魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚───   作:タキオンのモルモット

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Q.なんでこんなに遅れた?
A.テスト、レポート、ボックスガチャ、高難易度イベント

和奏「ギルティ」

ハイゴメンナサイ

あ、今回番外編ということで主人公が既に和奏とくっついていますが気にしないで下さい。和奏の出番ほぼ無いんで。

和奏「………………は?」

さーて本編行くぞー

和奏「ちょ、まt」


番外編 正月ハイテンション

 

1

 

「……暇だ……」

 

海道秀明は暇していた。

 

1/1日。午前11:00元旦に家で独りぼっちで居ることほど悲しいことはないだろう。

 

別に死別したとかそんなんじゃない。両親が昨日からデスマで帰ってきてないだけである。

 

年末年始デスマとかどんなブラック企業なんだろうか。絶対にコネがあっても入りたくない。

 

しかし、本当に独りというのは淋しいものだ。と痛感する。普段通りの正月ならほぼ暇している柊史や巽と新年早々カラオケ行ったり初詣行ったり鍋囲んでいたりするのだが、二人に彼女が出来てから誘うことも躊躇うようになってしまった。ぶっちゃけた話をすると羨ましすぎて殴りたくなるだけなのだが。

 

「……ゲーセン行くか……」

 

もうこうなったら一人を満喫するしか無い。そう決めた海道秀明は外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ理論値ィ!!」

「ちょ、センパイマジですか!?」

「マジかよ一ノ瀬すげえな!!」

 

 

 

 

「いやなんでお前らここに居るんだよ」

 

 

駅前近くのゲーセン。音ゲーコーナーに一ノ瀬巽、因幡めぐる、保科柊史の三人が揃って同じゲームをしていた。

 

「あ、海道先輩、ちゃろーです」

 

「あ、うん、ちゃろー……で、お前ら二人は何してんの?浮気か?」

 

「因幡にコミケでパシられて買わされた物を届けに来たんだけど待ち合わせ場所がここだった。」

 

「親父が新年早々飲み会行って酔い潰れたから暇だったからゲーセンで遊んでたらこの二人が来た。」

 

「てっきり彼女と過ごしているのかと思っていたよリア充」

 

いや、綾地さんは多分家族と過ごしているんだろうが。

 

「巽が何で一人でここに居るのかが解せねえよ。確かお前と和奏ちゃんが当てた福引きで和奏ちゃんの両親は今日まで旅行なんだろ?和奏ちゃん放っておいて何してんだお前は」

 

「ああ、和奏だったら今日は起きれないだろうな……」

 

「お前まさかヤってたのかっ!!リア充め!!」

 

「いや……」

 

即座に首を振って否定して、巽はこう呟いた。

 

「奴にコミケは早かったようだ……泥のように寝てたから寝かせておいてやったよ。」

 

「あっ(察し)」

 

「ま、起きたとしても筋肉痛で動けんだろうな……」

 

「それ尚更放置するのはどうかと思うんだが……」

 

「ダメですよ海道先輩。ここは心を鬼にして放置しないと。それを乗り越えて初めてスタートラインに立てるんですから!!」

 

「……まあ、帰りに湿布を買ってやるくらいのことはしてやらないとな……俺は筋肉痛とは無縁の身体してるから家に湿布どころか救急箱すら無いし」

 

「結局、一人で買い物行く結末は変わらなかったと言いたいのか……まあ別に俺には関係ないから良いけどさぁ……」

 

なんだろう。カップルだけど何かズレてるような。

 

「まあいいや、折角四人になったんだ何かゲームやろうぜゲーム。」

 

「なら湾岸やりますか?」

 

「うわ、ガチ勢二人に勝てる気がしない……」

 

「……ま、良いんじゃねえのこんなのも……」

 

少なくとも一人よりは遥かにましだ。

 

そう思って、海道秀明はそのまま三人について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2

「……なぁ、海道」

 

「……なんだ?」

 

「いや、お前本当にあの人を……?」

 

「……悪いか?」

 

「いや、早く貰ってやれよ、と思いまして。」

 

そんな俺達の視線の先には────

 

「おるぁあ!!死ねやああああああっ!!」

 

我らが担任教師にして海道秀明の思い人、久島佳苗が絶叫しながらガンシューティングで遊んでいた。

 

それも、ガッチガチのゾンビもの。

 

絶叫しながら、新年早々。

 

「……海道先輩、選べる立場じゃないのは解ってますけどそこまで悲観しなくても……」

 

「酷いな因幡さん!?俺にも佳苗ちゃんにも!!」

 

「まあ、傍目から見れば『あんな大人にはなりたくないランキング』上位に入る行動だから因幡の言っていることも解らなくはない。」

 

「ふぅー……ゾンビものはいい、カップルは基本死ぬってところが実に良い……!!」

 

「……にしても、久島先生ってあそこまでヤバい先生だったか……?」

 

「保科、下を見てみろ、お酒の空き缶がいっぱい入った袋があるじゃろ?」

 

「あっ……(察し)」

 

まあ、あれだ、文章にすると『新年早々自棄酒してリア充に対する恨みをぶちまけながらガンシューティングゲームやってる可哀想なおばさん』ということだ。

 

そんな俺達の視線を感じ取ったのか、突然、ぐりん!!と後ろを振り向いてきた。

 

怖い、怖すぎる。具体的には貞◯より怖い。

 

「あん……?お前らぁ……何見てんだこのリア充がっ!!」

 

「あの人酔いすぎだろ!!」

 

「まずいな、このままだと久島先生捕まって週刊誌載るぞ……?」

 

「呑気にそんなこと言ってる場合ですかセンパイ!!こっち来ますよ!!」

 

「……しゃーない、南無三!!」

 

そう言った次の瞬間、一ノ瀬巽の拳が久島佳苗の顎先を掠めた。

 

三人は手加減したあまり外したのか、と思ったが顎先を拳が掠めた瞬間、久島佳苗は前のめりに倒れた。

 

「……脳を揺らして気絶させただけだ、死にはしない。海道。担げ、取り敢えず近くの公園で介抱するぞ」

 

「「「アッハイ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3

そんなこんなで、現在。海道秀明は思い人を公園で膝枕するという美味しいシチュエーションを味わっている訳なのだが。

 

何故かしっくりこない。ていうか逆が良かった。

 

何より時たまに「うえっ……」とか言うのが心臓に悪い。

 

因みに残り三人は酔い止めだとかその辺を買いに行ってしまい、現在二人きりである。

 

そして僅か五分で久島佳苗は目を覚ました。

 

「……ん……わ、私は一体……!?か、海道!?」

 

「ちょ、佳苗ちゃん、いきなり飛び起きたr」

 

ゴツッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……い、家を出てからの記憶が無い……何で私は新年早々生徒に公園で介抱されてるんだ……?」

 

まさか酔って生徒に絡んだところを返り討ちにされました、とは口が裂けても言えず、テキトーに「その辺で酔い潰れていたから」と誤魔化す。

 

「……新年早々何してるんだ私は……」

 

「なんか寝言でリア充死ねとか言ってましたけど何かあったんですか?」

 

そう言うと久島先生は苦虫を噛み潰したような顔をし、顔を手で覆い、項垂れ、呪詛のような言葉を吐き始めた。

 

「……いや、ホントさぁ……婚活始めたは良いものの何回も失敗して……遂にスタッフに顔を覚えられたんだ……『早くいい人見つかると良いですね』って……そいつの手には指輪ついてるけどな……クソッタレ……」

 

失言だった。先生がダークサイドに落ちてしまった。

 

「だ、大丈夫ですよ!!まだ若いですし俺は先生のこと好きですよ!!」

 

「そんなこと言って保科とか一ノ瀬みたいにいつの間にか彼女作るんだるぉ!?どいつもこいつも私より先にやることやりやがって!!この歳でまだ処女だぞ私は!!糞が!!」

 

「落ち着いて、落ち着いて自分の言動をどうにかして振り返って!!相当ヤバいこと言ってる自覚を取り戻して!?」

 

二人きりというシチュエーションにつられた俺が馬鹿だった、と思いながら必死に宥めることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3

さて、他三人、因幡めぐる、一ノ瀬巽、保科柊史は……

 

「まさか保科が帰るとは……」

 

「寧々先輩がまさかあそこまで大胆だなんて……」

 

先程、近くの神社に初詣に来ていた綾地一家と遭遇、哀れ保科は彼女の願いを無下に出来ず、食事へ連れて行かれた。

 

「あの流れはあれですよね、『娘さんを僕に下さい』ってやつですよね」

 

「どーだか、綾地も綾地で割と問題のある性格だからな逆だったりして」

 

まあ、そんな事はどうでも良い。

 

「……で、偶には海道も報われるべきだと思ってわざと遠回りしてる訳だが、余計なお節介というやつなのかなこれは。」

 

「珍しいですね、センパイがこんなことするなんて」

 

「……まあ、色々世話になっちまったからな、少しくらい恩は返すさ」

 

「……本当に変わりましたねーセンパイ。前のセンパイだったらこんなことせずに割って入っておちょくるような人だったのに」

 

「はっはっは、因幡、喧嘩なら買うぞ?」

 

「売ってませんから……しかし、良いんですかね?」

 

「何が?教師と生徒の恋愛の話?」

 

まあ、確かに。倫理的にはダメとされているけども。

 

「いや、それに関しては問題ないんじゃないですかね?これが教師が男で生徒が女だったら純愛じゃ無い限り大惨事ですけど、教師が女で生徒が男で純愛ならいいんじゃないですかね?」

 

「ま、芸能界なんてロリコンで叩かれてもおかしくない年の差婚あるしな。」

 

「私が懸念しているのはですね、彼女持ちの男と二人きりで歩いてることですよ。」

 

「……ふむ、確かにクラスメイトと会ったらとんでもない事にはなりそうだね。」

 

第三者から見たらただの浮気現場だよなこれ。

 

「まあ、大丈夫じゃないか?普通に和奏差し置いてお前とクラスでモン猟することは珍しくないし」

 

「……今更ですけど普通おかしいですよね!?なんで彼女差し置いて私とやってるんですか!?彼女とやりましょうよ!!」

 

「あー、今度プレゼントに買ってやるかモン猟……」

 

「え、仮屋先輩持ってないんですか?」

 

「ほぼギターに全部使ったんだろうな、デートするときは全部俺が出してるんだが、申しわけなさ六割、羨ましさ四割で俺の財布を見てくるときがある。」

 

というか、「これぐらいは私が出すから……」って言ってるのを制して出してるだけなんだけどね。……いや、流石に女に支払いさせるわけにも……ねえ?

 

「その考え方は色々間違ってると思いますが……まあ、それはともかくセンパイの財布の中身見たら誰だってそうなりますよ……てかセンパイ本当におかしいくらい稼いでますよね……一般的に作家だけで生きていくのは厳しい筈なんですけど。」

 

「いやほら、存在自体頭おかしいからね俺は。」

 

「んー、納得できない……ですけどまあ、考えたらきりが無いので置いておきましょう、それよりもです。この光景、本人に見られたら不味くないですか?」

 

ケータイを弄りながら、因幡はそう発言する。が、しかしだ。

 

「まず見つかるわけ無いだろ、あいつ俺の買い物に初日と二日目歩き回って、三日目に関しては俺のブースで売り子を四時間くらいさせてたんだぞ?疲れて泥のように眠ってたから昼くらいまでは起きないって」

 

「……確か完売しましたよね、関東怪奇探偵団シリーズの短すぎて短編集にも載らなかった短編集でしたっけ?」

 

「うん、出しても良いって許可貰ったからね。」

 

「……何部刷ったのかは聴かないでおきます。で、センパイはそれで疲れて寝てるから見つかるわけ無いと?」

 

「初参戦であれだけ動いたんだ、そりゃ寝るさ。」

 

「そうですか。ところでセンパイ。ケータイどうしてます?」

 

「ん?あー、そういやマナーモードにして……た……」

 

 

仮屋和奏 不在着信 988

 

 

「………………」

 

「………………」

 

ヴーッヴーッヴーッヴーッ

 

「……仮屋先輩からですよ?大丈夫ですかセンパイ?」

 

「大丈夫じゃない、問題だ。……でも出なきゃもっと大問題だよなぁ……もしもし?」

 

『……ねえ、巽、私今ね────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「貴方の後ろに居るの」』

 

「ひっ!?」

 

耳元で、ゼロ距離で、いつの間にか接近していた和奏に囁かれて、思わず声が出てしまった。

 

「ねえ、巽。何で私は新年早々彼氏が浮気しているところを見せられなきゃならないのかな?かな?」

 

「いや、待て、落ちつけ和奏、浮気は誤解だ。俺はただ因幡に頼まれたものを渡しに行っただけ────」

 

「ふぅん……?まあいいや、ぶっちゃけ因幡さんに話聞いてたから解ってたんだけどね」

 

「ヲイ」

 

「……でも許すかは別問題だから」

 

うん、どうやら相当ご立腹の様子だ、自業自得だけれども。

 

「全く……なんでこんな面白いことに誘ってくれないのさー!!」

 

「あ、そっちなの?」

 

「そりゃ彼女を差し置いて常日頃から後輩女子と仲よく遊んでる彼氏に思うところが何もないわけじゃないけどさ」

 

「マジでゴメンナサイ」

 

「私達が恋仲になった途端に散々からかいまくった海道が先生に恋してるんでしょ?拡散待ったなしですわー」

 

「うわあ、すげえ恨みのオーラが見える……!!」

 

そんなに根に持ってたのか。確かにうざかったけども。

 

「で?どうなってるの?ねぇねぇ、どうなってるの?巽の事だから逐一把握できるように海道に盗聴器くらい付けてるんでしょ?」

 

「そんな事はしてないさ、ただサブのケータイを海道の上着に仕込んでLI◯E通話で拾ってるだけだよ」

 

「立派に盗聴してるじゃないですかセンパイ……」

 

はっはっは、ナンノコトカナー?

 

「待ってろ、今スピーカーに……」

 

『……海道……すまん、私は……もう我慢できない』

 

「「「…………はぁ!?」」」

 

いきなりの展開に思考が少し停止した。が、直ぐに頭を落ち着かせる。

 

『ちょ、ま、マジで……!?』

 

「……マジかよ!?マジかよ!?」

 

「公園戻りましょう!!楽しいことになってますよきっと!!」

 

「急げ、急いで海道を脅してしばらくパシリにするんだ……!!」

 

「だから和奏はなんでそんなダークサイドに落ちちゃったんだよ何があったんだよ後で教えろよ!!」

 

軽口を叩きつつ、公園まで走る。

 

そして公園の入り口に辿り着き───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「オロロロロロロロロロロロロロロロロ」

 

「ぎゃー!!ストップ!!こっちじゃなくてトイレに行ってくださいお願い後生だからお願いします!!」

 

 

「「「し っ て た」」」

 

 

こうして海道秀明は新年早々、思い人のゲ◯を受け止めるという……ドMの海道なら喜びそうな体験をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───オマケ、その後の巽と和奏───

 

「で、この鎖は何でしょうか和奏さん?」

 

「いや、言ったじゃん?許すかは別問題だからって。」

 

「うん、そうだね……で、なんで手錠?」

 

「いや、冬休みってまだまだいっぱいあるじゃん?」

 

「そうだね」

 

「流石に他の女に会うなって言うのは無理じゃん?」

 

「そりゃ俺の担当さんが女だからね。」

 

「だから他の女に目移りしないように……誘惑に屈したとしても勃たないレベルまで搾ろうかなぁって?」

 

「何さらっと恐ろしいこと言ってるんですかね!?ちょ、ま────────」

 

 

 

 

 

 

 

 





和奏「いや流石に遅すぎるでしょ、もう一月終わるよ?」

いや、ホント御免なさい。単位が……単位ががががが……

紬「……進級大丈夫なのか不安なんだけど」

大丈夫じゃない問題かもしれない

めぐる「死亡フラグじゃないですか……いや……逆に大丈夫なのかな?」

次はもっと早めになるように前向きに検討もとい健闘するから許してください(白目)


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