魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
奇妙勢「ふざけんなこっち書け!!」
IS「こっちも止まってるぞ!!」
デュラ勢「はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン」
夏休み唐突にこんなの思いついちゃって勢いで投稿しました、反省はしてるけど後悔はしてない······紬ママ天使。めぐるまじ可愛い。和奏まじ可愛い。
とある学院のオカルト研究部にはとある噂があった。
曰く、『何か悩みがあるならば綾地寧々に頼めばいい、そして何かヤバイ事────特に常識で測れないような出来事があったらもう1人の男に相談しろ』と。
1
9月。始業式から数日後。とある男女が他人に聞かれていたら訳の分からないであろう会話をしていた。
「えっと······前のセカイと違う?」
「はい、そうなんです······」
綾地寧々と保科柊史の2名である。
言っておくが、彼等が中二病ということは全くない。
ただ一つ補足説明をすれば、原作で言うならこの時期は綾地寧々がタイムループした後で保科柊史に思いを告げられることが出来てフラグが立った後の話であることをここに付け加えておく。
そこまでの過程は概ね原作通りに進んで何の問題もない、筈だった。
「つまり、俺がオカルト研究部に入ってしまえばもう廃部の話が一時的に無くなるのかな?」
「いや、まあそうなんですけど······」
ただ単に、魔女だった頃の彼女の感覚というか、気になることがあるのだとか。
「兎に角、来てくれればわかると思います······同じクラスですし、今更揉め事とかは起きないでしょう。何だかんだ言って彼と仲いいじゃないですか。」
「いや、まあそうなんだけどさ······」
保科柊史にはとある能力がある。それは人の感情を味覚で受け取ってしまうエンパス能力だった。
その彼の感情を受け取った時。彼が味わったのは
故に、保科柊史は彼が非常に苦手なのである。
「まあ、悪いやつじゃないってのはわかるんだけどさ······」
「2人っきりで部活というのが出来ないのが残念ですけどね······でも冷静に考えたら後々増えていくから変わりないのでしょうか(ボソッ)」
「?······っと、着いたよ、寧々」
オカルト研究部と書かれたプレートのある部屋。
そこは前世の記憶を若干取り戻した彼にとって、そして記憶を保持し続けている彼女にとっては思い出深い場所で────
「チクショウ!!スタートに戻った!!」
「なんで一人で双六してるんだお前は!?」
「なんで一人で双六してるんですか!?」
前のセカイでは絶対にありえない光景を目の当たりにした。
2
一ノ瀬 巽(いちのせ たつみ)
誕生日12/12日。
身長175cm体重60kg。
オカルト研究部副部長。
まるで何処ぞの吸血鬼モドキの高校生の様なアホ毛が特徴。やや女顔。
全国模試1位。
趣味はアニメ鑑賞やゲーム。そして心霊スポット巡り。
備考────日本で最も有名なホラー小説家
「いやー、ネタが出ないから気晴らし兼ねて遊んでたんだよねー。」
「だからと言って一人双六はどうなんだお前!?」
また、かなり奇行が目立つ人物でもある。
「ほう、君達付き合い始めたのかおめでとう。リア充爆発しろ。で?入部しに来たのか。まあ俺に拒否権は無いだろうから別に構わないけどね!」
と、かなりあっさり柊史を受け入れた。
「別に部員が誰と付き合おうと俺にはどうでもいいし。まあ執筆時に五月蝿くしなければ。」
「いや、そろそろここで書くのやめてくださいよ······」
「いいじゃん別に······あ、そんなことよりも綾地を訪ねてきた相談者が居てね?」
「はい!?で、でも今あなた一人しか······」
「20分くらい前に来たんだけどあまりにも来るの遅くてお腹空いちゃってさ、パン賭けて神経衰弱したら勝っちゃったから今彼が買いに行ってる」
「何してるんですか!?」
こんな楽しそうに話していても、巽からは何も感じない。感じ取れない。
(無味無臭なんて事は基本無かったし能力も無くなってないから······どういう事なんだろう?アイツにだけ効かない何かがあるんだろうか?)
と、そんな感じで思考を回し続けていると、後ろからガチャリ、とドアの開く音がした。
「ハァ······ぱ、パン買ってきました······ぜー······」
そこには小太りの男子生徒が息を切らしながら倒れかけていた。ていうか倒れた。
3
「実は、彼女と一昨日から連絡が取れなくなったんです」
そう言って相談者こと小室遼(こむろりょう)が話し始めた。
「事の発端は8/31日、夏休みの最終日です。」
夏休み最終日。彼は彼女である同級生の三田村かなでとデートの約束をしていたのだが。その日の朝。
『ごめん、風邪ひいたっぽい』
とメールが来たらしい。
見舞いの品を持って家を訪ねたところ、彼女は母親と共に寝込んでいた。どうやら四日ほど前から少し体調が悪かったらしい。そしてその日は見舞いの品だけ渡して帰宅した。
そして次の日の始業式。
彼女は学校に来なかった。
連絡を入れてみたものの繋がらず───結果としてその日は帰宅した。
そして今日も────
「連絡がつかなくって······」
「「それって警察に相談した方が良くない(ですか)?」」
寧々と柊史が突っ込んだ。
「いや、それ以外にもちょっと理由が······実は彼女が体調を崩してから、近所の女性の方々も体調崩しているらしくて······」
「「警察案件!!」」
「でも流行り病の可能性もあるじゃないですか!!だから相談しに来たんです。こういう時どうしたらいいんですか!?」
すぐに答えられるわけがなかった。当たり前である。
こんな相談は初めてだった。どうしようか、と寧々が悩んでいると────
「······何個か質問していいか?」
今まで黙っていた巽が唐突に口を開いた。
「まず一つ目。その彼女の家族構成に父親が登場してなかったな?父親はひょっとしていないのか?」
「あ、丁度8/30から二週間ほど出張らしいです······」
「その時、もしくはその前に父親が体調を崩していた、なんて話を聞いたりしたかい?」
「無いです。『どこから移されたのかわからない』と言っていたので恐らく······ですけど······」
「二つ目。登場していなかっただけでその彼女とやらに兄弟は居るのか?」
「いません、三人家族です。」
「······三つ目、近所で体調を崩し始めているのは本当に女性だけなのかい?」
「はい、そう聞きました。近所で立ち話していたおばさんから、その人も若干顔色が良くなかったです。」
そこまで聞いた巽は「そっか······そうかぁ······」と言って天を仰ぐようなポーズをする。
「えっと······一ノ瀬君?何か······?」
寧々が彼の様子を見て心配するような言葉を投げかける。
「あー、うん。ごめん、大丈夫。ただある意味大丈夫じゃない。」
「は?何言ってんだお前······?」
柊史が訳がわからんと言いたげにこっちをジト目で見てくる。
やがて巽は重々しく、しかしハッキリとこう言った。
「今すぐ────いや、もう手遅れかもしれないけど、君の彼女の家に強行突入した方がいいな。」
4
という訳で────
「全力前進だ!!急げ!!案内よろしく!!」
「わ、わかりました、こっちです!!」
三田村家へ全力ダッシュで向かうのは三人。
小室遼、保科柊史、一ノ瀬巽。以上、三名。
「おい、なんで寧々を置いてきたんだ!?ていうか説明しろ!!」
柊史が突っ込むのも無理はない。
「とにかく急げ、まだ手遅れじゃない可能性もある」と急かされ、但し寧々には「綾地、お前は付いてくるな、いいな?絶対だぞ?振りじゃないからな!?」と全力で来ないように説得(という名の脅し)を使ってオカ研部室においてきたのである。
「今は説明してる暇も惜しいんだよ!!良いから走れ!!」
しかし、決してこれ以上説明はしなかった。
仕方なく、本当に仕方なく柊史は一旦、説明を求めるのをやめて走り出した。
「ここです!」
学院から走って約五分くらいだろうか。
三田村家へ到着した────────
「なん······だこれ?」
直後、柊史に大量の憎悪が味となって彼に降り掛かってきた。思わず吐きそうになるのを抑える。
だが、そんなのを気に止めず、巽はチャイムを押す。
だがしかし、帰ってきたのは静寂だった。
そして何回押しても返事が返ってこないのを確認した彼は「チッ」と舌打ちをすると柊史の方に向き直りこう言った。
「おい、今すぐ119と······この名刺の電話番号に掛けろ。俺の名前を出してここらの住所を言えばすぐにくるから。」
そう言って彼は一つの名刺を渡してくる。
氷室等、と名前と電話番号しか書かれていない簡素な名刺を渡された。
「小室、お前はナビ頼む、今からこの家に侵入するぞ。事態は一刻を争う。柊史、連絡頼んだ────ぞ!!」
そう言って巽は制服の上着を脱いで腕に巻き────
パリィイィン!!
と、一階の庭に面している窓をぶち破り、侵入した。
中に入るとリビングに一人の人間が横たわっていた。
「かなで!?しっかりしろ!!かなで!!」
どうやら三田村かなで本人だったようだ。
取り敢えず彼女を外に運ばせるよう、指示する傍ら、目的のものを見つける。
「······これか······」
それは小さな木箱だった。
三田村かなでが倒れていたすくそばの棚の上にそれはあった。
「よし、取り敢えず回収っ······さて······」
そして部屋を回る。二つ目の部屋で三田村かなでの母親らしき人間を見つけ、外に運び出した。
外へ出ると既に救急車と1台の覆面パトカー、数台のパトカーが来ていた。
「氷室さん!!」
「巽君!!これは────」
「んな事より車出して!!イッポウとはいえ長く放置するのはマズイ!!」
そう言って巽は女性を地面に寝かせて片方のポケットからとあるものを取り出す。
それは柊史が思わず見蕩れる程に綺麗な小箱だった。
氷室はそれを見ると全てを察したのか車に巽を乗っける。
そしてそのまま車が発進し────
「······こっからどうしろって言うんだよおい。」
残された柊史はそう呟かざるおえなかった。
5
翌日、金曜日。
幸い二人は一命を取り留めたらしい。
因みに学校はこの騒ぎで休校になった。
そりゃ自分の学校の生徒が衰弱して死にそうになったのだからそうなのかもしれないけど。
尚、近所に住んでいた人達も多少衰弱していたが命に別状はないらしい。
「さて、何から説明したものか······ホントどうしよう?」
と、そう切り出したのは氷室等(ひむろひとし)という刑事の隣に居る一ノ瀬巽である。
因みにここはシュヴァルツカッツェと言う喫茶店である。
そこの一番でかいテーブルに小室遼、綾地寧々、保科柊二、────何故かここの店主である相馬七緒も相席していた。
まあ、ここの店主が人間じゃないことは原作でわかるだろうし、綾地寧々、保科柊二の二人は一方的に知っているから何の違和感もない。ついでに言うなら氷室等は色々と彼女に関わってしまっているためなのかはわからないが諦めたかのように同席を許可している。
「全部ですよ、全部説明してください。何故私と柊史君の仲を引き裂いたんですか!!」
「寧々、気持ちは嬉しいけど論点がズレてる!!」
「ていうかその言い方やめてくれないかな?まるで俺が保科目当てみたいな事······俺は普通に女子が好きだ!!」
「お前もそこに論点を持っていくな!!」
────閑話休題────
「まあ、結論を言うと、あれはコトリバコだよ。」
「「「コトリバコ??」」」
「そう、コトリバコ。漢字で書くと子獲り箱。水子の死体の一部などを細工箱のような小箱の中に入れて封をし、パズルや置物などともっともらしい嘘をついて殺したい人物の身近に置かせる。っていう呪いの箱でね、簡易でありながら超が付くほどの強力な呪いだよ。」
「「「なっ······!?」」」
まあ、驚くのも無理はないだろう。
特に彼女が呪い殺されかけていた、なんて聞いた小室遼の顔は────信じられんて顔している。まあ呪いなんて信じろと言われてもね?
「この呪いの大事なところってのは子供と女性以外には効かないところ······なんせ子獲り箱だからね。子供と子供を産む母体────つまり母親。母親とは女性だろ?人間は単位生殖なんて出来ないからな。」
「じゃあ······昨日言ってたイッポウっていうのは?」
「ああ、呪いの強さの話だな。水子の死体を使用するかによって呪いの強さが大きく変化して、一人から順に「イッポウ」「ニホウ」「サンポウ」「シホウ」「ゴホウ」「ロッポウ」「チッポウ」もしくは「シッポウ」「ハッカイ」という順番で強力になっていき、名前も変わっていくんだ。彼女の家にあったのは一番弱いイッポウだった訳だ。」
「······ハッカイってのはどれだけやばいんだ?」
「んー······そうだなぁ······6時間生き残れたら奇跡レベル?まあ今回みたいに何日も放置したらあの辺の家は全滅だっただろうね。」
────今度は絶句。
そんな危険なものだったのか、と。
「だから私に留守番を······?」
「まあそんなところだ。さて、説明はこの辺りでいいだろう。さて、問題はそこじゃないんだよね小室君。」
と、今まで黙っていた氷室が口を開く。
「単刀直入に聞く。君、何か心当たりはないかな?恨まれたりとか、ね。」
6
結論を述べると、全く進展しなかった。
「まあ、そりゃいきなり『誰かに恨まれてませんか?』って聞かれてすぐ答えられるわけねえわな。」
と、解散になった。
「巽君。何かわかったら連絡をくれ······間違っても小説のネタにするなよ!?絶対だからな!?」
と、氷室さんに念を押された。ちくしょう。
「しかし······ここから先どうしたらいいんでしょうか?」
「······確かに······手掛かりが何も無いんじゃなぁ······」
「······え、何言ってるのお前ら?」
本気で、訳がわからん、と言った目で巽は彼等を見る。
「あいつが持ってきた依頼は『こういう時どうしたらいいんだ』······まあ要するに『助けるのを手伝ってくれ』って事だろ?なんで犯人まで探すんだよ。そこからは警察の仕事だ。」
「「なっ······」」
信じられないような目で見てくる2人。いや、そりゃそうだろ。
「そもそも俺達が探したところでどうにもならねえよ、少なくとも犯人が学校にいる可能性は限りなく低い。」
「「えっ······??」」
惚けた声を出す二人。本当に息ぴったりか。
「······いいか?コトリバコってのはとても強力な怪異なんだ。だけどその分、メチャクチャ材料に手間がかかる。何てったって水子の一部だぞ?たかが一介の高校生が手に入れることの出来るものじゃあない。」
「で、でも手に入れることだって不可能ではないんじゃないですか?」
「そうだな、だが手に入れたとしてもう一つ問題が出てくるんだよ。」
「問題······?」
自分の頭で少し考える努力をしてくれ。続きをせがむような目で見るんじゃない。
「······イッポウだからこそ、今回の被害が防げた訳だが。イッポウだからこその問題がある。さっきも言ったろ?強ければ強くなるほど強力になると。つまりイッポウは一番弱いんだ。そして弱いからこその弱点。時間がかかるんだよ。」
「······あ」
と、ここまで話してようやく綾地がなにか閃いたように呟く。
「······お父さんの、存在······?」
「え?······あ」
「コトリバコは男に効かない。つまりお父さんには何の影響もないんだ。と、なると。万が一お父さんの出張がなかった場合、衰弱具合をみて即座に救急車呼んで下手したら入院コース。だから、殺すまでに至らない。呪いから離れてしまうから。そして離れて放置されると呪いが広がって流石に不審に思った特務課が動いちゃう······あ、特務課ってのは氷室さんの所属しているところでコトリバコみたいな怪異専門の部署だよ。······話を戻すけどお父さんの出張の期間をまるで図ったかのようにコトリバコを置くことが果たして出来るかな?」
「でも······友達に話していて、それを聞いた────みたいな事もありえるでしょう?」
「なら三つ目────お前ら、仮に二つの条件を満たしたとして、呪いなんて信じる?」
「「··················」」
あまりにも当たり前のことで考えてなかったって顔をしている。
「仮に呪い殺したいと思ってそれを用意しても呪いなんて眉唾物信用できる?余程のオカルトマニアだろそんなのするの。」
確かに、と二人は思った。自分たちは魔法なんてファンタジーに関わったから信じることは出来るが、そんな関わりがなかったら信じてないだろう。
現に小室君は呪いそのものを信じられないって顔してたしね。
「そう考えると犯人は────彼女の父親の関係者かな?あったとしたらの話だけど。ただのイタズラの可能性もあるしなぁ······」
まあ、結論────
「と、まあ。こんな感じで。どうしようもないんだからさ?何も出来ないんだよ俺達は。だから────」
犯人探しなんて時間の無駄。
そう締め括って、俺は家に帰った。
『という訳で巽君、調べてくれないか?』
その言葉を帰った瞬間に撤回することになるとは思わなかったが。
因みにコトリバコの効き目の基準はかなりテキトーです。ただ、怪異症候群2のヤツを参考にしてます······一応。
それとヒロインですが後々、和奏、紬、めぐるの3名でアンケート取ります。戸隠先輩がいない理由?
作者が年上苦手なんだよ!!←
別に嫌いじゃないんですけど······ね?