Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ヴェルカム!ストレンジャー・・・どうも放仮ごです。あまりに人気が出てビビっております。これは期待にお応えせねば…!と頑張って一日で書き上げました。他の小説と違って一話を短くできるので比較的早く書けました。が、前回言っていたアーチャー戦は次回に持ち越しとなりました。その前にどうしても書きたかった戦いがあったためです。

ところで一言評価で「この人だと長編は難しいですよねぇ」と言う言葉がありましたがそうかな?と思います。見方を変えればここまで魅力的なキャラもいません。少なくとも、レオンを主人公にして書くよりはすんなりストーリーを考えられます。

そんな訳でキャスターと合流、VSアサシンとなります。楽しんでいただければ幸いです。


接近戦はナイフの方が速いぜストレンジャー

「そ、そんな・・・ディーラー!」

 

 

自分が軽く叩いたせいで死んでしまった初めてのサーヴァントの死体に縋り泣き喚く人類最後のマスター、藤丸立香。その光景を見ながらマシュは自身の無力さ(?)を痛感し、オルガマリーはあまりにも弱い英霊に開いた口が塞がらず、ドクターロマンは画面の向こうで何やら思考していた。

 

 

『いや待て、皆。様子が可笑しい…何故、サーヴァントが死んだのに消滅しないんだい?』

 

「え?どういうこと?」

 

「た、確かに。よく気付いたわロマン。いい藤丸、サーヴァントってのはね、エーテルで実体が構成された幽霊の様な物なの。というより使い魔ね。魔力が切れたり、死んでしまったりすると消滅して座に戻るはずなんだけど…何故か、このサーヴァントの死体は残っている。これは異質だわ」

 

「じゃ、じゃあどうなるん…?」

 

「口調が可笑しくなっているわよ藤丸。私も知らないわよ。まさか死んだふりじゃないでしょうね?」

 

「それはありえません!ドクターから指南していただいた私が確認しました、Mr.ディーラーは確かに死んでいます!」

 

 

オルガマリーの疑問に、マシュが慌てて主張する。変な状況になって来た。誰もがそう感じていると、立香の背後から声が聞こえた。

 

 

「そう泣くなストレンジャー。何時もの事だ、気にするな」

 

「だ、だって!初めて私の召喚に応じてくれて、頼まなくても守ってくれたいい人だったんだよ!気にしないなんてできないよ!」

 

「慣れてもらわないとこっちが困るんだがな」

 

「慣れちゃうなんてそんなこと・・・え?」

 

 

振り返る。一度、目の前の死体と、周りで驚愕している面々を見てからもう一度振り返る。そこには、「よぉストレンジャー」と和やかに挨拶している己のサーヴァントがいた。

 

 

「『「はあぁああああああああああああああ!?」』」

 

「でぃ、ディーラーさん!?な、なんで…死体はまだここにあるんですよ!?」

 

「気にするな。それよりいい武器があるんだ」

 

「それより!?自分の死体がそれ扱いなの!?」

 

「ろ、ロマン!どうなっているの!?」

 

『僕に聞かれても!?でも反応は全く同一個体だ!どうなっているんだ!?』

 

 

騒ぐ面々を見て、こりゃ駄目だなと溜め息を吐いたディーラーはリュックの中からスッと取り出したそれを差し出して事態の収拾を図る。

 

 

「そんなに騒ぐな。ほれ、そこらの火で炙って来たランカーバスの焼き魚でも喰って落ち着け」

 

「「落ち着けるかぁ!?」」

 

「生で喰うよりかは美味いぜストレンジャー」

 

『君は生魚をそのまま喰った事があるのかい!?』

 

「ああ、腹痛じゃ死ねないから辛かったぜ?俺が死んでも代わりはいくらでもいる。気にするだけ損だ。悪いと思っているなら何か買ってくれストレンジャー」

 

「買わないよ!?」

 

「ちゃんと説明しなさいもう一回殺すわよ!?」

 

「とりあえず、お二人共元気が出てよかったですけど落ち着きましょう皆さん」

 

 

現状唯一真面な戦力であるマシュが癒しであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうと、盾の嬢ちゃんに咄嗟に防御を指示するとはな。ナイスな指示だ、俺の耐久が低いとよく分かったなストレンジャー」

 

 

落ち着いたところでそう自らのマスターを褒めるディーラーに、立香は気まずそうに苦笑いする。

 

 

「い、いや仲間に傷付いて欲しくなかっただけで・・・結局私が殺しちゃったし…?」

 

「それでもナイスだ。自らの銃で援護するんじゃなく、盾の嬢ちゃんに指示するのは己の分を弁えたいい判断だったぜ。…アンタもそう思うよな?」

 

「…気付いていたか」

 

 

ディーラーに褒められて赤面していた立香が振り向くと、そこには杖を持った蒼いフードを被った赤目の男が立っていた。ロマンが言うにはサーヴァントらしい。ディーラーが戦うそぶりを見せずのんびりとマインスロアーを取り出して手入れし始めた事から、敵ではない事が窺えた。

 

 

「中々大した采配だったぜ嬢ちゃん。そこのサーヴァントも強力だ、助太刀しようと思ったんだがいらなかったようだな」

 

「あ、貴方ここのサーヴァントなの?」

 

「おうよ。俺のクラスはキャスター。この地獄で唯一正気を保っているサーヴァントだ。アンタ等はよそ者みたいだな、情報交換と行かねえか?」

 

「分かったわ」

 

 

キャスターとオルガマリー、ドクターロマンが話す中。立香はマシュと一緒に、マインスロアーだけでなく先程使った武器の整備をしているディーラーに話しかける。

 

 

「ねえディーラー?…殺しちゃったけど、本当に恨んでないの?」

 

「ああ。故意じゃないからな。…前のストレンジャーは、挨拶とばかりにナイフで切って来たからなぁ…」

 

 

前の顧客である捜査官と女スパイを思いだし、遠い目をするディーラーに少し心配になる少女二人。しかしディーラーは、その事も気にしていない様子だった。

 

 

「…何で逃げないの?」

 

「俺はガナードだ。もう死んでいるも同然だ、むしろ死ぬ機会を与えてくれるんだ。恨むはずがないだろう?それに、お宝もくれたし毎回ちゃんと買っていてくれたからな。文句が言える立場じゃあない。最後の俺だけを生かされても困るだけだったがな。倒壊する島と運命を共にしたから問題は無い」

 

「…何で生きようとしないの?」

 

「言っただろう。もう死んでいるも同然なんだ。ガナードってのはな、理性を失うんだ。例え支配種であっても、人間として大事な何かを失っている。特に首魁は酷かったな。だからまあ、ガナードにされかけていた二人を助ける手助けをして、それをちゃんと見送れた。それだけで満足だ。武器商人として全うできたんだからな」

 

 

しみじみとするディーラーに、どこか怒っている様子のマスターを見ながら、今の話を聞いて自身の恩人を思い出したマシュが静かに口を開いた。

 

 

「…貴方は、どこか私の知っている人を思い出します…」

 

「そうかい。そいつも、信念を持って何かに抗っているんだろうな。救われない。最後まで見ておいてやれ、それがそいつへの手向けになる」

 

「…はい!」

 

「ストレンジャーは、納得いったか?」

 

「…私はディーラーがまた死ぬのは許さないからね」

 

「じゃあ、アンタが気を付けてくれればいいさ。ストレンジャーさえ指示を間違えなければ、俺が死ぬことも無い」

 

「…うん、分かった」

 

「そろそろ所長さん方の話が終わりそうだ。合流しようぜ、ストレンジャー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この特異点の異変の原因をキャスターとの情報交換から知り、目的地である柳洞寺を目指す一行。道中何度も敵と戦いながらも、順調に撃破しながら進んでいた。

 

 

「ところでお前、武器商人なんだってな」

 

「イエスだ、ストレンジャー。金さえ用意すれば上等の品をお渡しするぜ?」

 

「なら槍とかあるのか?」

 

「無いな。ナイフなら持ち合わせはあるが」

 

「…そうか、無いよな」

 

「お求めならば用意するぜ」

 

「期待してないけど頼むわ」

 

「あの不審者二人、随分と仲良くなったわね…」

 

「あはは…」

 

 

そんな会話をしながら前衛を歩く主力サーヴァント二名に呆れ気味の所長に乾いた笑みを浮かべる立香。自分以外にストレンジャーと呼ぶのが気に入らないのもあるが、それ以上に他のサーヴァントであろうとちゃんと満足してもらおうとする様に、商人としての彼の生き様を見て、先程の会話を思い出していた。

どこまでもお人好しで、とある理由から命に関してはシビアな彼女としてはやはり納得が行かないのである。そんな先輩を、殿を務めているマシュがジッと見つめる。まだ出会って数時間ではあるが、既に彼女はマシュにとって大事な人間になっていた。

 

 

「ところで所長さん、アンタは本当にいいのか?手榴弾ぐらいは持っておいた方がいいぜ?」

 

「…じゃあ、取り扱いを間違えても安全な奴をちょうだい」

 

「そんな武器は普通無いんだが…それなら便利な物があるぜストレンジャー」

 

 

先程、不意打ちして来た骸骨剣士を、立香がマチルダを使って守ってくれた事を思いだして頼み込んでくるオルガマリーに満足気に頷き、青い掌サイズの物を取り出すディーラー。それは先程ディーラーが戦闘に用いていた手榴弾によく似ていた。

 

 

「コイツは閃光手榴弾。攻撃力は零だが、眩い閃光で敵の視界を塞いで怯ませる事が出来る。ビビリなストレンジャーにお勧めな品だ」

 

「誰がビビリよ!?」

 

「おっと。アンタの言う通り「危なくないもの」だ。文句を言われる筋合いはないぜ。それに、こいつは光が苦手な奴には効果覿面だ。これから戦うって言う騎士王さんは洞窟の中にいるんだろう?少なくとも効果はある筈だ」

 

「た、確かに・・・」

 

「とりあえず全員に配って置くぜ。コイツならストレンジャー(捜査官や女スパイ)に売却されたものが捨てる程あるからな」

 

 

そう言って歩きながら一個ずつ手渡していくディーラー。立香たちは知らないが、この閃光手榴弾はガナード達にとっては天敵にも当たる物で、一個だけでも持って行くとかなり心強い物である。ポケットにすんなり入るので、持ち運びにも便利だ。それに、間違ってもディーラーも被害は受けないので、そう言う意味でも必須の物であった。

 

 

「ああ、ちなみにだがさっきから戦っている骸骨やらには効果ないと思うぜ」

 

「意味ないじゃない!?」

 

「危ない物でいいんならいくらでもあるんだがな?」

 

「……じゃあ、反動が少ない奴で…」

 

「ならコイツだ。ハンドガン・ブラックテイル。最も安定した性能を持つハンドガンだ。俺の顧客だった女スパイも愛用していた物だ。サイズも小さいからちょうどいいだろう?まあでも、高いぜこいつは」

 

「ありがとうと言って置くわ。金に糸目はつけないわよ。仮にも英霊の銃を扱えるだけで凄く安心できるしね」

 

「ヒッヒッヒッヒェ…センキュウ!」

 

 

本当に嬉しそうに金を受けとり、ほくほく顔のディーラーとやっと余裕を見せて来たオルガマリーに思わず笑みを浮かべる立香。このまま、誰も傷つかないならそれでいい・・・そう思っていた時だった。

 

 

「ッ、ディーラー!」

 

「そこだ」

 

 

突如、立香に向けて投擲された短刀をルーンで出現させた炎で防ぎ、ディーラーに呼びかけるキャスター。立香が理解しない内にマシュが彼女を守るように盾を構え、ディーラーが取り出したハンドキャノンを発砲。しかし手応えが無く、彼等は立香と所長を守る様に円陣を組んで身構える。

 

 

「おいキャスター。アンタ、ランサーのサーヴァントは自力で仕留めたんだったな?」

 

「おうよ。槍兵なんかに負けられないぜ」

 

「俺達はライダーを倒した。なら、スピードに長けた英霊は後、何のクラスだ?」

 

「…ちっ、面倒な事になったな。アサシンだ、確か山の翁の一人だぜ。どうする?」

 

「…山の翁がなんなのかは知らないが、アサシンだな。今の攻撃から接近戦向きじゃないらしい。ストレンジャー、何か考えはあるか?ないなら俺が勝手になんとかするが」

 

 

今も投擲されてくる短刀をセミオートショットガンで弾きながら、そう尋ねるディーラーに不安げな顔を見せる立香。

 

 

「…特にないけど、その方法。ディーラーは大丈夫なの?」

 

「なに。ストレンジャーを怒らせると面倒だからな、自分が死なない様にするさ。少しリスキーだがアンタの武器(サーヴァント)を信じな、ストレンジャー」

 

「…なら、任せた。死んだら殴るからね!」

 

「そいつは勘弁して欲しいな。キャスター、俺は無防備になる。援護を頼めるか?盾の嬢ちゃん、ストレンジャーは任せたぜ」

 

「おうよ!任せな!」

 

「はい、ディーラーさんも気を付けてください!」

 

 

セミオートショットガンを仕舞いながら、一人円陣から外れて歩くディーラー。的だとばかりに多方向から次々と短刀が彼に襲い掛かるが、それらは全てキャスターの炎で防がれ、ついでに立香目掛けて放たれた短刀もマシュが防いでいく。

 

そして立香たちから十分に離れた、ギリギリキャスターの支援が届く範囲で、ディーラーは両手に手榴弾を構えた。

 

 

「なあアサシン。聞いているかは気にしないが、俺の知るストレンジャー(捜査官)がどうやって売却する魚を得ていたか知っているか?大体は銛を使っていたんだが…」

 

 

ポイッ、ポイッと次々と取り出していく手榴弾を、連続して物陰目掛けて投擲して行く。そして、それがほぼ同時に爆発、自身の左側の物陰から黒い影が目の前に飛び出してくるのを満足気に見やるディーラー。

 

 

「心底、対応に困ったのがコイツだ。手榴弾で纏めてやったらしい。まあ合理的だな、ただでさえ水中で何処にいるか分からない魚を消耗品で取ろうとするのは馬鹿のやる事だ。買う側の事も考えて欲しいがな。傷がついたスピネルとか単価で買い取った。感謝して欲しい物だぜ」

 

「オノレェエエ・・・私ヲ魚トスルカ!ナラバ貴様等鈍間(ノロマ)ニ見切レルカ 、柘榴ト散レ、妄想心音(ザバーニーヤ)!」

 

 

発動される、敵サーヴァント・アサシンの宝具。赤黒い異形の右手が伸び、蛇の様に蠢いてディーラーに襲い掛かる。しかし、近距離だからこそその動作はあまりにも隙だらけで。

 

 

「接近戦ではナイフの方が速い、戦いの基本だから覚えて置きな」

 

「グアアアアッ!?」

 

 

胸のホルダーから一瞬で振り抜いたディーラーのナイフが一閃。その胴体を斜めに大きく斬り裂き、アサシンは宝具を当てる事も叶わず、その場に崩れ落ちた。

 

 

「コンナ、ハズデハァ……!」

 

「理性があったなら俺に負ける事もなかったはずだぜ。アンタたち「泥」に飲まれたサーヴァントはガナードと同等だ。Goodbye(死ねてよかったな),Assassin」

 

 

消滅するアサシンにそう自嘲気味に笑ったディーラーは己のマスターに振り返る。満面の笑みを浮かべていた。満足できた事に安心し、ナイフを仕舞いながら歩み寄る。

 

 

「やったね。ディーラー!」

 

「アンタのオーダー(注文)には応えたぜ。先を急ごうかストレンジャー。哀れなサーヴァント共を早く終わらせてやる」

 

 

そう言った彼の目は、首謀者への怒りの感情で満ちていた。




ディーラーが何故生き返ったのか?それはかなり後に明かされます。こんなに早く宝具を晒すと聖杯戦争で生き残れない。少なくともレ/フが退場するローマまでは隠し通したい。

書きたかったシーンその一。「接近戦ではナイフの方が速い」。アーチャーだと接近戦も強いため、アサシンで描いてみました。
バイオ4でのレオンとエイダの対話からですが、実際チェーンソー系にクラウザーやサドラー(人間態)と戦う時もナイフの方が強いと言う真理な台詞だと思います。

手榴弾で魚取り→あるあるですがこれ、真面目に考えると武器商人からしたら溜まった物じゃないかと。これを喰って勝手に死んだ武器商人もいるんじゃないかな。手榴弾で隠れている敵をいぶり出すと言うのは僕がよくやる手です。不意打ちに何度瀕死にされたか…!実際有効な手です。ライダーと違って気配遮断ができるアサシンにはこれしかないと思いました。

シャドウ・サーヴァント→ガナード。どっちかというとクラウザーやヴェルデューゴ。似た様な物じゃないかなと。

所長には閃光手榴弾とブラックテイルを持たせました。これが今後どう影響するか…キャスターとマシュ、立香も一応閃光手榴弾を持っています。

次回はVSアーチャー。遠距離戦で輝く武器と言えば…?次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。

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