メールペットな僕たち   作:水城大地

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タイトル通りの話。


アルベドが心から助けを望んだ日

 その話は、唐突にやってきた。

 

 お母様の……アルベドの大切な主であり己の創造主であり誰よりも愛しいお母様であるタブラ様の様子が、正式に太夫に昇格した辺りから少しおかしい気が、ずっとしていたのだ。

 アルベド自身、ふとした拍子にお母様がチラリと見せる悲しげな様子から漠然とそう感じてはいたものの、お母様本人は特に何かをいう事はなかった事から、彼女の方からもそれを聞く事はしなかった。

 わざわざ聞かなくても、アルベドにだってわかる事はいくつかある。

 

 お母様が、この【リアル】においてどういう立場にいてどういう仕事をしているのかと言う事は、既にちゃんとアルベドも教えて貰っていたから。

 

 その事に関して、アルベドは特に何かを言うつもりもないし、何かを言える権利もない。

 むしろ、下手にこの事について何かを言う事で、大切な母を傷付けるつもりなど欠片もないのだ。

 リアルについては、お母様が自分の立場を教えてくれた後に自分なりに調べて……その富裕層と言う一部人間以外にとって最悪とも言う世界の事を知れば、まだ建御雷様の様な後ろ盾を持っている分、お母様は決して不幸ではない事も理解出来た。

 何より、どんなにお母様の事をアルベドが大切に思っていたとしても、実際にリアルに関して何かしてあげる事など出来ないのだ。

 

 そう……自分には、リアルのお母様の事を守る手段すらまともに無い事を、アルベドはよく理解していた。

 

 むしろ、それは当然の話だ。

 自分達は、あくまでもお母様やその仲間たちの間でメールを運ぶだけの能力しか持たない、電脳世界に生きるメールペットである。

 学習能力の高さから、様々な事を学び電脳世界の中にあるお母様のサーバーを守る事は出来たとしても、リアルに関しては欠片も干渉力は持っていない。

 もちろん、仲間の中にはデミウルゴスや恐怖公など、一部の例外的な存在がいる事も知ってはいるものの、それは主側であるウルベルト様やるし☆ふぁー様のお力があっての事。

 それぞれの主たちが、ご自身で出来る枠の中で彼らの為にそれなりに環境を整えているからであり、決して彼らだけで何かを成しえた訳じゃない。

 

 自分よりも、遥かにリアルに対して接触が出来る彼らですらそれだけの補助を主から受けなければ無理なのだから、他のメールペットとそれほど変わらないアルベドにお母様の為に何か出来る事があるのかと言われると、殆どないと言って良かった。

 

 どちらかと言うと、何かしようと無理をしてお母様に無用な心配を掛けない事こそが、アルベドに出来る数少ない事なのかも知れない。

 太夫の名を得てからも、毎日欠かさず行うお母様の朝のお稽古を見て、美しく舞などを舞う姿に見惚れつつそれに対しての心からの感想を口に出す。

 空いている時間に、電脳世界で自分の趣味の手芸の腕前を披露して喜んで貰い、お母様の望む様に時間になればメールを持って配達に出るのだ。

 出来るだけ、ゆっくりとメールの配達先で過ごしお母様の仕事が終わる頃に戻ると、風呂へと入ってから食事を取りながら一日の中でのちょっとした事を話したり短いスキンシップをしたりして、その一時を存分に楽しんで。

 そして……お母様が仲間との冒険を終えて戻って来たら、最後のメールを手渡してお互いにお休みの挨拶を交わして額にキスをする。

 

 今のアルベドにとって、そんな他人から見たら呆れる位に細やかな日常が、何よりも幸せだと思えて仕方がないのだ。

 

 この、細やかな幸せを知る前の無知な自分にはもう戻りたくはないと思う程、今の自分の心が温かいもので満されている事を、アルベドはちゃんと理解していた。

 本当に、心の底からそう思っているからこそ、アルベドはそれを与えてくれる何よりも大切なお母様の小さな変化に、すぐに気付く事が出来たのだろう。

 位が上がり、その名を目当てに今まで以上に客足が増えていく中でも、お母様はアルベドの事をずっと気遣ってくれていた。

 そんなお母様が、ふとした拍子に僅かにでも憂い顔を覗かせる様になれば、何かあるのだとアルベドが気付かない筈がなくて。

 本来なら、リアルの情報を得られる機会など、アルベドには殆どないと言ってもいい程だったのだが、そんな彼女が目を向けたのは、お母様の朝の稽古の時間だった。

 普段、リアルと直接関わる事が無いアルベドだが、あの時間帯だけは同じ様に稽古を受けている相手から外の情報を直接収集出来る事に、彼女は気付いたのである。

 今までは、お母様の麗しい姿に夢中になっていたから、周囲の会話など気にならなかったのだ。

 なので、相変わらずアルベドに端末越しとは言え朝の稽古を見せてくれる際に、お母様以外に同じ稽古場に居る仕事仲間とも言うべき他の遊女たちの話に耳を傾け、少しずつ情報を集めていく事にしたのである。

 

 お母様の憂いを払う為に、少しでも出来る事はないのか知る為に。

 

 すると、何回か重ねる内に彼女たちや稽古の先生たちの口に上る話題によって、お母様とお母様の所属する廓の楼主は、あまり仲が良くない……いや、お母様にとってアルベドのお祖母様に当たる人の仇に近い存在だと言う事を、漸く知る事が出来た。

 アルベドが引き起こした騒動の後、可能な限り色々な事を教えてくれたお母様がこの件に関しては何も言わなかったのは、アルベドに聞かせたくない内容だったからだろう。

 今、お母様がこうしてアルベドの前に居られるのは、お祖母様に当たる女性のお陰だった。

 お祖母様に当たる人……高尾太夫が、楼主の指示によって奪われそうになったお母様を取り戻そうとしてくれなければ、今のお母様は居なかっただろう。

 間違いなく、その点に関してはお祖母様に感謝してもし足りない。

 だけど……同時に、古参の遊女たちの会話を聞いていた事によって、アルベドは一つの事に気付いてしまった。

 

 お祖母様こそ、お母様が恋い焦がれる建御雷様が愛して止まない方なのだろう、と。

 

 そこまで察した途端、お母様の恋が結ばれる事はないんだろうと言う事まで、アルベドは察してしまった。

 多分、その事をお母様自身が理解している事も。

 文字通り、花街で生まれた時から遊女となるべくして育ったお母様は、自分が恋をしても実らない事を理解してしまっているのだろう。

 そう思うと、アルベドは胸が潰れそうに痛かった。

 お母様の事を、お祖母様の代わりに幼い頃からずっと後見として見守り、時として色々とご助力下さっている建御雷様は、アルベドの目から見てもいい男だと言っていいだろう。

 

 そんな方に、お母様が心惹かれるのも当然だと思うし、出来ればこの二人が上手くいけばいいと思っていたからこそ、まさかそんなところで引っ掛かるとは思っても居なかったのだ。

 

 更に耳を傾けて情報を集めてみれば、お祖母様と建御雷様の事は花街の中でもかなり有名な話で、もしお祖母様が病に倒れたりせず生きていたとしたら、建御雷様とご結婚されてた可能性が高かったのだという事だった。

 特に、建御雷様と養子縁組なさったと言う、花街での会計管理を一手に任されている方が、お祖母様の事を委託気に入っていて後押しする雰囲気だったというのだから、本当にその可能性は高かったのだろう。

 

 もしそうなれば、お母様はこの街で苦労する事もなかっただろうし、建御雷様からは娘としての愛情をたっぷり注がれ、もっと真っ直ぐに育っていたかもしれない。

 

 それも全部、「もし、高尾太夫が生きていたら?」と言う仮定の世界でしか無くて。

 実際には、お祖母様は建御雷様と結ばれる事なく亡くなり、お母様は昼見世の太夫になっているのだから、そんな仮定を考えるだけ意味の無い事なのだろう。

 

 今、アルベドがここで考えなくてはいけないのは、お母様が時折憂い顔を見せる様になった理由なのだから。

 

 現時点で、はっきりとアルベドに判っている事は、全部で二つ。

 一つは、お母様とこの廓の楼主が、お祖母様である高尾太夫の事など幾つかの理由で仲が良くない事。

 もう一つは、お母様に背負わされている借金の大半が、楼主が自分の意に従わない高尾太夫に対する嫌がらせとして、お母様に普通の禿ではあり得ない多額の養育費を投じた結果だと言う事だろうか。

 これは、お祖母様が亡くなった後もずっと続いていて、そう簡単に返済出来ない多額の借金に膨れ上がっていて、現時点でもお母様をこの廓に縛っている原因だった。

 どちらを取っても、お母様にとって最悪の事しかしていない楼主だと言っていいだろう。

 

 これでは、確かにお母様が楼主を嫌っても仕方がない事だと、アルベドは思わず溜息を吐いた。

 

むしろ、お母様が自分を太夫に押し上げた楼主の事を警戒するのは当然の話だ。

 太夫に押し上げられた事で、楼主の思惑通り多忙なお母様が数少ない憩いの時とも言うべき建御雷様と過ごす時間が、周囲の行動によって確実に減ってきている事から考えても、現状はあまり宜しくないのかもしれない。

 事実、太夫になる前まではお母様と建御雷様の時間を邪魔する事なかった禿たちが、最近はまるで建御雷様を早く帰したいと言わんばかりに部屋の外に姿をチラチラと姿を見せる様になり、お母様と建御雷様にお茶などを準備する素振りをして部屋に居座ろうとする。

 その様子は、どうしても建御雷様をお母様の側に留めたくないのだと匂わせていて、凄く腹立たしいかった。

 どこか必死な様子から察して、楼主から何か言い含められているのかもしれない。

 お陰で、アルベド達の存在を廓の人間に出来るだけ隠したいお母様と建御雷様は、今までの様に自分達がいるメールサーバーを一緒にいる時間に立ち上げてくれる時間が短くなっているのが、更に腹立たしいと言っていいだろう。

 

 そんな風に、アルベドが何よりも大切なお母様の周囲を意識して警戒する様になった頃、楼主からお母様に対して一つの話が持ち込まれたのだ。

 

『 白雪太夫を、身請けしたいと言っている方がいる。

 既に手付けもいただいているので、このままその話を進めても問題ないな? 』 と。

 

 わざわざ、武御雷様とお母様が一緒にしている所にやって来たと思った途端、そう言い放った楼主のいやらしくニヤリと笑う顔を見て、アルベドは背筋にゾッとしたモノが走る。

 今まで、一度たりとも楼主が立ち入らなかったこの場に強引に割り込み、こんな風に〖お母様の身請け話〗を持ち出したと言う事は、後見である建御雷様でも簡単に止められない筋からの申し出なのだろう。

 普段、自分達の前では温和な雰囲気を漂わせている建御雷様の眉間に皺が寄っている様子から考えても、楼主のこの話の持ち込み方は花街のルールギリギリの所なのかもしれない。

 だが……これで、つい最近の腹立たしい禿たちの行動の意味が良く判った。

 

 今まで、楼主が色々とお母様と建御雷様の時間を邪魔する様に、裏で禿たちに指示していたのは、自分が裏で動いている事をお母様や建御雷様に話し合う時間を与えない為なのだろう。

 

「……流石に、白雪に話を通さず手付けを受け取って勝手に身請けの話を進めるのは、例え楼主だとしても問題があるのは判ってるんだろうな?

 曲がりなりにも、この廓の顔とも言うべき太夫に対してその扱いは、身勝手が過ぎると後見として楼主会に対して訴訟しても構わねぇ状況だが、それでも構わねぇという訳だな?」

 

 仕事柄なのか、凄みを利かせた口調で問う建御雷様に対して楼主はニヤリと笑う。

 

「そうは申しましても……今回の申し出は、財界でもそれなりに力を持っていらっしゃる方からなので、財界の支援を受けて成り立つこの花街の住人の一人としても、お受けする方向で話を進めない訳にはいかない話でして。

 もちろん、今回の事は先方からいきなり出た話でもありますし、今までこの廓の昼見世の看板を張ってくれていた白雪太夫に対して特別の配慮として、返答の期限までに他に白雪太夫が気に入る身請けを申し出られた方がいらっしゃるというのならば、そちらの話を受けても構わないとの事ではありましたが……

 まぁ、今回の身請けを申し出ている相手への手付けの賠償も含め、即金で三億以上の金を用意出来る方でないと、まずお話になりませんが、ね。」

 

 ニヤニヤ、ニヤニヤといやらしく笑うお母様や建御雷様に向ける楼主の顔を見れば、最初からそう言う相手を探してきたのだろうと、すぐに察しがついた。

 お母様の事を最終的に太夫に押し上げ、ここぞと言わんばかりに高値で財界の人間に売り払うつもりでいたからこそ、今まである程度の自由をお母様に与えていたのだ。

 お母様が、この楼主に邪魔される事なく電脳世界を通じて友人を得られたのも、何もかもこの時の為の仕込みだったのだろう。

 

 身請けされた後、身請け先でお母様が今までの様な僅かな自由すら完全になくして、電脳世界で繋いだ全ての縁を切られた事に苦しむ様に。

 

 そんな考えが、ありありと透けて見える様な楼主の笑みを見て、このままお母様の事をこの目の前の男の思う通りにさせたくないとアルベドは心の底から思うものの、電脳世界の住人でしかない自分に出来る事など何もない事も判っていて、ギリリと歯を食いしばる。

 建御雷様が、この楼主の主張に対して反論しない様子から、一応楼主が取った手段は合法の範疇で収まる事なのだろう。

 更に、楼主の言葉に対してご自身が「では自分が身請けする」と言い出す事が出来ないのは、それだけの大金を流石に動かす事が出来ないから。

 

 お金……これだけ高額なリアルマネーが絡むとなると、建御雷様を筆頭に御方々にご協力を願い出たとしても、多分どうする事も出来ないだろう。

 

 そう思った瞬間、ふとアルベドの頭に一人の顔が過る。

 彼女の頭に、『お金』と言うキーワードで何かが引っ掛かったのだ。

 確か……仲間の誰かが言っていなかっただろうか?

 

「デミウルゴスは、ウルベルト様から口座を一つ与えられていて、リアルマネーを運用しているのだ」と。

 

〘 そうよ、確か……その話をしていたのは、デミウルゴスと仲が良いシャルティアだった筈。

 私たちが初めて頂いたお年玉で、デミウルゴスはウルベルト様から少額とは言え入金済みの口座を与えられていて、更に定期的にリアルマネーを託されているのを、シャルティアが羨ましがっていたのを聞いた事があるわ。

 でも……デミウルゴスが優秀だったとしても、流石にお母様の事を自由に出来るだけのお金があるかと言われると、実際は微妙かもしれない。

 何より、デミウルゴスはあくまでもウルベルト様のリアルマネーの運用を託されているだけで、権利はウルベルト様にあるもの。

 だとすれば、もし実際にそれだけの大金がデミウルゴスの運用している口座の中にあったとしても、ウルベルト様から御許しを貰う必要もあるでしょう。

 もしかしたら、流石に一度に動かす金額が大金過ぎて〖駄目だ〗とおっしゃるかもしれない……でも、ここで何もしないままでなんていたくないわ! 〙

 

 そう思った瞬間、アルベドはスルリとその場からするりと抜け出して、一気に自分がいたメールサーバーから電脳世界をデミウルゴスがいるだろう、ウルベルト様のメールサーバーへと駆け抜けだした。

 早く……一刻でも早く、この事で助けを求めたくて。

 事が事だけに、出来るだけ早く相談しないと、お母様の身請けの話がもっと進んでどうする事も出来なくなってしまうだろう。

 

 もし、そんな事になってしまったら……そう思うだけで、アルベドは身が凍る思いがするのだ。

 

 絶対に、そんな事態だけは避けなくてはいけない。

 その思いだけで、一気に電脳世界を駆け抜けて辿り着いたデミウルゴスの部屋のドアを、いつのも優雅さをかなぐり捨てて乱雑に三度叩くと、相手の返事を待たずにドアを押し開ける。

 部屋の中に居た、デミウルゴスが驚く様子など一切気にせず、運良くその場に居らっしゃったウルベルト様の元へと駆け寄ると、アルベドはその場で迷う事無く土下座した。

 

「お願いします、ウルベルト様!

 どうか、どうか私の主であるタブラ様を……お母様を、助けてくださいませ!!」

 

 ポロポロと涙を溢し、床に額づきながら心の底から悲鳴を上げる様に必死に願いを告げるアルベドを見て、目を白黒させるウルベルト様とデミウルゴスの事など気にする余裕など、今の彼女にはない。

 ここで、もしウルベルト様とデミウルゴスの二人から断られたりしたら、その後誰を頼って良いのか判らないのだから当然だろう。

 そんな思い詰めた様子のアルベドを見て、流石にただ事ではないと察してくれたのか、ウルベルトから返って来たのはアルベドを落ち着かせる様な静かな声だった。

 

「……流石に、事情も聴かないまま〖助けてあげます〗と、安請け合いは出来ないからな。

 一体、そんな風にアルベドが助けを求めてきた理由を、まずは話してくれないか?」

 

 そう、出来るだけ優しく促す様に問われた事で、アルベドは自分が理由も告げていなかった事を思い出し、ゆっくりとお母様の置かれている現状を口にする。

 正直に言えば、幾ら助けて貰う為に必要だったとはいえ、ウルベルト様にお母様の個人情報を話してしまう事に躊躇いが無かった訳じゃない。

 だが、ここで下手に躊躇って助けて貰えなくなってしまう位ならば、お母様に叱られ嫌われる事になったとしても、アルベドには他に選択肢はなかったのだ。

 すべての事情を話し終え、アルベドがウルベルト様の様子を窺う様に顔を見ると、口元を抑え静かに考える様に目を閉じていらっしゃって。

 

 やはり、デミウルゴスに資金運用を任せているというウルベルト様でも、今回の事は流石に難しい話だったのだろうか?

 

 そう、アルベドが絶望的な思いを抱きながら諦め掛けた瞬間、ウルベルト様は目の前で乱雑に頭を掻かれて。

 唐突な反応に、一体どういう意味なのか解らず困惑するアルベドを他所に、ウルベルト様は思い切り大きく溜息を吐いた後、軽く腕を組んで口を開いた。

 

「……そう言う話なら、俺だけじゃ駄目だな。

 最低でも、建御雷さんとたっちさんは絶対に巻き込まないと、財界の人間を相手にするには俺じゃ立場的に太刀打ちが出来ない可能性がある。

 二人以外でも、出来ればあと数人……そうだな、ある程度富裕層で立場があるギルメンの協力を得た方が、より安全性を増すだろうし……丁度、今夜はギルド会議だから、俺から上手く話を持っていってみてやる。

 何と言っても、俺とみぃちゃんにとって命の恩人だからな、アルベドは。

 そんな相手から、協力可能なのに泣いて土下座されて頼まれた事を断る程、俺は人でなしになったつもりは欠片もないし、な。

 アルベドは、まず戻ってタブラさんと建御雷さんの二人に、俺に事情を話した事とタブラさんの事を話す許可を貰える様に説得を頼む。

 そうしないと、まず話が進まないからな。

 俺も、たっちさんに話を通して協力を得られる様に頼んでおく。

 アルベドが、本当にタブラさん事を助けたいと思うなら、何が何でも説得するんですよ?」

 

 そう言いつつ、ポンッとアルベドの肩を軽く叩くウルベルト様の言葉を聞いた瞬間、迷う事無くアルベドはその場でもう一度深く頭を下げる。

 一度は、あれだけの迷惑を掛けた自分の願いを受けて、動いてくれるというウルベルト様の心の広さに対して。

 

 




本格的に衰退期に入る、導入部分の騒動の一つ。
タブラさんの身請け騒動の幕開けです。
多分、お気付きの方も多かったと思いますが、タブラさんが遊女と言う立ち位置になった時点で、確実に発生する予定だったネタでもあります。

まずは、アルベドから見た話。

因みに、この話はやまいこさんの話の一か月後になります。

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