魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
疲れた······(白目)
······これもヤンデレだよね?
最近、猫を拾った。
なかなか賢くて可愛い雌猫だ。
親に相談したら普通に許可を貰えたので、そのまま家で飼うことになった。
名前は、何故だかわからないけど、一番しっくりきた『ナナオ』という名前にした。これから宜しくな、ナナオ。
自分がそう言うと、彼女は俺の言葉を理解したかのように「にゃあ」と鳴いた。
ナナオは午後からふらりと出かけて夕方頃ふらりと帰ってくる。そんな生活を繰り返している以外は普通の猫だった。
まあ、猫というのは気まぐれな生き物だ。ふらふらと出かけることくらい普通だろう。ちゃんと帰ってきてくれるなら何の問題もない。
ナナオを拾ってから一月程経っただろうか。
最近、運が良くなってきた気がする。と言っても宝くじが当たったとかそういう訳じゃなく。ただ単に無くしたものをナナオが何故か探し出してくれたのだ。
賢い猫だ────そう思いながらわしゃわしゃと撫でてやる。
ナナオは嬉しそうに鳴いていた。
心にきた。なんのことは無い、ただイジメが始まっただけだ。殴られたりされるのは前からあったし特になんの心配もない。ただ、耐えればいいだけだ。何も反応しなかったら「つまんねえ」と言って帰る、そんな連中だ。
耐えればいい────耐えれば────
その夜夢を見た。自分の部屋に薄桃色の髪の毛の美女が全裸で立っている夢だ。どうやら自分は欲求不満のようだ。
その女性は自分のところへ近づき、布団に潜り込んでくる。
そして、そのまま抱きつかれ────頭を撫でられた。
「······可哀想に、あんなに殴られて······大丈夫な訳が無いだろう······安心しろ、私が癒してやる······私がどうにかしてやるから────今は私に身を預けるといい。」
何故かその女の体温や肌触り全てが夢じゃないような、そんな感じがした。
────アイツらは全員始末してやるからな。
あんな淫夢を見た次の日の朝。俺を殴りつけてきた不良グループの三人が登校途中、交通事故で亡くなったそうだ。
何かタイミングが恐ろしい程にいい気がして怖くなったが、辛い思いをしないならそれでもいいか、と思い流した。
あの淫夢を見てから六ヶ月、大学受験のシーズンになった。俺はひたすら勉強に打ち込む毎日だ。
ナナオを膝の上に乗せて勉強していると何故か捗る。からここ最近は家でずっと一緒にいる。
そしてもう一つ────
あの淫夢がさらに激しくなった。具体的に言うと搾られる。そんなに欲求不満なのだろうか、週二、三くらいのペースで見るようになった。
あの薄桃色髪の女性は、一体誰なのだろうか?
────もう少しで、人間になれる────
第一志望校に合格した日の夜、夢を見た。
そこには薄桃色の髪の女性が、いつも通り、全裸で添い寝してきた。
だが、彼女はいつもの様に自分を搾り取るわけでもなく。抱き着き、耳元でこう囁いた。
「────君に聞きたい、君は私の事が好きかい?」
この時、俺はどうせ夢だと思って、しかし、心の底から思った事を伝えた。
────好きだ、と。
夢でしかあったことが無いけれど、辛い時に慰めてくれて、話を聞いてくれた、そんな人が嫌いな訳あるもんか。
そう言うと彼女は満足そうに頷いてこう言った。
「その答えを聞いて安心したよ······大丈夫、もうすぐ会えるから······」
その日から、飼い猫のナナオは姿を消した。
自分の第一志望校となった大学には所謂「コミュニケーション能力を高める」ためのプログラムがあるらしく、それでクラス分けされていた。
たった週1時間だけにしか顔を合わさないクラス。ただそれだけ。上辺だけの関係で終わる、そう思ってた、その中に────
あの薄桃色の髪の美女が、目の前に立っていた。
彼女はこちらを見ると、何処か暗い目でこう言った。
「────やっと会えたね」
「いや、私は昔から君を知っているんだけど······しかし、ダメじゃあないか、ちゃんと辛いなら辛いと言いなさい。夢の中で悩みを吐き出すのもいいけどね?しかし······いじめの標的に君が選ばれるとは思ってなかったよ······少しやりすぎてしまったかもしれないけど······ま、それは愛ゆえという事で────っと、自己紹介がまだだったね」
「私の名前は『ナナオ』。『相馬七緒』だ。」
────これから末永く宜しく頼むよ?
間に合ったああああああああ!!
あっぶねえまじあぶねえ!!セーフ!!
という訳でいかがだったでしょうかハロウィン特別企画ヤンデレ四本立ては!!書いてて楽しかったけどこれヤンデレかなぁって思うのがいくつかあったよ私は!!あっはははははは!!(深夜テンション)
それでは次は本編で