魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚───   作:タキオンのモルモット

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共通√これにて終わり、次回からは紬&和奏共通√です。

……え?意味分からん、だって?いや、話の構成上こうするしかなくて……

それとそろそろリドルジョーカーですね。リドルジョーカーに関しては既にデュラララ!!とガヴドロのクロスにさらにクロスさせるつもりでやっていこうかなぁって、まあ、今書いてるやつが完結した後のSHとのクロスで本気で書いて今連載してる方は要素とちょっとだけキャラ出すくらいの気持ちでいます、今の所は。

今の所は!!


声届かず

 

1

 

椎葉紬は魔女ということ以外は平凡な人間である。

 

平凡な感性、平凡な価値観を持った、どこにでも居る普通の少女だ。

 

そんな彼女が自室のベランダに落ちてきた生首を見て、気絶しなかったのは奇跡と言っても過言では無いだろう。

 

 

気絶しなかったのはその瞬間、音もなく、首を回収しにベランダの手摺に降り立った、一ノ瀬巽と目が合ったからだ。

 

「──── 一ノ瀬、君?」

 

そんな紬に目もくれず、巽は首を拾い上げた。

 

────まずは1人。

 

そう聞こえた気がした。

 

そのまま巽は下へ首を投げる。

 

外を見ると赤色の光が点滅していたので、恐らく警察の人あたりにでも渡したのだろう。

 

そしてそのまま巽はベランダの手摺に手をかける。そのまま帰るつもりなのだろう。いてもたっても居られなくなり、紬は全力でベランダの窓を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2

 

「一ノ瀬君!!」

 

S区の上空へ飛ぶように怪異と化した物部閇を空中へ放り投げ、そこで首と胴体を完全に分離させた後、怪異のみをS区に封印した。今頃氷室が倒している頃だろう。

 

その過程で紬の家のベランダに首を落としてしまった。悪い事をしたとは思ってる。が寝てると彼は思っていた。

 

起きてるのは完全に想定外だった。

 

「··········悪いね椎葉、起こしちゃった?」

 

「え·····?あ、だ、大丈夫。元々起きてたから·····」

 

「まあ、見ての通りいつもの怪異退治────なんて言っても信じるわけないか。大方仮屋から全部聞いたんだろ?」

 

「··········っ」

 

「図星って感じだな·····あんにゃろ、余計なこと話しやがって··········」

 

「よ、余計な事って……か、仮屋さんは一ノ瀬君の事を思って……」

 

「何が俺の事を思ってだ……ったく、折角七年前の復讐が出来ると思ったのに怪異に邪魔されるわ黒幕が存在する可能性があるわお前らにバレるわ……厄年じゃない筈なんだがなぁ……で?椎葉、何か用?態々呼び止めるほどの用でもあるのか?」

 

「え……いや……」

 

言葉に詰まる、が言いたいことはあった。

 

月並みな言葉ではあるが、復讐を止めるように、そう言うつもりだった。

 

だが、巽の表情を見て、絶対に無理だと悟った。

 

彼は、椎葉紬の事を、ゴミを見るような目で見ていた。

 

さっきの言葉を聞く限り、恐らく復讐しきれていないのだろう。だからこそ、一分一秒もお前にくれてやる時間が勿体ない。

 

そんな意思を感じた。

 

「……用が無いなら帰るぞ、俺は忙しいんだ。」

 

そう言って手摺に手をかけて今度こそ飛び降りようとしたその瞬間─────

 

 

 

 

「待て─────────」

 

自分のアルプが一ノ瀬巽を呼び止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、神崎彼方の息子か?」

 

「……なんでお前が俺の母さんの名前を、旧姓を知ってる?」

 

 

 

 

3

 

「……やはりそうじゃったか、確か名前は巽……だったか?」

 

「……なるほど、お前と契約してたのか、母さんは。」

 

「……その一を聞いただけで十を知る所もそっくりだ……まあ、あれもあるんだろうが……」

 

「……母さんどころか家の親戚一同エリート家系みたいなところあるからな、別に珍しくはないだろ?」

 

「……いや、そういうことを言ったのではないのだがな……まあ良い」

 

突然始まった会話に追いついていけない紬はただ呆然とするしかなかった。

 

「え、えっと……アカギ、どういう事?」

 

「どうもこうも無い、紬。お前と契約する前に契約していたのが此奴の母親だっただけじゃ。」

 

「まあ、そんなことはどうでも良い……で、用はそれだけか?」

 

無いなら早く帰りたいんだけど、と言わんばかりに外へ視線を向けている、何か聞こえてくる……呼ばれているのだろうか。

 

「……いや、只の忠告じゃ。お前がどんな闇を抱えているのかは知らないが……復讐なら止めておけ。復讐を果たしても果たさなくても、お前のその心の有様では待っているのは……よくて廃人といったところだろうな。」

 

「じゃあ廃人になる前に果たした方が得じゃん?」

 

「復讐を捨てて新しい事に執着して生きればまだ望みはあるぞ?確か小説家なんじゃろ?好きでやってるんじゃ無いのか?」

 

「資金繰りの一環だけど? 情報って結構お金かかるし……それ以外にも色々とねー……まさかあんなに小説で金を集められるなんて思ってもいなかったけど」

 

言葉が出ないというのは正にこの状態の事を言い表すのだろう、とんでもない台詞が一ノ瀬巽の口から次々と出てくるのを目の当たりにして、完全に椎葉紬は停止していた。

 

少なくとも、部室で執筆している光景を見た限りでは、心の底から執筆作業を楽しんでいるように見えていた。

 

────それすら演技だったの……?

 

その紬の見解は正しかった。

 

中学一年の時、演技を極めて以来、オートで演技をする癖がついた。無論、素が出るときもあるが。

 

内心淡々と感情を捨てて書いている。……蛇足だが、そんな情熱も何もない一ノ瀬巽が何故一財産築けるほど人気が出たのかは本人ですら謎の域である。

 

「この七年間生きてるだけで苦痛だったよ。早く殺したくて殺したくてしょうが無いのに……まずあいつが入れられた病院が警察病院だから迂闊に手は出せないし、何の因果か警察の知り合いが出来て更に動きにくくなるし……」

 

「い、生きてるだけでって……!!何でそんな……!!私達と居ることすら苦痛だっていうの……!?」

 

「……当たり前じゃん……」

 

──────だってお前ら家族居るだろ?

 

「普通に生きてるじゃないかお前らの家族は!!当たり前の生活を享受してるじゃないか!!苦痛じゃないわけ無いだろ!!俺にだってそんな当たり前の!!家族と過ごす生活があった筈なんだよ!!それがもう無いんだよ……それを毎日のように実感するんだ……苦痛に決まってるだろう……!!」

 

日常を過ごしているだけであの時の映像が浮かんで、あの日、何も出来なかった事を後悔して、ずっとずっと生きてきたのだ。

 

辛くないわけが無かった。

 

幾らありとあらゆる事について人類最高と言っても過言ではない才能を持っていたとしても、精神までは年相応だったのだ。

 

「……だ、だからって復讐なんて……」

 

「……人の一生を、日常を奪っておいてのうのうと生きてるってのを見逃せってか?」

 

この様子を見ていると解る。素人でも解る。今まで過ごしていた日常でどれ程分厚い仮面を被っていたか。

 

「…………」

 

「……なんだその顔は……まだ何か文句があるのか?それとも同情か?……まあいい、取りあえずお前に言っておく、後で仮屋達にも伝えておけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────邪魔するな、お前らでも立ちはだかるというなら序でに斃す

 

 

 

脅迫と言った風ではなく、只淡々と事実を告げるかのようにそう断言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3

 

翌日、新S区の封鎖は解除され、いつも通りの日常が戻ってきた。

 

学院も平和そのものだ────一クラスを除いて

 

「あー……一ノ瀬はインフルエンザだそうだ、さっき診断書が郵送されてきた……間違っても御見舞いなんか行くなよ?絶対だぞ!?ふりじゃないからな!?」

 

 

「……って言ってたけど完全に嘘だよなこれ」

 

「あいつ……診断書まで偽造で出すなんて……うわ、公式Tw◯◯terもインフルって書いてる……」

 

「……一度インフルと診断された以上五日は絶対これないのがルールだ。最早どうしようも無いだろ。恐らく昨日のうちに準備してあったんだな……今頃どこに居ることやら」

 

ただでさえクラスの中でインフルが出たという話(勿論誤情報)で気分が重いのに更に四人の人間が気落ちしているとなるとクラス全体の空気が重い。

 

その中で様子を見に来た因幡めぐるは余りの空気の重さに踵を返しかけたくらいだ。

 

「てかやっぱりセンパイはこっちも殺す覚悟ですか……勝ち目無いでしょこれ」

 

「で、でも一ノ瀬君が本当にそんなことするなんて……」

 

「センパイはやると言ったらやりますよ……しかしめんどうですね……ただでさえ単独でも手に負えないのに……」

 

「ちょっと待って因幡さん、今なんて言った?」

 

「え?単独でも手に負えないのにって言いましたけど……?」

 

「……待って待って……え?協力者居るの?」

 

「……え、知らないんですか?」

 

てっきり知ってるのかと思った、そう呟き、因幡めぐるはこう紡ぐ。

 

「って言っても協力者って訳じゃないですけどセンパイの家族……お爺さんが警察庁長官、お婆さんが国会議員、お爺さんの弟さんが警察の上に絡んでて、義父親が警視庁捜査一課の刑事でキャリア組、義母親が弁護士、従兄弟が陸自 なんですよ、その中でも祖父母がセンパイのことめちゃくちゃ猫可愛がりしてて……まあ、センパイが最悪殺したときに全力で揉み消すような人達です。多分復讐するって言ったら完全にバックアップする人種ですね……さて、警察上層部や国会議員……」

 

そんな人達がバックについてるのに……止められます?

 

そう因幡が発言し終えた瞬間、クラスの空気が更に重くなったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───警察庁長官室───

 

「巽!!急に呼び出して済まなかったな!!」

 

豪快な筋肉質の爺……一ノ瀬巽の祖父である。

 

「びっくりしたわ、いきなり『インフルって偽造した診断書用意して職場と学校に渡しておいたから!!ちょっと来て!!』じゃねえよマジで。幸い見られてねえから平気だけどさぁ……一応人気作家だからね?意図してなったわけじゃ無いけどさ」

 

「お詫びにお前が誰かしら殺しても揉み消すから許して」

 

「必要ねえよ、そもそも事件になるか怪しい。怪異の関わってる可能性が出てきたからな……ま、仮に事件になったとしてもだ、俺がやったと公表出来るのか?素手で人の首切るなんて俺くらいしか出来ねえだろうけど、だからこそそんな荒唐無稽な話を信じられるか?」

 

「……な、なら何かあげるから!!」

 

「そこまで必死になってまで俺に頼む事ってなんなんだよマジで!!てか俺が殺そうとしてるの知ってて邪魔したのか!?」

 

「それに関しては本当に済まないと思ってる……が、お前にしか出来ない事なんだ……」

 

本気で声を絞り出す祖父を見て、一つ溜め息をつく。

 

そしてソファに座って一言、こう呟く他なかった。

 

なんだかんだ、祖父母には借りがあるのだ。

 

「……で、用件は?」

 

その一言を呟いた瞬間、一ノ瀬巽の祖父一ノ瀬修一郎は両手を挙げて喜んだ。

 

 

 




次回予告!!

主人公、祖父との取引で特例で菊川署の特務課に期間限定所属!?
ここに来て主人公に新たなる属性が追加される!!

次回!!一ノ瀬巽?誰だそれは!!

お楽しみに!!!

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