA、どうせ彼氏居ない歴=年齢でしょう?」
「無茶苦茶間に合ってるわ、このボケェ!生憎伴侶はメアリがいるんだよ!さっさとおっちね!」
「なんと!百合夫婦でしたか、それはそれは妄想が捗りますなぁ。一人の男の恋心を無残にも砕くナイスな罵倒ですな、センクス!」
泣きながら笑うと言う器用な事をしながら徐々に消えていく黒髭を尻目に、ちょいちょいとディーラーを招きよせ何やら話し込む立香を余所に、立ち上がり口上を上げる黒髭。
「さあて満足したし死ぬとするか!だが、今度こそは首を刎ねられてやらねえですぞ。だって拙者、大海賊ですからな!面白おかしく海賊やって、そして死ぬ!ハーレムできなかった上にエウリュアレたんをにっくき先生に奪われたのは無念だが、心底信じられた部下が二人も出来たし楽しかったからよしとしよう!」
「そりゃあよかったね。そら、逝けよ。…アンタの最期はちょっとだけだけどマシュから聞いた。その首はきっちり忘れずに持っていきな!」
「くっ、ははははははははっ!大海賊黒髭が誰より尊敬した女が!誰より焦がれた海賊が!黒髭の死を看取ってくれる上にこの首をそのまま残してくれるなんてな!……あ、でもBBA?拙者がライバルとして甦るルートとか必要では?心の中で温めていたぴったりの復活の台詞があるんだけど…」
「いらないいらない」
「そうか、じゃあしょうがないな。黒髭は死ぬぞ!さらばだ人類!さらばだかいぞkゴアッ!?」
長ったらしい口上の後、いざ消えようと言う瞬間。誰もが黒髭の消滅を見守ると言う、空気をぶち破ってその口に巨大な焼き魚を打ち込んだ猛者がいた。途中から完全に話を聞いて居なかった立香である。
「ちょっ、まっ、なにこれマスター殿!?」
「…えっと、死んでほしくないなって…………ごめんなさい?」
「先輩…」
「藤丸…」
目の前で死んでいくと言うのはやっぱり無視できない藤丸立香という少女の性質に、知っていたとはいえまさかと呆れてしまうマシュとオルガマリーに、涙目になって必死に弁明する立香。
「良かれと思ったんです!まさか本当にエウリュアレを残すなんて無念を残して死のうとするなんて思わなかったの!」
「むふっw縮こまる少女もまたGood………いやいや、拙者どう考えてもアレ致命傷で…あれ?傷が治っていると言うか消滅が止まった?なあにこれぇ?」
他の面子も非難というか、呆れた視線を向けていて立香は気まずくなり、思わずアタッシュケースを手にしたディーラーの後ろに隠れて縮こまり、消滅せずに済んだ黒髭はそのディーラーに視線を向けた。
「ん?そう簡単にストレンジャーは他人を死なせないぜ。俺特注のスペシャルカスタムだ、初めて作った物で無償だから感謝しろ?ストレンジャーのオーダーだ、まだ生きているなら治すとも。体力を全回復させるランカーバスにどんな傷をも治療する救急スプレーを吹きかけ、体力を全回復させる金色の卵と白、茶色の卵を掻き混ぜた物に
突っ込んでから焼夷手榴弾の火で炙り、さらに粉にした四色ハーブを振りかけた、死んでなければどんな瀕死の奴でも復活させるトンデモ品だ」
ぶっちゃけると、全ての回復する商品をありったけつぎ込んだトンデモ復活アイテムである。なに、焼夷手榴弾はテルミット反応を用いているから焼くのに使ったら危険だって?青ハーブが何とかしてくれる(願望)。
「味は保証せんがどうだストレンジャー?」
「普通に美味かったでござんした。…あれ?拙者もしかして死ななくてもいいパターン?あ、BBA。さっきの台詞なんだけど「お前を倒すのは、この拙者と決めている…!」とかどうどう?」
「そうかい、じゃあ今は私のクルーのエウリュアレが攫われているから取り返した後で決着を付けようか…!」
「あ、ヤバい。BBAが何かキレてる。助けてパーカー氏、ヴェルデューゴ氏!」
「すまん、女の扱いについては助けになれん。生きててよかったぜ船長」
「(
「そんな殺生な!神は死んだ!でござるぅ…」
パーカーだけでなくまさかのヴェルデューゴにまで親指を立てられ、泣き崩れる黒髭に歩み寄る影が一人。オルガマリーであった。
「…ねえ。貴方はもう敵じゃないって考えていいのかしら?」
「なんですかなオレンジタイツのお人。君の部下に厳しく言って置いてくれます?男の覚悟を無駄にしないで欲しいとね!ぷんすか怒っているでござるよ拙者。…まあ、命を助けられたわけではありますしもう敵対する気はないでござるよ。というか理由が無くなったので戦う必要もナッシング」
「エウリュアレね?…なら提案なんだけど、彼女を救い出すまで休戦協定を結ばない?」
『所長!?いったい何を!?さっきまで変態気持ち悪いとか言っていたじゃないですか!』
いきなり突飛な事を言いだしたオルガマリーに溜まらず突っ込むロマン。ちなみに立香とディーラーはアルトリアにお説教されていた。矜持をぶち壊しにしたのはアウトらしい。主に過去の聖杯戦争がらみで。
「それはそれ、これはこれよ。よく考えなさいロマン、黒髭の部下のサーヴァント達、そして宝具を考えると味方にした方がどう考えてもお得よ。性格は目を瞑るわ、今は信頼できる戦力が必須事項よ。私達に選り好みする余裕も無い訳だし」
「…エウリュアレ氏を奪われたのは拙者の責任。恩もあるしBBAと一緒に戦えるし了承しますぞ。ただし条件が一つ。ところでお名前は?」
「オルガマリー・アニムスフィアよ」
「ではオルガマリー殿とそのサーヴァントがこちらの船に乗り、さらにオルガマリー殿が拙者やパーカー氏達と仮契約するのが条件ですぞ。
人質的な意味合いではなく、単純に魔力と潤い的な意味で。拙者的に商人はNGだしあのマスターは何か怖いし共闘するならよろしいでしょ?」
その条件に、なんだそんなことかと溜め息を吐いて頷くオルガマリー。冬木やらフランスやらローマやら幽霊船やらを乗り越えて、彼女は強く逞しくなっていた。
「ええ、それぐらいならいいわ。じゃあ私とアルトリア、ネロとオリオンが乗り込めばいいのね」
「オリオンとな?」
「コレよ」
「おっす、俺、オリオン。戦力にはならんと思うけどよろしく」
「…ちぇっ、なんだ男がいるのかー」
「まずオリオンが縫いぐるみな事に驚きなさいよ」
「いや、一々騒がられるよりはいいわこの反応」
そんな感じで、オルガマリーの魔力で回復した黒髭の船にクルーが復活し、ドレイクの船の修繕も済んで、並走してヘラクレスたちの去って行った方角へと舵を切る
決して相容れなかった二つの海賊船が共に進むその様は圧巻であった。
そんな訳で立香の駄目な部分とディーラーのチートがベストマッチして生まれた黒髭生存ルート。前回、エウリュアレとマイクを失いましたが代わりに黒髭、パーカー、ヴェルデューゴがオルガマリーのサーヴァントとして仲間になりました。
まだ黒髭に見せ場があってもいいじゃない。
姿を現したイアソン率いるアルゴナイタイ。アルバートという謎のサーヴァントが乗っていましたが言って置きます。ローマのあの男とは違うサーヴァントです。メディア・リリィに謎の瓶を渡しましたが…?
そのアルバートにより負傷したと思われるアルテミスを信仰するアルゴナイタイのメンバーと、それを救った謎のサーヴァント。…まあ原作既プレイの人なら分かりますね。
次回、ドレイク黒髭船団VSアルゴナイタイ。VSヘラクレス・アビス&???。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。